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ライブイベントでスマホが大活躍する日。LTE-Broadcastを使った映像配信実験をプロ野球試合中に実施

大和哲(Yamato Satoshi), @deyamato
2016年9月22日, 午前06:00 in Android
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ソフトバンクが9月18~20日の3日間、福岡ヤフオク!ドームにてLTE-Broadcastを使ったスマートフォン向け動画配信の実証実験を行いました。LTE-Broadcastを使ってフィールドで一般ユーザーも含めてマルチメディア映像配信を行うのは、日本初の事例になります。


↑LTE-Broadcast実証実験が、福岡ヤフオク!ドームにて実施。


↑端末が参加者に貸し出され、野球観戦と同時のマルチメディア配信が試みられた。

LTE-Broadcastとは、LTEの電波を使って放送のようにデータを一斉配信をする技術です。スマートフォンのチップセットメーカーとして知られるQualcommなどが熱心に開発を行い、LTE規格の標準規格「3GPP Release9」で「eMBMS/MBSFN」として規格化されています。放送のようにエリア内の全ての端末に一斉にデータを配信しながら、配信して流したいデータのビットレートに応じてLTE用のたチャンネルから使う帯域を柔軟に切り替えられ、かつ通常のLTEの通信と混在可能と、非常に高いLTEとの親和性が特徴です。

LTEでの一斉配信というと「緊急地震速報」などで"ETWS"という技術が使われていますが、LTE-BroadcastはETWSに似た要領で、その場にいるスマートフォンに一斉にデータを送信します。ただし、ETWSは緊急速報という性質から超短時間で送ることができるテキストのみを送信していましたが、LTE-Broadcastではマルチメディアデータ、つまり映像や音声、データベース用のデータなども送ることができます(ただし、緊急地震速報と違い、LTE-Broadcastで受信した映像や音声が再生されるのは、受信アプリをスマートフォン上で実行しているときのみです)。


↑記者向け説明の発表資料から。LTE-BroadcastはLTEのネットワーク中の多数の端末に一度にデータを配信できる

現在では、Broadcastでなく普通のインターネット接続でも、たとえば「スポナビライブ!」のようにプロ野球の試合中にリアルタイムで動画中継を行っているサービスも存在します。が、これをスマートフォンで利用すると利用一台一台が携帯電話回線によるネット接続をするため、データをやりとりするための電波の帯域や、基地局・サーバーなどのリソースを消費してしまいます。

たとえば、仮に基地局に接続されている1アンテナあたり数十ユーザーが同時接続できたとしても、特に野球場のように万単位の客が居るところで、皆が一斉にスマートフォンで動画見るようになればあっという間に回線がパンクしてしまうのは明らかです。

LTE-Broadcastでは、このような状況でもわずか「1本」の周波数帯で、動画や音声といった大量のデータを電波の届く全員に配信することが可能です。もちろん、野球観戦などの場ではそこにいる全員がネット接続を動画にしか使わないわけはないですが、利用者のある程度でもLTE-Broadcastを利用するようになれば、同じ帯域を利用するLTE接続の帯域を空けることができ、他のユーザーのネット接続も快適になるという、画期的な技術なのです。

このLTE-Broadcastを使った商用サービスは米国、韓国で始まっており、また、豪州、英国でも今回のソフトバンクと同様、スポーツイベントなどでの実証実験が何度か実施されています。
今回の実証実験はこれらLTE-Broadcastアライアンス参加携帯電話事業者との連携はありませんが、実施に関わっている米Qualcommや仏Intellicore(アプリ開発)、それにLTE-Broadcast関連は初参加のシャープ(端末開発)など、ソフトバンクを中心に計10社のプロジェクトとして進められました。

↑プレスリリースより。参加10社の役割

端末は「AQUOSXx2」カスタム、100人同時にHD動画をコマ落ち途切れなく鑑賞

実証実験の内容は、これらの3日間開催されていたプロ野球の試合「福岡ソフトバンクホークス対オリックスバファローズ」戦の試合中に、テレビ野球中継の映像・音声のほか、ドーム球場天井からのホームベース周辺俯瞰映像、一塁側・三塁側からそれぞれ投手・打者を映した計6つの「映像」と、打者に対してどのコースにボールが投げられたかを表示する「データ中継」、それに「選手情報」データが同時に配信されるので、実験参加者が貸し出された端末でアクセスし、使い勝手を確かめるというもの。


↑実験参加者は、試合を見ながら、スマートフォンでテレビ中継映像や、天井からの俯瞰ビューで今の一球を見たりといったことができる。

↑6系統の映像、データ中継などが同時にLTE-Broadcastによって配信され、ユーザーは端末でそれを切り替えて見ることができる。

実験参加者人数は、スポーツ新聞、一般紙・TV、それに我々IT系のメディアを含めた取材陣と、クラブホークス会員から応募し当選した100名(1試合辺り)。一斉にアクセスすれば通常のLTE接続では輻輳が起こりかねないこの人数を、1塁側天井に設置された基地局1機(アンテナ数2個)からのLTE回線1チャネルのみで配信します。


↑ドーム球場の最も上にある広告のすぐ隣に、今回の実験用基地局設備とアンテナが設置されている(背の高いLTE指向性アンテナの下にある2つの正方形がLTE-B用アンテナ)。このアンテナの位置から見える範囲が配信エリアだ。



(仕組み上当然ですが)これだけの人数で同時に動画を受信しているにも関わらず、回線が重くなるなどは起きず、動画の閲覧は快適そのもの。配信データは720p30fpsのHD動画で比較的高クオリティだったのですが、カメラアングルを切り替えてもバファリングなどを待つ必要がなく非常にスムーズに感じます。


↑動画のクオリティは、スマートフォンでは全く文句の付けようがないほど精細で、しかも動きも滑らかなHD画像。しかもカメラ切り替えしても待ちもなく、非常に快適に見られる。

クアルコムの担当者によれば、LTE-Broadcastによるデータ伝送では信号のロスがあっても(通常のLTE通信でも使用している)誤り補償を使ってデータの復元がある程度できるうえに、それでもまだデータロスがあった場合には通常のLTE通信を使って届かなかったデータの再受信を行えるので、他の放送方式などと比べても非常に正確なデータを受信することができることも強みなのだとか。

筆者は球場内Wi-FiやBluetoothの利用もしてみたのですが(特に筆者の手持ちの機器が2.4GHzのみしかWi-Fiに対応していない機種のせいか)非常に混みあいしょっちゅう切断するような状況だったのに比べ、LTE-Broadcast接続で送られるデータはまずデータがロスしません。画面にブロックノイズなどが確認できる場面も皆無。2~3回試合が進行しても1回程度しか動画が止まるところが見られませんでした。

ただし、映像のタイミングは、実際のプレイより「7~8秒」ほど遅れて届くので、完全にはリアルタイム配信にはなりません。感覚的には、打者の打球が外野の頭を抜け打者走者一塁回り観客席の歓声が起きてからスマートフォンを見ると、動画はちょうど投手が投げた頃というタイミングです。この遅延の原因は「多くは、動画をH.265エンコードするためのコストで、短縮できないか今後検討したい」とソフトバンクの担当者はコメントしていました。


↑ピッチャーの手元からボールが離れる瞬間を使って映像の遅れを何度かチェックしてみたが、筆者の手計測で約8~9秒程度の遅れが発生。わっと歓声があがってから画面を見れば、ちょうどリプレイ動画になる感じ。

筆者個人的には、このようなとき打たれた球種を知れるのでよいだろうなぁ、と思えたのですが、今回の実験ではちょうどいいアングルのカメラがなかったので残念なところ(ホーム上カメラが映す範囲が球速に対して狭すぎるのか内角外角程度しかわからない)ではありましたが、逆にそれ以外の点は、非常に今後が期待できる実験結果だったように思います。

なお、今回の実験では基地局は一台のみのため、受信できるスポットはレフト側外野席からネット裏あたりまでのみに限定されていましたが、もし、球場全体に複数台の基地局を設置することになるとのこと(グランドは、競技上の制約で電波が受信できないようにする必要があるため、電波の照射範囲を広げるのみでは不可)。なお、その場合、複数の基地局から同じタイミング同じ信号を載せた電波を送ることになりますが、LTEには直接早く届いた信号も、壁などに跳ね返りこだま状に遅く届く電波も合わせて「強い信号」として受け取る仕組みがあるため、いわゆる「マルチパス圏外」のような現象はおきず、今回よりも多くの場合より受信状況はよくなるだろうとのこと。

ところで、LTE-Broadcastの特徴としては、通信技術としては最新のLTE-Advanced(release11以降)ではなくLTE(release9)で標準化された規格であり、ハードウエア的にはLTEに対応した機器であれば、比較的簡単に対応できることも挙げられます。

特に元々この技術を熱心に推進していたQualcomm製品の場合、たとえば、端末側では、比較的古い「Snapdragon800以降のチップセットでLTE-Broadcast対応」(クアルコムテクノロジーズ、HansAgardhプロダクトマネージャー)で、多くの端末で既にハードウエア的には対応可能となっています(ただし、現在販売されているスマートフォンはいずれもソフトウエア的には現在はその部分は省略されているので、ファームウエアアップデート、対応アプリのインストールなどは必要)。あるいは、基地局に関してもLTE対応設備のそれが流用できます。


↑今回、球場で貸し出されたマルチメディア端末。シャープ製「AQUOSXx2」のソフトウエアを改造したもの。

実際、今回実験に使用された端末もハードウエア的には市販されている「AQUOSXx2」そのもので、ファームウエアの改修および専用受信アプリを作りインストールしたもの、基地局設備もハードウエアは一般的にLTE(-A)向けとして使われているものが利用されていました。

スマートフォン向けのマルチメディア配信の技術にはWi-FiやV/UHF帯を使うものも含めて様々なものがあり、また過去にも商用化が試みられてきました。配信できるデータのクオリティや展開の容易さを考えると、LTE-Broadcastは今後の本命と言えるかもしれません。というのもLTE-Broadcastはならば、今後、今回の実証実験と同様な商用サービスを展開するのであれば、事業者、利用者どちらにとってもコストが他のマルチメディア放送などに比べるとぐっと少なく抑えることができ、普及のためのハードルはかなり低いことが予想できるからです。

ソフトバンクの担当者は、今後の商用サービス開始の予定は「未定。今回の実験の結果、ユーザーの反応などを見極めなければならないが、個人的には2020年というイベント年も控えており期待したい」としていました。

実施後、実験参加者に対して行ったアンケートでも「今後このサービスを利用してみたい場面」という設問で、ソフトバンクがトップパートナーとなっているバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」やソフトバンク・チーム・ジャパンが参加しているヨットの「アメリカズカップ」などが記載されており、野球以外の競技も含めて、このLTE-Broadcastで「スマホで動画を見ながらスポーツ観戦」が商用サービスとして提供される日は割とすぐに来るのかもしれません。


↑筆者も実験参加者アンケートに協力。とても楽しかった、他のスポーツでも使いたい旨、熱く記述しておいた。早く「スマホで動画を見ながらスポーツ観戦」の時代が来ますように、と。




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