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「バイオメトリクス認証で手ぶらで決済」の時代はやってくるのか? #MWC19

技術的には可能だが問題は精度

鈴木淳也 (Junya Suzuki), @j17sf
2019年3月6日, 午後06:50 in Biometrics
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大きな展示会ではいくつか事前にテーマを決めて取材しているが、今年の「MWC Barcelona 2019」ではそのうちの1つに「バイオメトリクスと決済」を設定して情報を集めた。スマートフォンなどを使うモバイル決済の世界で、MWCの主催者であるGSMA自身があまり同ソリューションの普及やプロモーションに熱心ではなくなって久しいが、一部のベンダーでは引き続き「モバイル決済における最適解は何か」をテーマに試行錯誤を続けている様子がうかがえる。

(代表画像はe-IDシステムと顔認証でバーでのアルコール注文で必要な身分証チェック[欧州基準で18歳以上]をパスする様子。)

生体情報をアプリと結びつけ手ぶらで決済可能に


今回、バイオメトリクスと決済というテーマでMWCを切り取ったとき、興味深い展示を行っていたのが仏のセキュリティベンダーIdemiaだ。この会社の名前に馴染みがない人も多いかと思うが、2017年に仏の航空防衛企業Safranグループのセキュリティ部門であるMorphoと、同じく仏Oberthur Technologiesが合併し、同年にIdemiaに改称して発足したものだ。

もともとICカードやデジタルセキュリティを得意としていたOberthurと、バイオメトリクスや認識技術などで秀でていたMorphoのソリューションが合わさることで、「バイオメトリクスで本人確認して決済」といった仕組みが可能になっている。

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▲アイデミア・ジャパン代表取締役の根津伸欣氏によれば「Idemiaがどういう会社かを理解してもらうため、展示会場には必要なものを一通り揃えた」という

Idemiaブースは比較的幅広いソリューションが紹介されていたが、今回注目したのは「Arena」と書かれた「個人情報を登録して、ゲート通過から決済までバイオメトリクスで行えるサービス」を模したデモだ。パートは2段階に分かれている。

1段階目はスマートフォンにパスポート情報を登録してe-IDとして利用するデモ。パスポート情報をスマートフォンに読み取らせ、顔認証で本人照合を行うことで「e-ID」として利用可能にする。例えばバーやリカーショップでのアルコール購入で身分証提示を求められることがあるが、e-IDであればわざわざ財布やポケットからパスポートや免許証を取り出す必要はない。スマートフォンで本人写真とQRコードを表示させ、それを店舗側の端末で読み取ることで身分証が本物であることを確認する。場合によってはスマートフォンでそのまま決済してもいいので、文字通り財布は不要だ。

e-IDの取り組みはすでに一部の国でスタートしており、例えば米国ではケンタッキー州などで運転免許証をe-ID化されていることが知られている。これはGemaltoのソリューションだが、実際に前述の用途で利用可能だ。ただし米国では州ごとに運転免許証が発行されるため、おそらく州外ではこれが認められない可能性がある。このe-IDも実は「プラスチックのIDカードを保持していることが前提」ではあるので、その意味ではまだまだ財布とおさらばすることは難しいのかもしれない。

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▲まずパスポートのコードをカメラ読み取った後、ICチップの情報をNFC経由で読み込ませる

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▲続いて顔認証を行い、パスポートの写真の人物と一致するかを判定する。これでスマートフォンに登録された情報がe-IDとして公的な書類として機能するようになる


2段階目は、アプリにバイオメトリクス情報と決済情報(カード)を登録してゲート認証から決済までを可能にするデモ。これは、バイオメトリクス情報(指紋)とカード情報を登録することで、両者を結びつける仕組みだ。Morphoはもともと「(手を)かざして決済」の仕組みでMWCのVisaブースなどでデモを展開していた。しかし、このArenaのデモはアプリ上でより簡単に実現している。


この個人情報はサーバ側で管理され、アプリを使ったオンラインでの決済やイベント当日に会場での「手かざし決済」に利用できる。イベントアリーナでの席をアプリで購入した場合、そのチケットはすでに事前に登録したバイオメトリクス情報に結びついているため、そのまま入場ゲートのセンサーで「手かざし」をするだけで通過できるようになる。おそらく、転売防止のような仕組みが標準で入っているものだと考えていいだろう。

また、イベント当日のスナック購入もアプリで行えるほか、実際に物販コーナーでも買い物も「手かざし」だけで事前登録したカード情報で済ませることができる。バイオメトリクス情報を手元のデバイスではなく「相手のサーバ」に預ける場合、相手をどれだけ信用できるかが目安になると思うが、将来的にこうしたサービスが一般化した場合に「情報を銀行や公的機関のような場所に預けることになる可能性が高い」ということは根津氏も認めている。


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▲4本の指の指紋をカメラを通してスマートフォンアプリに読み込ませる

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▲音声入力のテストとカード情報登録が終われば、指紋情報と決済情報が結びついた形で記録される

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▲例えばチケット購入をアプリ上で行うと、その情報は個人情報と直接結びつけられ、決済も事前に登録したカード情報で行われる

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▲当日のスポーツイベントでのアリーナ入場も、事前に登録した指紋情報によりセンサー上で手を通過(Wave)させるだけでパスできる


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▲物販もアプリ決済のほか、店頭でハンズフリーの指紋認証だけで購入が可能。Idemiaのセンサーは手を長時間センサーに置かなくても一瞬通過させるだけで認識されるため、非常に素早い

バイオメトリクスを店舗で導入するまでの課題はなにか?

もう1つは顔認証による決済だ。こちらもサーバ登録型のシステムだが、事前にバイオメトリクス情報と決済情報を登録しておくことで、入店時に個人認識を行って名前が表示されるだけでなく、その人の過去の履歴などを組み合わせたプロモーションなどが行われる点に特徴があり、決済も事前登録情報に基づく。顔認証のみのKIOSKでの注文・決済システムはすでに米国や中国で商用化されている。しかし、今後はどの程度の規模で展開ができて、実際に顧客がそれを受け入れられるかが広がる鍵になるだろう。


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▲こちらは顔認証を用いたファストフード店での購入デモ。ホーム画面で本人確認が行われて名前が出てくるほか、お勧めメニューなどが過去の購入情報を鑑みて表示される。決済も顔認証のみとなる

ただ実装技術自体はあったとしても、実際にそれを商用展開できるかは別の話だ。例えば顔認証決済を中国のケンタッキーフライドチキンの店舗に導入したAlipay(支付宝)のケースでは、実際に利用できるのは北京の店舗など比較的限られている。Alipayには億単位のアクティブアカウントが存在するが、全体からみれば利用できるユーザーはごく限られているだろう。

Mastercardのデジタルソリューション担当エグゼクティブバイスプレジデントのJorn Lambert氏はインタビューの中でバイオメトリクス認証のみで決済を行う方式について「時期尚早」だとコメントしている。「デバイス上でバイオメトリクスを使って決済する仕組みは(Apple Payのように)現在すでに存在しており、われわれもこの利用を進めている。次のステップとしては『デバイスを用いないバイオメトリクス』となるが、実際中国などではすでに使われているだろう。問題はこのバイオメトリクス情報や個人情報を誰が管理するかという話だが、少なくとも店舗ではないだろう。ユーザーが安心できる中心組織、例えばMastercardやAlipay、あるいはAmazonということもあるかもしれない。(手元の)デバイスでの保持が解となる一方で、サーバ側に保存する道のりは人々の意識的な抵抗もあり長い。もし年月が経過して、やがてこの仕組みが実現する日が来たならば、人々は情報の管理を自ら行う必要が出てくるようになり、そしてわれわれは(必要に応じて情報の利用を拒否する)オプトアウトの仕組みを人々に保証しなければいけない」(Lambert氏)

実際、技術的にはほぼ実装可能な段階まで到達しているものの、「バイオメトリクス認証で決済」の実現に踏み切れないのには理由がある。Lambert氏がいうように個人情報の取り扱いに関する問題があると同時に、「誤判定」という問題がある。Visaイノベーション&戦略パートナーシップ担当シニアバイスプレジデントBill Gajda氏も、前述Lambert氏の考えに同意している。

「今年のMWCは顔認証入場システム(Breez)をすでに試しているかもしれないが、非常に優秀な精度で高速認識が可能になっている。話によれば、秒間20ポイントの認識で高精度な認証を実現しているという。一方で、バイオメトリクスを使った決済の世界は現在ほぼローカルでの保存、つまりスマートフォンなどのデバイス上に限られている。情報はデバイス上のチップに安全に保存されており、外のクラウドなどに出ることはない。もちろん、銀行や政府に認定された団体が管理する可能性もあるが、これはごく限られた話だ。もしバイオメトリクスがデバイスの外に出て活用される日が来るとしたら、それは人々が『正しい情報管理が行われている』と認識したときだろう」(Gajda氏)

また同氏は「誤認識の問題がある限り、顔情報だけを基にした決済は認められない」とも加えている。精度自体は優秀でも、仮に1%の誤差があればそれはカードの仕組みを利用する人すべてにとって大きな問題となる。「現在の(デバイスの外で行われる)顔認証の仕組みは、どちらかといえばマーケティング活用の視点にある。例えば、来店検知で個人に応じたプロモーションを出したり、馴染みの客であれば定番の注文をメニューに出したりといった具合だ。また顔認証の仕組みを実際に導入したスーパーの事例がある。英国のスーパーのセルフレジで、アルコールの購入に顔認証によるチェックアウトの仕組みが導入されている (参照:英The Telegraph)。NCRが開発したこのシステムでは、同国で18歳以上だと顔認証で判別されたお客にはIDチェックをパスできる仕組みがあり、実際にこういった場面での活用が増えてくるだろう」(Gajda氏)




Idemiaのe-IDに近い活用例であり、先ほどの例が政府に正式に認定されたIDだった一方で、こちらは店舗側の自主判断に近い仕組みとなるため、どちらかといえば法規制に左右されるとは思われるが、まずはこういうところで実績を積んで......という段階を経ていくのだろう。

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▲Visaイノベーション&戦略パートナーシップ担当シニアバイスプレジデントBill Gajda氏

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▲MWC 2019では入り口に顔認証入場システム「Breez」専用ブースが設置され、膨大な来場者の通過を処理していた



「TechCrunch Tokyo 2019」11月14日、15日に開催



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