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NTTドコモ、マルチベンダーネットワーク仮想化実験に成功。障害時拡張性と安定稼働性能を向上

Yutaka Katabami
2014年10月21日, 午後04:30
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Ittousai, 10月11日
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NTTドコモは2014年10月14日、「ネットワーク仮想化の実証実験に関する説明会」を開催し、モバイル通信インフラの大手6社(アルカテル・ルーセント、シスコシステムズ、エリクソン、ファーウェイ、日本電気株式会社、ノキアソリューションズ&ネットワークス)との実証実験を行い、パケット交換機のソフトウェアと仮想的なハードウェアが、マルチベンダー(異なるベンダーの組み合わせ)で動作確認したことを発表しました。

従来、携帯電話事業者は、複数ベンダー各社ごとに、ソフトウェアと専用ハードウェアをセットで設備投資を行ってきましたが、今回のマルチベンダーでの組み合わせによるネットワーク仮想化実験の成功により、災害や大規模イベント時の過渡的な負荷への対応、障害発生時の迅速な対応、新たなサービスの早期提供、および新規設備導入・保守コストの削減という4つのメリットがあるとしています。
 
これらは、エンタープライズ(巨大企業)がITインフラを安定稼働させるために導入してきた、スケーラビリティ(過負荷時の性能向上や機能向上などの拡張性)とハイアベイラビリティ(高可用性=耐障害性を高め、稼働率を最大化)の向上を移動体通信系インフラでも同様に適用するための先進事例となります。
 



記者向け説明会では、報道発表の内容、ネットワーク仮想化のメリット、商用化への取り組みについて、9月26日にNTTドコモ執行役員R&D戦略部長に就任した中村 寛(なかむら ひろし)氏が説明しました。

以下、質疑応答の内容も含め、レポートします。
 

報道発表の内容について



仮想化技術は、機器の物理的な構成にとわれず、論理的に利用できるため、従来型のソフトウェアと専用ハードウェア構成と比較して、ハードウェアの効率的な利用や運用を可能にするものです。 具体的には、新たなソフトウェア(サービス)の追加や分割(多重化など)を容易にするだけではなく、障害時に正常動作する別の仮想化ハードウェアに切り替えるなど、柔軟かつスピーディーなシステム運用が可能となります。
 



この仮想化技術をネットワーク仮想化に適用することで、汎用ハードをソフトウェアが共用してシステムを構成。
現行同様の「ソフトウェア」、CPU・メモリ・ストレージといった各リソースを仮想的な汎用ハードとする「仮想化レイヤー」、および、仮想化レイヤーのリソースからの容量逼迫・故障に関する状態通知によりハード切り替えやリソース追加割当を自動化する「仮想化管理システム」により構成されます。
 



今回の実証実験では、いくつものシステムの中から、パケット交換機(EPC=Evolved Packet Core)へのネットワーク仮想化を適用しています。 ※EPCは、加入者認証、ハンドオーバー制御、課金機能などを提供する通信設備です。
 



従来型の専用ハードをラック収容した場合と、今回の仮想的なハードを収容したイメージです。
 



今回の報道発表の内容をまとめると以下の4点です。
  • 世界主要6ベンダーの技術を組み合わせ、業界最大規模のネットワーク仮想化技術の実証実験に成功
  • パートナーベンダーは、アルカテル・ルーセント、シスコシステムズ、エリクソン、ファーウェイ、日本電気株式会社、ノキアソリューションズ&ネットワークスの6社
  • 仮想化技術により、ベンダーを問わず自由に組み合わせてシステム構成可能であることを確認
  • 仮想化プラットフォーム作りを進め、2015年度に商用化を目指す
 

ネットワーク仮想化のメリットについて



ネットワーク仮想化のメリットは以下の4点で、これらメリットを最大化するには、複数ベンダーの組み合わせが必要としています。
  1. 通信混雑時のつながりやすさの向上
  2. 通信サービスの信頼性向上
  3. サービスの早期提供
  4. ネットワーク設備の経済性向上
 



「通信混雑時のつながりやすさの向上」は、災害発生や大規模イベント時に輻輳が発生した場合、現在は通信規制による対処を行っていますが、ネットワーク仮想化の適用により、仮想レイヤーで割り当てるリソース容量を自動的に追加することで、規制を抑制・回避して、つながりやすさが向上する技術です。
 
ドコモは2012年から2013年にかけて、総務省受託研究として「大規模災害時における新たな通信混雑緩和技術」の実証実験を実施していますが、その結果から、輻輳状態で20回に1回繋がる5%程度の疎通率を4回に1回繋がる25%程度まで向上させることができるとしています。
また、震災時の過負荷は、通常の40倍から60倍のトラフィックによる輻輳状態だったとのことです。

総務省「大規模災害時における移動通信ネットワーク動的通信制御技術の研究開発」8ページ には、20倍のトラフィック状態で、疎通率5.6%(18回に1回繋がる程度)から31.1%(3.2回に1回繋がる程度)に改善されることを実証したとしています。
 



「通信サービスの信頼性向上」は、ハードウェア故障時に、フィールドサービスが保守作業に着手して切り替えが完了するまでの時間(120分)を要し、かつ予備系に切り替えても故障機が修理完了まで二重化できない状態でした。
これらは、ネットワーク仮想化の適用により、自動的に予備系に切り替わるだけでなく、別なリソースに予備系を割り当てることにより、自動的に二重化運転に復帰するため、より高い信頼性を実現するとしています。
 
「サービスの早期提供」は、従来方式では、ハードウェアの計画・調達・工事の後に、ソフトウェアのインストール・設定および試験を経てサービス開始していましたが、仮想化レイヤーに割り当ててハードの導入時間を削減することで、6か月から1か月程度まで時間をサービスの早期提供を実現できるということです。 専用ハードの導入に5か月は掛かり過ぎのような気もしますが、巨大企業ならではの仕様策定・予算化・発注・納入・設置というプロセスそのものと、2011年から2012年にかけて頻発した大規模障害への反省から、より慎重に時間を要してきたことが想定されます。
※大規模障害が頻発した当時、中村寛氏はネットワーク開発部長として記者説明に出席していました。
  



「ネットワーク設備の経済性向上」は、現状は、高価な専用ハードや保守パーツ、メンテナンス体制に投資していますが、ネットワーク仮想化の適用により、低コストな汎用ハード、共用できる予備用設備、統一的なメンテナンスにより経済性が向上するとしています。
ベンダー側としては、1件あたりの取引金額の低下というマイナス面はありますが、ドコモだけではなく世界の携帯電話事業者の設備にしっかり食い込んでいくためにも、自社のソフトウェアの価値(機能・性能など)を高めビジネスを拡大したいという思惑もあるでしょう。


「複数ベンダー装置の組み合わせによるメリットの最大化」は、単純に、ベンダーごとの仮想化では、設備利用の効率化や経済性の向上が図れないだけではなく、ソフトウェアベンダーの新規参入障壁を小さくする効果があるとしています。
ドコモは、仮想化プラットフォームを備えることで、新たなソフトウェアやハードウェアを提供したいベンダーが試験的に提供することが容易になり、その結果としてエコシステムが変革しネットワーク業界を活性化すると考えています。

商用化への取り組みについて



ドコモは、2005年からネットワーク仮想化の基礎研究に着手し、2012年から2013年に、総務省受託研究を行ってきました。
また、2013年11月には、アルカテル・ルーセント、シスコシステムズ、日本電気の3社と、ベンダーごとのネットワーク仮想化の実証実験を行ってきましたが、 今回は、大手ベンダー6社のソフトウェアを2社の仮想化プラットフォームで動作させる6x2=12通りのマルチベンダーの組み合わせでの実験に成功したことで、来年度の商用化開始を目指しています。
  



これら、ネットワーク仮想化を推進するにあたり、2012年11月より、ETSI(European Telecommunications Standards Institute、エッツィ)ISG NFV(Industry Specification Group Network Functions Virtualisation)でドコモが副議長を務めるなど主導的な役割を担ってきました。
※ETSIは、30を越える通信事業者とを含む232社が加入する業界団体です。

更に、Open Platform for NFV(OPNFV、NFV=Network Functions Virtualization https://www.opnfv.org/ )が2014年9月に設立され、最上位のプラチナメンバー17社の一員として、オープンソースでの仮想化プラットフォーム作りを推進する役割を担っています。OPNFVは、中立的なLinux Foundationとの共同プロジェクトで、通信事業者・ネットワークベンダー・ソフトウェアベンダー・コンピューターメーカーなど多彩な全40社によるオープンソースプロジェクトは、標準化についてはETSIとの連携を前提としています。

プラチナメンバーは、AT&T、Brocade、China Mobile、Cisco、Dell、Ericsson、HP、Huawei、IBM、Intel、Juniper Networks、NEC、Nokia Networks、NTT DOCOMO、Red Hat、Telecom Italia、Vodafoneの17社。
シルバーメンバーは、6WIND、Alcatel-Lucent、ARM、Broadcom、CableLabs、Cavium、CenturyLink、Ciena、Citrix、ClearPath Networks、ConteXtream、Coriant、Cyan、Dorado Software、Ixia、Metaswitch Networks、Mirantis、Ooredoo、Orange、Overture Networks、Sandvine、Sprint、Wind Riverの23社。

但し、これら40社には、EU・北米およびアジアのメジャーな通信事業者や関連ベンダーが漏れているため、標準化における第2第3の勢力が、Linuxと同様に別ディストリビューションが生まれる可能性もあり、必ずしもOPNFVが標準をリードしきれるとは言いがたい状況です。
 



ネットワークの将来像についても言及しており、今回のEPCでの接続性や課題を見出すための実証実験から、音声交換器、位置情報管理装置、留守番電話蓄積装置など、適用範囲をネットワーク全体に拡大するとのことです。
 

2015年から緩やかなマイグレーション
=いきなり繋がりやすくなるわけではない

ETSIで約2年の活動をしているものの、今回OPNFV加入事業者には大手事業者などが漏れています。
オープンソースということもあり、参加するベンダーが立ち上げ当初で限られているものの、IT系など新たなベンダーが関わってくるなど新たな動きも生まれており、参入障壁が下がり通信事業者以外にもメリットが生まれそうな状況です。
実際のところ、9月設立のOPNFVには、Intel、HP、IBM、DELLといったコンピュータベンダーが参画していますが、仮想化プラットフォームのサーバベンダーとしての参入という狙いと、通信事業者のコスト削減に繋がるであろうという双方の思惑が合致しているといえるでしょう。

今回実証実験に参加した6ベンダーから、ドコモのネットワーク仮想化ベンダーを選出する前提かと思いましたが、あくまでも実証実験の協力ベンダーであり、調達には一切関係ないとのことで、実験参加ベンダーは実績としての優位性はあるものの、オープンな厳しい調達での競争で勝たなければいけません。


2015年からの実用化を開始しますが、あくまでも緩やかなマイグレーションを推進することになりそうです。
まず、機能面では今回実証実験と同様に、パケット交換(EPC)におけるアクセスゲートウェイのMME(Mobility Management Entity)および加入者情報などのゲートウェイ部分への適用を初期フェーズとしています。
また、導入ペースについては、新規や入れ替え時期のマイグレーションを中心とするようで、短期的な設備投資・導入完了させるわけではなく、数年かけて緩やかに適用していくと、導入完了時期の明言は避けていました。
但し、その他の既存ネットワークインフラのソフトウェアを仮想プラットフォーム上にマイグレーションすることを先行するものの、ドコモのdマーケット・d系サービス(dマガジン、dデリバリー、dトラベル、d fashion、dショッピング、dゲーム、dブック、dミュージック powered by レコチョク、dクリエイターズ、dキッズ、dアプリ&レビュー、dヒッツ powered by レコチョク、dビデオ powered by BeeTV、dアニメストア) や、ドコモにとって価値の高い新しいサービスをその上に乗せていくこともありそうです。

これら、スケーラビリティ(拡張性)と高可用性(信頼性)のある仮想化環境は、過負荷時・障害時の対処がスムーズかつスピーディーに行えることから、繋がりやすさが向上するための手段ではあるものの、導入完了までに要する時間と、ネットワーク負荷の指数的な高まりとのせめぎあいは、しばらく続くことになると考えられます。 また、XiでLTEインフラを他社より先行させたことで、設備の減価償却が重くのしかかり、新設備へのマイグレーションに時間を要しているであろう現状もあります。

しかしながら、直近4年にわたるネットワーク開発部長経験、ドコモヨーロッパSA社長や業界団体への顔として活躍してきた実績からか、6月に執行役員に就任したばかりの中村寛氏をR&D戦略部長に異動して、今回の発表を行っており、ドコモの本気度がうかがえます。(※中村寛氏のプロフィール詳細は付記参照) 

世界のモバイル通信事業者の標準化策定をリードしてきたNTTドコモならではの「さすがドコモ!」という革新と先進的なネットワーク仮想化の早期実現に期待をしたいところです。

Gallery: ドコモ ネットワーク仮想化の実証実験に関する説明会 | 10 Photos

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「TechCrunch Tokyo 2019」11月14日、15日に開催



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