名門私立 洗足学園小学校に見るデジタルネイティブ最新事情

小学2年生から自分専用のiPadとApplePencilを授業で活用

相川いずみ
相川いずみ
2019年11月25日, 午後 01:00 in education
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11月15日、神奈川県の私立洗足学園小学校にて、iPadを活用した公開授業が行われた。今回見学したのは、2年生の国語と5年生の社会。どちらの学年も、一人一台のiPadとApple Pencilを活用していた。

洗足学園では、小学2年生の9月から、全員が家庭ごとにiPadとApple Pencilを購入し、教材として日常的に授業で使用している。

5年生の授業は、社会の歴史。内容は、歴史人物を使ってオリジナルのカルタを作るというものだ。カルタの読み札の短歌と、対になる絵札の両方を自分で考え、デザインも行う。絵札のイラストに関しては、ネットから検索して写真やイラストなどのフリー素材を活用してもよいし、自分でイラストなどを描くことも可能だ。

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授業では、カルタ作りにAppleが提供しているプレゼンテーション用アプリ「Keynote」を使っていたほか、ブラウザーやスケッチアプリなどを駆使し、思い思いに制作していた。なかには、iPadの画面を分割して閲覧・表示できる「Split View」の機能を使い、検索した情報を参照しながら、Keynoteで作業している子供もいた。

現在の5年生は、家庭での一斉購入が始まる前の学年だったため、使用しているiPadは個人のものではなく、学校が一括購入した共有のiPad Proだ。それでも、ほぼすべての授業で何かしらiPadを活用しているということで、非常に操作に慣れており、道具のひとつとして使いこなしている印象を受けた。

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▲iPadで2つのアプリを同時に表示する「Split View」機能も難なく使いこなしている。

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▲短歌の「5・7・5・7・7」を、指で数えながら考える。

一方で、子供たちの様子を見ていると、iPadの検索だけに頼るのかと思っていたのだが、教科書や副教材などの紙の本、自分で授業中にメモしたノートなども参照している姿が多く見られた。

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▲参考書やノートなどを調べつつ、カルタづくりに専念する。わかりやすくまとめられたノートのきれいさにも感激した。

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▲完成したカルタ。歴史の授業で習った知識を総動員し、クラス全員で作り上げた。作ったカルタは印刷し、実際に遊ぶところまで行うという。

2年生は個人用iPadで国語の授業

同時限に行われていた2年生の教室を見に行くと、こちらは国語の授業でiPadを活用していた。2年生は家庭購入をしているため、全員が個人用のiPadとなる。そのため、iPadのケースも一人一人異なっており、ApplePencilにはシールを貼るなど、取り違えない工夫も見られた。

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2年生の授業は、国語の「わかりやすくせつめいしよう」という単元。紙コップや折り紙などを使っておもちゃを自分達で作り、写真と文章で、その作り方を説明する。「ざいりょうとどうぐ」から始まり、「まず」「つぎに」といった書き出しの文を、5人1組の班で1ページずつ担当して、班ごとに完成させる。

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▲ここでも使っているのは「Keynote」だ。操作が簡単なので、低学年でも使いやすい。

授業の様子を見ていると、一人でおもちゃを作っているところを、もう一人が撮影するなど、自然に班の中で分担ができている。また、みんなで相談したり、協力しながら作業を進めており、2年生ながら自然に協働学習が実現されていた。

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iPadとApplePencilは自宅にも毎日持ち帰り、宿題などにも活用しているということで、ApplePencilの使い方にもとまどうことなく、筆記道具のひとつとして使っていた。授業を見るまでは、低学年が授業で使いこなすのは難しいのでは......と思っていたが、実際の授業を見てみると、それはまったくの杞憂で、指導次第では非常に有効な教材になりうることを改めて感じたほどだ。

デジタルとアナログを使い分ける

授業後、洗足学園小学校教頭である赤尾綾子氏にお話をうかがった。

「当初、ICT教育にくわしい教員は誰もいなかった」という同校で、最初にiPadを導入したのは2016年。まずは教員が使ってみるために、全教員へiPad Proが支給された。その後、児童向けの共有用iPad Proを45台導入し、授業での活用を始めたという。

そもそも一人一台のタブレット導入を検討した背景には、子供たちの荷物が多く重かったことがある。私立ということもあり、片道1時間ちかく通学している児童もいたため、子供たちの通学の負担を少しでも軽くしたいという思いから、タブレットでデジタル化していくことを検討した。

また、iPadの活用が進むにつれ共有の45台では足りなくなったこともあり、2018年4月からは、3年生への進級前にiPad ProとApplePencilを各家庭で学校教材として購入することが決定した。2年生から操作を覚えたほうがよいという判断から、2019年度からは学年を下げて、2年生の9月から個人用のiPadとApplePencilを活用している。

同校でiPadを選んだ理由として、赤尾教頭は「直感的に操作ができること」を挙げている。「元々の年間のカリキュラムが多いため、機器自体の操作がわかりやすく、覚えるのに時間がかからないものを検討した。その点、iPadは操作が簡単で、ApplePencilを使えば、キーボードの操作が覚束ない子供たちでも、ストレスなく文字を書くことができる」という点も大きなメリットだったという。

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また、2年生から始めるという時期の選び方や活用方法についても、同校ならではの一貫した教育へのこだわりと思いが込められている。

「1年生の間は、紙のノートと鉛筆でしっかりと文字を書くことに慣れるため、iPadは共有のものをたまに使う程度にしています。また、iPadは全ての授業で活用していますが、全学年において、唯一「漢字練習」だけは必ず紙と鉛筆を使っています。このように、アナログとデジタルの利点をそれぞれ使い分けています」と、赤尾教頭は話す。

「iPadで子供たちの学びが変わった」

筆者は、全国の小学校を取材しているが、今回洗足学園小学校を取材して印象に残ったのが、教材の豊富さだ。社会でもオリジナルの副読本などが用意されており、公立の小学校の内容と比べると、進度も深さも大きく違うことを感じた。同校では、難関中学校を受験する児童も多く、今回の歴史の授業ひとつとっても、中学受験の進学塾に近い内容になっていた。

そうした進んだ授業を行いつつも、iPadを活用して自らの手を動かして、教室の仲間とともに作品を作り上げていく経験は、自分が学んだ知識を活用し、かつクリエイティビティを高めていく効果も期待できそうだ。

赤尾教頭は「見ていただいた5年生の歴史の授業は、本当は一人ひとり作業するものなので班ごとにならなくてもよいのですが、あえて少人数の班で机を組むことにより、得意な子に聞きに行ったり、相談し合ったりするようになりました。結果、先生も知らないような機能を、いつの間にか使いこなしていることもありました」と話す。

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▲体育の授業でもiPadを活用。遅れて再生されるアプリを使い、フォームのチェックなどを行っている。

同校では、取りまとめの担当者は決めているものの、教員全員でICT機材や教材の研究を行い、得意な教員が授業のサポートに入るなどして協力しあっている。また、毎月教員向けの勉強会「ICT Café」をするなど、教員が学ぶ場を設けている。

「モバイルデバイス管理(MDM)などは業者に一括してお任せし、教員は教材研究に専念しています。ICTを活用し、授業を進化させていくことは、学園の方針にも適っています」

さらに、赤尾教頭はiPadを導入した最大のメリットとして、「子供たちの学び方が変わったこと」と話す。「これまでは、教師がおもしろい授業を展開し、子供たちがそれについてくるというスタイルでしたが、iPadを導入したことにより、子供たちだけで授業が進んでいくようになり、学びが大きく変わりました。コミュニケーションにもつながり、子供たちの学びが深まる効果もあります。また、これまで発言が少なかった子がiPadを活用した授業では活躍する場面も多く、子供たちの満足度もあがり、学習意欲が向上していることを感じています」。

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洗足学園小学校の導入事例は、iPad一式を各家庭で購入するなどの点から、公立小学校で同じような環境をつくることは難しいかもしれない。しかし、低学年からのiPadとApplePencilを授業に活用している例としては、大いに参考になる点も多いだろう。

また、教員ができること、できないことをしっかりと切り分け、管理などの専門分野は業者に一括して委託し、学校側は教材研究に専念するという点も、同校がiPadの活用を成功させている一因と言えそうだ。一方、プログラミングについては「来年度以降も、必要最低限行っていく予定」とし、iPadはプログラミング教育のためでなく、あくまで教材のひとつとしてフラットにとらえて活用している点も印象的だった。

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▲共有のiPadは、クラスの「iPad係」が配布や片付けなどを行う。

授業後、5年生の児童に話を聞いてみると、「iPadは紙より使いやすい。画材などがその場になくても、iPadなら色々な画材を使うことができる」と話してくれた。

洗足学園小学校では、3年生から単科制をとるなど、「確かな学力を培う独自の取り組み」を行っている。iPadとApplePencilの活用も、よりよい学習につなげるための、同校ならではの取り組みといえるだろう。

 

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