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シャープMEMS-IGZOディスプレイ解説。液晶でも有機ELでもない機械式、鮮やかさと温度耐久性が利点

Shingi Hashimoto
2014年10月6日, 午後09:03 in Igzo
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本日シャープが発表した「メディアタブレット」。これに搭載されるディスプレイが、シャープが「業界初」とアピールするMEMS-IGZOディスプレイです。

このディスプレイに関しては、今回の製品発表に先だって、9月に技術説明会が設けられました。MEMS-IGZOディスプレイの原理や特徴を、実機で撮影した写真を交えて紹介します。

Gallery: シャープ MEMS-IGZOディスプレイ説明会 | 36 Photos

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MEMSシャッターをIGZO素材のTFT基板で駆動する機械式




MEMS-IGZOディスプレイは、シャープとPixtronix (ピクストロニクス、クアルコム子会社)の共同で開発したコラボ製品。ピクストロニクスは主にMEMSシャッターの基礎技術を担当します。

MEMSという用語は耳慣れないという方もいるでしょうが、これはMicro Electro Mechanical Systemの略で「半導体製造技術を応用して作成可能な、微小な電気機械」という意味。既に身近な電子部品にも使われており、インクジェットプリンタのヘッドやスマートフォン用のセンサー(加速度センサーや圧力センサー)といった部品はMEMS技術の応用で作られています。



この言葉が含まれている理由は、動作原理にあります。光を遮る(輝度を落とす)役割を果たすのが、MEMSの技術で作られたごく小さなシャッター『MEMSシャッター』となるからです。



このMEMSシャッターは、液晶ディスプレイにおける液晶とカラーフィルターの代わりとなる部品。人間の目が点滅と認識できない約100μs(約1万分の1秒)という短時間で開閉されることで、バックライトからの光の量を調整して輝度差を作ります。

機械駆動と聞くと消費電力が多そうですが、非常に小さな部品であることから消費電力は低く、むしろ光の利用効率が上がることから液晶ディスプレイより消費電力を抑えられる点をアピールします(詳細は後述)。




なお、こうした動作原理のため、IGZOという言葉は付きますが、液晶ディスプレイではありません。理由はシンプルで、そもそも液晶素材が使われていないからです。

さて、「ではIGZOはどこに使われているのか?」と疑問に思う人もいるでしょうが、これは構造図で上側(表面側 )にある、TFT(薄膜トランジスタ)基板に使われています。もともとIGZOは、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium) 、亜鉛(Zinc) 、酸素(Oxide)化合物から作られた結晶性酸化物半導体素材を意味する言葉で、IGZO採用液晶でも、このTFT基板に使われているのです。
MEMS技術のシャッターをIGZO技術の半導体(TFT)で駆動するため、MEMS-IGZOディスプレイ、というわけです。

なお原理から見ると、液晶よりもむしろ、プロジェクターや映写機などで使われるDLP(Digital Light Processing)方式に近い構造。DLPもデジタルミラーデバイス(DMD)と呼ばれる、MEMSを応用した微小な鏡による光の屈折で輝度を制御して画面表示をするからです。

カラーフィルターレス構造で様々なメリットが




MEMS-IGZOディスプレイを液晶ディスプレイと比べたメリットは、大きく分けて3点。低消費電力と色域の広さ、そして輝度の高い場所や高低温環境といった悪条件に強い点です。

低消費電力は、光を遮る部品の少なさに起因します。カラー液晶ディスプレイは先述したように、カラーフィルターや偏光板といった「色を表現するためには必要だけれど、光を遮る傾向がある」部品を必要とします。

液晶ディスプレイの進化はこうした光のロスを減らすものでもあったため、年々改良されてはいます。しかしMEMS-IGZOディスプレイでは、そもそもこうした部品が少なくて済むため、さらにバックライトの明るさが落ちにくいというわけです。

これは同じ輝度であれば消費電力を減らせ、また同じバックライト部品を使った場合、最大輝度がより高くなる点を意味します。シャープ側の発表では「理論上の光学効率は液晶ディスプレイの2~3倍まで実現可能」とされています。



こうした原理上のメリットに加えて、表示させる内容、とくに色数によって消費電力を減らすための工夫もされています。これは、色の鮮やかさや色数により、MEMSシャッターの駆動速度を落としたり、バックライトの点灯パターンを変えることで消費電力を落とすという技術。

色数が少なくてもよい状態や、電子ペーパー的な白黒表示では、消費電力を低減できます。なお、図の下部において、時間によってバックライト色が変わっているのは、R、G、B、R......と、3原色のLEDを順次点灯させる『フィールドシーケンシャル駆動』を採用しているためです。



次に、色の再現性が高い(とくに色域が広い)点。これも実は光を遮るパーツが少ない点によるメリット。カラーフィルターなどを使わないため、バックライトの色の濃さがほぼ表示に活かせるためです。

シャープはこうしたメリットから、NTSC比120%という広い色域を謳います。この数値は、たとえば液晶では、ノートPC用液晶の最新世代となるASUS ZENBOOK NX500が100%、EIZOのプロ用ディスプレイColorEdge CG276が102%といったところ。色域で液晶より有利とされる有機ELパネルでも、一時期CESで出展されていたSamsungの試作テレビが125%、LGが118%と、ほぼ同等です。



最後のメリットは、低温や高温時でも表示品質が落ちにくい点。実は液晶分子は低温や高温では特性が変化し、とくに極端な低温下では動きが鈍って応答速度が落ち、残像が発生します。しかしMEMSシャッターはこうした特性がありません。
シャープもこの点は強くアピールしており、説明会では-30℃環境における液晶との応答速度比較という動画も作成しています。



さらにこれまで挙げた光学効率の高さは、外光下においてはコントラストの高さというメリットにも繋がります。結果として、最高輝度は1,500~2,000cd/平方m、動作温度環境は-30℃~80℃と広く、これまで液晶が苦手だった強い外光下、高温、極低温といった悪条件でも強いディスプレイに繋がっているというわけです。

さて、説明会では7インチ1280×800ドット表示の実機(メディアタブレットに搭載されるものとほぼ同等と思われます)による展示デモも実施されました。



消費電力こそ液晶との比較展示ではなく、表示内容による省電力効果の確認(下に掲載した動画中で、右に映っている緑のバーが相対電力表示です)だけに留まりましたが、色純度の高さや精細さといったメリットは、実機を見ても確かに実感できるレベル。シャープがアピールするに十分なものと感じられました。




視野角や色度変移(斜めからの色の変わり方)も確認してみましたが、真横に近い状態からは若干色度変移が感じられるものの、かなり優秀です。



さて、シャープは発表会でMEMS-IGZOディスプレイの予定を示したロードマップを公開しましたが、この時点では「量産仕様の製品が登場するのは2017年」でした(ただし、展示された実機はこのまま製品化が可能なレベルと紹介されており、実際に発表会での表示品質などを見る限り、製品として通用できるレベルだったことを合わせてお伝えします)。

説明会時点でのシャープ側の説明では、現状で液晶に比べてのデメリットである高精細化や製造コスト低減のための技術を確立しつつ量産への道を開きたいとのことでしたが、今回は一転して搭載製品の発表となり、一気に前進した格好です。

いずれにせよ、MEMS-IGZOディスプレイは、液晶やプラズマ、そして有機ELに並ぶフラットパネルディスプレイ技術としてユニークで、かつユーザーメリットも大きなもの。今回の発表を皮切りに、ロードマップが前進することを期待したいものです。

Source: SHARP
関連キーワード: IGZO, mems, MEMS-IGZO, Pixtronix, sharp, TFT
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