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ビットコイン分裂にまつわる3つの疑問をまとめて整理:モバイル決済最前線

鈴木淳也 (Junya Suzuki) , @@j17sf
2017年7月28日, 午後12:30 in Bitcoin
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「ビットコイン(Bitcoin)が分裂する」と最近になり騒がれたことは記憶に新しい。例えば日本仮想通貨事業者協会では、傘下のビットコイン交換所13社が、分裂が噂されていた8月1日以降の交換ならびに受け入れ業務停止を予告するなど、新聞を含むメディアを大いに賑わした。

4月以降に1ビットコイン(BTC)の交換価格は1000ドル付近から3000ドル近くへと急上昇するなど投機マネー流入が加速していたが、分裂騒動が本格化した7月には2000ドル前半台に急落している。




▲ビットコインの過去半年の対米ドルの交換レートの推移。4月以降に急上昇がみられるのと、分裂騒動を経ていったん大幅下落し、7月23日の分裂回避の報を受けて再び急上昇が確認できる(出典:Google)

結局、分裂回避が報告された7月23日午後(日本時間)には騒動は落ち着き、ビットコイン価格は再上昇を始めている。本稿では、ビットコイン分裂騒動ならびにこの仮想通貨の今後について、3つの疑問を中心にまとめていく。

疑問その1:8月1日に発生するといわれていたビットコイン分裂が回避されたという報道で価格が急上昇しているけど、何があったの?


ビットコインはSatoshi Nakamotoという謎の人物の論文を基に2009年にスタートした暗号技術を用いた仮想通貨で、一般の流通通貨やオンライン通貨などとは異なり、中央に管理主体を持たずに「AからBにビットコインをいくら送金した」という取引記録をまとめた台帳を分散管理することで成り立っている。

この台帳は10分ごとに更新される「ブロック」という単位で管理され、新しく生成されたブロックは過去の取引記録を含む形で連鎖していく。この仕組みは「ブロックチェーン(Blockchain)」と呼ばれ、取引記録の検証には膨大な計算能力を必要とし、さらに記録の改ざんには過去にさかのぼる形でブロックチェーンを生成しなければならないため、非常に難しいという特徴がある。



今回の騒動の発端は、この膨大な計算能力を提供してビットコインのネットワークを維持している「マイナー」とその互助会である「マイニングプール」、そしてSatoshi Nakamotoからプロジェクトを受け継ぐ形で「Bitcoin Core」と呼ばれるソフトウェアを開発している開発者コミュニティの間で発生した意見の相違が拡大し、ユーザーや関連事業者を巻き込んで大騒動を巻き起こしたというのが実際だ。

ビットコインは「スケーラビリティ」という処理能力の問題を抱えており、最近では本来最短10分以内に完了するビットコインの送金処理がなかなか行われない状態が慢性化している。ビットコインに手を加えてスケーラビリティの問題を解決したいというのはすべての関係者の共通の意見だが、その実装と展開を巡って慎重派の開発者コミュニティと、計算パワーを盾に自らの主張を押し通そうとする大手マイニングプールという対立構図を生み出している。

ビットコインの処理能力の問題は、ブロックのサイズが1MBを上限に設定されていることに由来する。開発当初はこれで問題なかったサイズも、ビットコインが家電量販店で利用できる程度に一般化した今日ではもはや十分でなく、今後さらに用途拡大を検討するうえで大きな足かせとなる。そこで大手マイニングプールの多くが拠点としている中国で何度か会合が持たれ、ブロックサイズを段階的に8MBへと引き上げていく方針が打ち出された。

ただし、この変更をビットコインに行った場合に、変更前と後で2つのルールに基づいたブロックが生成され続ける可能性があり、「ハードフォーク」と呼ばれるブロックチェーンの恒常的な分岐の危険性がある。



一方で開発者コミュニティらが提案しているのは、ルール変更時に一時的に分裂が発生してもすぐに分岐が収束する「ソフトフォーク」の手法だ。ブロックチェーンでは「長いチェーンを優先して継続する」という仕組みがあり、仮に2つの異なるルールに基づいて世界中のマイナーがブロックを生成しても、いずれかのルールのマイナーの計算力が上回れば、そちら側にチェーンが収束する。過去にもビットコインはソフトフォークを使ってルール変更を何度か行っており、スケーラビリティ問題にもこの手法で対応しようとしている。

Bitcoin Coreでは「Segwit(Segregated Witness、BIP141とも呼ばれる)」という仕様を盛り込んだソフトウェアの配布を昨年2016年から行っているが、分裂騒動が騒がれた2017年前半時点ではまだ有効化されていなかった。それは、機能有効化に必要な投票活動(「シグナル」と呼ばれる)で、大手マイニングプールらが計算能力(「ハッシュパワー」と呼ばれる)を盾にSegwitの導入を拒否していたことによる。

Segwitではブロック容量を圧迫していた送金者の署名データをブロック外に取り出し、ブロックあたりの処理能力を2倍以上に拡大できるとうたっている。とはいえ、大手マイニングプールらが主張する8MBへの拡張に比べると弱く、クレジットカードなどの既存の決済処理と比較しても現状で数百分の1程度の能力しか有していない。また、Segwitでは「ASICBoost」と呼ばれる計算処理を無効化する仕様が含まれており、これを基に膨大な計算能力を提供していた最大手マイニングプール「Ant Pool」を率いるBitmainが頑なに抵抗していたという指摘もある。

ASICBoostはBitmain共同創業者のJihan Wu氏が開発した技術で特許も保有しており、これを用いることでビットコインのマイニングで必要なハッシュ関数のSHA-256の処理スピードを2割ほど向上させられるという。一時期は上位ハッシュパワーの多くにこのASICBoostが用いられていたといわれ、後述の理由でリスクを嫌ったBitcoin Coreが対策を行っている。こうした理由もあり、Bitmainら大手マイニングプールではブロックサイズ拡張をうたった「Bitcoin Unlimited」を立ち上げ、Bitcoin Coreの対応しだいではハードフォークも辞さない構えを見せていた。



こうした状況に業を煮やした一部の開発者やユーザーは「2017年8月1日にマイナーの同意なしで強制的にSegwitを導入するソフトフォークを実施する」取り決めを行い、マイナーらに圧力をかける手段を打ち出した。

これは「UASF(User Activated Soft Fork、BIP148とも呼ばれる)」と呼ばれており、Segwitを有効化していないマイナーの生成したブロックをユーザー側で拒否する仕組みだ。もしUASFが実行された場合、この時点でSegwitを有効化していない大手マイナーらの処理能力がビットコインのネットワークから一気に失われるため、非常に大きな混乱がもたらされると危惧されていた。これが今回の分裂騒動の直接的な理由となる。

これに危機を感じた関係者らは5月に米ニューヨークで会合を持ち、大手マイニングプールを含む市場参加者らで「UASF実行前にSegwit導入を実行する」ことを目的とした「Segwit2x(BIP91とも呼ばれる)」導入で合意した(「NYA」と呼ばれる)。Segwit2xは基本的にBIP141に準拠しているが、その違いは有効化に必要な閾値がBIP141の95%に対し、BIP91では80%まで引き下げられており、導入のハードルが大幅に下がっている。

またUASF(BIP148)のような強制的なソフトフォークでもないため、7月上旬時点の見通しではシグナルの状況を見てもほぼ混乱なくSegwitが有効化されるだろうと判断されていた点だ。実際、7月21日時点でマイナー側の合意も確認され、23日昼過ぎにSegwitは有効化された。これを受け、週明け月曜日の24日以降に分裂回避ということでビットコインの価格が急上昇したわけだ。

疑問その2:仮に分裂したとして、自分が保有しているビットコインはどうなるの?


ブロックチェーンの分岐が発生しても分岐である限りは過去の取引記録が引き継がれるため、手持ちのビットコインは基本的にその価値は失われない。ただし、分岐前後はチェーンに混乱が生じやすく、検証完了まで時間がかかったりとなかなか送金が終わらないケースも想定される。そのため、ビットコインを預かったり多通貨との交換(引き出し)を行っている交換所らでは、無用の混乱を避けるためにチェーンが安定するまでの一定期間は安全策のために取引を一時中断することになる。前述の日本仮想通貨事業者協会の声明はその告知となる。

また、分裂騒動前後でビットコインと既存通貨(例えば米ドル)との交換比率が大幅に上下したことからわかるように、取引再開が行われたとして、他通貨でのビットコインの価値が保証されるわけではない。このあたりは自己責任の世界だ。

なお、この分裂にともなう状況の変化はソフトフォークとハードフォークの場合とで異なる。ソフトフォークでは一時的にチェーンの分裂が発生するだけなので、チェーンが安定するまでの一定期間さえ取引を避ければビットコインの価値は失われず、特に大きな問題は発生しない。7月23日に有効化されたSegwitのケースはソフトフォークであり、交換所各所でも分岐後すぐに取引を再開している。


問題はハードフォークだ。Segwitの有効化で8月1日に発生が予告されていたUASFは回避されたものの、同じタイミングで対抗策としてマイニングプールの一部が「ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash、BCC)」の立ち上げを宣言しており、これまでビットコインで用いていた処理能力をそのままビットコインキャッシュの処理へと引き継ぐことが予見されている。

ビットコインキャッシュとは、Bitcoin Unlimitedがうたっていたブロックサイズ拡大の仕様を盛り込んだハードフォークであり、残りのマイナーが既存のビットコインの仕様を基にしたブロックを生成し続けることから、チェーンの永続的な分岐が発生するとみられている。この場合、8月1日より前の取引記録はビットコインとビットコインキャッシュの異なるチェーンで残ることになり、つまりすでに所持しているビットコインと同数のビットコインキャッシュを得られるわけだ。

この分岐した仮想通貨をどう扱うかは交換所しだいとなるが、国内大手のbitFlyerでは7月31日時点でいったん取引を停止し、8月1日にハードフォークが発生した場合に同社が保管している顧客のビットコイン量に応じて付与コイン数を最終決定し、分岐したチェーンのうち"同社が代表的"と判断したチェーンを"ビットコイン(BTC)"と認定し、以後はこの代表的なチェーンでの取引をビットコインとして扱っていくという(参考PDF)。

この後、分岐したチェーンについてもbitFlyerは扱いを検討しているようで、これは「ビットコインキャッシュ」という新通貨の扱いとなる。交換所によってはビットコインキャッシュを扱わないケースも想定されるため、その場合は分岐後のブロックに残された取引記録が取り出せなくなる可能性がある。

まとめると、交換所はすでに分岐後の動きを想定して顧客のビットコイン資産保護に乗り出した動きを進めているため、そのまま預けた状態にしておくか、あるいは対策済みのウォレットを用意して秘密鍵を保管しておくといいだろう。分岐時には、分岐したビットコインキャッシュの扱いも問題となるため、このあたりも利用している交換所の対応をチェックしておくべきだ。

もう1つ、分岐に発生する問題として「リプレイ攻撃」というビットコインの脆弱性がある。これは片方の送信記録を分岐したもう片方のブロックの処理に適用することで、二重送金が行われるというものだ。8月1日のハードフォーク発生時には、このあたりに留意して取引を続けてほしい。

疑問その3:ビットコインは今後どうなるの?


原稿執筆時点の状況では、8月1日に発生が見込まれるハードフォークを除けば、大きな混乱は生じないという観測だ。ただ、ビットコインを取り巻く環境にはいくつか大きな課題が依然として残っており、今後も大規模なハードフォークが発生して「ビットコインキャッシュ」のような新通貨が誕生する懸念がある。

直近の問題としては、8月1日のハードフォークのほか、Segwit2xでNYAの合意に盛り込まれた「ブロックサイズの1MBから2MBへの"半年以内"の引き上げ」にどう対処するのかという問題がある。合意を優先したために具体的なロードマップが現時点で存在しないほか、ブロックサイズ拡張ということは直近でビットコイン公式のハードフォークが発生するということであり、おそらくビットコインキャッシュ以上の混乱が想定される。

しかもSegwit2xは、ビットコインで中心となる仕様やソフトウェアを開発するBitcoin Coreの開発者コミュニティが同意しておらず(NYA合意はそれ以外の集団で行われたため)、本当にブロックサイズ拡張やハードフォークが発生するのかという部分で疑問がある。

今回の一連の騒動は、ビットコインが潜在的に抱える諸処の問題の解決を先延ばしにした側面が強く、遠からず大きな壁となって立ちふさがるだろう。問題は大きく次の2つある。
  • スケーラビリティの問題
  • ビットコインを支えるマイナーの多くが中国(しかも特定マイナー)に集中している問題

ビットコインが利用可能な店舗は日本国内でも増えつつあるが、ビットコイン自体がそれほどメジャーな決済手段ではなく、それほど利用が多いわけではない。それにもかかわらず、すでに現時点で処理能力がパンク状態にあることは、今後の利用拡大を考えるうえでも大きな問題だ。大手マイニングプールらが主張するブロックサイズ拡大をもってしてもある程度限界があるわけで、この点が課題だ。

一方で、ビットコイン特有の送金が遅いという問題を解決し、特に「マイクロペイメント」と呼ばれる少額決済での利用を実現する「Lightning Network」という仕組みの実装がビットコインやライトコイン(Litecoin)で進んでいるが、この実現にはSegwitが必須となっている。これにより、ビットコインを基本インフラにした新しい決済サービスがサードパーティらによって実装可能となることが見込まれており、「レイヤ2」などと呼ばれている。Segwit導入にまつわる顛末にはあれこれあるが、いずれもビットコインの次を見込む関係者の利害がぶつかった結果だと考えればわかりやすい。

そして、現状で問題となっているのが「ハッシュパワー」と呼ばれる処理能力の偏在だ。[詳細はBlockchainなどのサイトで確認できる](https://blockchain.info/pools)が、ビットコインを支えるブロック生成能力が特定の大手マイニングプールらによって占められている現状がある。

しかも計算能力の6割以上は中国を拠点とするマイニングプールにあるといわれるが、この原因は膨大な計算を行うのに必要な電力が中国では安いという事情もあるようだ。今回騒動の中核にいたAnt Pool率いるBitmainはその最大手であり、ここが反対意見を表明することで「Segwit(BIP141)」導入が阻止されていたことからもわかるように、ソフトフォーク実施においても大きな影響力を持っている。


▲大手マイニングプールのハッシュパワーのシェア。上位マイニングプールのほとんどが中国を拠点としている

Bitcoin Coreなど開発コミュニティとしては、特定のマイナーに力が集中する事態を避けたいというのが本音だ。ビットコインには「51%攻撃」という問題があり、チェーンを維持するマイナーの過半数が特定の悪意を持った集団となったとき、その信頼性が維持できなくなり取引が成立しにくくなる。SegwitでASICBoostの利用を排除した理由の1つには、この機能を使ってハッシュパワーが特定の団体(今回のケースではBitmainなど)に支配されるのを嫌ったことが挙げられる。

今回、UASF対抗でBitcoin Unlimitedによる「UAHF(User Activated Hard Fork)」をうたったりと、Bitmainら大手マイニングプールはその影響力の行使をはばからない。また目の前の危機としてビットコインキャッシュを主導しているのは大手マイニングプールのViaBTCといわれるが、この背後にあるのは資本関係にあるBitmainと噂される(Bitmainは否定している)。いずれにせよ、今後もビットコインは何度も苦難に直面しながら、少しずつ問題を解決していかなければいけないのが実態だ。


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