MNPで他社に乗り換えると高額なキャッシュバックがどーんと得られます......、MNP長者を生んだ携帯各社の「販売奨励金」ですが、4月以降、急速に収束に向かった感もあります。総務省の作業部会は、中間まとめ案の中でこうした高額なキャッシュバックについて言及しています。

結論から先に言ってしまうと、総務省では高額キャッシュバックの原因が携帯電話会社のユーザーの過度な囲い込みにあるとしています。総務省が中間まとめ案で述べてきたSIMロック解除や、クーリングオフ導入の考えを見る限り、何度となく議論されてきた端末と通信の分離について、かなり本腰をあげようとしている印象があります。


高額キャッシュバック


携帯各社のMNPの販促施策として行われた高額キャッシュバックでは、家族丸ごと乗り換えると、条件によっては旅行に行けるほどの金額が得られるなど注目を集めました。こうした施策は販売店などへのいわゆる販売奨励金(インセンティブ)を原資としたもので、販売奨励金は当然ながら利用者の通信料収入などから得られたものです。

4月以降、急速に高額キャッシュバックが収束していったため、もしかしたら総務省から指導が入ったのではないか、といった話題も上りましたが、行政の指導は書面を介したやりとりを意味します。携帯業界が年間でもっとも稼げる繁忙期は春商戦の1〜3月期であるため、販促施策が切り替わるタイミングと考えた方が素直かもしれません。

要因


通信サービスにおける消費者保護ルールを検討する総務省の作業部会がとりまとめた中間報告(案)では、この高額キャッシュバックについて、利用者の過度な囲い混みが要因としています。もう少し具体的に言えば、SIMロックや俗に「2年縛り」と呼ばれる期間拘束、そして2年経過後の自動更新契約について過度と表現しています。

また現在、一部事業者をのぞいて公表していない販売奨励金の総額について、総務省へ定期的に報告した方がよいとの見解も示しました。ただし、販売奨励金自体はなにも携帯会社や通信会社に限ったものではありません。総務省でも商慣行として否定しないとして、不用意に規制をかける考えはないとしています。

寡占

国内の通信事業者は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのMNO3グループに大別できます。普及拡大の成長フェーズこそ複数社がしのぎを削っていた通信事業者ですが、安定期に入り各社が収斂していった結果3グループとなりました。これを寡占状態と見る向きもあり、今回の中間まとめ案でも構成員から「協調的寡占の色彩が強い」と指摘されています。

市場に競争を促しよりよいサービス環境を提供するのが、通信行政を担う総務省の役目でもあります。中間まとめ案では端末と通信の分離についても言及しており、端的に言えば、協調的寡占状態の3社の通信の土管化を促すような内容にも見えます。

総務省では競争促進施策として、MVNOの事業を推進しています。同省のMVNO事業化ガイドラインでは、ドコモ・KDDI・ソフトバンクのMNO3グループのネットワークを使って、MVNOによる多様なサービスを促進すると案内しています。

ちなみに、かねてよりMNO3グループは、端末と通信、サービスが寄り添ったサービスを提案し、単純に土管化しない形を模索しています。一体型サービスを提案するMNOに対して、MVNOはMNOができないような多様なサービス形態が期待されているところで、現在は格安SIMなど、安価なサービスが注目を集めています。今回の総務省の中間まとめ案は全体的にMVNOを強く後押しするような内容です。

MVNO 2.0

なお今年3月、総務省はテレコムサービス協会(テレサ協)とともに、MVNO2.0フォーラムを開催しました。この中で上川陽子 総務副大臣は、モバイル市場の活性化や競争政策として、多様な料金プランと多様なサービスの普及に期待を述べました。



2020年の東京オリンピックで海外から多数の渡航者が訪れ、こうした外国人がSIMカードを差し替えてスマートフォンを利用する需要があり「MVNOが認知される必要があるものの、一般の人はなかなか馴染みにくい。2020年代を視野に革新性あふれるモバイルサービスの創造に取り組んで欲しい」と話しました。

副大臣は三菱総合研究所(MRI)出身者で、MVNO2.0フォーラムの後援にはMRIも名を連ねていました。MRIといえば官公庁向けにICT活用の街作り、一般企業向けにも通信放送分野の事業戦略提案などを展開している企業です。

基調講演を行ったMRI情報通信政策研究本部 情報通信戦略グループ西角直樹氏主席研究員は、SIMフリーの意義を説明。この中でiPhoneのSIMフリー版販売に触れ「iPhoneも普及期においてキャリアのコントロールが必要だったが、市場が変化した。全てをキャリアがコントロールするより、エンドユーザー側の選択肢を増やす」と話しています。

西角氏は、交渉力の弱いMVNOに規制当局側の手助けが必要との見解を示し、ドコモやKDDI、ソフトバンクといったMNOにもリーチできない顧客に届くなどビジネス上のメリットがあるとします。一方で「渋々の開放より進んで開放した方が得策」などと、いやらしい詰め寄り方も披露。最後に「MNO、MVNO、消費者のそれぞれにメリットがある関係が必要。MNOは従来の一体提供モデル、MVNOは端末と通信サービスを分離し、通信部分で新機軸を打ち出す必要がある」とコメントしていました。



ただ「MVNO 2.0」が何を意味するのか、輪郭がぼやけている印象もあります。もし仮にこの言葉が旧来型のシステムや体制に対しての新機軸を意味する「次世代XX」や「ポストXX」と同じ使い方の「2.0」であるとすれば、Web 2.0やDoCoMo2.0といったいにしえのバズワードのように、定義のゆらぎを楽しむ寛容な気持ちが必要かもしれません。
スマホの高額キャッシュバックはSIMロック/2年縛り/自動更新が原因、総務省が指摘。改善を提案
広告

0 コメント

広告