ドコモ「5G」基地局アンテナにこだわりアリ。曲げる? 透ける? 反射させる?

扱いづらい電波のためにあの手この手

石井徹(TORU ISHII)
石井徹(TORU ISHII), @ishiit_aroka
2020年01月24日, 午後 04:00 in 5G
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ドコモ 5G
ことし2020年の春に日本でもいよいよスタートする「5G」。華やかなARや自動運転などへの利用が期待されますが、実は5Gでは電波を飛ばす基地局の"アンテナ"にもさまざまな工夫がこらされています。

5Gで高速な通信をするために、これまで使われていなかった新しい周波数帯が使われるようになります。その電波は大きな帯域幅(≒高速な通信)が確保できる反面、壁などで反射するとすぐに弱くなってしまうという特性があります。

いわばじゃじゃ馬のような性質をもつ新しい電波を使いこなすため、新しい鞍......すなわち基地局のアンテナも技術にも新たな技術を使う提案がなされています。NTTドコモの技術紹介イベント「DOCOMO Open House 2020」のブースを巡って、5Gの電波を行き渡らせるための代わり種アンテナを集めてきました。

■ペラッペラで折り曲げられる「フレキシブルアンテナ」

5Gで使われる新しい周波数帯・ミリ波は、とにかくまっすぐ進む性質を持ちます。その反面、反射を重ねるとすぐに拡散してしまうのでコントロールがしづらいという特性がくせ者です。

ドコモアンテナ

「電波を曲げられないならば、アンテナを曲げてしまえばいいのでは?」という発想で挑むのが、「ミリ波向け超低伝送損失フレキシブルアンテナ」。AGC(旧旭硝子)がドコモやエリクソンとともに開発を進めるこの製品は、名前の通り、柔軟さが特徴です。

フッ素樹脂のシート状基盤に小さなアンテナ素子を並べたこのアンテナは、設置場所にあわせてシートを折り曲げてることができます。ビームフォーミング(複数のアンテナで位相を制御して指向性を変えスマホに電波を集中的に当てる機能)はできませんが、電柱のような筒状のものに巻けば電柱の周辺一帯に電波を飛ばすことができます。また、アーケードの屋根の内側に貼ってエリア化も可能。まっすぐ飛ぶミリ波帯の特徴を生かして、ある程度の広い範囲をカバーできる技術と言えます。

ドコモアンテナ

■透明だけど電波入ってます「ガラスアンテナ」

障害物が多い都心のビル街には、たくさんのアンテナを立てないとカバーできない場所の典型例。ですが最近では景観を重視するビルなども多く、目立つところにでーんと携帯電話のアンテナが設置しようとするちとNGがでてしまうことも。

ドコモアンテナ

そこでドコモがACGと開発したのが「ガラスアンテナ」です。このアンテナはビルの屋内に取り付けて、窓ガラス越しに電波を発射して外をエリア化するというアンテナ。

2019年からドコモの4G LTE向けに実戦投入されていて、現在5G向けの開発も進んでいます。海外輸出も視野に入れていて、NTTドコモの協力の下、シンガポールでの実証実験も行われています。

■ミリ波をきれいに反射してエリア拡大「メタマテリアル反射板」

"高い周波数帯が遠くまで届かない"という現象がなぜ発生するのかというと、電波は逆位相でぶつかると打ち消してしまうという性質を持つため。そのため電波が壁などにあたったときに反射でぶつかり合って弱くなってしまいます。

ドコモアンテナ

それなら、「電波をきれいに反射できれば良いのでは?」というアイデアを具現化したのが「メタマテリアル反射板」です。

「メタマテリアル」とはナノメートル単位の微細な構造の立体物のこと。このメタマテリアルは、ある周波数帯の電波を狙った方向に反射させられるという性質を持ちます。メタマテリアルを多数並べれば、狙った方向に反射できる、というわけです。

電気興業のメタマテリアル反射板は、シート上で壁紙の下などに敷くことができ、障害物が多いオフィスの中などに設置するのに適した製品です。5Gの電波を行き届かせることができます。

このシートは5Gで使われる28GHz帯に適した設計となっていて、厚さは数mmほどです。

ちなみに、たとえばWi-Fiの5GHz帯のような別の周波数帯でこのメタマテリアル技術を使えないのかと聞いてみたところ、「5GHz帯に適した設計にすると、厚みが増してしまい、扱いづらくなる」(電波興業のブース担当者)との回答。反対に、同じミリ波でも60GHz帯のようなより高い周波数帯では、もっと微細な設計が必要となるそうです。

■これが"5Gのケーブル"? 「曲がるアンテナ」

ドコモアンテナ

NTTドコモが開発した「曲がるアンテナ」は、5Gのミリ波のまっすぐ進む性質を逆手にとった技術。樹脂製のケーブル(誘電体導波路)の中で電波を通し、曲がった部分だけ通信できるようにする代物です。

誘電体導波路は本来、電波を遠くまで運ぶためのケーブルですが、一定以上に曲げると電波がぶつかってしまい、一部がケーブルから漏れ出してしまいます。

電波が漏れ出すということは、通信できるということ。つまり、ケーブルで効率的に運びつつ、必要なところだけ一時的な5Gエリアを作れるという仕組みに応用できます。

ドコモアンテナ

「曲がるアンテナ」の技術はいまだ実験段階ですが、たとえば工事現場で一時的に5Gを使えるようにしたり、オフィスでデスクの周りだけ5G化したりといったような、ピンポイントで5Gを使いたいというニーズに答えられるとしています。


 

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