ソフトバンクの5Gになぜ「Xperia 1 II」と「アンリミテッド」がなかったのか(佐野正弘)

発表を総括

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年03月5日, 午後 06:45 in 5g
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2020年より国内でも商用サービスが始まる、次世代モバイル通信規格の「5G」。その先陣を切って3月5日にソフトバンクが発表会を実施し、3月27日より5Gを開始することが明らかにされました。

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▲ソフトバンクは2020年3月5日に5Gのサービス発表会をオンラインで実施。携帯大手3社の先陣を切って、3月27より5Gのサービスを開始することが明らかにされた

そこで発表された内容は大きく3つありました。1つは5Gを活用したコンテンツやサービスを配信する「5G LAB」で、XR技術や多視点カメラを活用したアイドルのライブやスポーツの試合の配信や、エヌビディアのクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」を提供するとしています。5Gの高速大容量通信をアピールするにはXRやクラウドゲームなどを活用するというのは、国内外の多くの携帯電話会社に共通しているものなので、ソフトバンクがこうしたサービスを提供するのは妥当だといえます。

ですが妥当ではなかったのが、他の2つに関する発表です。1つは5Gに対応したスマートフォンで、ソフトバンクは5G対応スマートフォン4機種を3月27日より順次販売するとしていますが、そのラインアップは従来とかなり傾向が異なっていたのです。

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▲ソフトバンクの5G端末ラインアップは4機種だが、その顔触れは従来とはかなり異なっている

シャープが既に発表している、8K動画撮影が可能な5G対応スマートフォン「AQUOS R5G」や、専用のケースを装着してディスプレイを2つに拡張できる、LGエレクトロニクス製の「V60 ThinQ 5G」を採用するというのは妥当な所なのですが、意外だと感じたのは残りの2機種です。

1つはZTE製の「Axon 10 Pro 5G」。こちらは海外では2019年に販売されているモデルに、チップセットを「Snapdragon 865」に変更するなど性能面でのアップデートを加えて販売するものとなるようで、その分前述の2機種より価格が抑えられるようです。

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▲ZTEの「Axon 10 Pro 5G」。海外では既に発売済みのモデルだが、チップセットなどがアップデートされ性能は向上しているようだ

そしてもう1機種はオッポ製の「Reno3 5G」。こちらはチップセットに「Snapdragon 765」を採用し、一層低価格で販売されるモデル。実際、ソフトバンクの代表取締役副社長執行役員兼COOである榛葉淳氏は、Reno 3 5Gを「驚くような低価格で5Gを楽しむ、エントリーモデルとして提供したい」と話していました。

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▲オッポの「Reno3 5G」。Snapdragon 765Gを採用したミドルクラスのモデルで、最も低価格になることが予想される

ちなみにReno3 5Gは、国内ではソフトバンクの独占販売なのですが、実はソフトバンクがオッポ製の端末を販売するのも初めてのこと。オッポは日本市場に参入して以降、自社のスマートフォンを携帯大手3社のメインブランドから販売してもらうことに力を入れてきただけに、ようやくその念願がかなったといえるでしょう。

一方で、これまでソフトバンクの"常連"であったにもかかわらず、今回のラインアップから外れているのがソニーモバイルコミュニケーションズです。同社は2月に5G対応スマートフォン「Xperia 1 II」を発表していますが、ソフトバンクは同機種を採用しなかったのです。

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▲ソフトバンクは2019年に実施した5Gのプレサービスで、シャープとソニーモバイルコミュニケーションズ製の5Gスマートフォン試作機を用いてきたが、にもかかわらず「Xperia 1 II」は今回のラインアップに採用されなかった

榛葉氏は「色々な条件などを鑑みて」今回はXperia 1 IIの採用を見送ったと説明していますが、その"条件"は他のラインアップから見えてきます。先に触れた通りAxon 10 Pro 5GやReno3 5Gは価格を重視したモデルですし、V60 ThinQ 5Gも、2画面スマートフォンの前機種「G8X ThinQ」が5万5440円と安価に販売されていたことを考えれば、比較的安価に販売される可能性が考えられます。

それゆえソフトバンクは価格重視で5Gのラインアップを揃えたといえ、高額になることが予想されるXperia 1 IIをあえて外したと見ることができる訳です。2019年10月に電気通信事業法が改正され、スマートフォンの値引き販売が難しくなっているだけに、5G対応スマートフォンの販売を広げるには端末価格を重視する必要があったのでしょう。

結果的に、Xperia 1 IIの販売を期待していた人達には不満が残る結果となったことは確かですが、榛葉氏は「(Xperiaは)いまもユーザーの支持があり、議論は継続していく」とも話していました。今後Xperia 1 II、あるいはその後継モデルが採用されるかどうかは、ユーザーの声次第ということになりそうです。

そしてもう1つ、妥当ではなかったのが料金プランです。ソフトバンクは4G向けの料金プランに、5Gの基本料となる月額1000円を追加することで、5Gのサービスが利用できることを明らかにしました。ちなみに8月末までに契約した人は、2年間5G基本料が無料となり、4Gと同じ料金で利用できるそうです。

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▲5Gのサービスを利用するには、4Gの料金プランに月額1000円をプラスする形となるが、8月末までに契約すると2年間は無料になるという

そして2月25日に発表された、4G向けの「メリハリプラン」は、5Gを意識した同社の今後の主力になるであろう料金プランとのこと。その中身を見ると、月当たりの通信量が2GB以下の場合は料金が安くなるなど変化している点があるとはいえ、基本的には従来の「ウルトラギガモンスター+」と同様、月当たりの通信量は50GBで、「YouTube」や「Abema TV」など多くのインターネットサービス利用時にデータ通信量をカウントしない仕組みであることが分かります。

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▲今後の主力となる「メリハリプラン」はアンリミテッドではなく、あくまで通信量上限は50GBで、一部のサービス利用時のみデータ通信量をカウントしない仕組みだ

それゆえソフトバンクの5Gサービスは当初「アンリミテッド」、つまりデータ通信量が使い放題のプランを採用しないことが明らかになった訳です。ソフトバンクの代表取締役社長兼CEOである宮内謙氏は以前、5Gの料金プランに関してアンリミテッドなプランも検討していると話していただけに、これも意外な結果だったといえます。

その理由は5Gのエリアにあるといえそうです。ソフトバンクが発表した5Gのエリアを見ますと、サービスを開始した3月27日時点のエリアは千葉県、愛知県、石川県、福岡県のごく一部で、3月31日時点でもそれに加えて東京都、大阪府、広島県のごく一部で、東京23区でいえば山手線の秋葉原駅から浜松町駅辺りまでと、非常に狭いことが分かります。

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▲ソフトバンクのWebサイトで都心の5Gのエリア状況を確認したところ。ピンクの部分が4月末にエリア化される予定のエリアだが、範囲がかなり狭いことが分かる

2020年夏以降の整備予定とされている場所もかなり点在的で、正直な所2020年中はあまり5Gを利用できないのでは?という印象すら受けてしまいます。そうした状況下でアンリミテッドなプランを提供しても、ほとんどの人は4Gで利用するためネットワークにかかる負担が大きくなってしまうことから、あえてアンリミテッドなプランは避けたというのが正直な所かもしれません。

なぜソフトバンクの5Gエリアがそれだけ狭いのかというと、5G用に割り当てられた3.7〜28GHz帯は周波数が高く、電波が遠くに飛びにくいので広いエリアのカバーに向いていないため。同社では5G用の帯域を、あくまでトラフィックの大きい都市部をスポット的にカバーするのに用い、それ以外の場所はより遠くに飛びやすい4G用の周波数帯を、5Gと共用する「ダイナミックスペクトラムシェアリング」(DSS)という技術を活用してカバーすることを狙っていることから、こうしたエリア展開となっているのでしょう。

それゆえDSSの導入後に同社の5Gエリアは急拡大すると考えられますが、DSSの実現には総務省での認可が必要なのでやや時間がかかります。またDSSでエリアを広げたとしても、4G用の周波数帯はそもそも高速大容量通信の実現にあまり向いていないので、やはり5G用の帯域を使ったエリアも同時に広げていく必要があるのです。

そうしたことからソフトバンクが5Gでアンリミテッドなプランを実現する上では、ネットワーク面で多くの課題をクリアしていく必要があるでしょう。5Gのサービスが始まっても「5G時代」が訪れるにはまだ時間がかかるということは、我々も肝に銘じておいたほうがよいかもしれません。

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