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外出自粛でもエンタメを。ワンマン在宅FM生放送の先に見る可能性(本田雅一)

オンラインでのエンタメ制作、イベント実現に向けての胎動

本田雅一, @rokuzouhonda
2020年4月14日, 午後12:59 in LiveStreaming
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「本田さん。史上初の完全ワンマンでの生放送番組を自宅からやる予定なんです。番組宣伝というわけではなく、この先も新型コロナウイルスの影響が続く中、音楽・ラジオといった枠組みでの新しい可能性をみんなに知って欲しいんですが、興味ありませんか?」

そうメッセージをくれたのは、J-WAVEの音楽番組ナビゲーター、テレビ番組「王様のブランチ」のナレーションでおなじみのDJ Taroさん。クラブミュージックシーンで知らぬ者はいないベテランだが、実は僕とは3つの共通点があって仲良くさせていただいている。

ひとつは"食いしん坊"。いろいろな美味しいものを食べ歩いたり、共同で食事会を開催したり、ひたすら焼肉を食べたり。もうひとつは"ダイエット"。同じコーチにアドバイスをもらいながら、動ける身体に改造したフィットネス仲間でもある。そして最後が"テック製品やトレンドに敏感"というところ。

これまでも早期からiPadでのDJプレイなどに取り組み、東日本大震災の際にはラジオ中継にインターネットによる音声伝送を活用するなど新しいことに挑戦していたDJ Taroさん。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークサービスに至るまで、テクノロジを駆使した制作を包括的に、一人だけでやれてしまうのだ。

自宅からFM放送品質のラジオ番組をワンオペ生放送

そんな"ワンオペ生放送"スタイルを確立したのがJ-WAVEで毎週土曜深夜25時から2時間にわたって生放送している「Saturday Night Vibes」 。実はこの番組は時間管理から楽曲再生、コンソールの操作、そしてもちろんトークや時事のニュースの読み合わせなどを、実際に"ひとりだけ"で行っていた。

「いた」というのは、コロナ禍の中でスタジオからの放送を行わず、放送局とは別の場所から放送することに挑戦し始めたからだ。

3月28日深夜の放送では、DJ Taroさん自身が持つオフィスにマイクやミキサー、音楽プレーヤーなどの機材を配置し、六本木のスタジオとの間をネット回線で接続して放送。あえてスタジオではない場所から放送するため、所有するスタジオブースではなくオフィスの部屋から行ったのだとか。

そしていよいよ4月11日の放送では自宅に機材を持ち込み、今度はリビングルームから自宅のブロードバンド回線を用いてFM品質の放送をすることに挑んだ。

といっても、両放送とも極めて自然であったため、誰もそれが"自宅からワンマン"だとは気づかなかったのではないだろうか。

しかし、そこにはたくさんの乗り越えるべきハードルがあった。その乗り越えた先には、新型コロナウイルス感染がピークアウトした先にもあるだろう問題を乗り越えられる可能性が見えてきた。

"FM放送品質"のリモート収録、生放送が難しいワケ

DJ Taroさんの場合、オンエアスタッフだけではなく、放送技術のスタッフも付き添わず、環境のセットアップから各種テストや確認まで、すべてをひとりでこなした。技術面も自分で面倒を見ることができるラジオパーソナリティは、おそらくかなり少ないだろう。ここまで徹底したテレワーク放送ができるのは、これまでもワンマン放送をやってきた積み重ねがあったからだ。

しかし、現代にはSkypeやZoomといった、オンラインで音声や映像を伝える手段はいくらでも存在する。何がそんなに難しいの? という疑問を持つ人もいるかもしれないが、現実にはいくつもの問題がある。

ひとつは音質。オンライン会議用の音声と、音楽番組で使える音質のレベルはまったく違う。

そこでこの放送では「IPコーデック」という製品を使った。ここでいう「コーデック」は製品名。以前はISDN回線を用いて低遅延、高品位の音声伝送を実現する装置だったが、現在はIP回線を用いる「IPコーデック」となり、インターネット回線を通じての放送ができるようになったという。

そしてもうひとつの問題は遅延である。

商用放送のため、放送中にCMを流さなければならないが、遅延が大きいとCMへと切り替えるキュー出しが極めて難しくなる。IPコーデックを用いれば遅延時間短縮、および一定の遅延に抑えるといったことが可能だが、まったく遅れないわけではない。このあたりの調整は、CMを挿入するJ-WAVE側との調整が難しかったところだったそうだ。

ちなみにどんなに高速かつ遅延の少ない回線を使っても、SkypeやZoomでは1秒ぐらいの遅延が起きる。また1秒程度なのは1対1のときのみで、話者を増やすととたんに2秒ぐらいのレイテンシになる場合もある。

あらかじめ収録、編集して流すのであれば別だが、生放送となると、事故のリスクを抑えながら準備するのがさらに難しいことは想像できるはずだ。

オンラインで音楽セッションが実施できるNETDUETTO

FM

......と、このような話をDJ TaroさんにZoomを使ってオンラインインタビューしていたところ、話は思わぬ方向に進んでいった。最初は取材だったものが、なんとかリモートでの番組制作や、ひいてはオンラインの音楽イベントなどに繋げられないか、なんて話に展開していったのだ。

実は放送で使われた「IPコーデック」と同等以上の性能を持つサービスに、将来の可能性を感じていたからだ。そのサービスの名前は「NETDUETTO」。

ご存知の方もいるかもしれないが、NETDUETTOはネットで離れたところにバンドメンバーがいても、最大5つの拠点をつないで音楽セッションが行えるという、高音質、低遅延のリモートセッションサービス。長らくベータ版として運用、開発が進められてきたが、今年、装いを新たに新機能を加えて「SYNCROOM」という名称で再スタートすることが決まっている(NETDUETTOは今春に終了する)。

このNETDUETTOは冒頭で紹介した東日本大震災の時にも使用を検討したが、開発途上であることなどもあり、放送での利用が可能かどうかも含めて検討してたことがあったそうだ。

ではそれほど高く評価するNETDUETTOとはどんなものなのか? とZoomの音声をミュートし、NETDUETTOで音声回線を繋いでDJ Taroさんとの話は続いた。

"まるで同じスタジオにいるよう"に会話できる

FM
なにしろ音楽のセッションができるぐらいなのだから、会話が相当に楽なるだろうと思っていたが、NETDUETTOでの会話は"まるで同じスタジオ"にいるような感覚。両者が光回線を持ち、また有線LANでパソコンを接続していれば、まさに快適かつ生感のある会話ができる。

Saturday Night Vibesはゲストが登場しない番組だが、この技術を使えば、まるでひとつの場所で収録するといったことも可能だろう。生放送ではなく、生放送っぽい番組(テレビ番組でいうところの"徹子の部屋"のような作り)ならば、大幅にそのハードルは下がる。

話は大きくずれるが、Zoomでつなぎながら音声をミュートし、NETDUETTOで会話という今回のインタビューを、そのまま"オンライン飲み会"に応用すれば、全員が同時に発話しても自然にミキシングできる自然な飲み会になりそうだ。

この"同じ場を共有している度合いの高さ"は、たとえば一緒の場所で丁々発止のやりとりを見せることができなくなったお笑い芸人さんたちの救いになるかもしれない。さらにいえば、ヤマハ側が音楽セッションだけではなく、放送収録やライブイベントも視野に入れた機能を追加し、別仕立てのサービスに発展させたなら、ゲスト回線の追加やミュート、CMなどへの切り替え、あるいは効果音などの機能を追加することもできよう。

ちなみにNETDUETTOには音楽プレーヤー機能があるため、好みの音楽をファイルで指定するとBGMとしてミキシングすることもできた。

望まれる"権利処理"の枠組み整理

NETDUETTOは本来、自分で演奏した楽器音を流すものだ。作品として完成した音楽を流すようには作られていない。音楽プレーヤー機能も、たとえばコード進行を決め、リズムセクションだけを入れたトラックを流しながら、みんなでそこに楽器音やヴォーカルを乗せていくといった時に使うもの。

しかし、これを放送でも使えるように整備できれば、さまざまなことが変わる。業務用の機材を用意しなくとも、パソコンさえあれば、あるいは開発状況次第ではスマートフォンがひとつあれば、それだけでオンラインでゲストを呼べるようになる。

新型コロナウィルスの影響が長期化する中で、将来的にラジオ放送を大きく変えるきっかけになるかもしれない。

今は2020年。高速回線が普及し、今年は低遅延かつ広帯域の5Gが始まる年だ。ソフトウェアやサービスのレベルもブロードバンド回線が普及した当時から比べると驚くほど進んでいる。

オンラインで各所をつなぎ、低遅延でのエンターテイメントセッションを、ライブ、あるいは収録で作り上げていける"道具"は整っているが、オンラインでコンテンツを配信するための権理処理に関する枠組みがない。

たとえば、FacebookやInstagramのライブ機能を用い、、コロナ禍で自粛してる音楽ファンに向け、夜な夜なDJプレイを披露していたら、アカウントが凍結されたといった事例もある。Instagramなどではライブ中継中に突然、切断されることは日常茶飯事。これでは、とても前向きとはいえない。

しかし、権利関係や配信手法、配信の場などが、ステークホルダー全体の合意のもとに整備できれば、オンラインの音楽イベントを気軽に開催できる未来に向けて一歩、踏み出すことができるだろう。

個人でもJASRACと包括契約を結び、独自の動画配信サイトを構築するのであれば、無料イベントだけであれば年額1万円でこうしたプレイが行えるが、そもそもそうした情報も周知されておらず、また有償のオンラインクラブイベントなどになれば、そこに"ちょうどいい価格感"の契約形態が用意されていないのが現状だ。

法的にクリアな状況で弾けたい

DJ Taroさんとの話は、こうして権利関係を整理し、みんながクリエイティブに音楽を楽しんだり、コンテンツを制作できたりする環境をオンラインセッションでどう作っていくか? というところに発展していったわけだが、ひとつ共通の思いとしてあったのは「法的な問題を取り除く」という部分だ。

今や音楽業界の主流となっているヒップホップ文化も、元はレコードという作品を改変しながら生まれてきた側面がある。リズムセクションだけをループさせ、そこにリリックを載せるといったことは、厳密にいえば(そして現代のコンプライアンスでいえば)NGな部分も大きいだろう。また、一般的に"OKと解釈されていること"でも、ネット上で展開した時に問題なしとならない可能性も考慮すべきである。

たとえば、かつて米国などでは"レコードプール"という考え方、商習慣が定着していた。レコードのプロモーションを行うため、ラジオやクラブなどで自由にかけていいレコードとして音源を提供する場が生まれていたのだ。現在、物理的なレコードを提供する場が失われているが、この文化をネットからのダウンロードで実現するサービスがいくつかある。

これらは「デジタルレコードプール」と一般に呼ばれているが、月額30から40ドル程度の定額サービスがあり、音楽出版社がサービス提供者に許可したトラックを自由にダウンロードしてプレイできる。

本来の原則論から言えば、プロモーション用に特別に許可されているもので、どのように扱ってもいいという音源データではない。ところがこの仕組みを拡大解釈して作品を自由に扱ってしまっている例もある。では、デジタルレコードプールに登録されている楽曲を、をネット上のライブセッションで流していいのか?といえば、正確には"相互に使える場の確認できていない"のが現状。このあたりも、今後はクリアにしていく必要があるだろう。

もし、新型コロナウィルスの影響がなければ、ここまで深掘りしてフィーチャーされることはなかったかもしれない。しかし、きちんと法的枠組みを整理した上で、だれもが弾けることができる環境を作り出せば、「コロナ後」に新たなカルチャーを生み出す礎となるはずだ。


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