先日、KDDIやソフトバンクら各社がNTTに猛反対する会見が行われましたが、これは現在、2020年代に向けた新たな情報通信の政策を決めるタイミングであるためです。4月15日、総務省の情報通信基盤局は、この政策を巡って携帯電話事業者らに公開ヒアリングを実施。NTTやNTTドコモらの代表者らとともにKDDIの田中社長、ソフトバンクの孫正義社長らが登場、舌戦を繰り広げています。速報でお伝えします。

なお、今回の公開ヒアリングを超満員御礼札止めといった状況で、傍聴希望者を一部断ったほどの混雑でした。総務省側から撮影許可されたのは冒頭の数分のみ。プレゼンテーションの資料データは後ほど掲載する予定です。

総務省公開ヒアリング NTT資料

すべての写真を見る

11 枚


 

日本の情報通信政策については、2013年6月に閣議決定した「日本再興戦略」において、世界最高水準のIT社会を実現するため、世界最高レベルの通信インフラの整備が必要とされています。これを実現するため、国の情報通信施策を仕切る総務省は、必要な制度の見直しの方針を2014年度中に決めるとしています。

今回の公開ヒアリングの最大の争点は、NTTグループの連携を許すか否か。複数の報道機関において、総務省がNTTグループの規制緩和する方針と報じており、NTT以外の通信事業者らはこれに待ったをかける要望書を提出しています。



反対する各社の言いたいことは要するに、NTTの支配力が依然として強い中で規制緩和に進んでおり、他の企業からすればピンチ。また、NTTの料金低廉化、NTTの分離分割措置がとられてきた中、実質的なNTTの再統合や独占回帰につながる懸念があるということでしょう。

ただし、利用者側すれば、もっとも普及しているNTTの光とドコモのセット割が実現して欲しいのではないでしょうか。auやソフトバンクが提供する中でセット割をドコモは提供できません。支配的な立場にあるNTTグループには、通称NTT法(日本電信電話株式会社法)が適用され、グループ連携に歯止めがかかっているためです。規制が適用されるためです。※初出時、NTT法について記述しましたが、電気通信事業法第30条の禁止行為規定により、排他的な協業が禁じられているためです。訂正します。

問題をややこしくしているのは、NTTは民営化した現在も筆頭株主が日本政府である企業という点もあります。現在でも30%以上を政府(財務大臣)が保有しており、これは政府資本のないライバル企業としては文句も言いたくなる点かもしれません。ちなみに、旧公社では、民営化の記憶も新しい郵政グループも政府資本で、旧国鉄のJRグループは政府資本ほぼなし。



普段我々が利用しているネットワークやその上のサービスがそうであるように、固定通信やモバイル通信、その上のサービスがシームレスに繫がる世界こそ、現在そしてこれからのネットワークの形でしょう。それを素直に「連携しましょう」とやってしまうと、NTTグループが巨大なだけに、NTTグループとしての支配力が強まる結果にもなりかねないという面があります。

とはいえ利用者の求める声が強いのは間違いないところ。現段階でこれを認めてしまうと、光回線で7割近いシェア持つNTTが圧倒的に有利になります。なかなか悩ましいところではありますが、中長期的に見た場合、かえって競争鈍化も懸念されます。

公開ヒアリングには、NTTの篠原弘道常務、NTTドコモの吉澤和宏常務、KDDIの田中孝司社長、ソフトバンクの孫正義社長が登場。まずはNTTとNTTドコモが2020年代の通信について発表。

総務省公開ヒアリング NTTドコモ資料

すべての写真を見る

11 枚



ドコモの吉澤氏はモバイルについて説明。「あらゆる事業者とコラボレーションをしてサービスが進んでいく。IOT普及で2020年代は大幅にトラフィックが増えていく」と語りました。ドコモでは研究開発を積極的に進めており、ベンチャーとの協業、継続的な設備投資も実施していく計画。

吉澤氏「健全でない競争もあった」。ようするに各携帯事業者がユーザー獲得、パイを取る競争に注力しすぎたこと説明。サービス競争と先日発表したばかりのわかりにくい印象の料金プランについても紹介しました。

吉澤氏「最初はネットワーク提供事業者だった。その情報や課金のプラットフォームの提供事業者に、今後はサービス提供事業者になる。大企業だけでなく中小企業の事業にも貢献したい」。言いたいことはつまり、NTTドコモも自由なコラボレーションをしたい、NTT法による事前規制ではなく、競争を阻害している場合に事後に規制が働く方がいいという話でした。



KDDIの田中プロ社長登場。3つのキーワードとして、Interenet Everythingの世界、高品質な映像配信、安心安全なネットワークを紹介。

田中氏「日本のネットワークはダメだと言われるが世界最高水準。光もモバイルも」通信インフラについては「安いネットワークを本当に作れるのか。設備競争でコストダウンしていくしかない。基地局とセンター設備をつなぐ回線の冗長化については議論がある。モバイルで1Gbpsの世界もホントにスコープに入ってきている」。

ここで田中社長は、携帯網の基地局がWiFiのアクセスポイントのように小さくなってくると説明し、「1人当たりの通信が多くなってきたため」と話しました。現状では6.2GBを1人で利用しているそうです。基地局回線の大容量化が必須と説明。

総務省公開ヒアリング KDDI資料

すべての写真を見る

25 枚



田中社長は料金は安くなるのか? と自ら問い「4G や5G の時代は基地局回線コストの低廉化がクリティカルである」とします。このほか通信インフラについて、NTT以外の光回線を構築し6割をNTT以外でやっていると述べました。つまり、設備競争やってます! というアピールです。

KDDIは民間企業として、高速強靱な通信ネットワークを提供しておりICTの利活用についても貢献していきたい。最近、この委員会は規制緩和に向かうんじゃないかと報じられている。通信事業は競争は十分でないといけない。規制緩和に向かうとあらゆるフィールドで多様な競争、それとも競争が機能しない競争に向かうのかという話。日本がここまでになったのは設備競争があったから。NTTは固定を七割もっており、政府の資本が3割以上入っている。世界にはこんな企業ない

田中社長はNTTの独占回帰によって、競争がなくなり進歩がなくなると強調します。セット割については断固反対の姿勢、シェア7割を確保すれば独占との見解。「グループ内でやるのは論外」と述べました。



ソフトバンクの孫社長登場。「超高速通信、クラウド、デバイスがこれからの三種の神器になる」と話しました。

各社の登壇者の話すことで共通点は、モバイルではなくモバイルを含めたあらゆるものが連携する社会、ということです。孫社長は「1000倍に増える情報トラフィックをどうさばくか。もはやモバイルだけではさばけない。モバイルと光ファイバーが必要」と説明。

孫社長「ビジョンとしてはほとんど各社『異議なし』という状況。問題は解決方法。50年前は国が保有していたNTT。これからの時代、NTT1社にそれをまかせるのはいかがなものか。我々の光の道構想の際、NTTは光は自分たちにまかせて欲しいとなったが、設備はされたが利用率はどうか? 以前、ソフトバンクみたいないかがわしいところはどうかと言われた結果、NTTにまかせることになったが利用率も低くシェアも変わらない。ADSLの時は300社以上が参加し価格が下がった。NTTの実質独占」と説明。

孫社長「英国では設備部門と利用部門を監視している。日本でも少なくとも監視機関を設けて設備と利用をきちっと分けるべきだ

孫社長は、新聞報道がまるでNTTのグループ内連携について議論がすでにできあがっているかのようだとして「出来レースで、この委員会はただのガス抜き機関。独占回帰をゆるすなら、ドコモが圧倒的に有利。せっかく競争しているモバイルの世界がNTTの光ファイバーの有利に引きずられる」と断罪。

総務省公開ヒアリング ソフトバンク資料

すべての写真を見る

24 枚

質疑応答

Q:0と1で議論すると多数決になってしまう。KDDIやソフトバンクはNTTのグループ連携どこまで許せるのか?

A:孫社長「ドコモが単独で設備競争やっている時は優位な立場にあるとは思っていない。問題はドコモのなりわいが未だに国が事実上保有している会社で、NTT本体と一体経営、人事もそう。NTTというブランドは日本の全員が知っている安心安全のブランド。NTTの三文字をはずし、資本や人事も分離して一体運営がなされないといけない。固定とモバイルの両方で圧倒的なシェアを持っているのは日本だけ。しかも国の資本

田中社長「ドコモの出資比率を下げるという約束があったというのが1つ。ドコモのシェアは44%はあり、これが40%以下に下がればありかもしれない。通信事業者は設備と一体。ドコモはMVNOへの帯域料金は我々の半分、ソフトバンクは我々より少し高い。それはシェアで考えれば当たり前。なんでもかんでも反対するつもりはない。ドコモとNTTの一体化、しっかり議論すればいい。例が悪いかもしれないが、ドコモ出資した野菜の会社はいいと思う。同じルールの中でGoogleやAmazonと排他契約したら問題だと思う。何が問題で何が問題でないかを議論しないといけない

篠原常務「上位レイヤーは変化がはげしく、そこは自由なコラボレーションで新しい価値を作っていくのが重要。禁止行為規制を撤廃して欲しい

Q:監視機関があれば、NTTグループ連携はいいのか? NTTは事後規制がいいと言っているが。
A:孫社長「国が筆頭株主のNTTさんよ、70%のシェアじゃないと、光を8回線束ねないと貸さないぞ、ではいささかがめつすぎる。それを監視するための機関があれば、今より相互利用が文句言うのは結構エネルギーが必要。そんなことはしたくない。ADSLで日本が世界で一番早いを実現できたじゃないですか。世界に技術を示せる。前向きな観点であるべき姿を議論して欲しい

篠原常務「事前と事後規制があると二重規制であると考えます

Q:ソフトバンクの資料で示している光の普及率の低さ、これは資本効率が悪いという認識があるのか。
A:NTT東日本「整備率98%、料金も世界で一番安いという認識。整備は進んでいるが、利活用は進んでいないという認識はある。ユーザー料金も含め、コスト削減努力する中でサービスや設備競争もしているという認識。8分岐問題、メタルと光の技術の違いが基本的にある。8分岐貸しの場合、サービスが均質化しがち。光ファイバーは1本の波を8つに分けて使っているが、1つ単位だと残りの7つは誰が負担してくれるのかという議論もある

孫社長「我慢ならない。あの......

田中社長「ちょっと待って先に言わせて。8分岐を1分岐に反対したのはKDDI。それはどうしてか。NTTはここ1~2年で数%シェアを下げたが、NTTの価格競争に中々ついていけない現状。モバイルのキャッシュバックが問題になっているが、NTT東西のキャッシュバックなんて10万はついている。それほど設備競争が厳しく、これ以上価格競争続けるなら、固定系事業者はやっていけなくなる。設備ベースの競争事業者がいなくなっていいんですか。もう少し設備競争するためにやっと、8分岐をNTTから借りて、8年かかってやっと黒字になった。ソフトバンクが光をやってないのは賢い判断

孫社長「KDDIは微妙な立場。自ら設備をやっており、NTTと同じ守る立場。問題は、NTTの整備率は98%まできており、設備は終わっている。国家が持っている会社が設備したのに、車が走っていない高速道路のようなもの。結局利用させないと経営効率が悪い。新幹線のりたいけど、8人まとめないと乗せない。そんなアンフェアなことはない。国が行っていいふるまいじゃない。小さいソバ屋が定食メニューじゃないと売らないというのとは次元の違う話だ。」

孫社長「日本国家にとって、我々ADSLの時は毎日テレビ宣伝してミニスカートのお姉ちゃんを1万人やとって広めようと努力した。今、NTTの設備を再販するなら売らしてあげる、NTTの光に入るとテレビがついてくるようなキャッシュバック。おかしい。いびつ。3年前の話では利用率を上げてみせます。まかせてくださいとNTTは約束したのに。そもそも国はNTTの株を売るべき。規制を縛られるのが嫌なら国も資本を分離すべき。市場の独占回帰するような議論はやめるべき

孫社長があつくなったところで、総務省側から「時間もあるので簡潔に」と注意。

Q:事前規制について直接影響あるのは何か?
A:篠原常務「特定の条件のパートナーと組めない。B to B to Cのビジネス展開がしにくい。」

Q:KDDIに独占弊害、事業者目線ではなくユーザー目線で中長期的な話をして欲しい。
A:田中社長「設備は償却期間を過ぎれば利益を生み、新しい技術を入れればまたお金がかかる。3Gの際、auはパケットの定額制を導入し、アッパーレイヤーのコンテンツプロバイダーが花開いた。それは1社では起こらない。プッシュホンやダイヤルホン時代から、競争他社が何かすると値段が下がるなど効果がある」

Q:ソフトバンク、規制の効果が出るのは何年ぐらいか?
A:孫社長「設備部門と利用部門は大家と店子の関係。ここが一体運営にならないよう監視する。まず第1に、8本束にしないと売らないなんて話は、8台まとめてじゃないと車売らないとトヨタが言ったら怒られる。そういったことをちゃんと監視する。NTTが一体でやるより、みんなで活用するよう進めた方が利用が進むという話」

Q:携帯と固定通信のセット割について
A:孫社長「今のような状況でバンドルをやると、NTTが断然有利。我々もそうだし、NTTもバンドルをやりたいと言っていい。やっていいけど、光が40%未満になるような状況になってからならいいですよ、ということ。段階をおってやって欲しい
舌戦:総務省ICT委員会、au田中氏「こんな企業ない」、孫氏「出来レース」とNTT攻め
広告

0 コメント

広告