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Engadget

Engadgetインタビュー:SCEグループCEO平井一夫・SCEAジャック・トレットン (後編)



(前半 SCEインタビュー パート1から続き。)

Engadget:
では、これは特にKazに質問です。ソニー内部で、またゲーム部門のなかで、クタラギ・サンが前線を離れたことでビジネスはどのように変わったと考えていますか。


平井:
微妙な変化はすでにいくつもあります。ちょっと違った視点が持ち込まれたといいますか。というのは、わたしは11年か12年間ほど今のジャックの位置、つまり地域のトップというポジションにいたわけですが、日本からは北米マーケットに属する問題についても非常に多くのインプットが届きました。こちらが受信する側、日本が発信側というわけです。なかには、それは日本や欧州向けにはすばらしいアイデアかもしれないけれども、ここ米国ではちょっとどうなのかな、といわざるを得なかったこともあります。別の場合では、欧州が北米での戦略をみてこれはいけると思っても、実際にヨーロッパではあまり有効ではなかったり、といった。

そこではじめようとしている変化は、地域の指導部に対してより自律性を、より強い決定権を、それに伴う責任を、そして成功したときにはより大きな評価を与えることです。まずは小さなことから始めています。たとえばジャックがPSPについて話していましたが、今回は黒は当然として、シルバーとホワイトを用意しています。東京から北米にこの色とこの色を売りなさいとか、この5色のなかから選びなさいだとか、どれも北米向きではないけれどともかくこのなかからというやり方とは違って、新しいプロセスはたとえば「ジャック、どんな色が欲しいか教えてくれ。そのとおりに作るから」といったようなものです。そうした小さなことから取り組み始めていますが、いずれはもっと大きな問題についても同様になります。地域の本部に対してもっと自治をということです。


平井:
基本的な戦略、たとえばハードウェアをどこに持って行くとか、世界的な連携といったことはもちろん東京のレベルで決定する必要があります。ですがそうした 決定についても各地域のトップと話し合いをして、それぞれの課題であるとか視点を考慮に入れてゆきます。もちろん従来も一方通行だったというわけではあり ませんが、もしかしたら日本からこちらに6車線、こちらから東京に2車線のようなものだったかもしれません。それを現在はどちらの方向にも3車線ずつ情報 が流れて意見が交換されるように、またそうした意見が東京でおこなう決定に実際に反映されるようにしているところです。


Engadget:
ソニーのキーノートで興味深かった点のひとつは、フィル(ハリソン。SCE WWSプレジデント。ソフト開発統括)がソニー・エリクソンの携帯電話を取り出してHomeとの連携について説明したところです。ソニーは歴史的に横の連携で非常に多くの問題がありました。グループ企業として縦方向の結びつきが強く、ハワード(ストリンガー。ソニー戦士)のグループCEOとしての課題のひとつはもっと横の連携を強めることだといわれています。気になるのは今後ソニーがもっと横の連携を強化して、たとえばモバイル機器といったものについてもっとクロスプラットフォームになったとき、どんなことに期待できるかということです。たとえばソニー・エリクソンの携帯にPSPの機能といった話も耳にしていますが......


平井:
そうですね。そこは常に進歩の余地がある分野ですし、正直にいえばこれまでソニーがグループとしてもっとずっとうまくやれたはずのことでもあります。ただおっしゃったような具体的な点についてお答えすれば、まず分かっていただきたいのは、グループの各社がほんとうに孤立して縦にしかつながっていなかったとすれば、おそらくPS3を作ることもできなかったという点です。設計もできず、たとえばCELLチップのような部品を調達することもできなかったでしょう。ソニーが生産するチップですから。また製造もできなかったはずです。すべてではありませんが、ソニーEMSでも製造がおこなわれています。ハワードが語っていることについていえば、わたしはソニーグループの経営会議でソニー・ユナイテッドにおけるビジネスについてプレゼンテーションをして、ソニー・ユナイテッドの実例はPS3にあると発言したこともあります。組織の実際のオペレーションというレベルでは特に、ハワードがソニー・ユナイテッドという言葉を使うかどうかとかかわらずさまざまなやり取りががあります。

さきほど常に進歩の余地があるといいましたが、比較的小さな地域、SCEもソニーも人員が比較的少ない場所では非常に連携が進んでいます。最大の例はSCEカナダとソニー・エレクトロニクス カナダでしょう。実際に非常に近いこともあり、いろいろなプロモーション活動を共同でおこなっています。逆に一番難しいのは日本で、非常に人が多く、また非常に多くのビジネスが関わってきます。しかし全体としてみれば、ハワードが組織のあらゆるレベルにソニー・ユナイテッドのかけ声をかけるなか、たとえばわたしはハワードと実際毎週レベルで話し合っていますし、お互いに電話もします。社長でエレクトロニクスCEOのドクター・中鉢とも会っています。また中鉢社長の直下にあたる中川さん、井原さんともお話ししています。技術トレンドについて、マーケティングについて、今後なにができるかについて......例えばソニー・エリクソンとソニー・コンピュータエンタテインメントでなにができるか、あるいは日本や米国でソニーピクチャーズと協力してどんなことができるかといったことについてです。先ほどの例でいえば2車線に対して6車線になり、経営のレベルでも非常に多くの情報のやりとりがおこなわれるようになっています。今後はたとえば製品あるいはマーケティング活動で、またある場合は販売についても、ソニーグループのなかでずっと多くのコラボレーションが見られるようになると考えています。

とはいえ一番大事なのは、われわれがそれをするのは意味があるからであって、それ自体が目的というありがちな罠には陥らないということです。これはSCEだけではなくソニーグループ全体についていえることです。明らかに有益だった例は、たとえばPS3にBD映画Talladega Nightsを付けたことがあります。単なる同梱セットだといわれるかもしれませんが、注目していただきたいのはこれがBD版の発売一週間か10日前だったということです。ソニーピクチャーズが手を回して、われわれのために実現してくれました。これはグループ内にビデオゲーム会社と映画会社がなければ不可能です。これから期待していただけることの非常に分かりやすい例だと思います。ソニー各社の上層部でより良い対話がおこなわれるようになった今後はこれ以上のことも期待していただけるでしょう。

Engadget:
これからのソニー・エリクソンとの連携についてもう少しだけ教えてくれますか。例えば......


平井:
いろいろな話し合いはしています。

Engadget:
それはデバイスのレベルですか? あるいは単にソフトウェアのレベル?


平井:
いろいろな話し合いをしているとはいっておきましょう(笑い)

Engadget:
ではこう質問させてください。なぜHome連携はソニー・エリクソン携帯で発表されて、PSPではなかったんでしょう。Homeのデモにはソニエリ携帯が使われていましたが、PSPはありませんでした。


平井:
あれはただ、ソニー・エリクソンのみなさんを軽視するわけではないんですが、そういう意味ではなく、フィルがデモして見せたのは携帯で写真を撮るとそれがHomeで使えるという技術なんです。携帯を使って何かのデモをするなら、もちろんモトローラよりはソニー・エリクソンの携帯を使うでしょう。あれは技術デモンストレーションであって、その点はあまり深読みするようなことではないんです。

カラカー:
そうそう。実際あれは携帯のネットワークで送信したものですし。

Engadget:
MMS(メール)で?


カラカー:
ええ。

Engadget:
なるほど。ただソニエリの携帯でデモされて、携帯のほかにPSPも出てこなかったことに驚きました。では横の連携とTalladega Nightsという例についていえば、プレイステーション3向けのビデオオンデマンドやIPTVサービスについてまったく新情報がなかったことにがっかりした人は多いようです。グループ内のシナジーという意味では非常に有望な分野だと思いますが、まだなにも発表されていません。プレイステーション2の時代にもそうしたサービスの約束はありましたが、いまはプレイステーション3が発売されました。PS3はそういったサービスに理想的のように思えますが、そうした話はあまり聞きません。


平井:
視点をいくつかあげさせてください。ひとつ、これは以前にも説明させていただきましたが、現在でもあてはまる点です。われわれはPS3でビデオダウンロードサービスや音楽ダウンロードサービスを提供するいろいろな方法について検討しており、これは当然PSPも含みます。また実際に作業を進めている分野でもあります。ただ、これはわれわれが望むと望まざるにかかわらず、音楽ダウンロードの世界を中核に据えている企業もあります。いまわれわれが考慮せざるを得ないのは、たとえばPlayStation Network Storeでただ普通の音楽ダウンロードサービスを開始したとして、「iTunes Storeとどこが違うんだ?」といわれてしまうでしょう。わたしが望むのは、たとえばプレイステーション3ユーザーに対してユニークな、プレイステーション的な方法で音楽コンテンツを提供したいということです。そうでなければ単なるその他大勢の一社ですから。

もちろんわれわれはコンテンツで優位に立っていますが、ソニー・ピクチャーズやソニーBMGがほかの誰にもライセンスしないというわけではありません。かれらのビジネスはそういうものですし、他社もわれわれと同様にコンテンツにアクセスできるわけです。ではどこで差別化するか? ひとつ例をあげれば、フィルがデモしてみせたSingstar(カラオケソフト)があります。当然楽曲ダウンロード機能があり、また主にプロモーションビデオの落とせるビデオダウンロード機能もあります。音楽アプリケーションとしてあたりまえではありますが、曲のダウンロードが不可欠な要素として組み込まれていること、単にダウンロードして聞くだけではないことが分かっていただけると思います。

曲のダウンロードはSingstarというソフトの欠かせない要素になっており、普通の音楽ダウンロードサービスにはない、PS3でしか体験できないものになっています。お話ししているのは例えばこういうことです。Singstarについていえば、それが非常にプレイステーション的な体験になると判断したから音楽ダウンロードが含まれるわけです。ですから音楽ダウンロードサービスについても、またビデオダウンロードについても、なにかしらプレイステーション的な体験を提供できるようにがんばっているところです。「ほかのサービスとどこが違うんだ?」なんて質問されないように。

Engadget:
わかりました。しかしユニークな体験かどうかは別にしても、テレビ番組や映画などのデジタル配信には広い需要があると思いますし、家にいながら直接映画をレンタルできるという体験は受けています。現在はXbox 360でそうしたサービスがあり、アップルもいずれApple TVで提供するかもしれません。でもソニーは映画もあればハードウェアもあるのになぜか......


平井:
さらにわれわれにはインフラもありますからね。技術的な障壁についても、またクライアント側も――ぜんぶあります。しかしまた、結局は普通の単独ストアがベストと判断することになるかもしれません。ですからやらないと決めたわけではなく、もちろんお届けしたいと思っていることですが、ただしいやり方で実行したいと考えているわけです。もし普通のダウンロードサービスが正解だと判断すればそれが答えになるでしょう。現在はそんな段階です。なにか計画しているか?といえばもちろんです。われわれが「計画はあります」といい、そちらが「いつからサービス開始ですか?」と尋ねるなら、それはまあ別の話になるでしょう。

Engadget:
やはりずっと前に実現しておくべきだったのは明らかではないかと思います。もう少し考えてみると、どうも物理メディアへの依存がありすぎるように感じられます。Blu-rayがあるんだからPS3に1080pダウンロードしなくてもいいじゃないか、UMDがあるんだからPSPに映画ダウンロードを用意する意味は?といったような。どうも「始めます、そろそろ始めます」とくり返しつつ、実は「欲しければ物理メディアを買え」と考えているように思えます。


平井:
さきほどもいいましたが、まさにその点です。ソニー内部でまさにそのことについて議論しています。結局はそれが正しい答えだと判断するかもしれませんし、いずれにしろ必要なものはすでに揃っています。しかし、正しい戦略なのだと確信しなくてはなりません。前にも冗談でいったように、来年になってジャック(トレットン)が「どこがユニークなんですか? 1080pのダウンロードなんてどこでもやってますが」なんていわれないようにね。

Engadget:
本日はありがとうございました!

[Joystiq & 本家Engadget]

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