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30ユーロで50GBの無制限高速通信。新興キャリア『Free』に見るフランスのプリペイドSIM事情:週刊モバイル通信 石野純也

石野純也(Junya Ishino)
2016年3月10日, 午前11:50 in Career
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SIMフリー端末を持っている人は、海外に行ったとき、現地のSIMカードを買うのではないでしょうか。少なくとも、すでにSIMフリーが当たり前になっている国の人が、空港でプリペイドSIMを買うために列をなしている光景は一般的です。日本人を見かけることはまだまだ少ないものの、SIMロック解除の義務化を受け、今後、さらに増えてくるでしょう。

Gallery: フランスの新興キャリア『Free』。30ユーロで50GBの速度無制限高速通信 | 10 Photos

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SIMフリー端末には現地SIMの組み合わせがベスト


空港のキャリアショップにはずらりと行列ができることも

最大のメリットは料金です。国際ローミングのデータ通信は1日、最大2980円で、10日間もいると、3万円近くかかってしまいますが、現地のSIMカードであれば、その1/10程度で済みます。国によって違いはありますが、ここ1年でアメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、スペイン、ベルギー、韓国、中国、香港、台湾を訪れた筆者の経験では、通信費の範囲は大体2000円から8000円の間に収まっています。

一方で、デメリットも当然ながらあります。自分にとって一番困るのが、容量が限られていること。たとえば、Mobile World Congress取材のために訪れたスペインでは、VodafoneのプリペイドSIMを買いましたが、こちらの料金は、MWC中のキャンペーン込みで4GB、20ユーロ(約2498円、3月8日時点)。通常は2GBのため、テザリングなどで写真を送ろうとすると、あっという間に容量がなくなってしまいます。宿のWi-Fiを使えばいいだろうという声も聞こえてきそうですが、欧米では速度的に使いものにならないことはままあること。案の定、今回のMWCで泊まった宿も、上りの速度が1Mbpsを切っており、接続も不安定でした。

スペインではVodafoneのSIMカードを買うのが毎年の恒例行事

こうした不満がある中でも、コストを抑えるためにベターな選択肢として使っている現地SIMですが、MWCの帰りに立ち寄ったフランスで購入した「Free」というキャリアの料金プランには、さすがに衝撃を受けました。SIMカード代が10ユーロ(約1249円)、データパッケージが19.99ユーロ(約2496円)で、合計29.99ユーロ(約3731円)で、データ通信が50GBも使えたからです。ここまで容量がたっぷりの料金プランは、海外のプリペイドでは見たことがありません。事実上、半使い放題と言える料金設定です。

フランスで「第4のキャリア」として注目を集めるFree

Freeの料金プラン

ここで改めてFreeの紹介をしておくと、この会社は、2012年に参入したキャリアで、フランスでは「第4のキャリア」と呼ばれています。上で挙げたように、ある意味、破壊的な料金プランが功を奏し、加入者は急増中とのこと。日本のMVNO関係者が、「第4のキャリアを目指す」と言うようなときに念頭にあるのも、Freeの事例であることが多く、ある意味、世界中から注目を集めているキャリアです。単に安いだけではなく、上記のように、料金プランがシンプルなのも特徴です。

参入が比較的最近であるため、自社ネットワークのカバー率は低くなっていますが、フランス最大手であるOrangeがローミング契約を結んでいるため、その点も利用者にとっては安心できるポイント。日本でも、かつてイー・モバイルが参入した際に、ドコモがローミングを提供していました。それと同様、フランスでも競争を促進するために、Freeのネットワークで一定のカバー率に達するまでは、Orangeがローミングを受け入れているというわけです。

日本でも日本通信やU-NEXTのように、使い放題を打ち出すMVNOがありますが、Freeがこうした会社と大きく違うのは、自社で設備を持っているところ。MVNOではなく、MNOなのです。そのため、電波状況さえよく、きちんとLTEに使っていれば、速度もケタ違いです。ホテルの周辺であるオペラ座の前で計測してみたところ、下りで70Mbps近く、速度が出ていました。上りも40Mbps近い速度で、とにかくネットにサクサクつながります。

実際にSIMを購入してみた

オペラ座の目の前ではLTEにつながった

通信速度は、スループットで70Mbps弱

そうは言っても、1日に大量にデータ通信したら、制限がかかるのではという疑問もあったため、寝ている間に、PCをテザリングでつなぎ、MWC中に撮った全写真、20GB強をGoogleドライブにアップロードしてみました。疲れもあってぐっすり眠っている間にアップロードは終わっていたためすべては見ていませんが、写真もサクサクと保存されていきます。起床後、FreeのSIMを挿したiPhone側で通信量を確認してみたところ、20GBは超えていましたが、特に速度が落ちることもありません。

20GB以上使っても特にペナルティはなし

これだけの速度で、ここまでの容量が使えて、しかも値段はSIM代込みで30ユーロ弱。海外はおろか、下手をすると、日本以上にデータ通信を気兼ねなく使うことができました。どちらかというと、固定回線兼モバイルのような感覚で利用でき、クラウドとの同期や、動画の視聴などに対して、心理的なハードルが一気に下がります。少々大げさかもしれませんが、自分の中でのモバイルのあり方が変わった体験だったとも言えます。

もっともフランスでは、大手キャリアでも、日本やアジアの一部のようなネットワークは望めません。地下鉄に乗れば当たり前のようにEDGE(2.5G)にフォールバックしてしまい、画像などの送受信はほぼできなくなりますし、建物内の電波対策も完ぺきではなく、屋内ではLTEがつながればラッキーといったところ。新興キャリアであるFreeであれば、その傾向はなおさら顕著になります。ホテルでも、部屋の奥に行くと3Gになってしまったため、iPhoneをできるだけ窓に近い場所に置き、テザリングしていました。3Gになると、速度も一気に10Mbpsを切ってしまうためで、やはりLTEに比べると、体感で遅いと分かります。

また、OrangeやSFRのような大手キャリアと比べると、ショップが少なく、SIMカードを手に入れるのが少々面倒ということもあります。自販機での購入を始めており、ショップ以外にも設置しているようですが、パリ市内の至るところで見かけるキャリアショップに比べると、まだまだマイナー。その自販機も、フランス語しか対応しておらず、旅行者向けとは言いがたいところがあります。筆者も契約の際にフランス語が分からず、四苦八苦しながら適当に必要事項を入力して、ようやくSIMを買うことができました。安いぶん、こうしたサポートコストを削っているというわけです。

ショップ内には自販機があり店員はアドバイスをしてくれるだけ

サポートが万全でネットワークも広く、最新の通信技術をいち早く導入する日本のキャリアでは、ここまでの料金プランは打ち出しにくいかもしれません。実際、フランスでも大手キャリアはFreeの躍進によって経営計画の修正を余儀なくされています。あまりに収益性が下がれば、エリア展開やネットワークのキャパシティ増強などにも、マイナスの影響が出かねず、全体として安かろう悪かろうに陥ってしまう可能性もあることは指摘しておいた方がいいでしょう。さすがにフランスのようなネットワークになってしまうと、日本のユーザーは耐えられないと思います。

一方で、Freeを使ってみて分かったのは、やはり使える容量がここまで多いと、モバイルに対する心理的なハードルが一気に下がるということです。動画を見たり、写真をアップロードしたりするときに、「容量は大丈夫かな?」と心配しなくてもよく、そのためにわざわざWi-Fiを探す必要もありませんでした。現状、日本では3GB前後が月間の平均データ使用量だと言われていますが、この数値も徐々に上がっています。ネットワークのキャパシティも上がっているため、快適に使えることを考えると、もう少し同じ金額で使える容量が増えていってもいいのではと感じました。容量を倍増させる学割のような施策の対象が広がることを、期待しています。

関連キーワード: career, Communication, free, lte, mobile, Networking
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