Sponsored Contents

denshikosakubuの最新記事

Image credit:
Save

「冷たい」「固い」医療機器を「暖かく」「楽しい」製品に、「シャカシャカぶらし」歌野真理さんが目指す「事業」とは:電子工作部列伝

Takako Ouchi
2016年6月6日, 午後04:30 in Denshikosakubu
389シェア
245
75
0
69

連載

注目記事

IQOS、gloより5倍お得な加熱式タバコ「ヴェポライザー」で知っておきたいこと使い方やメンテ術解説(世永玲生)

IQOS、gloより5倍お得な加熱式タバコ「ヴェポライザー」で知っておきたいこと使い方やメンテ術解説(世永玲生)

View

人気記事

カシオ PRO TREK Smart WSD-F20Xレビュー、アウトドア用スマートウォッチをゲレンデで試してみた
101

カシオ PRO TREK Smart WSD-F20Xレビュー、アウトドア用スマートウォッチをゲレンデで試してみた

Hirotaka Totsu, 1 時間前
View
Google、AIを太陽系外惑星発見プロセスに応用。機械学習で「見逃していた惑星」を複数発見

Google、AIを太陽系外惑星発見プロセスに応用。機械学習で「見逃していた惑星」を複数発見

View

歌野真理さん(Temari)

「電子工作部列伝」として、電子工作部にまつわる人たちに登場してもらうこのシリーズ。2人目は、いまMakuakeでファンディング中の「シャカシャカぶらし」の開発を進めるTemariファウンダーの歌野真理さんに話を聞きました。動画はこちら

最初のEngadget電子工作部に参加


歌野真理さんは、2013年8月に開催した最初のEngadget電子工作部の参加者です。以前、小林茂さんのインタビューでもお伝えしたように、この最初の電子工作部の手応えが光枡を生んだ「コアブースタープロジェクト」につながり、参加規約・同意書の整備につながりました。何より、いまに続く電子工作部の活動につながるイベントでした。

大学時代から起業したいという気持ちがあった歌野さんは、会社員時代にSXSWに自費で行っています。そこでユカイ工学の青木俊介さんに出会ったことが電子工作部参加のキッカケでした。

歌野:SXSWというイベントを知り、会社はお金を出してくれなかったですが、自費で行ったんです。2013年頃かな。そのとき、モノ系が来ていたんですね。IndigogoでScanadu Scout(心拍数、体温、血中酸素濃度、血圧などを読み取り、スマートフォンに送信してくれるというデバイス)が1億、2億円近く集めていたんです。そういうのがまだ日本になかったからやりたい、やろうっていう気持ちがありまして。SXSWに行って、そこでユカイ工学の青木さんと出会ったんです。

「予防医療系・歯科系でモノを作りたいんですが、ツテがないんですよ」とざっくりお話しして。そのときは名刺交換くらいだったんですが、日本に帰ってきてEngadgetのイベントに誘われたんです。ネットワークができるんじゃないかって。

みんな病気になって死に向かっていく。一生をかけるならその領域に従事したいということから「予防医療系」を選びました。シャカシャカぶらしはその中でも歯科の領域をカバーしますが、歯科は予防医療に大きな影響を持つ領域です。歌野さんは、日常の暮らしの中で病気にさせないようなこと(もの)を提供したい、事業としてそこをやりたいと考えました。

もちろん技術的にも難しい分野ですし、医療業界につながりのない歌野さんです。関連の研究に対し知見のないものがぱっとできるものではないということもわかっていました。

スタートアップウィークエンドのハッカソンなどの参加経験もありつつも、まだモヤモヤとした段階で具体的なアウトプットに結びついていなかった歌野さんは、電子工作部に参加することにしました。

プロトタイプから大量生産へ、製品として出すことの難しさ

最初のEngadget電子工作部は立ち上げということもあり、主催者側がさまざまな人たちに声をかけ、Web系の人から起業を志ざす人、製造に携わるいわゆる町工場の人たち、特に、この回は多種多様な参加者が集まったと聞きます。

歌野さんたちは、わずか1週間でプロトタイプを完成しています。ちなみに、チームメンバーにはIRkitの大塚雅和さん、株式会社ミヨシの杉山耕治さんらがいました。


ハッカソンの際の「シャカシャカぶらし」のプロトタイプ。子供の歯磨きをサポートしたり、歯磨きを習慣付けるための歯ブラシ。テーマが明快で、仕上がりもよく、すぐにでも売れそうという声が出ていたそうです

モノとして形が見え、これはいけるんじゃないかとなったものの、はたと「どうすれば?」ということになります。ハッカソンで出てきたアウトプットから、大量生産のフェーズに入るにはどうすればいいのか......? 参加者も主催者もはじめてのことでした。

まず権利関係です。電子工作部の際はみんな手弁当で自分のできる範囲でやっていましたが、じゃあ誰かが引継ぎますとなったとき、それぞれ折り合いを付けることになります。歌野さんはチームメンバーと交渉し、契約書を交わし、お金を払うなどして、権利関係をクリアにしました。

歌野:電子工作部の後は、私一人が引き継ぎ、量産を見据えたメンバーを集めるという形で進めました。量産の経験もある人に設計をお願いして。

ただ、これを出したいというのはあるんですが、Webサービスよりも(物理的な)モノってたいへんで、ポンと出せてユーザーが買ってくれるというわけではないですよね。くまの外装に100均でデコレーションした、歯ブラシをつけましたというのでは、「いいね」とは思っても、商品としてそれにお金を出すかっていうと、なかなか難しいです。

最終形態が何なのかわからない状態では買うまでにはならない。となると、ちゃんと作りこまなきゃいけません。モノを作り込むには時間もお金もかかるんです。それでもプロトタイプだったら1週間くらいでできるかもしれない。ですが量産するとしたらちゃんと設計しないといけない。そこまでチャレンジするという人はハッカソン出身者だとほとんどいないんじゃないんでしょうか。

ステージで必要な人は違っていくとも思います。プロトタイプを作る人たち、ある程度育てる人たち、事業にもっと成長させる人たち、そのステージごとに関わってくる人は違ってくるんじゃないかなというのは感じましたね。

プロトタイプはハッカソンで出来上がったもののまだまだ未完成でした。クリップ状のデバイス(シャカシャカぶらし本体)で歯ブラシを挟んで使うという形のためさまざまな歯ブラシの形や長さ、太さにデバイスのサイズが合わなかったり、子供が使うには大きいし重いという問題があったり、機構部分で言えば浸水の問題があったり、センシングの精度をいかにあげるかなど多くの課題があったりしました。

歌野:IoTが難しいのは全部をやるというとこと。ハードの開発、デザイン、アプリの開発、デザイン。製造が進まないとこっちが進まない、連携がうまくいっていないのも原因はどちらなのか? とか、そこは難しいですよね。

町工場のコミュニティなどにも積極的に参加し、プロダクトの設計、アプリのデザイナー、アプリのエンジニアなどさまざまな人に協力してもらい、製品化を目指しました。その間、大きなファンドは受けず、自己資金で進めてきたそうです。

事業として製品を出す

2013年8月から3年近く、2016年4月のクラウドファンディングまで時間がかかっているのは、もちろんモノとしての難しさもありますが、競合の存在も大きかったといいます。

歌野:実は、競合の発売を待ってMakuakeに出したのが真相です。2014年ごろに「サンスターが競合製品を2015年に出す」と聞いていたので(編集部注:製品名は「G・U・M PLAY」。実際は2016年4月18日の発売となった)あまり表立って動けなかった。クラウドファンディングも早い段階で出してしまうと完成するまでに、すぐに真似した製品が出てしまう可能性があります。

競合製品との違いというと、向こうは大人も子供も対象ですが、どちらかというと歯ブラシを売るというところが強いと思うんです。うちの場合は、これは事業としてやるので、そこが大きく違ってくると思います。価格も販売戦略も違う、いろいろなところで差異化していかないといけないと考えています。

検知の精度、アプリも競合製品とは異なります。ハードを安くして、家庭の人も普通に買える値段にして、アプリ側でマネタイズできるようにしたい。歯科医と連携し、歯科医からアドバイスをもらえるといったソリューションやサービス部分を強化していきたいと思っています。

歯磨きの内容を記録するセンシング部分は産学連携で大学と開発を進めています。6軸センサーを使っており、いま精度は80%というところ。歯科医と連携に関しては、すでに歯科医の古仙芳樹さん(フルセン歯科院長)が監修として開発チームに加わっています。


シャカシャカぶらし。クリップ状で、歯ブラシの柄に取り付ける


位置はおしりのほうが検知しやすくオススメだが、基本的にはどこでも大丈夫だそう(ただし、毎回定位置にする必要がある)

歌野さんは、ただ商品を出すだけではなく、それを事業にするのだという思いが強い、その覚悟で進めているという印象です。知財も登録済みで、国際申請もしているそうです。

歌野:価値を高めるということに注力してやってきました。商品を出したいというだけであればいいんですが、本当に事業として考えているので。

どこかに入ってこれが作りたいとか、大手を成長させたいわけじゃない。おもしろいスタートアップを作りたいというのがあるんです。医療機器というと「冷たい」「固い」という印象で、おもしろいものが出ていません。そうじゃなくて「Fun & Warm」。「暖かく」「楽しい」製品を作りたいなと思っています。

まず6月中旬までに試作量産し、8月にクラウドファンディングの分を出荷。一般販売も7〜8月に想定しています。販売店は直販のほか、Amazonが決定。歯科医院や保育園/幼稚園、百貨店なども視野に入れています。今後は予防医療、健康、育児に関わる分野でマーケティングを進めています。 ママネットワーク的なコミュニティを作りたいですね。



最後に聞きました。電子工作部の経験はどうだったんでしょうか。「あいまいなイメージは持っていたけれど、それがいいアイデアだったんだってわかるようなプロトタイプを作れたのは大きいです。それに、メイカーの方とのつながりも、Engadget電子工作部が初めて。そこが起点になって広がっているなと感じます」



大内孝子(おおうち・たかこ):フリーライター/エディター。主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)がある。

389シェア
245
75
0
69

Sponsored Contents