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10月の消費税増税でキャッシュレス決済は普及するのか? 行政の狙いを読み解く(佐野正弘)

消費者には決済サービスのキャンペーンのほうが恩恵が多いのでは

佐野正弘(Masahiro Sano)
2019年9月3日, 午後06:30 in Cashless
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9月に入ったばかりですが10月の話をさせて下さい。10月は楽天モバイルが携帯電話事業に参入予定であるなど、IT業界で大きなイベントが相次いで起きることが予想される月です。しかしながらこの月、世間で最も関心が高まることが予想されるのは消費税の増税ではないでしょうか。

キャッシュレス決済ならば5%還元

10月1日から、現在8%である消費税は基本的に2%アップして10%となることが既に決まっています。一方で今回の増税に当たっては軽減税率制度も設けられ、酒類・外食を除く飲食料品と、週2回以上発行される新聞の税率が8%に据え置かれる予定。従来のように一律に税率がアップする訳ではないことから、店頭などでは多くの混乱も予想されそうです。

この消費増税とITにどんな関係があるのでしょうか。もちろん税率が上がるのですから、例年通りであれば増税直前に発売されるであろう新iPhoneは、早く買っておいた方がお得かもしれません。ですが来年発売されるであろうさらに新しいiPhoneは10%の消費税がかかってしまうので、買い替えサイクルの早いIT関連製品の購入に消費税の変化を強く意識する必要はあまりないようにも感じます。

では、何が最も影響してくるのか......というと、それはキャッシュレス決済ではないでしょうか。というのも経済産業省が主導する形で、2019年10月1日から2020年6月までの9か月間、登録を受けた中小の店舗でキャッシュレス決済を利用すると、2〜5%のポイント還元が受けられる「キャッシュレス・消費者還元事業」が展開されるからです。

Engadget
▲消費税増税に伴って実施される「キャッシュレス・消費者還元事業」のWebサイト。登録された店舗でキャッシュレス決済をすることで、2〜5%のポイント還元が受けられるというものだ

なぜこのような事業が実施されるのかというと、1つは消費増税による景気の落ち込みを防ぐため。増税後の一定期間ポイント還元をすることで、増税による家計への負担を緩和し消費の冷え込みを抑える狙いがあるようです。

そしてもう1つの狙いはキャッシュレス決済の普及です。日本は現金に対する信頼が非常に強い国ですが、少子高齢化による労働人口の減少によって、今後現金を利用するインフラの維持が難しくなると見られています。そこで現在国を挙げてキャッシュレス決済の普及を推し進めており、消費増税を機としてキャッシュレス決済のメリットを大きく打ち出し、普及につなげたい狙いがあるといえるでしょう。

我々消費者がこのポイント還元を受けるにはどうすればいいかというと、事前に登録を受けたキャッシュレス決済事業者の決済サービスを用いて、キャッシュレスで決済するだけです。対象となる決済事業者は2019年8月19日時点で775社に上ります。

QRコード決済などスマートフォンを用いた決済サービスだけでなく、クレジットカードや「Suica」などカードタイプの電子マネーも対象となることから、現金を使わずに買い物をすれば、おおむねポイント還元の対象になると考えて良さそうです(もちろん、2019年9月末でサービスを終了する「7pay」は対象外)。

Engadget▲「キャッシュレス・消費者還元事業」の対象となる主な事業者。クレジットカードから電子マネー、QRコード決済など幅広いサービスが対応するようだ


施策の狙いは消費者ではなく店舗

一方で注意が必要なのが、ポイント還元を受けられる店舗です。5%のポイント還元はどの店舗でも受けられる訳ではなく、事前に登録された店舗での決済時に限られるからです。しかもこの事業に登録できる店舗は基本的に中小の店舗に限られており、大手スーパーや家電量販店などで買い物をしてもポイント還元は受けられません。

Engadget
▲「キャッシュレス・消費者還元事業」の加盟店登録申請状況。既に全国40万以上の店舗が登録されているが、対象は中小企業や大手チェーンのフランチャイズに限られる

ただ大手チェーンのフランチャイズ、例えば大手のコンビニエンスストアやファストフード店のフランチャイズ店舗であれば、2%に限定されるもののポイントの還元自体を受けることは可能です。また「amazon.co.jp」や「楽天市場」に出店しているようなオンラインショップであっても、中小の登録店舗であるという条件を満たしてさえいれば、代引きなどを使わずキャッシュレス決済することで5%のポイント還元が受けられます。

ちなみに対象となる店舗は、2019年8月21日時点で43万1682店舗とのこと。自分が利用する店舗が対象となっているかどうかは、開始後に店頭に掲示されたポスターなどで確認できるほか、Webサイトやアプリでも探せるようです。現時点でもあまり見やすいとはいえませんが、「キャッシュレス・消費者還元事業」のWebサイトから店舗一覧を確認することは可能です。

もう1つ、決済事業者や店舗によって還元での形が変わってくることも注意すべきポイントでしょう。多くの決済事業者はポイントによる還元となりますが、ジェーシービー、三井住友カード、クレディセゾン、ユーシーカード、三菱UFJニコス(一部)のクレジットカードでは、分かりやすさを重視してポイント相当分の代金を直接値引きするとのこと。大手のコンビニエンスストアでも同様に、ポイントではなく値引きによる還元がなされると見られており、ポイントにこだわる人には注意が必要かもしれません。

増税による景気の冷え込みを意識したこの施策ですが、キャッシュレスという視点で見た場合、行政側の狙いは消費者側ではなく、店舗側にあるよに感じます。その理由は対象が中小店舗のみとなっていることです。

今回の措置はあくまで消費増税を受けてのものなので、増税の影響をより強く受ける可能性が高い中小店舗の売上の落ち込みを抑えることが、主目的であることは確かでしょう。一方で、その対象となる中小の店舗はキャッシュレス決済に必要な機器導入や決済手数料の負担を懸念する声が多く、あまり普及が進んでいないという現状があります。景気対策のために中小企業を支援するというだけなら、むしろ現金決済を対象にすべきであるようにも感じるのです。

にもかかわらず行政側がポイント還元対象をキャッシュレス決済に絞ったのは、消費増税を機にとして中小店舗にポイント還元というメリットを与える代わりに、キャッシュレス決済の導入をして欲しいからといえるでしょう。実際、キャッシュレス・消費者還元事業のWebサイトの説明を見ると、端末の本体と設置費用負担が最大で無料になることや、決済手数料が3.25%と低く、期間中はさらに国が3分の1を補助することなどがアピールされており、至れり尽くせりの手を打つことで、中小企業のキャッシュレス化を進めたい様子がうかがえます。

Engadget
▲「キャッシュレス・消費者還元事業」のWebサイトより。キャッシュレス決済端末の導入費用が最大で無料になることや、期間中は決済手数料の3分の1を国が補助することなど、中小企業のペインポイントをカバーすることを打ち出してる

一方で消費者の視点から見ると、大型店でのポイント還元が受けられないこと、フランチャイズ店でのポイント還元も2%にとどまることなどから、ポイント還元の恩恵は割と限定的なものになる印象も受けます。

最近ではJCBカードで「QUICPay」を利用すると20%をキャッシュバックするキャンペーンが話題となったように、スマートフォン決済を主体とした決済事業者による、10%、20%といった高額還元キャンペーンのほうが消費者にとっては恩恵が大きいのではないでしょうか。

Engadget▲スマートフォン決済事業者のキャンペーン施策は激しさを増しており、メルペイが2019年8月30日から、友達を招待すると1000円分のポイントがもらえる「すすメルペイ」キャンペーンを実施。消費者にはこうしたキャンペーンの方がメリットが大きい

そうしたことから行政側は、キャッシュレス決済サービス自体の利用促進は競争が激しい民間の取り組みを優先し、それを利用するための場所。つまりなかなか進まない中小店舗のキャッシュレス決済基盤を、増税を機として拡大したかったといえるのではないでしょうか。キャッシュレス・消費者還元事業への申し込みが、ポイント還元が始まった後も2020年4月末まで続けられるという点からも、キャッシュレス決済の普及を継続して進めたい姿勢を見て取ることができます。

ですがキャッシュレス決済の利用促進を民間に任せる形をとったことで、決済サービスの乱立によって消費者が混乱している状況は変わっておらず、分かりにくさ故にキャッシュレス決済の普及が進まないのではないか? という印象も受けてしまいます。キャッシュレスが利用できる場所を広げることは確かに重要ですが、本格普及のためにはやみくもに道を広げるだけではなく、時には区画整理も必要なのではないかと、筆者は考えています。




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