東芝の無線LAN内蔵SDカード FlashAir について、CES 2012でさらに詳しい話を聞いてきました。FlashAir はカメラなどの対応機器で使えば機器どうしのP2Pで、あるいはアクセスポイントを介してインターネット上のサービスなどと写真やファイルのやりとりができる製品。また単体でウェブサーバとして機能し、PCやスマートフォンなどからカードの中身を参照したりファイルにアクセスすることもできます。

無線LAN内蔵SDカードといえばまず Eye-Fi が思い浮かびますが、製品としての機能・使い方は大きく異なります。違いは Eye-Fi が

1. カメラからは電源供給を除き独立して動作し、
2. あらかじめ設定したアクセスポイントを探して写真・動画を自動アップロードする機能に特化

しているのに対して、FlashAir が準拠する標準規格 Wireless LAN SDカードは

1. 原則的に対応機器(カメラ等)の機能やアプリを介して動作し、
2. アクセスポイント経由のアップロードだけでなく、機器どうしのファイル転送などさまざまな機能に対応

すること。Eye-Fi は既存のカメラでも使えるよう、事前にPCで設定した動作を決め打ちで実行するハック的な製品でした。一方 Wireless LAN SD はそもそもSDスロットを備えたホスト機器と無線LAN内蔵カードの通信を定めた規格で、ホストがコマンドを送ることを前提としています。

カードとホスト機器がやりとりできるため決め打ちアップロード以外にさまざまな用途に使うことができ、またカメラ側で機能を選択したり状況を表示することも可能です (Eye-Fi はなにがどうなっているのか手元で知る方法がなく、無事にサーバ側と接続できてからメールなどで通知する)。

逆にいえば、Wireless LAN SDに対応しないホスト機器では単なる割高のメモリカードになりかねません。そこで FlashAir では、Wireless LAN SD規格準拠に加えて、東芝独自の機能としてカードそのものにウェブサーバを載せています。これにより、非対応機器に挿入しても他の無線LAN機器からカードの中身にアクセスすることができ、一種の無線ネットワークストレージ的にも機能する仕組みです。

つまり FlashAir とは、標準規格 Wireless LAN SD (今後登場予定の対応機器ならいろいろできる) プラス、東芝独自の付加価値 (単体でサーバになる)を付けた製品ということ。

(続きは「価格と発売時期」「対応カメラの発売予定」「Tyep-W / Type-Dの違い」「どうしてこうなった」など)
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さて、必要以上に周りくどく説明してみましたが、肝心の使い方としてどう違うのか?といえば、FlashAirは「非対応の機器に挿入して、AP経由で自動的にクラウドへアップロード」というEye-Fi の置き換えにはなりません。理由は上記のとおり、原則的に対応機器で使う製品であること、単体で動くのはサーバ / アクセスポイント機能だけで自分からアップロード機能はないこと。

一方 Eye-Fi にない機能や使い方としては、FlashAir のサーバにスマートフォンやPCなどのブラウザから接続して、カメラなら写真をブラウズして好きなものを転送することができます。FlashAir そのものがアクセスポイントとして機能するため、SSID (FlashAir〜 または任意設定) を教えて「皆さんご自由に」も可能。通常のウェブサーバ / ファイルサーバと原則的には変わらないため、ブラウザから手動でアクセスするほか、汎用のツールやアプリでダウンロードしたり、あるいは新規ファイルを監視して自動化動作 etc もできます。(つまり、Eye-Fi のダイレクトモードと同様、たとえばスマートフォンのアプリやツールを介せば新ファイルの自動クラウドアップロードやバックアップもできる)。

写真や動画だけでなく任意のファイルを扱えるため、無線NAS内蔵SDカードとして捉えることもできます。ただし一般のデジカメなどに挿した状態で外部からファイルを書きこむと、自分の読み書きしか想定していないホスト側からは一貫性がおかしくなり(FATが矛盾して)困るかもしれません。


製品としては2月から、容量8GB・SDスピードクラス6のFlashAirカードが6000円前後で販売される予定。肝心のWireless LAN SD 規格対応ホスト機器 (カメラ) のほうは、 具体的なメーカー名などは語られなかったものの、今年の秋ごろには登場が期待できるとのこと。


以下は知らなくても困らない細かい情報をいくつか。

・" Wireless LAN SD " 規格にあった Type-W とType-Dの違い。

SDアソシエーションの発表では、Wがウェブインターフェース、Dがホームネットワークを示すとされていました。なんのことやら分かりませんが、これはホストとの通信方法とそれで実現できる機能の差とのこと。具体的には、

Type-W: ホストとはSDメモリとしてのインターフェースで通信。双方向通信には制限がある。SDメモリカードに対応するスロットの機器ならソフトウェアだけで対応機能を組める。
Type-D: ホストとはSDIOインターフェースで通信。ホスト側にも対応したコントローラが必要になるかわり、DLNAサーバ によるストリーミングなど高度な機能を実装できる。

Type-D では、たとえばカメラに挿入すると、テレビからDLNAサーバとして見えてストリーミングでカメラ内動画再生といった機能が実現できるとされています。が、Type-Dはそもそも製品が存在しておらず、登場するかどうかもよく分かりません。


・サーバ機能が独自アプリとしてカードに載るなら、たとえばEye-Fi 同等のアクセスポイント探しと自動接続、自動アップロードのような機能を実装することもできたのでは?

これについての回答は:原理的には不可能ではないものの、カード側だけでなくアップロード先の多数のクラウドサービスへの対応が必要になる (Eye-Fi は独自の中間サーバを立てて、また自前でネットワークサービスやアプリケーションを作りこんで実現している)。FlashAir はあくまで高機能なフラッシュメモリカード製品という位置づけであるため、カード側で完結するウェブサーバ機能ならば付加価値としてあり得るが、東芝が独自の中間サーバを継続的に維持して写真サービスとして展開する製品とはビジネスの性質が異なる。

とのこと。たしかにEye-Fi はカードを売っているというよりネットサービスを売っており、年間4800円の有料ストレージサービスや、携帯キャリアとの協業などを展開しています。



真価を発揮できる対応カメラが秋なのにカードだけ2月に登場するのも謎といえば謎ですが、SDが単体で無線AP兼ウェブ / ファイルサーバになるのはそれだけで面白い機能。写真のほかにSD機器から無線で転送したいときの実用や、ツール連携やスマートフォンアプリなどで変な使い方を考えるのが楽しそうです。