「依存トライアングル」がアップルの中国脱却を困難にしている(WSJ報道)

ジョニー・アイヴ哲学も一因という指摘も

Kiyoshi Tane
Kiyoshi Tane
2020年03月4日, 午前 11:55 in apple
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China
Kevin Frayer/Getty Images

次期フラッグシップiPhone 12(仮)シリーズを含むアップル製品の生産は、中国から発生した新型コロナウイルスの感染拡大により遅れが生じているとたびたび報じられています。その原因は、アップルの主要サプライヤーが中国に拠点を置いており、現地での2週間以上もの操業停止や移動禁止などの制約に直面しているためです。

中国に生産を集中させることがリスクが高いとは分かっていたはずが、なぜ方針を変更しなかったのか。アップルが中国への依存を辞められない背景を、米Wall Street Journalがつぶさに検証しています。今回のウイルス感染拡大のずっと以前から、同社のオペレーションチームは中国への依存に懸念を表明しており、2015年の時点で少なくとも1つの製品組み立て工場をベトナムに移転するよう提案していたとのことです。それにより現地の労働者を訓練し、中国国外に部品供給業者の新たなクラスターを作成する複数年のプロセスを開始できるからというわけです。

しかし、アップルの経営幹部はこの提案を拒否したとされています。同社にとって2番目に大きな市場であり、自社製品のほとんどが組み立てられている場所から移転するのは難しすぎるという理由です。

それでも最近になってアップルは小規模な生産移転の実験を開始しました。ベトナムでAirPodsを組み立て、インドでiPhoneを、米国内で新型Mac Pro製造などを試みましたが、かえって多くの困難が確認されたとのことです。

先月末のFox Businessによるインタビューで、同社のクックCEOは「中国は新型コロナウイルスを制御下に置きつつあると感じる」として、サプライチェーンを移転する必要はないとの趣旨を発言していました。もしも変更するとしても「何らかの抜本的な変更ではなく、いくつかのつまみを調整する程度だ」と述べています。

中国国外へのサプライチェーン移転が困難な理由は、アップルのサプライヤー大手Foxconnの元幹部であるダン・パンジカ氏も次のように証言しています。「25万人以上を収容できる工場を建設できるのは、中国の人口あればこそです。アップル製品の生産の大部分を行う中国の出稼ぎ労働者の数は、ベトナムの総人口1億人を超えています。インドは最も近い存在ですが、道路、港などのインフラは中国よりもはるかに遅れています」とのことです。

そうした条件をクリアして生産拠点を移転できたとしても、中国国内でのデバイス販売に影響を与える可能性も指摘されています。中国市場はアップルの総収益の5分の1近くを占めており、それはアップルが中国で雇用を創出していることと表裏一体の関係にあるからです。

アップルと中国の関係は、Foxconnが2001年にiPodを、2007年にiPhoneの製造をスタートした頃にまで遡ります。アップル製品の販売が拡大するにつれ、製品を組み立てる工場も並行して建設され、そのために必要な労働者を中国政府が集めるという具合です。

そしてWSJは、アップルとFoxconnおよび中国政府は「相互依存関係の三角形」を作り上げたと表現しています。アップルはデバイスの組み立てをFoxconnに、デバイス購入を中国の消費者に依存する。かたやFoxconnは、中国の莫大な労働力と政府による工場立地の確保に頼って事業を築き上げる。そして中国は、国内最大の民間雇用主であるFoxconnと、新技術サプライヤーを訓練するアップルに注目するという関係が述べられています。

それでもアップルは、iPhone 11の一部をインドで組み立てる計画を急いだとのこと。これは長年、iPhone最新モデル組み立ての中国依存からの脱却といえる動きでしたが、たった1つの製造ラインを立ち上げる前に中止したと伝えられています。インドは熟練労働者や堅牢なインフラを提供する準備ができていなかったからであり、今年後半の「最も高価なiPhone」すなわちiPhone 12シリーズも、生産拠点をインドに移す可能性は低いとされています。

その一方で、ライバルのサムスンはGalaxyシリーズの組み立てをほとんど中国国外に移転済みです。理由の1つは中国での同社スマートフォン市場がないも同然になったこともありますが、iPhoneよりも組み立てが簡単だからとも指摘されています。

その点につき、ハイテク製品の分解でおなじみのiFixit創設者は、サムスン製品が接着剤を使用しており、小さなネジを挿入するよりも自動化が簡単だと解説しています。WSJはそうしたiPhoneの精緻な構造が、元チーフデザイナーのジョニー・アイヴ氏の「優れた製品には、外部の見た目や質感と同じぐらい内部構造にも精度と注意が必要だ」という哲学に基づくと示唆しています。

新型コロナウイルスはいずれ時が解決するかもしれませんが、アップルを含む83社に部品を供給する中国サプライチェーンがウイグル人の「強制労働」を利用しているという、人権侵害にも関わる報告も発表されています。今後アップルも、中国依存からの脱却が迫られるかもしれません。

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