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iPhone 7よりも速いSnapdragon 835は、スマホを超えて新たな製品ジャンルを狙うSoCだ(笠原一輝)

一体型VR HMDやマシンラーニング、そしてWindows PCも

笠原一輝(Kazuki Kasahara) , @KazukiKasahara
2017年3月25日, 午前11:45 in cellphones
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半導体メーカーのQualcomm(クアルコム)は1月に開催されたCES 2017で、現在多くのハイエンドAndroidスマートフォンに採用されているSoC「Snapdragon 820」の後継製品として、『Snapdragon 835』(スナップドラゴン エイトサーティーファイブ)を発表した。

その後2月末に行われたMWC 2017において、搭載スマートフォン製品の第1弾として、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社(ソニーモバイル)からXperia XZ Premiumが発表されている。

3月22日にクアルコムはSnapdragon 835を搭載したQRD(Qualcomm Reference Design、試作サンプル機のこと)によるベンチマークデータを公開。その性能が、従来スマートフォン向けのSoCでは最速として知られる、AppleのA10 Fusion(iPhone 7/7 Plusに搭載)を上回ることが明らかになった。

Gallery: Snapdragon 835の各種デモ(笠原一輝) | 18 Photos





▲クアルコムが公開した、Snapdragon 835搭載一体型VR HMDの試作機


現時点でのスマートフォン向けSoCとしては最強となるSnapdragon 835は、何が実現できて、デジタルデバイスの世界をどのように変えていくのだろうか。同社が北京で開催した記者説明会で明らかになった内容などから紹介していきたい。

各種プロセッサが軒並み強化、iPhone 7を上回る性能を発揮



▲Snapdragon 835の特徴(提供:クアルコム)

SoC(System on a Chip)とは1チップでコンピュータを構成できる半導体のことを意味しており、すべててのスマートフォンにはSoCが搭載されている。上述したように、AppleのiPhone 7/iPhone 7 Plusであれば、SoCとしてA10 Fusionが搭載されているという具合だ。

クアルコムのSnapdragonシリーズは、ハイエンドのAndroidスマートフォンを中心に採用されており、中でも800番台のモデルは「プレミアム向け」とされる高価格帯のスマートフォンで採用されている。
昨年発表されたプレミアム向けスマートフォンの多くで採用されていたのがSnapdragon 820で、Snapdragon 835はその後継と位置づけられている。


▲Snapdragon 835のパッケージ(外装)。100円玉と比較するとその小ささがわかる


Snapdragon 835では従来モデルに対し、SoCの内部に用意されているCPU(一般的な演算を行うプロセッサ)、GPU(グラフィックス周りの演算を行うプロセッサ)、DSP(各種の信号処理を行うプロセッサ)、ISP(静止画や静止画の処理を行うプロセッサ)など各種プロセッサのほぼすべてが強化されている。

CPUはSnapdragon 820世代で採用されていたクアルコム独自デザインのKryo(クライヨ)から、クアルコムがARMのCortex-Aシリーズをベースにしてセミカスタム(半分は独自設計という意味)デザインしたKryo 280となった。

Kryo 280では、big.LITTLEと呼ばれる大小2つのCPUコアを切り換えて利用することで高性能と低消費電力を実現する技術に対応した、大きい4コアCPUと小さい4コアCPUという構成になっている(つまりオクタコアだ)。

小さい側のCPUとしては異例の大きさになる1MBのキャッシュメモリを搭載するなどのカスタマイズも加えられており、従来世代のKryoに比較して約20%の性能向上が実現されている。この他にも、GPUは従来世代に比べて25%性能が引き上げられ、DSPやISPも機能が拡張されるといった強化が行われている。


▲Kryo 280の機能を説明するスライド(提供:クアルコム)

こうした強化の結果により、処理速度は着実に向上している。
クアルコムにより提供されたSnapdragon 835を搭載したQRD(Qualcomm Reference Design、試作サンプル機のこと)で行ったベンチマークテストでは、これまでモバイル向けとして最速とされてきたA10 Fusionのスコアを多くのベンチマークで上回った(Geekbench 4のシングルスレッド結果を除く)。


▲Snapdragon 835を搭載したスマートフォンタイプのQRD


▲Snapdragon 835とiPhone 7のベンチマーク結果比較(筆者測定のデータより抜粋)

無線通信はギガビットLTEに、USBは3.1に、Quick Chargeは4.0に強化


Snapdragon 835が前世代に比べて拡張されているのは各種プロセッサだけに留まらない。周辺部分も拡張が加えられており、スマートフォンの使い勝手などが大きく改善される。

代表的なものは、モバイル通信で重要なセルラーモデムだ。QualcommのSoCではこれが標準で内蔵されており、スマートフォンメーカーはRFと呼ばれる無線部分のICを用意するだけで、少ないチップ数でスマートフォンを構成できることが長所の1つとなっている(対して、AppleのA10 Fusionはセルラーモデムは外付けとなるため、RFの他にモデムチップが必要になる)。

Snapdragon 835に統合されているモデムは、クアルコムが『Snapdragon X16 modem』と呼んでいる、下りのデータ転送速度が最大で1Gbps、つまり毎秒ギガビットで通信することが可能な「ギガビットLTE」を実現する仕様だ。


▲内蔵モデムはギガビットLTE対応だ(提供:クアルコム)

ただしギガビットLTEを実現するには、複数の帯域を束ねて利用するキャリアグリゲーションを3つの帯域分(3xCA)確保し、さらに4つのアンテナを効率よく利用する4x4 MIMO、さらには256QAMと呼ばれる変調方式などのサポートが必要だ。これは端末側だけでなく、通信キャリア側もである。

現在地球上でこのサービスを行っているのはオーストラリアの通信キャリアであるTelstra(テルストラ)のみで、日本では通信キャリアがそうした技術を基地局などのインフラ側に導入するのを待つ必要がある。


▲1Gbpsの速度は、3xCA、4x4 MIMO、256QAMという技術を組み合わせて実現(提供:クアルコム)

なお同社は、既にMWC 2017において、1Gbpsでの下りデータ転送速度のデモをXperia XZ Premiumを使って行っている。仮に日本でXperia XZ Premiumや他のSnapdragon 835搭載スマートフォンがリリースされたとしてもすぐに1Gbpsで通信できる訳ではないが、今後の通信キャリアの対応に期待したいところだ。


▲MWC 2017クアルコムブースでのギガビットLTEデモ。Xperia XZ Premiumを使っている

また、これまでの改良点に比べると地味なところだが、USBコントローラも3.1対応となった。ただし、実際の速度はGen1(5Gbps)なのかGen2(10Gbps)なのかは公表されていない。何も言及されていないところをみると、おそらくGen1だろう。


▲USBはバージョン3.1に対応。QRDでの端子はType C仕様だ

さらに急速充電機能も、Qualcommが提供する最新仕様、QuickCharge 4.0(QC 4.0)に対応した。このQC 4.0ではわずか15分で、容量が2750mAhのバッテリーであれば50%を充電可能になる。また、USB Power Delivery(USB PD)とも共存可能な点も特徴だ。


▲高速充電もQuickCharge 4.0に対応する(提供:クアルコム)

クアルコムは現状で詳細は明らかにしていないが、本体と充電器がQuickCharge 4.0に対応していれば、15分でスマートフォンのバッテリーが半分まで充電できるのは心強い。出先などでちょっと充電して思う存分スマートフォンを使いたいというユーザーは要注目だ。

VR HMDやマシンラーニングなど、新たな市場にアピール


クアルコムはこうしたSnapdragon 835の特徴を生かして、スマートフォンメーカーなどに対して、新しいユーセージモデルの提案を行っている。
その代表は、GPUやCPU性能が引き上げられたことにより可能となった、高性能な一体型VR用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)だ。


▲Snapdragon 835を搭載したVR HMD。前面にモーションセンサーや深度センサー、カメラなどが用意されている

北京で行ったイベントでは、オールインワンVR HMDのリファレンスモデルのデモも行われている。このモデルは、言ってみればPCがVR HMDに入ったような構造で、ケーブルを利用してPCと接続する必要性がないのがメリットだ。

Oculus RiftやHTC ViveといったPC用VR HMDは、PCなどとセットで使わなければならない。またユーザーの動きを検知する外付けのモーションセンサーなどが必要になり、ケーブルの長さの範囲でしか動くことができないというのはよく知られている制限だろう。対してこのモデルは一体型のため、装着者の自由度が高い。


▲クアルコムは835搭載機として一体型VR HMDを提案している(出典:クアルコム)

さらにこのHMDでは、前面に搭載されたモーションセンサーや深度センサー、カメラなどにより、外部センサーに頼らずユーザーの動きや部屋の奥行きなどを検出することができる。そのため理屈の上では、外部センサーの範囲に制限されず、無限に動いてもトラッキングができるわけだ(無論外に出たりしたら危ないので、あくまで屋内でという制限はつくことになるだろうが)。

従来のモバイル向けのSoCの性能ではそこまでの性能を実現するのは難しかったのだが、Snapdragon 835では性能が引き上げられ、GPUをVRに対応できるように最適化したことで実現可能になったのだ。

また、GPUからディスプレイに出力するための回路(ディスプレイコントローラ)が強化され、従来までの8ビットの色表現から10ビットの色表現へと拡張。出力できる色域が大きく広がり、さらにHDR10と呼ばれるHDR(High Dynamic Range)出力にも対応している。

これにより、HDMIやDisplayPortなどを経由して、HDR10に対応した外部ディスプレイ(民生用の4K TVなど)を接続することで、HDR対応コンテンツをより色鮮やかに再生することができる。


▲835搭載機を使ったHDR10再生デモ。4K HDR対応の民生用TVに出力している

なお、上述のXperia XZ Premiumは、本体のディスプレイも4K HDRに対応。スマートフォン単体でHDR対応コンテンツを再生することができるのが大きな特徴となっている。


▲MWC 2017 ソニーモバイルブースでの4K HDR再生のデモ。写真では差がわかりにくいが、人間の眼で見ると上のXperia XZ Premiumは非常に鮮明なHDR動画を再生できていた

さらにSnapdragon 835は、現在コンピュータ業界で注目の技術となっているマシンラーニング/ディープラーニングにも対応。現在同業界で一般的に利用されているCaffeやTensorFlowなどのディープラーニングのフレームワークに対応した開発キットを開発者向けに提供する。

この開発キットは、処理内容によりSnapdragon 835のCPU/GPU/DSPのうち、最も最適なものを利用する点が特徴だ。例えばディープラーニングを利用した画像認識では、CPUを利用するよりもGPUやDSPを利用した方が高い性能を実現できるし、必要とする電力も少なくてすむ。


▲マシンラーニング/ディープラーニング用SDKも提供する(提供:クアルコム)

同社はこの開発キットをスマートフォンアプリ向け開発者に対して提供することで、マシーンラーニング/ディープラーニングの活用を呼びかけていく。

こうした仕組みは、将来的にSnapdragon 835の延長線上にある製品を、自動運転車向けSoCとして投入する際に重要になってくる(自動運転車向けSoCではマシーンラーニング/ディープラーニングへの対応が必須になっていくと考えられている)と言える。その意味でも同SoCは、Qualcommにとって大きなステップだと言える。


▲SDKを利用した画像認識のデモも行われた

一体型HMDやWindows対応機、マシーンラーニングなどの新しい使い方に注目


このようにSnapdragon 835は、ギガビットLTEと4K HDRに対応するスマートフォンや、一体型VR HMDのような新しいタイプのデバイス、さらに言えば今後モバイル業界でも対応が重要になってくるマシーンラーニング/ディープラーニングへの対応など、スマートフォンに留まらない使い方が提案されている。

実際、クアルコム発表した最初のSnapdragon 835搭載製品は、スマートフォンではなくVR HMDだった。これが、同SoCの特徴をよく表しているといえるだろう。今後はプレミアムスマートフォンだけでなく、そうした新しいタイプのデジタルデバイスも登場が期待できるということだ。


▲最初に発表した搭載商用製品は、右上のODG R-8というMRデバイスだった(提供:クアルコム)

また、昨年のWinHEC ShenzhenでMicrosoftが明らかにした、フル機能のARM版Windows 10を搭載する最初の製品も、Snapdragon 835ベースになることがマイクロソフトとクアルコムから既にアナウンスされている。

ARM版Windows 10は2017年の年末商戦までに投入される予定であることが明らかにされている。こちらも、どういった製品に搭載されるのか(MicrosoftのSurfaceシリーズなのか)も含めて、今後も要注目だ。

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