Uber Eats 対 出前館、激化するフードデリバリーを巡る戦い(佐野正弘)

日本でも存在感を高めているフードデリバリーサービスについて解説します

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年04月23日, 午前 10:30 in business
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毎度書き出しが同じ内容で恐縮ですが、新型コロナウイルスの感染拡大が、政府が自宅待機を要請するなど多くの人の日常生活に大きな影響を与えていることは、執筆時点(2020年4月19日)でも変わりありません。

その影響によって利用が拡大しているサービスとして、これまでライブ配信やゲームなどを取り上げてきましたが、今回はフードデリバリーサービスについて取り上げたいと思います。

スマートフォンアプリなどからオンラインでさまざまな食べ物を出前注文できるフードデリバリーサービスは、国内でもここ最近人気が急上昇していましたが、特に新型コロナウイルスの感染拡大で自宅待機する人が増えて以降、利用が急増しているようです。

しかも新型コロナウイルスの感染拡大以降は、フードデリバリーサービスが消費者だけでなく、飲食店側の関心も大きく高めているようです。

政府や自治体の自宅待機要請によって飲食店は顧客が激減しており、生き残りのためテイクアウトに進出する事業者も増えていることから、そうした店舗のビジネスを支える存在としてフードデリバリーサービスが注目されるようになってきているのです。

フードデリバリーサービスは世界的に見れば既に広く普及しているものでもあり、米国であれば「Grubhub」や「Uber Eats」、中国であれば「Meituan」や「Ele.me」、東南アジアであれば「GrabFood」や「Foodpanda」など、その地域ごとに代表的なサービスがいくつかあります。

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▲東南アジアでライドシェア大手となっているGrabは、フードデリバリーの「GrabFood」も手掛けている

日本でよく使われているサービスといえば、「出前館」や「楽天デリバリー」などが挙げられるでしょう。中でも市場での存在感が大きいのは、出前館ではないでしょうか。

出前館は前身の夢の街創造委員会が2000年よりサービスを開始したこの分野の老舗ですが、独立系でオープンな立ち位置を生かして自社サービスだけでなく、NTTドコモの「dデリバリー」や、LINEの「LINEデリマ」にも同社の基盤を提供し、市場での存在感を高めてきました。

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▲フードデリバリーサービスの「出前館」はこの分野の老舗。独立系のサービスであることを生かし、他社へのプラットフォーム提供を進めるなどして市場での存在感を高めてきた

同様に古くからサービスを提供している楽天デリバリーが楽天経済圏、つまり楽天のプラットフォーム戦略を担うピースの1つとしての色合いが強いのに対し、出前館はオープンな戦略を取ることで市場での存在感を高めてきたといえるでしょう。

そうした国内のフードデリバリーサービス市場に風穴を開けたのが、米ウーバー・テクノロジーズの「Uber Eats」です。Uber Eatsは2016年に日本へと進出して以降、急速にデリバリーサービスとしての存在感を高めており、最近では積極的なテレビCM攻勢によって認知も急速に高まっているようです。

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▲短期間のうちに存在感を高めている「Uber Eats」。一般人を配達スタッフとして活用することで、配送スタッフを持たない飲食店のデリバリー提供を可能にしたことが人気要因となっている

Uber Eatsが、出前館や楽天デリバリーなど既存のフードデリバリーサービスと大きく違っている要素はいくつかあるのですが、最大の違いは配送システムといえるでしょう。

従来のフードデリバリーサービスは、あくまで自社で配送スタッフを持つデリバリー事業者の注文をオンラインで取りやすくするものでした。

ですがUber Eatsはライドシェアの「Uber」で培った仕組みを取り入れ、「配達パートナー」、つまり一般人を配送スタッフとして起用することにより、配送スタッフを持たない飲食店のデリバリーを代行する仕組みを提供。

これによってUber Eatsは、寿司やピザなどが中心だった従来のデリバリーサービスの枠に捉われることなく、消費者に幅広いバリエーションの飲食店のデリバリーを提供したことで人気を獲得した訳です。

そしてUber Eatsの日本における成功を見てか、中国のライドシェア大手であるDiDiも、2020年4月より同様の仕組みを用いたフードデリバリーサービス「DiDi Food」の試験サービスを大阪で開始。急速にフードデリバリーを巡る競争が激化しつつあるのです。


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▲中国のDiDiも、2020年4月より大阪で「DiDi Food」の試験サービスを開始。元々ライドシェアを手掛けているだけあって、仕組みはUber Eatsに近い

そのことはもちろん既存のフードデリバリーサービスの危機感を高めており、大きな動きをもたらすことにもつながっているようです。実際2020年3月26日には、出前館がLINEなどから300億円の出資を受け、実質的にLINEの傘下に入ることが発表されました。

food delivery sano▲出前館は2020年3月26日、LINEやその親会社となる韓国NAVERが出資するファンドなどから約300億円の出資を受けることを発表。これによって同社は実質的にLINE傘下となり、社長もLINEから送り込まれる形となる

出前館はUber Eatsなどへの対抗のため、新聞配達員を活用して配送スタッフを持たない店舗がデリバリーをできるようにする「シェアリングデリバリー」の拡大を進めたほか、テレビCMを展開するなど認知度拡大のためプロモーションにも力を入れていました。

ですがそれでもなお、今後の競争力強化に向けては自社システムの抜本的な改善などが必要だったそうで、投資がかさみ赤字傾向が続いていたようです。

そうしたことから、2016年に資本業務提携を結び筆頭株主となっていたLINEが増資して影響力を強めることにより、出前館の競争力強化に乗り出したといえるでしょう。

ちなみにこの出資によって、出前館はLINEグループの中で"食"の分野を一手に担うこととなるようで、LINEデリマを「出前館」にブランド統合することや、テイクアウトサービスの「LINEポケオ」を出前館に譲渡することも同時に発表されています。

food delivery sano▲LINEは「LINEデリマ」を「出前館」ブランドに統合するほか、「LINEポケオ」も出前館に譲渡。出前館がLINEの食に関するサービスを担う形となる

さらに今後を見据えると、LINEはヤフーを有するZホールディングスと2020年10月に経営統合することが予定されています。ヤフーはフードデリバリーなどのサービスを持っていないことから、出前館はヤフー・LINE連合においても、食の分野を担う重要な存在として事業強化がなされていくものと考えられそうです。

ただそこで気になるのが、出前館が実質的なLINE傘下になったことで、Uber EatsもDiDi Foodも、そして出前館も全てソフトバンク、ソフトバンクグループに何らかの関連を持つ企業となってしまったことです。

グループ総力を挙げて楽天デリバリーと戦う、というのであれば話はわかりますが、楽天デリバリーが楽天経済圏で独自のポジションを確立していることを考えると、現状のままでは3つのサービスでのつぶし合いに発展しかねないようにも感じてしまいます。

同様のことは「Uber」と「DiDi」が競合するタクシー配車サービスなどにも言えることではあるのですが、ソフトバンクやソフトバンクグループがどういった形で事業を整理していくのか、あるいはしないのかという点は、この市場の行く末を見る上で大きなポイントになってくると言えそうです。
 
 

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