特定用途だけパケ代が無料になるスポンサー制度、AT&T が発表

Haruka Ueda
Haruka Ueda
2014年01月7日, 午後 08:00 in ATT
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CES の新製品ラッシュが続く今日このごろですが、米キャリアの AT&Tが Sponsored Data なる興味深いプログラムを発表しています。これは AT&T から請求されるモバイルデータ通信費(パケット代)の一部を、用途に応じてほかの企業が肩代り(スポンサー)するという仕組み。

想定されるシーンとしては、たとえば「新作映画のトレーラーが気になるけどパケ代が不安」という人に「そのぶん(だけ)は映画会社が持ちますよ」と案内することができます。あるいは、企業が社員に対して、特定アプリの通信費だけ肩代りして、そのほかの私用アプリ利用は個人請求にするとか。AT&T が引き合いに出している 1-800 は日本でいうところのフリーダイヤルで、こちらも実際には企業側が通話料を負担する仕組みです。

スポンサーされるユーザからしてみれば、パケ代の不安なくコンテンツやアプリを楽しめる。スポンサーする企業からしてみれば、ユーザにパケ代の不安を抱かせずにコンテンツやサービスを提供することができる。AT&T モビリティの Ralph de la Vega CEO に言わせれば「企業にもユーザにもウィン-ウィン」となります。

と簡単に終わらせるわけにいかないのは、これがネットワーク中立性を脅かすプログラムになりえるからです。ネットワーク中立性とは、アプリやサービスなど通信内容や通信先によって、通信速度などを差別しないという考えかた。P2P 利用の帯域を絞るというような中立性に反するような事象もすでにありますが、幸いにも今のところ大っぴらに「提携外のサービスと通信したらパケット代は倍にします」というような話は耳にしません。

しかし Sponsored Data プログラムが実現すれば、仮に豊富な資金力を持つ動画配信サービス企業があったとすると「うちの動画を見るぶんはパケット代請求なし!」と本プログラムを利用することで、中小の動画配信サービスはもれなく死にますし、今後新しい動画配信サービスも出てこなくなります。

あるいは、たとえば土管以上の存在を目指す通信キャリアがあったとすれば、自社サービスとの通信費だけ無料もしくは安価にして、他との通信費は法外な設定にする ということも考えるでしょう(自社マーケットからのアプリダウンロードだけはパケ代不要!)。さらに、万が一にも通信キャリアに強い影響力を持つ端末メーカーがあったとすると、その端末メーカー用のプランでは特定サービスだけ安価に、競合するサービスでは価格が高くなる、というような話も出てくるはずです(うちの地図アプリは通信料なしで使えます!)。

もちろん、今回の発表はスポンサードの仕組みだけですので、ユーザから見れば美味しい話、フリーランチが増えるだけという見方もできます。ですが偶然にもこのプログラムが普及した段階で、スポンサードされない通信料は値上げ、定額プランで利用できるパケット量が縮小、というようなことがないとも限りません。

そうなると究極的には、ユーザがどのアプリやサービスを利用するか、実質的に決めるのは通信キャリアとそこにお金を出す企業次第ということになってしまいます。これは資金力のないサービスやアプリ、そのユーザにとって不幸というだけでなく、今後のネットベンチャーはパケ代のスポンサー有無というハードルを乗り越えて新サービスを売り込まなければならず、結果的にネットの進化を妨げるということにもなりかねません。

ネットワーク中立性を訴える団体 Public Knowledge はすぐさまこのプログラムを批判、連邦通信委員会(FCC)による消費者保護が必要と説いています。海外の動向ではありますが、日本でもそのまま導入できてしまいそうな仕組みなだけに、今後どのような進展があるのか注目です。
 
 

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