ホルモン産生する3Dプリント卵巣・脳内移植用プロセッサ・「エイリアンの巨大建造物」の星で急な減光現象 #egjp 週末版81

宇宙と体内

Munenori Taniguchi
Munenori Taniguchi, @mu_taniguchi
2017年05月22日, 午前 06:00 in weekend
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拾いきれなかったニュースをダイジェスト形式でお伝えします。今回は「ホルモン産生する3Dプリント卵巣」、「ARMの脳内移植用プロセッサ」、「KIC 8462852で急激な減光現象が発生中」などをまとめました。

地球上の通信電波が宇宙放射線を遮る?

地球上では人々の生活から産業まであらゆる場面で様々な電波が利用されています。Space Science Reviewsに掲載された論文によると、そのうち潜水艦などが使う超長波(VLF)帯の電波が、大気圏の上層大気とヴァン・アレン帯の相互作用の仕方に影響を与えているとのこと。

ヴァン・アレン帯は太陽からの高エネルギー粒子が地球の磁気圏に取り込まれて形成されると考えられ、陽子が多い内環と電子が多い外環の2重構造になっています。このうち外環の内端部が大気圏のいわゆる電離層とプラズマ圏の伸縮に作用しているとされます。

研究では、2012年に打ち上げられたヴァン・アレン帯探査機(VLP)による観測データから、地上で使われるVLF帯の電波がヴァン・アレン帯を地球から遠ざけるように作用していたことがわかったとしています。

また2015年に発生した大規模な太陽嵐はプラズマ圏の一部をバナナの皮を向くように吹き飛ばしたものの、ヴァン・アレン帯の位置には大きな影響がなかったとのこと。研究では、これはVLF波が地球に到達する前に太陽からの放射線の向きを変えたためと捉えています。

ただ、VLF波には激しい太陽風に含まれる陽子を逸らすほどの効力はなく、まして大規模な太陽嵐の影響を防ぐことはできないと考えられています。米海軍は2017年後半にDSX(科学実験実証)衛星の打ち上げを計画しており、搭載するVLFトランスミッターが恒星間放射線から宇宙船を保護するのに有効かを確認する計画です。
[Image : NASA/Reuters]
[Source :
Space Science Reviews]

幹細胞から血液を作り出すことに成功、白血病治療などに光

幹細胞はあらゆる種類の細胞に分化可能な性質を有します。ハーバード大学ののジョージ・デイリー教授らのチームは、この性質を利用して造血幹細胞への分化を促す物質を探し当てました。研究では、まず血液生産に関与する遺伝子を制御するタンパク質を同定し、それを実際にマウスの幹細胞に適用したところ、新しい赤血球と白血球と血小板を作り出すことが確認できました。

一方、ニューヨークのWeill Cornell Medical CollegeのRaphael Lis氏のチームもまた、胚の中のある部分が動物の最初の造血幹細胞になるとの考えから、マウスの肺壁にある胚とよく似た性質の細胞を使って、造血幹細胞を作り出す4つの要因を特定したと発表しました。

これらの研究の最終目標は、輸血に使える完全な血液を生産可能とすることです。とはいえ現在はマウスの幹細胞から造血幹細胞を作る事ができた段階なので、臨床試験を経て実用化に至るにはまだ数年がかかる見込みです。

なお、New Scientistなどはこれら造血幹細胞が突然変異するとがん化する可能性があると指摘しています。現時点では血小板製剤および赤血球製剤を生産できるようにするための研究が進められているとのことです。

[Image : Jan Bruder]
[Source :
Nature]


ホルモン産生が可能な3Dプリント卵巣でマウスが出産

幹細胞とともに注目される最先端の研究が、3Dプリント臓器の分野。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学院と同マコーミック工学院の研究チームは、ホルモンを産生し妊娠を可能ととする3Dプリント卵巣を開発しました。マウスの卵巣をこの3Dプリント卵巣と置き換える実験では、正常な排卵を確認し、最終的に問題なく出産、授乳までしたとのこと。

3Dプリント卵巣は初の生合成卵巣ではないものの、実際には卵巣そのものの形をしておらず、ゼラチン質でできた3Dプリントゼラチンスキャフォールディングと称する方法で形成された最初のものです。以前は卵細胞を入れる容器となる部分にゲル状の物質を使っていたものの、それは分解されてしまう事が多かったため、より安定した環境となるように改良されています。

研究メンバーのRamille Shah氏は、ゼラチン質の加工温度を調整することで、3Dプリントの際に分解せず複数の層をうまく形成できたとしています。

この技術も、まだマウスで成功した段階なので人の出産にまで適用可能とするにはまだまだ遠いものの、がん治療下であったり小児がんの後遺症ホルモンの異常を抱える女性に対して、正常なホルモン産生を誘発できるようになれば、将来的に体外受精を不要にすることもできると考えられています。

[Image : Northwestern University]
[Source :
Northwestern University]

ARM、脳内移植用SoCで感覚のある義手を実現へ

 
チップメーカーのARMとワシントン大学感覚運動神経工学センター(CSNE)が、脳の内部に移植するための統合チップを開発しました。このチップは義手や義足などからの感覚情報を脳に伝え、本物の手足のように感じさせることを目的とします。

メインのチップはARMが製造するなかでも最小のCortex-M0プロセッサーで、これが脳からの信号を解釈して義手や義足に伝え動かします。またその逆方向の情報伝達も担います。これは、医療研究機関 Battele とオハイオ州立大学が開発しているものの脳内永久埋め込み版と考えればわかりやすいでしょう。

まだ技術的な課題は多いものの、この埋め込みチップ方式の潜在的メリットは、パーキンソン病や、脳卒中による障害などに苦しむ人の助けになることが期待されます。

[Image : Photothek via Getty Images]
[Source :
ARM]

「エイリアンの巨大建造物」KIC 8462852に急激な減光現象が発生、スペクトルを観測すれば減光の謎が解ける?

 
2015年に謎の減光現象が発見されて以来、忘れた頃に話題が出てくる、地球から1480光年離れた星KIC 8462852。ときに急激にまた緩やかに起こる規則性のない減光現象の原因はいまだ謎のままです。

5月19日、KIC 8462852に突如として急激な減光現象が現れました。研究者たちは現在この減光現象を調べていますが、1日にして発生したこの減光現象を観測するためには予約がたて込んでいる世界の観測用望遠鏡のうちのどれかをおさえる必要があり、通常なら数か月は待たなければならないものの、KIC 8462852の場合はその特異な性質の解明のため、まずスウィフト宇宙望遠鏡での観測がすぐにも可能になったとのこと。

もし、KIC 8462852の減光現象のスペクトルを記録できたなら、もしかするとその原因の手がかりをつかめるかもしれないとのこと。スペクトルの変化を見れば、それが恒星の手前に惑星など固体の障害物があるのか、チリやガスが横切っているのかがわかります。さらにその成分までも確認できる可能性が考えられるとのこと。

KIC 8462852を発見したケプラー宇宙望遠鏡はスペクトルではなく明るさを観測するための望遠鏡でした。スペクトル観測用の望遠鏡を使うことで、その減光現象の謎が解けることに期待したいものです。また、たとえ減光現象の原因までは分からなかったとしても、何が関わっているかということがわかれば、次の研究者が原因を探し当てる下地にはなるはずです。

[Image : NASA/JPL-CalTech]
[Source :
Popular Mechanics]

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