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VirtualConsoleやゲームアーカイブスに見る現代エミュレータのあり方(エミュレータ連載・最終回)

Kiyoshi Tane
2015年10月21日, 午前04:00 in Archive
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最新のゲームハード上で"懐かしさ"の再現を技術的に支えているエミュレータを様々な切り口で語る連載も、今回が最終回。2015年現在のエミュレータがどのような形で提供され、いかにゲームライフを豊かにしているかを考察します。

Gallery: エミュレータ最終回 | 12 Photos


ソーシャルゲームが従来のゲームらしいゲーム市場を駆逐していく中で、独自の市場を占め続けているレトロゲーム。スマホやタブレットはハード性能においては過去のゲーム機を上回ってはいるものの、基本的にはタッチ操作に限られるため、プレイ感覚の再現には不満が残りがちです。

逆にいうと十字キーや物理ボタンといった過去のデバイスの延長にある操作系を備えた家庭用ゲーム専用ハードにとって、レトロゲームは最後の聖域です。今後の成長は望みにくいにせよ、過去にゲームを遊んだ人口だけ潜在的なニーズのある市場に向けて、プラットフォームメーカーやサードパーティ各社も(おそらくスタッフの個人的ゲーム愛も込みで)サービスの提供は続けられています。

そうしたゲームの権利を持つメーカー側の事業においても、エミュレータは欠くことができない技術です。元のプログラムを流用せずに挙動を外から見て再現する「目コピー」は、「良く似た別もの」をゼロから作らないといけない上に、表面に現れにくい(マニアのこだわる)点を取りこぼしやすく、作業効率も評判も残念になるリスクが高い。基本的には原典のままであるエミュレータは、コスト的にも過去のアーカイブとしても理想に近いわけです。
以下、現在のエミュレータのあり方を、メーカーや開発会社による扱いや利用形態の実例をざっと俯瞰していきましょう。

●任天堂のバーチャルコンソール
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メーカー公式エミュレータによるレトロゲーム提供という点で、Wii/Wii U/3DS向けのバーチャルコンソール(VC)は代表例でしょう。ファミコンやスーパーファミコンといった任天堂ハードのみならず,PCエンジンやメガドライブなど他社ハード用ソフトも網羅しています。
VCがエミュレータを採用している事実は、少なくともゲームボーイについては公式に認められています。「ゲームハードをソフトの挙動込みで仮想的に再現」している性質上、プレイしている状況をセーブ/ロードできる「まるごと保存/復元」機能も実装。ミスした箇所から何度でもやり直せるため、結果として昔より難度が下がっています。
過去と現在ではゲームの倫理基準が異なるため、差別用語とされた言葉は差し換えに。VC版『たけしの挑戦状』で「ど○んのいえ」が「げんちのいえ」に変更されていて、毒が薄まっていたのは少しガッカリでした。
takeshi
それ以外は原作ユーザーの愛を重視しながら、たぶん検証コストの削減も兼ねて、致命的ではないバグ技もそのまま再現する方向です。しかし、かなり致命的かもしれない『星のカービィスーパーデラックス』(Wii版VC)のセーブデータ消失バグが起こり得ることを証明する動画も公開されていたりします。
一方で、VCは最新のゲームハード上で、80〜90年代のブラウン管テレビや白黒液晶とは違った液晶テレビ・カラー液晶で再現する仕様上、「本来のゲームより画面が綺麗すぎる」という贅沢な悩みを抱えています。
この点を初代ゲームボーイソフトのVCは「白黒液晶の残像あり」という、高度な技術でロースペックの雰囲気を再現するモードにより解決しています。

kaeru
同じくセガ・ゲームギア用ソフトのVCも残像モードがある他、画素を拡大しない「ドットバイドット」モードで余った画面スペースにゲームギア本体(を模したイメージ)を表示する遊び心もあり。エミュレータに求められている以上の「画面の外」までの再現は、さすがセガ3D復刻プロジェクト(後述)も手がける開発会社M2による逸品と唸ります。

●ソニーのゲームアーカイブス
kulong
ゲームアーカイブスとは、他社製品を含む過去のゲームハード用ソフトをPSPやPS3、PS Vita向けにダウンロード販売するサービスのこと。ソニーが運営するPlayStation Storeにて販売されています。
このうち無印のプレステ用ゲームを扱う初代PSアーカイブスは、PSPないしPS3上で動作するエミュレータにより実現しています。その根拠は、PSゲームCDをリッピングしたISOファイルが、PSPのメモリースティックから起動した事実があること。
正確には公式のPSPシステムソフトを改変したCFW(カスタムファームウェア)での動作でしたが、改変はあくまで「起動」(本来はPlayStation Storeで購入したソフト以外は起動しない)に関してだけ。つまりソニーが公式にエミュレータを(システムソフトに内蔵して)頒布していたわけです。

ソニー謹製だけに、そうパワフルではないPSP上でもスムーズに動くさすがの完成度。ストア配信のソフトも基本的にはオリジナルのままのため加工コストがかからず、1本600円弱〜の低価格に抑えられたのでしょう。
linda
任天堂のVCと同様に、現代ならではの表現規制は一部にあり。バグも元のままですが、ソニーに要望すれば応えてもらえるものもあったり、当時の環境よりも快適に遊べる野ことが魅力です。

●セガ3D復刻プロジェクトの「ギガドライブ」とアーケードアーカイブス
sega3d
任天堂やソニー以外にも、多種多様なレトロゲーム配信サービスが稼働しています。そのラインナップは、ファミコンなどメジャーな家庭用ハード以外のタイトル、そもそも家庭用ではない業務用のアーケードゲームといった、マニアックな趣の強いものに偏る傾向あり。つまり「ゲームを作る側も買う側もマニア」という状況になるため、より精度の高い再現性が求められています。
エミュレータはそれ自体が目的ではなく、「レトロゲームを再現する手段の一つ」に過ぎません。極論すれば、元のゲームのコードが一行も使われていない「移植」だとしても、遊んだ感覚が区別がつかなければ、マニア向けの商品としても成立するわけです。
そんな「エミュレータと移植の狭間」で揺れてきたのが、セガ(というか同社の奥成洋輔氏)と開発会社M2の組んだセガゲームの復刻プロジェクトの歩みでしょう。現在に続く復刻シリーズのきっかけは、PS2用の「SEGA AGES 2500」シリーズです。当初は「過去の名作を現在の技術でリニューアル」というコンセプトでしたが、ファンの要望に応えて「オリジナル版の完全移植」寄りにシフト。
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セガを代表する体感ゲーム『スペースハリアー』が1985年発売で、PS2が2000年の最先端ハード。ゆうに上回るスペックでエミュレータ動作も楽勝かと思われましたが、ハードが異なるために非常にマシンパワーを食うのと、エミュレータに付き物の入力遅延の問題があり、本物のROMを載せても操作性が損なわれてしまうことに。
そこでM2は、PS2用にエミュレータを最適化しました。『SEGA AGES 2500シリーズ Vol.20 スペースハリアーII ~スペースハリアーコンプリートコレクション~』ではアーケード、Mk-III、メガドライブ、隠しでゲームギア用のエミュレータを内臓。特にMk-IIIエミュレータは、ほぼまともに動いていたものを、一度まるっきり作りなおしたとか。
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いったんは休止していた復刻シリーズは、2012年にニンテンドー3DSの裸眼立体視機能でレトロゲームを蘇らせる「セガ3D復刻プロジェクト」という形で再起動。バーチャルコンソールでは3DS上でエミュレータをベタに動かしているためパフォーマンスが出しにくく、ゲームギア以上のハイスペックなタイトルが出しにかった事情もあります。
3Dハードである3DS上でアーケードなどリッチな2Dゲームを再現するため、セガ3D復刻プロジェクトはエミュレータ路線は放棄して「移植」にかじを切りました。元のプログラムは使わず、しかしグラフィックなどデータは流用し、『ギャラクシーフォースⅡ』では音源をストリーミング(録音データを再生)にして動作を軽くしたりと、あらゆる技巧がフル活用された職人芸です。
gf2
話はこれで終わりません。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』などの立体視を実現しつつ元のROMデータを流用するために、M2はメガドライブの仕様を独自に拡張したセガ非公認の仮想ハード「ギガドライブ」を(ソフト的に)開発。実在しないゲームハードのエミュレータである一方で、仕様はハッキリしているために同じハードウェアも作ることも原理的に可能で、「本物より先にエミュレータがある」というワケの分からなさが素敵です。
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そうした独自アレンジアリの「移植」とは対照的に、PS4に名作アーケードゲームを配信する「アーケードアーカイブス」プロジェクト(ハムスターと日本一ソフトウェアによる共同事業)は、配信元の言及がないため推測ですが、おそらくエミュレータの精度を高めることに注力したサービスです。
その再現度の凄まじさは、処理落ちが大事な仕様である『グラディウス』で、遅延するかどうかをめぐって激しい議論が戦わされたほど。現在の液晶テレビの反応速度がノイズになりかねない(80年代アーケードゲームはブラウン管)研ぎ澄まされたエミュレータ作りは、刀鍛冶の域に達している感があります。

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エミュレータは過去のゲームのROMを流用して遊べるだけでなく、当時の操作感覚までも後世に伝え、文化を保存する器でもあります。ROMソフトをアーカイブする草の根運動は深く静かに行われていますが、いずれはエミュレータも含めて、国会図書館への収納など、国家事業としてバックアップすべきかもしれません。


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