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実は突然ではなかった、ヤフーとLINEの統合話(佐野正弘)

2014年にも買収報道はあった

佐野正弘(Masahiro Sano)
2019年11月15日, 午前09:03 in Business
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2019年11月14日夜、日本のIT業界に非常に大きな影響を与えるニュースが飛び込んできました。ポータルサイトの「Yahoo! Japan」を展開するヤフーを持つソフトバンク子会社のZホールディングスと、メッセンジャーアプリ「LINE」を運営するLINE社が、経営統合に向け最終調整に入ったとの報道が一部メディアでなされたのです。

多くの人がご存知の通り、Yahoo! Japanは日本最大のポータルサイトですし、LINEは日本で8000万を超えるユーザーを抱えるコミュニケーションツールとして定着しています。もしその2つが統合すれば、非常に大きな顧客基盤を持つ日本最大のインターネット企業となることは確実ですから、与えるインパクトが大きいのは確かでしょう。

一見すると突然沸いて出てきたようなヤフーとLINE社の統合話ですが、これまでを振り返ると、以前からその兆候はいくつか見られたものでもありました。実際、ヤフーなどを傘下に収めるソフトバンクグループが、LINE社に関心を示している様子が報道されたのは今回が初めてではなく、2014年2月にも現在のソフトバンクグループに当たる旧ソフトバンクが、LINEを1兆円超で買収するとの報道が一部メディアでなされ話題になったことがあります。

2014年といえば、スマートフォン向けメッセンジャーアプリが急速に普及して世界的な競争が激しくなっていた時期。楽天が「Viber」を運営するバイバー・メディアを買収し、フェイスブックが「WhatsApp」を運営するワッツアップを買収するなど、世界的に投資も過熱していました。

それだけに当時ヤフーが韓国カカオと提携して展開していた「カカオトーク」を破り、日本で事実上標準の座を獲得したLINEにソフトバンクは興味を示したといえます。この際は買収には至らなかったものの、何らかの形でLINE社、そしてその親会社である韓国のネイバーと接触し、関係を構築していたものと考えられそうです。

そしてソフトバンクグループとLINE社との直接的な関係といえば、ソフトバンクグループ子会社のソフトバンクが、LINEのMVNOによる通信事業「LINEモバイル」の運営会社を、2018年に子会社化したことが挙げられます。このことは携帯電話会社の攻勢によって苦戦していたLINEモバイルを、当の携帯電話会社の側であるソフトバンクが子会社化したことで話題となりましたが、LINEとソフトバンクの関係性を示したという意味でも大きな出来事だったといえるでしょう。

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▲「LINEモバイル」は2018年にソフトバンクが出資して子会社となっており、現在はソフトバンクの回線を用いた低価格モバイル通信サービスなども提供している

ではなぜ、今のタイミングでヤフーとLINE社との統合に向けた動きが急加速したのでしょうか。その理由は、ソフトバンクグループとLINE社が抱える赤字にあるといえそうです。

ソフトバンクグループは2019年11月6日に決算を発表し、シェアオフィス事業の「WeWork」を運営するウィワーク・カンパニーズに関するさまざまな問題の影響を強く受けて大きな損失を出し、15年ぶりの営業赤字を記録しています。そこでグループ全体での業績回復のためにも次の一手が早急に求められていたといえ、地盤でもあり安定した収益が得やすい日本国内で大きな成果を出すべく、ヤフーとLINE社の統合に動いたと考えられそうです。

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▲投資事業の好調を続けていたソフトバンクグループだが、2019年度の上期決算で、WeWorkに関する一連の問題の影響による損失で営業赤字に転落している

一方LINE社の動向を見ると、こちらは2019年度に入って以降営業利益の赤字が続いて続いている状況です。その主因は決済サービス「LINE Pay」の先行投資がかさんだためです。

QRコード決済は事業者の急増により、各社が相次いで大規模な還元キャンペーンを実施し顧客争奪戦を繰り広げるなどして競争激化が続いています。LINE Payもその例にもれず、300億円を投じたキャンペーンを実施するなど大規模キャンペーンを相次いで実施し、それが赤字要因となっていた訳です。

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▲「LINE Pay」も他社に対抗し、300億円規模のキャンペーンを実施するなど攻めの姿勢を見せていたが、最近ではキャンペーンへの投資を抑える傾向にある

ですがさすがに荷が重すぎたのか、LINE社は最近、大規模キャンペーンを抑える方針を打ち出しています。一方でソフトバンク系の「PayPay」は引き続き大規模キャンペーン施策を続けて順調に利用者を拡大しており、同社の代表取締役社長執行役員兼CEOである宮内謙氏はPayPayの「一人勝ち」を宣言するなど、優劣が出てきたことが今回の統合話には影響したといえそうです。

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▲QRコード決済事業者の大規模キャンペーン合戦は現在も続いているが、その中でも「PayPay」が"一人勝ち"宣言をするなど優劣も出てきつつある

またLINE社は、日本などで多くの会員を獲得しコミュニケーションツールとしては定着したものの、実際の収益は公式アカウントなどによる広告事業と、ゲームや漫画などのコンテンツ事業が今なお8割近くを占めている状況です。

2016年より「スマートポータル」戦略を打ち出し、生活系サービスに力を注ぐなどLINEのポータル化を進めてはいるものの、決算内容を見ると、まだそうした分野で大きな成果を出せていない様子が見えてきます。

それに加えてLINE社は今後を見据え、「Clova」「LINE BRAIN」などのAI事業や、みずほフィナンシャルホールディングスと銀行設立を打ち出すなど金融事業を積極的に強化していました。LINE Payだけにとどまらない先行投資がかさんでいる状況でもあった訳で、好調だった事業に陰りが見えていたのも事実です。

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▲LINEはネイバーと共同でAI関連事業にも力を入れており、最近ではAI技術を外部の企業に提供する「LINE BRAIN」の提供も開始しているが、現在はまだ先行投資段階の状況でもある

LINE社の中心人物でありながら、これまで裏方に徹していた代表取締役CWO(Chief WOW Officer)のシン・ジュンホ氏が、2019年に実施された事業戦略イベント「LINE CCONFERENCE 2019」で表舞台に出てきたという点からも、そうした危機感が見えていたといえます。

顧客基盤を収益化にうまく生かせていない現状を打破し、なおかつ将来への投資にかかる負担の大きを考慮するには、さらなる事業拡大のため新しいパートナーを必要としていたといえ、それが今回の統合話につながったと考えられそうです。

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▲「LINE CCONFERENCE 2019」では、これまで表舞台に出てこなかったLINEの中心人物であるシン・ジュンホ氏が登場したことが驚きをもたらしていた

もちろんこの統合は、ソフトバンクグループとネイバーの意向が強く働くものでもあるため、交渉の結果によっては統合が実現しない可能性もありますし、実現したとしても報道されたのと同じスキームで実現するのかというのは、現時点では分からないことでもあります。両者から正確な情報が出てこない限り、今回の一件は全て仮定に過ぎないことは覚えておく必要があるでしょう。

ですが仮にこの統合が実現すれば、日本で圧倒的な顧客基盤を獲得するプラットフォーマーとなることもまた確か。日本のIT業界全体の勢力構図を大きく塗り替える可能性も秘めているだけに、まずは交渉の行方を見守りたいと思います。



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