8月8日と8月23日の2日間、au未来研究所ハッカソンが開催されました。au未来研究所とEngadgetで未来のコミュニケーションツールを作り出すプロジェクトとしてスタートしたこのハッカソン、2014年に第1回〜第3回が開催され、2015年初開催となる今回が4回目となります。


これまでの3回は「衣食住」をテーマにプロダクト開発を行いました。今回はBE PLAYABLEをキーワードに、日常のあらゆることを「遊び化」する、そんなプロトタイプを生み出すのがテーマです。参加者は5つのチームに分かれ、メンバー同士でアイデアや意見を戦わせ新しいモノ作りの扉を開きました。

ここではそのハッカソン1日目となるDay 1(8月8日)の発表と、その2週間後に行われたDay 2(8月23日)の最終プレゼンの模様をレポートします。

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IoT機器向け開発ボードkonashiでモノ作り

au未来研究所ハッカソンでモノ作りのベースとしたのは、ユカイ工学の開発ボード「konashi」。iOS端末とBluetooth連携することで、このボードに接続したLEDや各種センサー類の動作をiOSアプリから制御できるというもので、IoTデバイスの開発に向いたアイテムです。

制御用の言語はiOSアプリ開発に用いられるObjective-Cだけでなく、Web言語のJavaScriptも利用可能で、Webエンジニアもハード開発に着手できます。

Day 1では、ハードウェア開発やソフトウェア開発が得意な人、絵やデザインが得意な人など、さまざまなスキルをもつ参加者のプロフィールに基づき班分けを実施。プロダクトを開発していくうえで具体的にどんな手順を踏んでいくべきか丁寧な説明がありました。


各班、その日に出た無数のアイデアを最終的に1つに絞り、当日最後の中間発表ではダンボールでモックアップを作って発表します。2週間後のDay 2は、ある程度動作するプロトタイプを完成させ、プレゼンに挑みます。


豊かな家族間コミュニケーション「kazokumo」

1班が発表したのは「家族のコミュニケーションをつなぐデバイス」。家族全員が同時に食卓に集まりにくい今、食卓で家族間のコミュニケーションを手助けするデバイスを考えました。

使い古しのスマートフォンを入れた筒状のケースをダイニングテーブルに置き、そこで交わされる食事中の母と子の会話を解析しつつ録音します。その後、遅く帰ってきたお父さんがテーブルにつくと、その時の様子をスマートフォンが伝えてくれる、というもの。録音と再生などのタイミングを、座席に仕込んだkonashiのセンサーで判断します。

このアイデアにKDDI研究所の石塚 宏紀氏は「家族のいる場では話せない本音をそっと話して、それを伝えることもできれば」。東京大学先端科学技術研究センター 特任研究員の松村 礼央氏は「家族の関係がいいことが前提(の仕組み)なので、家族の(ネガティブな)関係を良くする仕掛けもあるとすごくいい」とアドバイスしました。

この着想が2週間後のDay 2になってどう変わったのでしょうか。最終プレゼンに登場した製品・サービスのタイトルは、「kazokumo」(カゾクモ)。「家族間のコミュニケーションを豊かに、楽しくする」という基本的なテーマは引き継ぎ、2週間の議論の中でデバイスの形は大きく様変わりしました。

筒状のケースや古いスマホといったものは姿を消し、代わりに食卓の上から吊り下げるライトの形をしたデバイスに。着座センサーはなく、食器をテーブルに置いたことをトリガーに録音などを開始するようにし、さらにライトから照射した光により、置いた食器から波紋のようなものが広がる、プロジェクションマッピング的な要素も盛り込まれました。

ランプ型のデバイスには、テーブル周辺の物体を感知するカメラ、音を拾うマイク、テーブルに光を映し出すプロジェクターなどが内蔵。食器をテーブルに置いたタイミングで波紋が広がるだけでなく、その情報を特定のスマホに送信して子供の帰宅を両親が気付けます。

また、母と子だけが食事をすると体の動きを検知して、そこで交わされた会話の断片がリズムサウンドになって父親のスマホで再生できるようになる、といった機能も想定。一方で、それを受け取った父親は、スマホから帰宅する時間などのメッセージを遠隔からランプ型デバイスへ送り、ビジュアル化してテーブル上に表現することもできます。

kazokumoについてKDDI研究所の新井田統氏は「お父さんがどう感じているかをフィードバックする部分、そこがうまくデザインできるか。難しいと思うのでもう一歩踏み込んで考えてみてほしい」とコメント。松村氏は「(フィードバックを)即時に出さなくてもいい。1日たってからまとめて出すくらいがいいのでは」と話しました。

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仲を取り持つクマのぬいぐるみ

2班がDay 1に披露したのは、ケンカ中の夫婦や恋人とのコミュニケーションを目的とした「気持ち伝えテディ」。スマートフォンからメッセージを送ると、相手の部屋に置いてあるクマのぬいぐるみから音声でメッセージが届きます。

それを受けて相手がクマをなでるなどアクションを取ると、そのアクションに応じたスタンプ画像が返信されます。愛らしいクマのぬいぐるみを通して仲直りをサポートするという仕組みです。

このアイデアについてユカイ工学の青木氏は「たとえ許してもらえたとしても、ふとしたタイミングでもう一回怒り出すこともある」と、自身の経験を交えて鋭く指摘。「クマの顔を見た瞬間に、ムカついたりしないか。デザインを検討してほしい」と要望しました。また、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)産業文化研究センター教授の小林 茂氏は「家のどこに置いてあるのかも重要。サイズがこれでいいのか、長期的に見てどのような発展性があるのかも考えると良いのでは」と提案しました。

迎えたDay 2のプレゼン。製品名は女性メンバーの意見から「Warmy(ウォーミー)」という温かみを感じさせる名前に変更されました。

クマのぬいぐるみを介してメッセージとスタンプのやりとりができる機能に大きな変化はなく、メッセージの着信を胸のハートマーク部分に仕込んだLEDやスピーカーで、“なでなで”の検知を頭部に埋め込んだ明るさセンサーで、抱きしめたことを内部のセンサーでそれぞれ取得できるようするなど作り込んできました。


講評では、小林氏と松村氏、KDDI研究所の石先 広海氏が「通知デバイスだと持ち歩けないと厳しい」と意見し、持ち運べるようなものにすることも検討してみてはどうか、とアドバイスを送りました。

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ドタキャンを楽しむヘッドフォン「bocchix」

3班はDay 1で「ドタキャンぼっちたちをその場しのぎでつなぐ救世主アイテム」を発表。ドタキャンされた時に腰に巻いている「ドタキャンベルト」のボタンを押すと、近くにいる同じくドタキャンされた他人をアプリ上でサーチし、ドタキャンされた人同士で出会えるというものです。

待ち合わせは、ドタキャンベルトなどのアイテムをチラ見せしながら接近するというアナログな方法。また、そこで出会った人たちが飲食店を利用する際には「ぼっち割」が有効になるなど、実店舗も巻き込んだ仕組みを狙っています。

「自他共に認めるぼっち好き」の松村氏は、「今ヒマだというタイミングで何かの遊びに参加できるようなものもいいのでは」と提案。続けて小林氏は「アイデア自体はすごくいいと思っているが、ぼっちに備えてアイテムを常に持っているというのは無理があるのではないか」と話しました。

Day 2の最終プレゼンに登場した製品は、緩い感じの「ドタキャンベルト」が「bocchix」(ボッチクス)というクールなヘッドフォン型デバイスに昇華していました。「しんどい“ぼっち”状態を、IoTの力で楽しい時間に変える」アイテムとしました。

Day 1で発表されたような“チラ見せ”するようなアナログ的手法ではなく、スマホに着信したメッセージ、LINEの既読スルーなどを自動解析し、ドタキャンされた、ぼっちになったと判定された時に、ヘッドフォン型デバイスに内蔵された多数のLEDでイルミネーション表示します。

ヘッドフォンを身に付けて街中を歩いている人は珍しくないため「常に持っているのは無理がある」ところをうまく回避。“やり過ぎ感”が出てしまうため、激しいヘッドバンギングを行うとSNS連携で「自分を止めてほしい」旨のメッセージを自動投稿し、他の人からのフォローを待ち受けられるようにしています。もちろん通常のヘッドフォンとしての機能もあります。

講評ではぼっち派の松村氏が「不特定多数の人にぼっちであることを知られる」という点に疑問を呈し、「孤独な時に伝えたい相手というのは限られている。そのクラスターだけに通知できるのならいいが、それ以外に伝えたいかというと、難しい」と話しました。

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バウンド時に音を集めるボール型デバイス

4班がDay 1に発表したのは「あそぼール」。バウンドさせたりお手玉したりするとそれに合わせて音と光を発し、目と耳を楽しませます。1人で遊ぶだけでなく、大勢で一緒に遊んでいろいろな音を出したり、アンサンブルを奏でたりできます。


また、ボールプール一杯にこのボールを敷き詰め、子供がそこに飛び込むと音と光であふれる、といった用途も紹介しました。さまざまな音を出せるよう、他人のボールの音を交換する、といったコミュニケーション要素も明らかしました。

KDDI研究所の石塚氏は「効果音ですごい球を投げているようにしたり、何かを達成していくたびに、その人がボールを投げた時にものすごくうまいと思える音を出せるようにしてほしい」と注文。青木氏と松村氏の2人は、人を集めたいのか、とにかく遊ばせたいのか、コミュニケーションを促進したいのかなど、解決したいものを絞り込むべきではないかとしました。

4班は2週間後のDay 2で、シンプルに「遊ばせる」というところにフォーカスしました。専用アプリをインストールしたスマホを使い、動物の声などさまざまな音を録音し、撮影した写真とともにデータとして記録します。その後、データをボール状のデバイスに送信することで、ボールをバウンドさせた時に、内蔵した加速度センサーでその動きを検知し、サウンドを再生するというものです。

自分で録音した「マイライブラリ」以外にも、他のユーザーが録音した「シェアライブラリ」も用意し、自由にダウンロードして自分のボールで音を鳴らせるようにしています。

使い方としては、例えば動物園に行って収録した動物の声を、家に帰った後でもボールを使っていつでも再生できるようにする、というのが1つ。子供が楽しめるような使い方だけでなく、あらかじめ吹き込んでおいた数種類の声をボールのバウンドのたびにランダムで再生する機能を活用し「帰りが遅くなった主人にぶつけて、奥さんの鬱憤を伝える」といった使い方も提示しました。

講評したアーティストの鈴木 康広氏は「スポーツにもつながりそう。自分も使いたいと自然に思えた。誰かがいろんな使い方を見つけそう」と高評価。一方、ユカイ工学の青木氏は「ボール型には制約があると思っている」とし、「弾む物体の中にスピーカーやバッテリーを入れるのはハードルが高い。ボールじゃなくてもいいのでは」とアドバイスしました。

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高齢者の杖は次世代のけん玉へ

最後の5班。Day 1に出したアイデアは「振り回してくれる杖」でした。散歩する高齢者が使う杖の先にモーターで回転する球を仕込み、使用者の意図とは違う方向に道案内するというものです。自宅に置いてある時でも「散歩に行こうよ」と誘うような合図を出すなど、ペットのような存在になるとしました。

これについて安全上の問題を懸念する声が上がりました。似たような仕組みを検討したことがあった松村氏は「下に動力があるのは、規制をクリアするのがやっかい」と自身の経験を踏まえてアドバイス。

「ただ新たな介護関連の資格が設けられたことで、波は来ている。レクリエーションを促すアイテムのニーズも高い」と話しました。動力についての解決策についても、バイブレーションなどで進む方向を合図するといった代替策を示しました。

Day 2ではこの問題を解決できるかに注目が集まりましたが、5班は年配の方へのヒアリングを実施し、それを元に杖とは全く異なる「けん玉」へと大幅に転換。

「おじいちゃんと孫が一緒に遊べるアイテム」とすることで、コンセプトも「世代ギャップを超える遊び」に設定。タイトルも「エスパーけん玉」という新しいおもちゃをイメージさせるものにしました。年配の方が得意とされるけん玉と、遊びといえばゲームやスマホ、という世代の子供とが一緒に遊べる「次世代のけん玉」を狙っています。

けん玉の持ち手とヘッドの間にはモーターが仕込まれており、さらに玉の中にもモーターを備え、偏心して回転するオブジェクトを内蔵しています。

これを、Bluetooth連携した子供の持つスマホから任意のタイミングで制御することで、おじいちゃんがけん玉をやろうとすると、持ち手や玉の動きが変化、難易度を高めることができます。また、けん玉の先端にある“けん先”を隠せる機能も備えます。

講評では、けん玉についてただならぬ関心と経験をもつ鈴木氏が「もともとけん玉には、このコンセプトを達成する要素が全てあるので、こういうことをする必要が全くない」とバッサリ。世界レベルでけん玉を操れる技術があれば、年代や興味の程度に関係なく、相手を魅了できるからだと説きます。

ただ、そこまで到達する人は少ないため、いかにけん玉をやってもらうか、もしくは運命的にけん玉と出会うか、といったところは、スマートフォンをどう買ってもらうかとほぼ同じ文脈ではないか、と語るとともに、「テクノロジーを用いてこのような取り組みをする意味がどこにあるかを探るという面ではすごく重要で興味深い」とも話しました。

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au未来研究所のコンセプトモデルに

さて、各班が16日間かけて生み出した5つの製品はあくまでもプロトタイプです。昨年同様、さらに議論を深めて開発を続けていくチームもあるかもしれません。

なお昨年のau未来研究所ハッカソンで生まれたプロトタイプでは、IoT時代の子ども向けシューズFUMMがKDDIのコンセプトモデルとして発表されました。今年のイベントからも、こうした展開が期待できるかもしれません。今後の展開にも注目です。


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