実際に使ってみて

広く美しい画面
まず特筆すべきは、従来のノートPCよりも画面が広々と感じられること。Surface Laptop 3 の「15インチ」は、数字だけ見ればいわゆる「15.6インチ」よりも狭いような印象かもしれませんが、これは画面の縦横比が違うものを対角の長さだけで比べているため。
従来の一般的なノートPCが縦横比16:9のワイド画面を採用してきたのに対して、Surface Laptop 3 は実際の使いやすさを考えて、縦が広い 3:2比率を採用します。
テレビと同じ16:9は動画を全画面でピッタリ表示するには向いているものの、実際のノートPCの用途の多くを占めるアプリやウェブサイト、文書の多くは縦にスクロールするコンテンツです。しかも多くのアプリではツールバーやアドレスバー、ボタンなどが上部に表示されるため、ますます上下が手狭になります。
Surface Laptop 3 では高精細に加えて縦が広い縦横比を採用したことで、実際の表示面積そのものは一般的な15.6インチモデルとほとんど変わらないのに、実際に使うとメニューやツールバーが邪魔にならず、一覧性が高く、上下のスクロール回数も減る楽さを実感できました。
縦横比16:9と3:2の画面を重ねたイメージ。同じページを表示しても、16:9では上のタスクバーまでしか入りません。それでいて横幅も確保してある絶妙な縦横比から、PCならではのマルチタスクも従来以上に実用的です。見やすさ・美しさに直結する画素数でも、Surface Laptop 3 の PixelSense ディスプレイは 2496 x 1664 (201 PPI) と高解像度。従来のワイド画面ノートに多かった フルHD (1920 x 1080)の約2倍の情報量を表示できます。
この「使いやすい縦横比」と「細部まで見やすい高精細」のおかげで、たとえば
- 資料とOffice文書を左右に並べて編集する
- フルHDの動画配信を見ながらSNSやウェブで感想を書く・探す
- カメラやスマホで撮りためた写真を細部まで確認して選んだり編集する
といった使い方も従来より明らかに快適です。
ディスプレイでもうひとつ気づいたのは、色域(表現できる色の範囲)の広さや高いコントラストによる映像の美しさ。厳密な色域は公表されていないものの、デジタルコンテンツで標準的に使われる sRGB規格はおおむねカバーしている印象です。このクラスのPC向けパネルとしては平均以上で、写真も動画も鮮やかに、鑑賞に足る表現力でした。
なお、伝統的な「王道」ノートPCを目指した Surface Laptop 3でも、実は10点マルチタッチやSurface Pen による手書きに対応します。
ノートPCとしての一般的な使い方ではあまりキーボードから腕を上げて画面に触れないかもしれませんが、タブレットやスマホのタッチ操作を前提に作られたアプリもそのまま使え、キーボード操作に不慣れな世代でも扱いやすいことは、一家のPCとしての価値を高めています。
※ Surface Penは別売。
AMD Ryzenプロセッサ「Microsoft Surface Edition」の実力
Surface Laptop 3 15インチモデルが搭載するプロセッサは、「AMD Ryzen 5 3580U モバイルプロセッサ」もしくは「AMD Ryzen 7 3780U モバイルプロセッサ」を、Surface 専用にカスタマイズしたMicrosoft Surface Edition。
長年インテルのライバルだったAMDには良い時代も苦しい時代もありましたが、2016年に発表された Ryzen は同クラスのインテル Core プロセッサに勝るとも劣らない処理速度や効率を実現しつつ、統合GPUのグラフィック性能が非常に高い点が特徴です。
Surface Laptop 3 15インチモデルが採用するのは、元からグラフィック性能が高い最新世代 AMD Ryzen のモバイル向け上位モデルに、
さらにGPU強化を施した製品。マイクロソフトは製品の発表会で、15インチクラスのノートPCが搭載する統合GPUではもっとも強力、同クラスの Core プロセッサよりグラフィック性能2倍と表現していました。
実際に一般的なアプリをしばらく使ったところ、フルHD超の動画再生やウェブブラウズはもちろん、デジタルカメラのRAW現像などもサクサクこなします。いくつかベンチマークテストを動かしましたが、分かり易いところではCINEBENCH R15のCPUでしょうか。純粋にCPUパワーだけ比較するテストでは、同クラスの
インテル Core i5-8265U が 514cb に対して、AMD Ryzen 5 では602cb と高いスコアになりました。
グラフィック性能を測る 3DMark では、前モデル Surface Laptop 2 の Core i5モデル比で約2倍近くのスコアを記録 (Ryzen 5モデルで、Sky Diver は8687, Cloud Gate で 13599)。いわゆるゲーミングPCにはもちろん及びませんが、これまで統合GPUしかないノートPCでは厳しかったような3Dゲームも、グラフィック設定をフルHD程度にするなどの調整で、拍子抜けするほど普通に遊べます。

CrystalDiskMark 7
内蔵ストレージは衝撃に強いSSD。Surface に代表される「モダンPC」の特徴である瞬間的な起動は、Windows 10の機能と、高速なSSDの組み合わせで実現しています。
デバイス構成試用した構成では、ストレージは256GBのSK Hynix「HFM256GDGTNG」。Wi-Fi/BluetoothはQualcomm製。WebカメラはWindows Helloの顔認証対応です。
打鍵感に優れたキーボード

キーボードは10キーなしのアイソレーションタイプ。旧来の15インチ級ノートPCには10キーありが多く、その幅の分だけキーのレイアウトが窮屈だったり、タッチパッドも中央ではなく片寄っていることがありました。
しかしSurface Laptop 3 15インチは全体的にゆったりしたレイアウトで、キーピッチは約19mmを確保。カーソル上下など一部では狭くなっているものの、無理をした歪な並びの部分はありません。広いタッチパッドもセンターにあり、違和感なく正面から画面を見て操作できます。
打鍵感はストローク(キーの沈む距離)が約1.5mmほど。硬すぎず柔らかすぎず、軽くてもしっかり打った感覚があります。加えて3段階のキーボードバックライトを搭載しているため、暗い場所でも難なくタイピングが可能でした。
キーボードといえば、ベンチマークテストなどで負荷をかけても、発熱で指やパームレストが熱く感じることはありませんでした。冷却システムがうまく効いているようです。
キーストロークは約1.5mm
弱/中/強、3段階の明るさに調整できるキーボードバックライトDolby Audio Premium 対応オーディオ
画質が良くても音が貧弱では動画コンテンツの楽しみも半減ですが、Surface Laptop 3 はスピーカー性能も予想外に優秀でした。実際いくつかの音源で視聴したところ、ノートPCにありがちなシャリシャリした音ではなく、低音から高音まで、薄型ノートPCとは思えないほどバランス良く、しっかり鳴ります。外付けスピーカーのようなパワーこそないものの、ノートPCを使うときの距離感ならば、本体だけで十分に音楽や動画が楽しめるレベルです。
一般的なノートPCでは、スピーカーを本体の裏側に配置することが多いのですが、この場合はどう設計しても、机や膝など反射するものによって音が大きく変わってしまいます。一方 Surface Laptop 3 15インチでは、後ろ側面のスリット奥にスピーカーを設け、パネルに反射させて手前に音を出すことで、どこで使っても一定の音色になるよう工夫しているようです。
Surfaceらしい薄型軽量、すっきりした本体

毎日カバンに入れて持ち歩くモバイルノートというよりも、自宅用の据え置きに向いた15インチモデルですが、薄く軽くスタイリッシュなデザインはまさにSurface。大きな画面と高性能を両立させつつ、本体の重さは従来の一般的な15.6インチノートの67~70%程度、約1.5kg前後しかありません。
本体デザインはひたすらシンプルなアルミの板のようでありつつ、手前に向けて低くなるなだらかなくさび形で、キーボードが打ちやすくなっています。左右と後ろの側面も微妙な角度がついていて、見た目にも薄く、持ち上げやすい形状です。
薄さとミニマルな筐体デザインにもかかわらず、端子類は最新のUSB-Cと、伝統的なフルサイズのUSB-A端子の両方を搭載。USB-C端子では、USB-PD規格対応の電源アダプタを使えば本体を充電できるため、付属のACアダプタを常にセットで動かさなくても、汎用USB-PD充電器があれば困らないのは大きな安心感です。
端子類はほか3.5mmヘッドホン端子、Surface シリーズ共通の充電・データ共用端子 Surface Connectを備えます。
軽量でもバッテリー駆動時間は確保
公称のバッテリー駆動時間は最大約11.5時間。バッテリーベンチマークを使い、パネル輝度0%・バッテリー節約機能ONで計測したところ、11時間38分07秒時点で残3%でした。
AMD Ryzenプロセッサは一般に同クラスのインテルCoreプロセッサより総合的に速くても、バッテリー駆動時間が短めの傾向がありますが、これなら自宅内モバイルとしても、いざというときには持ち出して運用しても実用的です。

専用のACアダプタ。サイズ約9×5×2.5cm、重量226g、出力15V4A/5V1A
まとめ。これからの「王道」かつプレミアムな自宅用ノート

ノートPCにおいて、ディスプレイとキーボードは基本中の基本。ここがしっかりしていないと、いくら速度が速かったり、薄型軽量でも、結局は使いづらくなってしまいます。
Surface Laptop 3 15インチはスタイリッシュなデザインや最先端の機能を備えつつ、この基本をしっかりと押さている点が印象に残りました。まさにこれからのスタンダードとして、長く安心して使える一台と言えるでしょう。