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大宮アルディージャ本拠地の「Wi-Fi」が恐ろしく快適な理由... Wi-Fiマルチキャストの実証実験が開始

大和哲(Yamato Satoshi), @deyamato
2016年10月28日, 午後02:00 in Smartphone
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NTTグループは、Jリーグ「大宮アルディージャ」のホームであるNACK5スタジアム大宮の「スマートスタジアム化」を進めています。その一環として強力なWi-Fi環境を整え、9月25日からは、Wi-Fiマルチキャストによるスタジアム内の映像配信も行っています。10月22日土曜日、報道関係社を集めての体験会が行われました。

非常に手軽で快適なWi-Fiマルチキャスト映像配信

Wi-Fiマルチキャストは、その名前の通り、無線LANの電波を使って放送のようにデータを一斉配信をする技術です。基本的にはWi-Fi対応のスマートフォンやタブレットがあればハードウエア的にはそのまま受信でき、それでいて一斉配信であるため、多くの端末が同時に受信しても帯域が混雑しないという方式です。

Wi-Fiマルチキャストでの映像配信は、NTTデータがeSports(対人対戦のPCゲーム)の大会などで行っています。また、同じようなスポーツ競技場での試合中の一斉動画配信は、たとえば、ソフトバンクが、9月に福岡ヤフオク!ドームでの野球の試合を球場内に配信する実験を行ったことがあります。

この際に利用されたのはWi-Fiではなく携帯電話の電波を使う「LTE-Broadcast」でした。今回の映像配信では、ソフトバンクの場合と異なり、映像を見るには利用者が自分で持ち込んだスマートフォン・タブレットを利用します。つまり、スタジアム内に入れば、誰もが配信映像を見られるわけです。


▲大宮アルディージャアプリの画面。試合中の映像配信は「LIVE動画」で観ることができる。Wi-Fiマルチキャストを使用するため、「ARDIJA FREE Wi-Fi」に接続時のみ利用が可能だ。

Android用、あるいはiOS用の「大宮アルディージャ」アプリがそれぞれのマーケットにあるので、それをインストールし、スタジアム内の無料Wi-Fi「ARDIJA FREE Wi-Fi」に接続すれば、それで多くのスマートフォンの場合は、もうマルチキャストによる映像配信が受信可能です。


▲ちなみに、スタジアム内の無料Wi-Fiを使わずに配信映像を見ようとするとエラーで弾かれるようになっている。


▲筆者もマイ端末であるHuawei製Honor8、iPhone SEを持ち込みしたが、Honor8はWi-Fi周りが少々特殊なためかうまく動作せず。今回はiPhoneのみで動作確認した。

Wi-Fiマルチキャスト受信に関してですが、Wi-Fiの接続設定をスタジアムWi-Fiに切り替えれば、あとはアプリが内部で処理し、マルチキャストで受信すべきときはマルチキャストで、ユニキャストで接続し、ユーザーからはどの状態で接続しているかはわかりません。

ユーザーからしてみると、普通にスタジアムWi-Fiに接続しているのと手間的には全く変わらず、いつの間にかマルチキャスト配信を受けているような状態です。(現地の技術担当者によれば、基本的には試合中のリアルタイム動画配信時にはマルチキャスト、それ以外のときがユニキャスト接続、しているはずとのこと)

配信されている動画は3チャンネルで、内容は、ひかりTVと同内容のディレイ放送、見どころ解説、江坂選手のひとつの様子をずっとカメラで追いかける「江坂選手追っかけ映像」。追っかけ映像はこのスタジアムのマルチキャスト配信にしか使われていない映像です。





▲試合中マルチキャスト配信の各チャンネルの様子。

試合中は、追っかけ映像に関しては筆者の実測で大体6秒程度の遅れでスマートフォンに配信されます。
サッカーでは、野球と違って試合中にゆっくり映像を見る余裕はあまりない(45分間、凝視していないといつ流れが変わったり、点が入るかわからない)こと、野球ではピッチャーの球筋など細かい部分が観たいがサッカーではそれはないこと、NACK5スタジアムはフィールドが観客席に非常に近くプレイがよく観察できることなどから、動画観戦への動機は低い感じもしますが、

このスタジアム内では、だいたい、ひとつのWi-Fiアクセスポイントにつき、200人程度が収容可能になっています。そこにいる全員が普通の通信を使えば回線がパンクしてしまいますが、Wi-Fiマルチキャストでは全員を1回線で接続できるため、その分だけ効率よくデータ転送できます。

1アンテナから複数端末に同時にデータを配信できますが、このスタジアム内での1アンテナでの最大同時接続数は200~300台程度を想定しています。つまり、その中でマルチキャストされている利用者分だけ効率よくデータを転送できるようになるわけです。

実際に、このスタジアムで配信映像を、試合中ずっとiPhoneで再生していましたが、(アプリごと2度ほど落ちた以外は)まったく、途切れもせず、ブロックノイズすら発生せずに高画質な映像を観ることができました。
また、後述しますが、マルチキャスト以外のデータ接続も非常に快調で、他のインターネット関係の操作も全く問題なく利用できます。つまり、スタジアムに入って一度「ARDIJA FREE Wi-Fi」への接続設定さえしてしまえば、普通にスマートフォンを使うことができ、それに加えてマルチキャスト配信映像も見られるわけで、非常に手軽に感じます。

専用のWi-Fiに接続させるその導線さえつくることができれば、もしかすると、LTE Broadcastより先に商用化さえできるかもしれないな、と思わせる出来でした。

恐ろしく快適なスタジアム内Wi-Fi

NACK5スタジアムでは、スマートスタジアム化の一環として、スタジアム内Wi-Fi「ARDIJA FREE Wi-Fi」が整備されています。このWi-Fiは、スマートフォンからはアクセスポイントはひとつに見えますが、実はスタジアム中に実に70基以上のアンテナが配備されていて、スタジアム全体をエリアとして覆っているのです。




▲スマートスタジアム化によって、このサッカー場内には約70以上のWi-Fiアンテナが設置され、サービスエリアを構築している。写真はWi-Fiアンテナのひとつ。

このアンテナは、LTEの場合とは逆で、非常に指向性を高めてあって、一台あたりのカバーエリアは非常に狭くしてあり、あまり大人数がぶら下がらないようにしています。これは、LTE Boradcastの場合と違って、ユニキャスト(通常のデータ通信)・マルチキャストでアンテナを分けていないという事情によるものです。筆者宅のWi-Fiよりよほど快適な速度での通信が可能でした。

具体的には、筆者の端末はiPhoneでWi-Fiマルチキャストで試合中の映像を再生しつつ、ノートPCではWebで調べ物と「艦これ」をしつつ、Android端末でdアニメストアでHD画質のアニメをストリーミング配信して、まったく淀みなく通信が行えます。これはあり得ないとしか思えないくらい素晴らしく快適な通信環境です。

小さいとは言えスタジアムには1万数千人程度の観客がいる状態、しかも利用は記者席でしたので、スマートフォンをPCを使う人が他にもいたのですが、そちらも全く問題なくWi-Fi通信が使えているようでした。さすが、日本の通信の総本山、NTTグループが本気で構築した通信ネットワークと賛美したくなるネットワーク構築技術です。


▲サッカーファンには怒られそうにも思ったが、通信速度の快適さを調べるため、dアニメストアのHD映像ストリーミングなども使ってみたが、何にも問題が出ない。素晴らしい無線ネットワークだった。

映像配信にH.264を使い、映像のエンコードやネットワークの制御などをスタジアム内で完結しているなど、ソフトバンクのLTE-Broadcastに比べると実験的な技術を使用せず、枯れたものを多用しているような印象を受けましたが、その分、サービス全体のクオリティは高いと思えました。

これならば、2020年と言わずとも、いますぐでも、映像配信もWi-Fiネットワークも(マネタイズさえできれば)商用化できそうな完成度と言える感じです。

各実験に共通する「いかにカネを稼ぐか」という悩み

ただ、ソフトバンクによる野球場でのLTE-Broadcast映像配信にしても、今回のサッカー場でのWi-Fi環境&映像配信にしても共通の悩みはあります。それは、技術的にはできているものの、どうやってお金を回収すればいいのかが悩ましいということです。

今回の実験にかかった費用は、Wi-Fiエリア構築、場内設備のセッティング、アプリの作成、そして映像の使用にかかる費用まで、実験ということでNTTグループの持ち出しによって賄われています。商用化となるとどこかからかお金を稼いでこないとなりませんが、ビジネスプランを作るのが難しいのです。

Jリーグの試合数はリーグ戦は34節。ホームでの試合はその半分。年間140試合ある野球に比べると極端に少ないのです。これでは月定額や年定額で利用料をユーザーから徴収してもお得感は出し辛い。
そこでやろうと思えば仕事でもできそうなくらい高品質な通信エリアを確保している、70基以上のスタジアム内Wi-Fiアンテナの維持費用は、台数が多いだけに相当なものです。

ちなみに、今回担当してくれたNTT持ち株会社の広報担当によれば米国のスタジアムなどでは、高額な貴賓室などを用意しその利益で設備投資に回してスマートスタジアム化を進める(例:アトランタの新ブレーブス球場)などもあるのですが、これは8割の売り上げを2割の客でまかなえる米国だからできることで、非常にうらやましいとのこと。

日本では、プロスポーツも基本、運営会社の持ち出しになってしまうのが現状、さらに大宮アルディージャの場合、メインスタジアムのNACK5大宮スタジアムの運営が自治体(さいたま市)で設備の最新化も財政面から支援などは期待できない、とのことでした。


▲ちなみにNACK5スタジアム大宮は築年数が古く、ネットワーク配線の余地などもない。今回の実験ではケーブルをテープで壁に貼り付けていたが、本格的にサービスインするなら、キチンとお金をかけて設備を作る必要があるだろう。

今回の、スタジアム自体のスマートスタジアム化、マルチキャストでの映像配信という技術的な要素の実験はあきらかに楽々クリアできており、その気になればいつでも本サービス提供できそうに思える完成度だけに残念でなりません。

マネタイズの問題はフリーのサービスを提供する技術にとって必ずついて回るモノではありますが、なんとか解決し、本当のサービスインができるとよいのですが。




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