1300年の歴史とIoTと下心、光枡プロジェクトを追う(最初は賛同が得られなかった編)

Takako Ouchi
Takako Ouchi
2015年08月11日, 午前 11:05 in hikarimasu
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7月7日にMakuakeでクラウドファンディングがスタートした「光枡」。先日お伝えしたように、Engadget 電子工作部でおなじみ情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の小林茂教授らが、岐阜県大垣市で進めてきた「コア・ブースター・プロジェクト」発のプロダクトです。今回は3回に渡って、この光枡プロジェクトを追跡しました。

最初は賛同が得られなかった!?

光枡のチームは、基本的に

・ものづくり担当:大橋量器
・デザイン/撮影制作担当:サンメッセ
・ハードウェア担当:トリガーデバイス
・プロジェクト管理/ソフトウェア担当:パソナテック

の4社が構成するチームです。

実は光枡のアイデアは最初、誰の賛同も得られなかったといいます。もともと枡が大好きだった井戸さんが「枡が光ったらすごい、絶対にいい!」とアイデアスケッチで発表するも「誰も相手にしてくれなかった」そうです。しかし諦めきれず、逆に発奮して家にあった枡を使って光る枡をプロトタイプで作ってしまいます。そして翌週持って行ってメンバーに見せると、そこで雰囲気が変わったといいます。

井戸:いまのは中が光る仕様で、持ち上げて顔に当てないとわからないんですが、この最初のプロトタイプは外が光るものです。外側が光っていると、すごく遠くからでもキラっと光って見える。あいつ何持ってるんだ、変な枡で飲んでるぞって。そういう体験したいなというのがあったんです。もともとお酒を飲むので、枡が好きなんですね。マイ枡も自宅にたくさんあります。枡で何かというのが強かったんです。木なので、薄いものであれば透過するというのは、何となく経験上わかっていて。薄い木を使って、光る枡が作れるんじゃないかと。

井戸さんは、もともと手を動かしてものを作ることが好きで、よく電子工作もするそうです。それで、とりあえずやってみることにしました。アイデアスケッチで伝わらなかったのもそうだし、自分ではたぶん光ると思っていてもやってみないとわからないというのがあったそうです。


最初のプロトタイプ、横の面そのものが赤く光る

大橋:やっぱり現物があると違うんですよね。あ、光るじゃんって。そこで思いが一緒になったというか......。これ、もし光って、飲み屋さんで隣に女子がいたらって(笑)。

その翌週には大橋さんが枡をスライスしたもの、佐藤さんが基板を作ってきて、その時点で光る枡が半分できていました。これが10月のこと。このあたりで外を光らすのは難しいということがわかってきて、内側を光らせる形にシフトします。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA2つのパーツにわかれた枡

前述のように、コア・ブースター・プロジェクトの発表会後、2014年の1月に発表。NHKなど、メディアでもたびたび取り上げられます。しかしその後、発売予定は「2014年4月発売」、次に「夏には...」と延びていきます。機能を盛り込んだ形のあるプロトタイプから製品にするには、「半分できている」と思える状態だとしても、やはり生半可なものではないということだったのです。

製品として作り込む

まず、基板を格納している部分と枡として使用する部分の境目、ここをなくしたいというこだわりがありました。枡と基板の格納部分(底部)が別モノに見えるのは「なし」、そこで、境目の底に入れる板は薄く削ってもらったものを使いました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA底板が薄く削られている

しかし、耐久試験として実際に井戸さんが使用して日本酒を飲んでいると、2日目には漏れてきてしまいました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA耐久試験の結果、漏れてしまった薄板の枡

「これじゃだめだ」と、塗料を塗る、下だけ乳白にするなどいろいろ考えて、最終的に薄く削った二枚の板の間に和紙を挟み込んだ特殊な素材に、液体ガラスを塗りました。さらに、底と同じサイズだと継目が見えてしまうので、ひと回り小さなサイズにカットして底に入れ、継目が見えないようにしています。

当初から井戸さんのイメージは高級車「レクサス」、高級感は譲れない部分でした。このあたりは、井戸さんのこだわりとそれに応える大橋さんの絶妙なコンビネーションだったといえるでしょう。この液体ガラスの加工は、大橋さんの会社の製品(カラー枡)でも使っているもの。

大橋:液体ガラスはあまり一般的なものじゃないんですが、撥水性とか、身体に悪くないということでたまに使います。ウレタンとか、しっかりしたものでやると大変なコストがかかってしまうので、簡易的にフィニッシュさせるために使ったりします。

そして、遮光板です。これも、四隅にスリット状に光らせたいというこだわりがありました。黒い紙をいろいろなサイズに切り出し、それを薄板の裏面に貼り付けて光る様子をシミュレーションし、光るスリット幅を決めたり、3Dプリンタで出力したり......。製品化しようとなったときに、やはりこれでは高級感が出ないという話になって、プラスチック樹脂を使うことになりました。

3Dプリンタで出力したカバー


プラスチック樹脂のカバー

OLYMPUS DIGITAL CAMERA基板(プロトタイプ)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA基板(最終版)

基板を格納する部分と枡の本体部分の固定は磁石です。これは1つの向きにしかはまらないようになっています。厳密にサイズを合わせたとしても、素材が木なので、伸び縮みが発生します。本来の場所とは異なる向きではめたことにより、歪みや耐久性など、製品としての欠損につながることは避けなければなりません。では、どうしたかというと、磁石は四隅に入れているのですが、1箇所だけN極とS極を逆にしました。これも、表側に印のようなものを見せたくない、というこだわりです。

四隅の穴に磁石を入れる


回路設計は「光るRokuro」の加藤良将さんが、すでに別件に作っているものを応用するという形でさくっと組んでくれたといいます。

小林:加藤君や佐藤さんみたいな、オールマイティな、いわゆる製品をやってきた人ではないけれど、アイデアがあったときに実際に電子回路まですばやく作ってしまうような人がいたので、それがやっぱり大きいですね。

と、振り返って小林さんは言います。
とはいえ、当初使っていたBLEモジュールが製造中止になったり、大量のLEDが手に入らなかったり、作り込み、量産化の段階での苦労はたいへんだったと思います。

佐藤:量産にあたって、パーツが大量に仕入れられるものかどうかというのは重要ですね。一般的なメーカーは部品供給の確保があっての設計なので、非常に部品に依存した設計になると思います。一方、プロトタイプはとりあえずできるツール、パーツで進んでしまうので、それが本当に5000個あるのかというと、いやないですね、みたいな話になってしまう。​

そのときは部品が買えても翌月には買えない、リードタイムが半年となってしまうと、抵抗のような汎用性がある部品なら他で調達できても、そうではないパーツの場合、そこでいきなりストップしてしまいます。特に、プロダクトを小さくしていこうとすると、行き当たりやすいといいます。

いよいよ量産化の動きに入っていきますが、そちらは後編で詳述します。Engadget 電子工作部にも関係の深い話がどんどん出てきますのでお楽しみに。
大内孝子(おおうち・たかこ):フリーライター/エディター。主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)がある。

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