11月7日と11月21日の2日間、au未来研究所とEngadgetが共同で、未来のコミュニケーションツールを作り出すプロジェクト au未来研究所ハッカソン を開催しました。

2015年は2回目、通算5回目となるこのイベント、今回は飲料メーカーのキリンをパートナーに迎えて KIDS AND FOODS 、つまり 子供と食 をテーマにしたプロダクトのアイデアを考えました。アイデア出しから2週間、11月21日の最終プレゼンテーションには短期間ながらチームのアイデアを結集して生まれたプロトタイプが登場しました。

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ちなみに、今回も参加者は学生から社会人、小さな子を持つ父母まで、立場はさまざま。総勢30名弱が5つのチームに分かれ、ハードウェア設計やソフトウェア開発、プランニング、プレゼンなど、それぞれの得意分野を活かして最終的にアイデアを形にしていきます。

しかしながら、まさしく「子供の未来」を考えることになる今回のテーマに対して、子育て経験のある参加者ばかりというわけではありません。当初、最初のアイデア出しから苦戦するのでは? といった懸念もありました。


初日の会場は秋葉原駅からほど近いモノ作り拠点 DMM.make AKIBA 。最初の講師はアイデア出しの専門家、アイデアプラントの代表 石井力重(いしい りきえ)さん。颯爽と登場すると、巧みな話術で参加者たちにアイデアを引き出すための発想法を伝授していきました。

大手企業を相手に新規事業創出のコンサルティングも行っていることもあり、1年の3分の1がホテル暮らしというほど全国を飛び回り多忙を極める同氏。アイデアを出す際の心構えや思考の発展のさせ方を、論理的でありながら感覚的にも受け入れやすいよう丁寧に解説していたのが印象的でした。

参加者の熱意もあって、順調にアイデア出しとアイデア整理のステップを踏んでいきます。

技術側の講師は東京大学先端科学技術研究センター 特任研究員でkarakuri products代表の松村礼央(まつむら れお)さん。プロトタイプに用いるユカイ工学の開発ボード「konashi」についての詳細な解説がありました。

konashiは、iOS端末とBluetoothを連携することにより、接続している各種センサー類を動作させられるIoT機器向けデバイス。制御用のアプリ開発にはネイティブ言語のObjective-Cの他、Web言語のJavaScriptも利用できるという手軽さがウリです。

今回は飲料メーカーのキリンが協賛しているためか、水が触れているかどうかが分かる「水センサー」も配布されました。


アイデア出し、konashiの説明の後は、ダンボールを素材に使ったプロトタイピング。その後、各チームの中間発表が行われました。

中間発表で講師らの意見などを参考に各チームで開発を進め、約2週間後にあるDay2(11月21日)のプレゼンに臨みます。5つの班それぞれが考えた「子供の未来」を作るプロダクトは、果たしてどんな形に仕上がったのでしょうか。


三角食べを自然に学べる、光って音が出る食器トレー「Traying」

1班が中間発表で披露したアイデアは、フォークやスプーンなどのカトラリーを手に取る順序、食べる順番などを優しく指示してくれる食事トレー「Trayning」。


トレーに埋め込んだセンサーにより、上に置いているカトラリーや食器の重さ、大きさを検知したうえで、同じくトレーに仕込んだLEDで個々の食器類の周囲を順序良く光らせたり、音で知らせます。こうすることで、子供に対して次にするべきこと、次に食べるものを教え、「三角食べ」を自然にしつけられ、健康的にもなれるという仕組みです。

順番に光らせるきっかけは、食器を上げて再び置いた時を想定していましたが、これについて松村氏は「食器を持たないで食べる子供の時はどうするか」と課題を提起。今まさに子育て中だというKDDI研究所の久保 健氏は、「後片付けまでサポートしてくれるとすごくいい」とコメントしました。



2週間後のDay2、プロダクト名は「Traying」へと微妙に変わりましたが、基本的なコンセプトはほとんど変えることなく、ギミックを充実させる方向に発展させてきました。

親に食べさせてもらうのをねだる子供が多く、しかし一方で3歳までに多くの味を体験させてあげることが、味覚形成に重要というデータがあることも参考に、2、3歳の子供が自分で食べるのをサポートするプロダクトとしました。



最初に「いただきます」と元気よく話すことで音声認識して機器の動作が開始し、測定した重さから食べた皿や減っていない皿などを検知、光や音声で次に食べるべきものを指し示します。トレーはぼんやりとしたやや幻想的な光を発し、単色だけでなく数色のLEDでカラフルに明滅する演出も用意しました。

ユカイ工学の代表青木俊介氏はこのアイデアについて、「デバイスとアプリの作り込みの完成度は高い」と評価。しかし、世界の料理を食べたい人と作る人とをマッチングするWebサイトKitchHikeの共同代表 山本雅也氏は「光ったら子供はそれに従うだろうか」と、子供を相手にすることの難しさを冷静に指摘しました。


キリンの竹内淳能氏は、「学ぶというところにフォーカスすれば広がるのでは」と話し、KDDI研究所の新井田 統氏は、「誰とコミュニケーションしている(すべきな)んだろう。トレーやアプリとコミュニケーションするのは、違うのでは」と述べました。松村氏も「子供の目の前で親が直接言った方がいいのでは」としつつも、「ただ、遠隔から子供が食べきったかどうかが分かると面白い」とも話しました。

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飲んだ量、飲むべきタイミングが分かるデバイスは、新世代のままごとツールへ

2班は1日の飲んだ量を記録したり、最適な飲む量とタイミングを教えてくれる「NOMILOG−ノミログ−」をDay1で発表しました。容器にはめるバンド状のデバイスと、重量を検出する台状のデバイスの2つからなっており、乳幼児に対してはその日に飲んだミルクの量を授乳するごとに専用アプリ上に記録していきます。

記録は両親のスマートフォンに共有されるので、いつどこにいても子供がしっかり飲んでいるか、飲み過ぎていないかなどをチェック可能。さらに部活に励む中高生向けにも、随時飲んだ量の記録を取ってタイミング良く水分摂取の通知をすることで、熱中症防止の助けとなるとしました。

石井氏は「脳にベストな水分量というのがあるとすれば、常に最適な水分量を保つことで受験勉強を効率的にできるのではないか」と、新たなアイデアを提案しました。ただ、実際に飲んだ量を確実に検出する手法に困難が予想され、なぜか審査員の間で議論が盛り上がるという展開に。



そしてDay2、ノミログは「ままデジ」へと全く姿を変えます。“次世代のままごとキット”と銘打たれたこのプロダクトは、子供を危険な目に合わせたり、台所が散らかってしまうことのないよう、しかし子供の学習機会を奪ってしまうこともないように、できるだけ本物の料理に近い体験ができることを目的にしたもの。

プロトタイプとしてできあがったものは、スマートフォンアプリと連動する“ままごと用”のガスコンロとフライパン、肉。スマートフォンアプリ上で火力を調整でき、その火力の大きさによってフライパンの上に載せたおもちゃのステーキが焼ける音の大きさ、焦げるまでの時間などが変わってくる仕組みです。フライパンを振ると音が変化し、焼き加減によってステーキがLEDで光るようにもなっています。



KitchHikeの山本氏は、「これは革命の兆し」と絶賛。ままごとといえば女の子の遊びとされていますが、「ままデジ」は男の子の方が興味を持ちそうだと話し、キリンの竹内氏も、「(光や音だけを単純に出すような)ただ値段の高いままごとセットと違って、これなら飽きがこない」と好意的なコメント。松村氏からは「ままごとから実際の料理にステップアップするタイミングの入り口が組み込まれていると面白いのでは」というアドバイスもありました。

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子供の好き嫌いをなくし、母親も楽ができる3班の「おいしいウォッチ」

コンセプトと、目的を実現化する手段との間で悩み、なかなか明快な青写真を描けなかったチームもありました。Day1でそんな産みの苦しみを味わっていたのが3班でした。提案した「おいしいウォッチ」は、食べ物に好き嫌いのある5歳前後の子供を対象にした「食事を楽しめるようにするアイテム」です。


初めにメインとなるウォッチや、お菓子、おもちゃの入った1つのボックスで子供の気を引き、中を開けて取り出したウォッチ上で子供が野菜を選択すると、スマートフォンのアプリ上でその野菜が仮想的に育っていく仕組み。

野菜が育って収穫できるようになったところで、親がその野菜を使った料理を作り、子供に食べさせるというアイデアを提案しました。育つ経過を見せることにより、子供の野菜に対する関心を高めさせ、最終的には嫌うことなく楽しんで食べてもらおう、という狙いです。



しかし審査員からは、最初に育てる野菜を子供が選ぶ段階で、嫌いなものを避けるだろうという声や、アプリだけで完結させるのか、デバイスだけで完結させるのか、どちらかに絞った方が良い、といった声が挙がりました。

石井氏は「(育ったものを見た後に)できたての料理を見せるのはいいアイデア」とした一方で、「次の2週間で全く変わることになるだろう」と予言。特定のタイミングだけ“つまみ食い”できるような演出を用意しても良いのでは、ともアドバイスしました。



2週間後、タイトルこそ「おいしいウォッチ」から変わりはありませんでしたが、やりたいこと、目指すところはかなり明確になりました。「何を作ればいいのか判断できない」「作った料理を食べてくれない」のがストレスと悩む、実際に子育てしている女性メンバーの切実な思いから「お母さんのご飯をもっと楽しみに」してもらうためのプロダクトとして、時計型デバイス1つのみを用意。これにスマートフォンを組み合わせる形としました。

使い方は、まず母親が、あらかじめ3つ用意された料理・食材の候補をスマートフォンから子供の時計型デバイスへ送り、それを受け取った子供は時計画面に表示された候補の中から自分の食べたいものを選んで返します。その後母親は、選ばれた食材を使った料理を作り子供に振る舞う、という仕掛け。料理の際には、選ばれた食材を使うレシピをクックパッドで素早く検索できる機能も備えました。


キリンの竹内氏は、「ウォッチ型デバイスということで、その中により面白い要素が入ってくると、ゲーム依存やスマホ依存になっている子供の行動が変わるのではないか。そういう依存問題を超えて、次のフェーズのコミュニケーションに進むかもしれない」とポジティブな意見を口にしました。

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計量カップに注ぐところを子供に手伝ってもらう4班の「きっずクック」

Day1で4班が発表したアイデアは、「きっずクック」。親が作った料理を楽しんで食べてもらうことを目的に、子供が親の料理を手伝うのをサポートする計量カップ型のデバイスとしました。手伝いを通じて子供がより料理に興味をもってもらうのが狙いです。あらかじめ用意したレシピに合わせ、計量カップ側に設けたLEDが必要な分量を示す位置で光るようにして、水や醤油、みりんといった調味料などを適量だけ注げるようにします。


上手に注ぐことができれば「クエストをクリアした」と見なし、違う料理のレシピにもチャレンジできるようになる、ゲーム的な内容を盛り込みました。子供が料理を手伝うのを「危ないからやらせない」とするのではなく、安全な計量の手順に絞って積極的に関わってもらうことで、親の手伝いをしたい子供のやる気を大切にすることも目的としています。


これについては、キリンの竹内氏が「手伝って良かったと子供が思える仕掛けがあるといいのでは」とコメント。また、松村氏は「クエストとして用意する内容にかかってくる。クエストに注力した方がいいかもしれない」と、新たな課題を提示しました。

そしてDay2となり、タイトルは「きっず+クック」へと微妙に変化、システムフローをより具体的な形に落とし込みました。

最初に料理のレシピデータをスマートフォン上でダウンロードし、その料理を作るのに必要な材料を用意するという「タスク」をいくつか列挙、そのタスクを子供にこなしてもらいます。感圧センサーで重さを量れるようにした台状のデバイスの上にカップを置いて材料を注ぐと、その重量とあらかじめアプリ内で定義している材料の比重とを勘案し、注いでいる量をリアルタイムに推定。アプリの画面が視覚的に表現され、正しい分量を注ぐことができればタスクをクリアしたとみなします。

こなしたタスクについては全てログとして残せるため、子供の小さい頃からある程度成長するまで、何を手伝ったかという内容や、その時の写真なども添えた記録を、Web上などでいつでも参照できるようにする仕組みも想定。「希林(きりん)一家」というペルソナを設定し、用途やシチュエーションを分かりやすくプレゼンしたのも印象的でした。



KitchHikeの山本氏は「他の友達と楽しく競えるような切り口があっても良いのでは」とコメントし、キリンの竹内氏も「子供が楽しむ部分が弱かったかな」とのことで、仕組みとしては自然な形でも、実際に手伝ってもらう子供のモチベーションにつながるギミックが不足していると感じたようです。

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スマホでパッカーン!と割る5班の「PACKAN」

今回挙がった5つのアイデアの中で最もインパクト重視、というよりも、ほとんどインパクトのみで最後まで押し切ったのが、5班が提案した「パッカーン!!」でした。

子供が大好きなお菓子やデザートなど、親としては通常の食事の後に食べてほしい特別なものを「シールド容器」にあらかじめ入れておき、食べてもいいタイミングになった時に、親がスマートフォンなどを操作することで、大きな桃を割るかのようにパッカーンと開いてみせる、というもの。


開けた時に内部のLEDを光らせて「ハッピーさ」を演出し、子供にとっての「開けた時の楽しさ」を大事にしながら、親としては子供と揉めることなく「おあずけ」しやすい、といったメリットがあります。当然のように(?)、KDDIのCMとのコラボ提案も織り交ぜていました。

講評では総じて好印象。松村氏は「誕生日のような特別な日だけ開くという仕掛けもアリではないか。どういうシチュエーションが一番ハマるのか、2週間で考えてほしい」と注文。竹内氏は「回転寿司に出てくる新幹線のようにシンプルでエンタメ性がありそう」と話し、久保氏は「椅子にセンサーがあって全員が座らないと開かない、みたいな仕組みもいいのでは」とコメントしました。



Day2でもこの勢いはそのままに、「PACKAN」という名称でプレゼン。スマートフォンを刀のように振りかざすアクションでパッカーンと開く仕掛けとし、実際に子供たちにプロトタイプを使わせて、思わずiPhoneを投げつけるほど楽しんでもらっている様子をビデオで紹介しました。

また、開くとLEDで派手に光るギミックも用意し、スペシャルなイベント感を出す工夫も可能であることを披露していました。なお、5班は結局konashiを使わず、スマートフォンとの連携を独自に行っていました。


松村氏は「面白いのは大切だと思う。実際にどういうアクティビティと組み合わせるかが重要になってくるのでは」とコメント。KDDI研究所の杉山浩平氏は「食との関わりがどこにいったのかな」と冷静に突っ込みつつ、「光らせるのならピンクにして桃みたいに」というアイデアを提案しました。


キリンの竹内氏は「前回(Day1)からどれだけ(アイデアとして)引き上がるのかな、と期待していた」と語り、想像を超えるインパクトは感じられなかった様子。それでも、「子供に何千回と試してもらったらどうなるのか。それを元にブラッシュアップすれば、すごく研ぎ澄まされたものになる」と語りました。

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優秀なプロダクトは次なるステップへ

このようにして「子供と食」をテーマにした第2回au未来研究所ハッカソンの長くて短い2週間が終わりました。今後、アイデアとして出された5つのプロトタイプは、各班がさらに開発を進めてブラッシュアップしていくかもしれません。


前回の「BE PLAYABLE」がテーマのハッカソンで生まれた、恋人の仲を取り持つぬいぐるみ「Warmy」も、コンセプトモデル化のプロジェクトが早くも進んでいます。



また、2014年の同ハッカソンで生まれたプロトタイプでは、IoT時代の子ども向けシューズ「FUMM」がコンセプトモデルとして発表されました。今回もこれらと同様に、5つのうちどれかがKDDIの手で本格的なプロジェクトとして再スタートする予定です。

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