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「日本の5Gは周回遅れ」という論調への異論:本田雅一のウィークリー5Gサマリー

(やっと)日本の電波割り当てが開始。確かにやっとだけれど危機感を煽るには早すぎる

本田雅一, @rokuzouhonda
2019年4月15日, 午前11:50 in 5g
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海外ではすでにサービスが始まっているのに、"まだ終わっていなかったの?"と思うかもしれませんが、総務省の電波監理審議会で、やっと5G NR(第5世代移動通信技術)を用いたサービス向けの周波数割り当てを認める答申が行われました。



"周波数割り当てを認める答申が行われました"という表現そのものが、いまひとつピンと来ないかもしれませんが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が申請していた周波数割り当てに対し、"認める"との答を出したわけです。

6GHz以下のSub-6(3.7GHz帯および4.5GHz帯)に関しては、NTTドコモとKDDIが2枠、ソフトバンクと楽天モバイルが1枠づつを獲得し、28GHz帯に関しては各社とも1枠づつ。ソフトバンクは希望していたSub-6への2枠のうち、1枠しか割り当てられなかったことになります。

もともと、総務省はSub-6について計6枠(1枠が200MHz幅)、28GHz帯について計4枠(1枠が400MHz幅)を事業者に割り当てるとし、それに対する希望を募っていました。楽天モバイルが参加する時点で、3大携帯電話事業者のうちの1社は1枠になると事前にわかっていたわけです。つまりこの結果は契約者数の状況や各社の投資計画を見る限り、順当な割り当てと言えるでしょう。

5g

各社が総務省に届け出た2024年度末まで5年分のサービス開設計画によると、総計1.7兆円程度の設備投資が実行されることになります。過去の例をみると、サービス品質などの競争などで、予定の数字を大きく超えることもありましたし、今回もそうなる可能性は高そうです。NTTドコモが約7950億円、KDDIは約4667億円、ソフトバンクは約2061億円、楽天モバイルは約1946億円を計画しています。NTTドコモの投資額が突出している一方、楽天モバイルも持っている契約者数からすると、かなり大きな投資をしようとしていることがわかりますね。

しかし、これらはいずれも"総投資"であって、どのような投資なのかという明細を示しているわけではないことに注意した方がいいでしょう。当面は現行のLTE-Advancedがしばらく主流であり続けることは間違いありませんから、それぞれの携帯電話事業者ごとに応用分野に重み付けをしながら投資をしていくことになるでしょう。

つまり、単純な金額比較はあまり意味がないということになるものの、NTTドコモとKDDIは、いずれも5年以内に全国4500区画のうち90%を5Gエリアにしていくとしています(ただしどの周波数帯で......とは言及していませんし、以前のコラムで触れた「LTEで利用している周波数帯の転用」を含んだものだと考えるのが妥当でしょう)。

さて、周波数割り当ては国がそう発表したという純粋な情報を伝えるものなのですが、今回の記事を書いていて気づいたことがひとつあります。

それは「日本の5Gはグローバル基準でめっちゃ遅延していて、1周は遅れている」という意見がとても多いということ。個人の意見やブログなどで、そうした言及があるだろうことはわかるのですが、周波数割り当てを伝えるニュースに付随して「日本は後れている」論が、テレビなどのマスメディア報道の中でも散見されました。

本当に日本の5Gは遅れているのか?

"日本は5Gへの移行に関して遅れを取っている"という言説だけでは、実のところそれが何を指し示しているのかわかりません。しかし、次のような伝え方となると疑問に思わざるを得ません(あくまで例ですよ)。

「世界で一番最初に5Gサービスが始まった韓国。アプリをダウンロードする速度を比較すると......5Gはあっという間なのに、LTEでは10秒以上かかりました」 と伝えたあとに、日本は来年の春からの本格サービス開始なので遅れている。

なるほど、サービス開始の時期で言えば確かにそうでしょうけれど、現時点で5GとLTE-Advancedの実効速度を比較することにあまり意味があるとは思えません。状況が揃えばLTE-Advancedが高速ですし、利用者数が圧倒的に違う環境での比較に意味はないでしょう。それに現在のスマートフォンが高速で通信するだけならば、LTEにもまだ進歩の余地があります。

「先にサービスを開始することでイノベーションを牽引でき、これからの10年、20年の産業基盤が5Gの上に生まれます。サービス開始の遅れは、日本の産業にとって大きな痛手となりかねません」 そう話してくれる専門家を探してきたのかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

どの世代の移動通信システムでも、企業が想定していた使い方が爆発的に普及を促したことはありません。世代が切り替わり、進歩する中で通信技術やアプリケーションの成熟が進み、人々の認知が拡がる中で、それらを取り巻く企業、あるいは新しい視点を持ち込んだ起業家たちが新しい価値を生み出してきました。

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日本では2001年にいち早くFOMA(3G)サービスが開始し、IMT-2000と呼ばれた移動通信システムの革新は日本から生まれると考えられていました。日本はグローバルとは異なる2G通信システム(PDC)を採用していましたが、パケット通信網をいち早く整備して、アプリケーションやコンテンツもi-modeを中心に発展。日本独自のPDCから、グローバルと技術的な歩調が合う3Gの時代になれば、アプリケーションやコンテンツが存在し、いち早くサービスも開始し、さらに世界をリードしていた端末メーカーもいた日本は、イノベーションを先導する筈でした。

いや、僕がそう思っていたということではなく、当時はそうした論調で伝えられることが多く、また実際に携帯電話事業者も端末メーカーも、みんなそう信じて疑わなかったのです。

"遅れているか否か"ではなく、"次に何が求められるか"を感じる力があるか否か問題

当時、i-mode端末を持っていると「そりゃ未来の端末か?」などと言われたもので、実際に日本が業界をリードしている側面があったことは確かでしょう。確かに1周前を進んでいた気がしますが、では3GからLTEの流れにおいて、1周前を走っていた先行者利益を得ていたでしょうか?

もちろん、先にサービスを始めれば、想定していなかった事態への直面とその解決、あるいは想像もしていなかったアプリケーションの誕生確率など、何らかのアドバンテージがないわけではありません。とりわけ、目標が定まっている場合、とにかく前に進みそこで失敗したとしても、必ず何らかの経験は手元に残ります。でも5Gの場合、どこも「投資をする」と言ってはいるものの、具体的に何に投資をするのか細分化して言えているところはまだありません。

世の中の反応や技術トレンド、それに商品やサービスのトレンドをキャッチアップしながらでなければ、イノベーションの種なんて見つからないんですから。i-modeでグローバルのトレンドを作り、FOMAでIMT-2000時代に先行しながら、結局はスマートフォンの時代に乗り遅れたのが日本でした。

問題は「日本がめっちゃ遅れていて、今後、追いつけない状況じゃないか?」という心配ではありません。5Gの時代に何が起きるのか?、世界中のひとたちが身構えながら様子をみているところなのですから、日本でのサービスインのタイミングは問題ではありません。

もちろん、インフラ整備は大切です。適切な投資が行われることが大前提です。しかし、"1周遅れている"という表現が正しいとして、果たして何周先に本格的な5G時代のスタートラインがあるのでしょうか?

問題はスタートの遅れではありません。移動通信システムが新たな世代になった時、どのようなどのようなニーズが生まれ、そして社会的な課題として新しい事業が見えてくるのか。すなわち、次に何が求められているのかを感じることです。

そんなの当たり前? そう、当たり前なのだけど、実は日本の社会がこれまで苦手としてきたことでもあります。

"目の前の問題を解決するだけ"では、新しい産業は生まれない

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i-modeは事業としてグローバルには拡がりませんでしたが、その後の携帯電話端末のトレンドを決めたイノベーションでした。

それは目の前の問題解決のため、単にネットに携帯電話が繋がりました......というだけで終わらせなかったからです。移動通信システムのデジタル化で、データ通信が行えることは、その前の世代からわかっていたことで、単にインターネットにつなぐだけなら大きな進歩とは言えません。

しかし、i-modeが優れていたのは、携帯電話端末がネットに繋がるようになれば、どのような問題が起きるのか? を考えた上で、システムとして上手に利用者と携帯電話事業者、コンテンツやサービスの事業者を調停する仕組みを作ったことでした。

前述したFOMAの問題に当てはめてみると、日本の3Gは当初「高速なi-mode(他社のサービスもありましたが、あえてドコモのサービス名で表現します)」でしかありませんでした。もちろん、i-modeが高速になることで制約が外れていき、様々なアプリケーションがFOMAの上に生まれていきましたが、それはi-modeというシステムが担っていた"調停"の度合いを変えていくだけのことです。

より高速で効率の良い通信は、i-modeが抱えていた問題を解決しました。しかし、問題解決が進めば、その産業は成熟します。成熟が進むことで、新しい課題やニーズ、あるいはそれまで考えていなかったような使い方を"してみよう"と思うひとが出てきます。

2007年のiPhone誕生は、まさにそうした"それまでは誰もできるとは思っていなかった"提案をアップルが行ったからこそ生まれた流れです。同時期にAndroidも開発が進んでいたことを考えれば、似たようなことを考えていた人たちは何人もいたはずです。

I-modeのようなシステムが調停しなくとも、もっと自由にアプリケーションを使えるようになり、部分的にはパソコン向けのコンテンツやサービスもカバーしてしまえる。コンピュータの進化速度を考えれば当たり前に想像できます。しかし本当にそんな使い方が許されるとは思っていませんでした。

"限られた通信帯域、コストの中で、そんな自由奔放な端末なんて認められるはずがない、成立しない"

しかし、これは2G時代に生まれた考え方です。新しい時代では、通信速度がどんどん速くなっていき、音声通話よりもデータ通信帯域が拡がる方が重要なのだという共通認識のもと、これから世の中はどうなっていくのか? を考えたとき、i-modeの正常進化の先にイノベーションは存在しないと気付くべきだったのです。

......と偉そうに書いていますが、もちろん、すべては結果論。

しかし、5Gの導入が1年早いか遅いかが重要ではないと解っていただけたのではないでしょうか?

5Gサービスが始まり、目先ではいろんな問題が解決され、アプリケーションも生まれるでしょう。しかし、国の趨勢を決めるような産業の変革は、もっと奥深いところにあるはずです。



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