3Dスキャナや3Dプリンタの廉価化、Aruduinoなどの学習用基板の普及、KickStarterなどクラウドファンディングの急拡大によって、メイカームーブメントの動きが世界的に広がっています。これは何を意味するのでしょうか。

これまで変わらないと思われてきた壁を壊すことがあるかもしれません。例えば既存メーカーが作っていた既成品の意味合いも変わります。社内の開発者たちの扱いも変わることがあるかもしれません。一方、前向きなことを言えば、これまで単純に使う側だった人たちがそうした道具を活用してプロトタイピングに成功すれば、今日からでもモノづくりをして起業できることを意味しています。

ただ、そうした起業も成功するかどうかは別問題。いかにいいモノを作っても、組織として会社としてビジネスを展開するのであれば、経営の問題にも向き合わなければなりません。ずばりコストの問題です。

コスト削減成功、その額は資本金の2割強に相当

デザイン会社が母体でWindowsアプリ開発に挑んでいるというイデアテックは180万円近くのコスト削減に成功しました。「チケットキャンプ」というコンサートやライブ、演劇などのチケットを対象にしたマーケットプレイスサービスを運営しているフンザは年間120〜240万円のコストカット達成できたと言います。

両社に共通しているのは、マイクロソフトのベンチャー支援プログラム「BizSpark」を利用していること。簡単に言えば、マイクロソフトのサービスや製品を廉価に使えたり、場合によっては無償で利用できるプログラムです。


イデアテックでBizSparkの導入を担当した茶屋孝典さんは「(導入前は)アプリ開発ではObjective-CでiOSアプリを、PHPでサーバサイドを開発していました。クラウドプラットフォームは他社のサービスを使っていました」といいます。

その後Windows 8アプリの開発に着手。ここでBizSparkを導入することで「MSDNのライセンス費用である初期コスト15万円をカット。またVisual Studio Ultimateの費用(166万円相当)、Windows Azure利用料(1万円程度)も削減できました」。


フンザで導入を担当した酒徳千尋さんによると、チケットキャンプは当初他社のクラウドサービス上で運用。アプリケーションサーバにはEC2上のUbuntu Server、DBにはMySQLなどを使用していました。BizSpark導入後は、アプリケーションやDBに関しては完全にWindows Azureに移行しています。

こうしてBizSparkでAzureが無償で使えるようになったため、月額10〜20万円、年額に換算すると120〜240万円のコストを削減できたとのこと。「大企業にとってはこれは小さな数字かもしれませんが、当社は900万の資本金で設立したスタートアップ企業なので、年間で見ると120万~240万というのは資本金の1割強~2割強という大きな割合になります」(酒徳さん)

「Kolor」というプロモーションサービスを提供しているインタレストマーケティングでBizSparkの導入を進めた野村亮之さんはこう言います。

「Kolorのサーバ環境を検討した際、他社のクラウドサービスとAzureを検討していましたが、Windows Azureのアカウント支援をマイクロソフトから受けられること知り、BizSparkを採用しました」。Kolor事業のサーバコストはほぼ0になったのに加え「通常、検証機として用意しなければいけない各種OSをMSDNを利用することで削減。人材の獲得時にかかるOfficeスイートの準備にも役立っています」。

BizSparkとは?



創業5年未満の小規模な企業をスタートアップ企業と定義すると、最大の課題は資金です。PCをそろえるにもコストはかかりますし、スマートフォン連係ガジェットを作る場合は開発言語なども用意する必要があります。Windowsと連係するガジェットであれば、Visual Studio のような開発言語も必要です。サーバを社内で用意するなら、Windows ServerやSQL Serverのようなライセンスも必須になります。

これらを全部そろえるとなるといきなり数十万円以上の出費になってもおかしくありません。むしろ安いソリューションで代替したり、開発そのものを諦めたりするケースも出てきます。コストの問題でチャンスの芽を摘んでしまいかねません。

そんな時に効果を発揮しそうなのが、先ほど紹介したBizSpark。スタートアップ企業や個人事業主向けにマイクロソフトが提供している支援プログラムで、マイクロソフト製の開発用ソフトウェアを無償で利用できるのが特徴です。開発のためのVisual Studioはもちろん、Officeなども無償で利用できますので、開発だけでなくビジネス全般にコストカットの効果があるというわけです。

このBizSparkを申し込める対象は、

・事業の核をなすソフトウェアベースの製品、やオンラインサービスの開発を積極的に推進している会社であること
・非上場であること
・設立5年未満であること
・年間売上が1億2000万円未満であること
・オリジナルドメインの自社Webページを所有し、事業概要や製品、オンラインサービスなどが確認できること
・契約期間中は自社WebページやBizSparkメンバーサイトのプロファイル情報を最新の状態に維持すること

が条件となります。単純なモノづくりだともしかしたら申し込むのは難しいかもしれませんが、このInternet of Things(モノのインターネット)が急拡大するご時世、モノとインターネットを結ぶようなオンラインサービスの開発を中核事業に据える会社であれば、十分に応募できるはずです。

申し込みが受理されると、MSDNサブスクリプションのダウンロードページから、Visual StudioやWindows Server、SQL Serverといった開発系のソフトウェアのほかに、Microsoft Officeを含むVisual Studio Ultimate with MSDNがダウロード可能です。さらにマイクロソフトのクラウドサービスであるWindows Azureの利用料(年額50万円以上)も含んでいます。ソフトウェアだけでも10数万円、Azureの利用料も含めると60万円〜80万円程度のコストカットができる見積です。

コスト削減だけじゃない!

ベンチャーはかけられるコストもリソースも限られているのが現実。コアコンピタンスとなる本来業務に注力したいのに、余計なコストやリソースを強いられるのはできれば避けたいところです。

前述の野村さん(インタレストマーケティング)も「BizSparkのようなベンチャーを支援してくれるようなサービスをうまく利用することにより、自分たちの事業として本来やりたい、やらなければいけないところにコストも自分たちの時間も集中できます」と言います。

また実際にはコスト削減効果だけでなく、マイクロソフトの手厚いサポートも魅力。「公式ドキュメント充実ぶりなど、マイクロソフトの開発者に対するサポートに本気を感じました。こちらも開発者としても本気で向き合おうと思うきっかけになりました」(イデアテックの茶屋さん)。

「BizSparkを利用しなければ、月々のサーバ運用費を削るためにチューニングにかなりの時間を使うことになっていたかもしれません。BizSparkのおかげでこの半年間、目先の費用削減のために時間を使わずに、サービス改善に集中できました」と言うのは酒徳さん(フンザ)。「各社がBizSparkを活用して、お互い切磋琢磨できるようなスタートアップ企業が登場することが楽しみです」と話しました。

 
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