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アップルの iOS 責任者 Forstall 氏が退社。新マップ謝罪騒動が引き金?

Ittousai, @Ittousai_ej
2012年10月31日, 午後09:23 in Apple
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アップルが経営幹部陣の役割を刷新する組織変更を発表しました。発表の表題は「ハードウェア、ソフトウェア、サービス間の協力を推進するための組織変更」。ジョニー・アイブ、エディー・キュー、クレイグ・フェデリギ、ボブ・マンスフィールドのそれぞれが担当分野を拡大する一方、iOSの誕生から責任者を務めてきたスコット・フォーストールが来年退社するという、ジョブズからティム・クック体制になって以来の大きな刷新です。


幹部それぞれの担当は、

新製品発表のたびに公開される「こうやって作りました」動画でもおなじみ「サー」ジョニー・アイブが、現在のインダストリアルデザイン責任者から、アップル製品全体のHI (ヒューマンインタフェース)統括者へ。

iCloud や App Store を担当してきたインターネットソフトウェア担当 のエディー・キューが、さらに Siri とマップも含めたオンラインサービス全体の責任者へ。

OS X の担当者 クレイグ・フェデリギは iOS と OS X 双方の責任者へ。今年6月には退社予定だったはずのボブ・マンスフィールドは、ハードウェアエンジニアリング担当に加えて、アップル全体のワイヤレス技術チームや半導体チームを含む新設組織「テクノロジー」グループの責任者へ。


一方で、iOSソフトウェア担当のシニアバイスプレジデントだったスコット・フォーストールは来年退社し、それまでの期間はティム・クックの「アドバイザー」を務めます。

スコット・フォーストールは、NeXT時代からジョブズの下で中核技術にかかわるソフトウェア・エンジニアとして活躍し、1997年にNeXTの買収で入社したアップル歴15年のベテラン。アップルでは OS X と Aqua UI の誕生にかかわり、Leopardなど複数の OS X リリースでは責任者を務め、また iOS では誕生から現在に至るまで担当したシニアバイスプレジデントだった人物です。

早々に撤去されたアップルの役員紹介ページから引用すれば、「(フォーストールは上級副社長として、) アップルの革命的な iPhone のソフトウェアについて、ユーザーインターフェースからアプリケーション、フレームワーク、オペレーティングシステムまでを担当します」。スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションでも、たびたび「ではスコットが説明します」と紹介されデモを担当するのが恒例となっていました。



あらためて発表文を眺めて違和感を覚えるのは、15年来のベテラン幹部で故ジョブズの信任も厚く(伝記参照)、また現在のアップルにとって最大のビジネスである iOS デバイスのソフトウェアを一貫して担当してきた上級副社長であるにもかかわらず、フォーストール氏の退社については一度だけ、 " will be leaving Apple next year. " とごく簡潔にしか述べられていないこと。

一般に叩き上げの功労者が社を去る場合は、本人の「アップルで同僚と働くことができた年月は私にとって〜」式の退任の辞があったり、トップからねぎらいの言葉があったりするものです。また何かよほどの理由があった場合でも、「個人的な理由で」なり「新たな活躍の機会を」なりと形だけでも説明があることが多く、アップルも例外ではありません。(どころか、アップルは人事発表で毎回ジョブズコメントがあったりと能弁でした)。

また人事異動の内訳を見てみれば、クックが外部から雇って数か月の小売店担当者 John Browett があっさり辞めることがおまけのように付け足されていることを除いて、要は「フォーストールが担当していたビジネス(iOS、Siri、マップ) は誰と誰が担当します」「ともなって残り幹部の分担が変わったり増えたりします」が内容です。

しかしながら、発表の見出しは「ソフト・ハード・サービス間の協調を促進します」。また続投する各幹部については副見出しにも最初の段落にも全員の名前があり、さらにそれぞれ1段落を費やして紹介しているにもかかわらず、フォーストールについては最初の段落の「アップルを去ります」があるのみで、当人やクックのコメントどころか経歴すら述べられていません。


このように、公式の発表文のみを見てもなにやら わくわくする、もとい  不穏な雰囲気が感じられます。


さて、ここからはアップルが正式に発表した情報ではなく、また認める性質の話でもありませんが、今回のフォーストール退社については、いわゆるアップル系の情報サイトはもとより、追加リンク先 Wall Street Journal のような経済紙まで、いわゆる「詳しい筋の証言」で賑わっています。

どこでも一致しているのは、フォーストールの退社は本人の意思というよりクックほかの経営陣に強いられたもので、背景にはジョブズ亡き後のフォーストールとほか幹部の不和と、直接的には例の iOS 6 マップの醜態が引き金となったとされていること。


フォーストールと他の幹部の不和については、ソフトウェアやUIデザイン哲学の対立や、あるいは仕事のスタイルやコミュニケーションなどいわゆる性格の問題まで、退任の以前からアップル系のゴシップとしては長らく伝えられてきました。


あくまで背景としてデザインの話に寄り道すれば、iOSや OS X の各所に現れる奇妙に写実的でアナログの道具を真似たようなUI要素、たとえば iBooks の書架の木目や iCalの「糸で綴じた革調」タイトルなど、いわゆる 「skeuomorphic」なデザインを推していたのがフォーストールだとされています。

(skeumorph (すきゅーもーふ) は、より広い意味では、技術の進歩などで不要になっても飾りやお約束として残るデザイン上の要素。デジタルカメラに残る「(銀塩時代の)カメラらしい飾り」や、実際は樹脂製なのに木や金属で手作りのふりをしたデザインなど。UIにおいては、わざわざアナログ文具を模した電話帳やメモ、マウスで「ツマミ」を回させようとする音楽ソフトなど。)

このスタイルを好まない側の言い分は、現実のオブジェクトとコンピュータの(たとえば堅いタッチパネルの)動作は違う以上、メタファーとして理解を助ける範囲を超えた過剰な写実や対応しない真似は逆にユーザーエクスペリエンスを損なうというものでした。

(蛇足ながら、この逆を行った例の代表として挙げられるのがマイクロソフトの (旧称) Metro スタイル。Windows 8 や Windows Phone 8、Xbox 360のタイルに代表されるアレです。マイクロソフトが社内や開発向けに伝えるマントラでは " Authentically Digital "、真にデジタル。影や奥行きはあくまで視覚的な手がかりとして使いつつ、デジタルなのだから意味もなく紙ノートや木の質感を真似しない、ミニマルなデザインをうたっています。そういえば「はためき」も半透明もなくなった Windows 8 ロゴもこれを体現しています。)

フォーストールが去った後、ハードウェアだけでなくソフトウェアも含むアップル製品全体のヒューマンインタフェースデザイン担当に昇格したサー・ジョニーは、アップル社内でもこの" skeuomorphic " デザインに異議を唱える立場だったとされています。実際にインタビューでも直接的な批判を避けつつ、「その部分にはわたしはタッチしていない」と述べたりしていました

アイブはじめアップル社内で力のある幹部が好んでいなかったのになぜ頻繁に使われていたのかといえば、理由はジョブズその人がこのスタイルを好んでいたため。Game Center の背景が木とフェルトのカジノテーブルになっている(どころか、UI部品もカジノ風の独自デザインでどれが押せるのか分からない)のもジョブズのこだわりとされ、実際に iCal のタイトルにある革の縫い目は、ジョブズがアップルから報酬として与えられたプライベートジェットの内装そのままであることが知られています。(ジョブズのプライベートジェットと内装については伝記に詳しい)。

またデザインについてだけでなく、フォーストールとほかの幹部の不和がこれまで表面化しなかったのも、フォーストールと個人的にも親しかったジョブズの存在がある意味で後ろ盾になっていたのだと考えられます。


このような背景を想像すれば、ジョブズ亡きあとのクック体制を確立するにあたって、「フォーストール外し」がそのまま「各分野の協調を促進」であるのも理解できます。

そして今回の退社の最終的な引き金になったのは、やはりあの iOS 6 マップの大失態だったとされています。リンク先 WSJ が得た「関係者証言」によれば、フォーストールは例の 新マップについての謝罪文に署名することをクックに命じられるも拒否し、代わりにクックが名前を載せたとのこと。

iOS と新マップの担当者として大失態の責を追うのは当然ではあるものの、この「署名拒否」の話がどこまで真実なのか、またどのような意味だったのかは諸説ありはっきりしていません。(たとえばフォーストールがMapのひどい出来を認識しつつ Go を出したうえに失態をあくまで認めなかったのか、あるいはあの品質のまま見切り発車する最終的な判断がフォーストール個人のものでなかったにもかかわらず、自分の名前に全責任を負わされることに抗議したのか etc)。

旧マップを捨てて自社製に切り替える方針そのものについては、位置情報(と広告)というモバイル時代で極めて重要な要素をライバルである Google に押さえられた状態から脱却するための全社的な至上課題であり、当然ながらフォーストール個人に帰することができるものでも、「iPhone 5の地図ひどいらしいね」「責任者クビになったってよw」で片付く話でもありません。

(自社製マップへの切り替え時期については、こちらもまた側聞ながら、方針としては承知していたGoogleですら、時期が予測より早かったため意表を突かれたという話がありました。iOS版の 純正「Google マップ」がなかなか出ないのも、アップルの急な動きでタイミングをずらされたため、という説もあります。開発に時間がかかっているのは、アップル対抗イベントで公開した3D表示の導入にあわせるためとも。現在は Google Earth でのみ利用可能)。

いずれにせよ、ジョブズ亡きあとのクック体制を占ううえで非常に興味深い人事であることはたしかです。ハードウェアの設計や外観だけでなくソフトまでサー・ジョニーが拘り抜くといったいどうなってしまうのか、ドキドキしながら見守りたいと思います。




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