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MAME、悲運のBleem!......エミュレータと著作権 (連載:ゲームエミュレータを改めて考える 第二回)

Kiyoshi Tane
2015年9月8日, 午後01:05
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懐かしいレトロゲームの復刻や、押入に眠るROMカートリッジを活用する上で、改めて注目を集めているゲームエミュレータ。過去の資産を蘇らせる光の面の一方で、著作権を侵害しかねない影の面もあります。ゲームROMの著作権が取り沙汰される一方、独立した著作物であるエミュレータ本体の著作権が問題になるケースもあり。

ゲームエミュレータを巡る連載2回目は過去の事例を引きつつ、「エミュレータの合法性」について掘り下げていきます。

レトロゲーム互換機は合法・違法? ゲームエミュレータを改めて考える 第1回

エミュレータ周りはトラブル多発


過去のゲームを現代のハード上で再現するエミュレータは、自動的に違法というわけではない。ただ、家庭用ゲーム機の場合はカートリッジから吸いだしたROMが法的な手続きをクリアしているか否かで扱いが分かれるーー前回はそこまでお話しました。

しかし、実際にエミュレータ周りはよくトラブルが起こっています。素人のプライベートな使用はまだしも、ネットや商業ソフトといった公共性の強い場で、違法なROMを堂々とやり取りする事態は、ほぼありえない。どうしてこんなに揉めるのでしょうか。

悲運のプレステエミュレータBleem!


ひとつめのトラブルは「合法の蓋然性が高いもののプラットホームメーカーに睨まれた」というもの。すでに現役を引退して実利益とは縁の薄い引退ハードならお目こぼしされやすいのですが、第一線で活躍中の現役ハードであれば話は別です。'90年代末〜2000年代初めに販売されて注目を集めた「bleem!」というWindows用プレイステーション・エミュレータソフトがその代表例でしょう。
Other
前回、光学ドライブからデータを読み込んで起動するBIOS(基本入出力管理ソフト)が必要なゲームハードは、BIOSが著作権で保護されるために商品化は困難とお話しました。が、bleem!は「高い技術力によりBIOSそのものをエミュレート」という方法でハードルをクリア。
プレステの権利元であるSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)は販売元の米Bleem LLCを「オリジナルに手を加えている」として、著作権侵害を理由に販売の仮差し止め訴訟を起こしましたが、サンフランシスコ連邦地裁は次回の法廷までbleem!の販売・出荷の継続を認める判決を下し、実質的にbleem側が勝訴。

そのため一時はショップで公然と販売され、ドリームキャスト上でプレステの『グランツーリスモ2』や『鉄拳3』が楽しめる専用エミュも登場しました。が、2001年末には販売が終了。'99年8月にはプレステ本体が129ドル 99ドルまで値下げされたのに対して、bleem!の店頭価格は30ドル程度。ソフト単体でこの価格+PCへの投資も必要な割高感もあり、市場原理により駆逐された可能性もあります。

エミュレータにも著作権あり


ふたつめのトラブルパターンは「エミュレータ本体の著作権侵害」。ゲームのROMに著作権があるように、エミュレータそのにも著作権が発生しており、無断で使用すればトラブルになるわけです。

これまで何度も火種になってきたのが、アーケードゲーム・エミュレータの「MAME」。主に1970年代〜'90年代のゲームセンターで稼働したゲーム(アーケードゲーム)を再現し、WindowsやMacintosh、Linuxに加えてAndroidやiOSまで様々なプラットフォームに移植されているエミュレータです。

複数メーカーのアーケードゲームを網羅する"互換機"の製作は、物理的に極めて困難です。アーケードゲームの場合、一般には家庭での使用を想定したROMカートリッジはなく、ネットの違法アップロードで......との推測が強く働きます。

そのため、現実的な商品化は、ROMデータ+家庭用ゲーム機ないしPCに対応したエミュレータを一式にしたパッケージとなります。うちROMについては、販売元のパブリッシャーが権利関係をクリアするのが通例で、この点を蔑ろにして違法ROMを含めて市場に流通するケースは考えにくいでしょう。

販売サイドで意外と見落とされやすいのが、エミュレータ本体の合法性について。この部分は下請けの開発会社が担当するケースが多いためか、チェックが疎かになる場合がままあります。

MAMEの場合は、商業製品に使った時点で即アウト。このソフトは非商用利用に関しては無償で公開されていて、コードを改変したり独自に対応ゲームを増やした派生品を作ることも許されていますが、元の著作権が消滅したわけではありません。商業利用については全面的に禁止されているため、流用が明るみになれば釈明の余地がないわけです。

MAME

ふたつのMAME事件


このタイプで記憶に残る事件は、2002年にサービスが始まる前に終了した「ネットげーせん」と、2005年~2007年に販売された「俺たちゲーセン族」シリーズの二つです。

前者は配信システム「OAGC」(Online arcade game center)によりゲームデータをダウンロードして、PC上でゲーム基板をエミュレーションするというもの。1枚50円換算のバーチャルコインで遊べる家庭ゲーセンを予定していました。

200タイトル以上を正式に契約し、著作権管理も実現している......との触れ込みでしたが、クライアントソフトに著作権侵害の可能性ありと指摘を受けてサービス開始が延期され、それっきり終了。

運営の主体であるメディアカイト社は開発部門を持たず、香港Billybala Holdings社にクライアントを外注したのですが、先方の開発現場では遵法意識が低かった模様です。

なぜサービス開始前に発覚したかといえば、すでにOAGCが香港で商用サービスとして稼働中だったから。Billybala Holdingsは香港で株式を上場していた"優良企業"であり、クライアントも"稼働実績"があるという安心が招いた事故と思われます。

一方、「俺たちゲーセン族」は、ハムスターという会社がPS2向けに販売していたレトロゲームの復刻シリーズ。レトロゲーといえば3本1組のトリロジーや詰め合わせが主流の中で1本2000円と強気の価格設定でしたが、ユーザーの解析によってソースの中にMAMEの文字を発見。ほどなく、盗用が指摘されたタイトルがごっそりと公式サイトから削除され、中には廃盤とされたものもありました。


第3のパターンは「オープンソースの規約に違反していた」という場合。何種類もの家庭用ゲーム機のソフトが遊べることで大人気となった「RetroN5」がこれに当たる−−と言い切るには少し事情が込み入っていますし、オープンソースの説明も必要ですので、続きは次回ということで。

連載:ゲームエミュレータを改めて考える

レトロゲーム互換機は合法・違法? ゲームエミュレータを改めて考える 第1回

多根清史氏による連載はこちらもごらんください。

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