2016年3月5日、現在の電子メールの原型となるしくみを開発し、"利用者名@ホスト名" を電子メールアドレスとして扱うしくみを考案したレイ・トムリンソン(Raumond Samuel Tomlinson) 氏が亡くなりました。74歳でした。

最近のトムリンソン氏はインターネット電子メールに関わる功績を讃えられ2000年以降数々の賞を受賞。2012年にはインターネットの殿堂入りを果たしたほか、最近は米軍需製品メーカー レイセオン に勤めていました。

1960年代、トムリンソン氏は Bolt Beranek and Newman(BBN) に在籍し、OS の開発や米国防総省高等研究計画局(ARPA、後のDARPA)で研究が進めらていたコンピューターネットワーク ARPANET の開発に関わっていました。このときすでにメインフレーム内のユーザー間でテキストメッセージをやり取りする手段としての電子メールは存在していました。

1970年代になると、トムリンソン氏は ARPANET 上にあるメインフレーム内のメッセージ送受信プログラム "SNDMSG"を、他のコンピューターに転送できるよう変更を依頼されました。そこで"SNDMSG"に自身が開発したファイル転送プログラム"CPYNET"を組み合わせたメールシステムを開発。1971年後半に、ARPANET を介してつながる2つのコンピューター間で電子メールの送受信に成功しました。

初のメール送信成功からしばらくしてトムリンソン氏は、メール送信の際にローカルネットワークにいるユーザーとグローバル・ネットワークのユーザーを区別するため、アットマーク"@"を使ったメールアドレスの表記法を考案しました。これが ARPANET 内で大きく支持されることとなり、メールユーザーはまたたくまに千人規模にまで膨れ上がりました。さらには ARPANET に接続していないネットワークのユーザーからも"@"を使ったメールアドレスの使用を望む声が高まりました。

その後、ARPANET は世界中のネットワークに接続してインターネットへと進化しました。電子メールの分野ではプロトコルこそ変遷があったものの、現在に至るまでトムリンソン氏の"@"マーク付きメールアドレスが利用されつづけています。さらに、Twitter や Facebook など現在の SNS でも"@"マークは個人へ直接メッセージを送る際の記号として定着しています。

最近はメールよりも即時性の高いツールとして、テキストチャットを主体とする LINE のようなサービスが活況を呈しています。一方電子メールは枯れた技術とされ、何年も前からトラフィックの大半がスパムだという統計が発表されたり、悪質なウィルス・マルウェアの媒介として利用されたりするばかりです。

しかし 2013年のデータによれば、電子メールは全世界で39億のアカウントがあり、ビジネス用途のメールだけでも1日に1000億通ものやりとりがあるとされます。一部ではその重要性が薄れつつあるとの声も聞かれるものの、電子メールは単一企業が管理するサービスではなく、しくみもシンプルで扱いやすいため、今後もインターネットがあるかぎり利用され続けると思われます。

余談ですがトムリンソン氏は、メールアドレスに"@"を付けた当初これが重大な変更になるとは全く思っておらず、同僚に「いま自分たちがやらなきゃならない仕事じゃないから、みんなには言わなくていいよ」と語っていたとされます。たしかに、本人にしてみれば「ちょっとメールの宛先表記ルールを変えただけ」であり、まさかそれが世界中で使われるようになろうとは想像していなかったであろうエピソードです。
"@"マーク付き電子メールアドレス考案者レイ・トムリンソン死去。考案の際の言葉は「みんなには黙っといて」
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