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KDDIのVRカラオケを初日に体験、実写VRの商用化への課題を考えた(訂正)

大和哲(Yamato Satoshi), @deyamato
2016年10月31日, 午前11:00 in Idle
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KDDIが、新宿歌舞伎町のカラオケ屋でVRカラオケの実証事業を期間限定で行っている。その開始初日に実際に行って、(EngadgetのVR好きスタッフとともに)体験してきたので、簡単に報告したい。

この実証事業は、本誌掲載のニュースでも紹介しているが、簡単に言うと「実写の360°映像内を自由視点で歩き回れる」というVR技術の実証事業だ。

KDDIとカラオケルームを経営する「シダックス」、それにコンテンツを持つ「ポニーキャニオン」が連携して行っているもので、10月19日から11月18日まで、カラオケ・シダックス新宿歌舞伎町クラブで、料金は1部屋・1時間あたり600円で、予約すれば誰でも体験できる。

(追記)完全予約制ではなく、当日店頭の申し込みでも空きがあれば利用できます。



カラオケルームは、VRデバイスとして「HTC Vive」とそれをコントロールする機器などを据えた専用室となっている。受付でHMD(ヘッドマウントディスプレイ)装着のための使い捨てマスクとViveのコントローラを借り受けて、部屋に行けば、あとはHMDを装着して気軽にVRを楽しめるようになっている。

▲VR HMDなどのセッティングの図。一人では装着するのは微妙に面倒なので、できればVRカラオケには複数人で行き、プレイする人以外はプレイする人を手伝ってあげることを薦めたい。

カラオケ店でVR用ギアを借りるというのは、メンバー全員が始めての経験だったのだが、「これからVRコンテンツを楽しめる」というウキウキ感があった。

HMDを頭部にぴったり装着するには(慣れていれば簡単にできそうだが)、側部のベルトをしめたり、コントローラを持たせてあげる必要がある。周りの人が手伝ってあげたほうが、時間が節約できよさそうだ。時間単位で費用がかかるカラオケルームならなおさらだ。またHTC Viveは有線で繋ぐVRマシンなので、ケーブルを持って歩く「介添人」役の人がいた方がスムーズに楽しめそうだ。


▲最初は、バージンロードを行く花嫁のドレスの裾をもつように恭しく介添えするのだが。次第に面倒くさくなって、最後はウ飼いのようなスタイルになるのであった。

さて、今回の事業で楽しめるVRコンテンツについて言及しよう。先述のニュース記事にもある通り、VRカラオケのコンテンツは、実在するアイドル「マジカル・パンチライン」(以下、「マジパン」)関連の以下のようなものが用意されている。

  • 「マジパン」とカラオケ体験
  • 「マジパン」とのバーチャル握手会
  • 「メンバー紹介」
  • 「自由視点ライブ」

▲VRカラオケで楽しめるコンテンツの説明

これらは大きくわけると2つの系統に分けられる。上2つはVRカラオケ設備のメニューでは「VR」として紹介されている360度カメラ動画系、下2つが「歩き回れるVR」とカテゴライズされている、映像とCG合成によるバーチャル体験系のコンテンツだ。

360度カメラ動画系の方は、(おそらく1基の)360度視点で撮影できるカメラを使って撮影した動画を、HMDを通して、アイドル少女たちが存在する場所を360度まるっと再現しているというのがウリだ。

バーチャルカラオケで再現するのは、カラオケボックスだ。私服姿でくつろぎ、座りながら持ち歌を歌うアイドル達を(部屋の入口扉近くで立って)眺めることができる。視点的には、部屋の中のアイドルたちを凝視する以外にも、カラオケルームの天井や床も再現されていて眺めるが可能だ(しかし、単体の360度カメラの映像なので、残念ながらアイドルに近づくといったことはできない)。

バーチャル握手会も同様に360度カメラで撮影した動画コンテンツで、目の前で握手してくれるアイドルを間近に観察できるほか、顔を左右に向けると今握手していないメンバーが何をしているか(たとえばセンターのさとれなさんと握手してるときには、左の二人はだべっている)が見られる。



▲こちらはシダックスのサイトに掲載されているバーチャル握手会のイメージ。イメージであって正直言ってここまで綺麗なコンテンツではない。

またこちらも上下に視点をやると、こちらでは何もない天井や床を見ることが可能だ(握手会の会場は残念ながら動画には記録されていないようだ)。


▲ これはプレスリリースの説明から。右が今回のVRカラオケで使われている「自由視点VR」で、これで撮影したライブ画像が楽しめるわけだ。

そして、今回の事業ではこちらが、おそらく本来目玉に据えていたコンテンツだろう、バーチャル体験系のコンテンツだ。これらは複数台のカメラによってアイドルを撮影し、CGによる背景と同時に再生、HMDをかけたユーザーが歩き回りと撮影カメラが切り替わり視点を変えられる「自由視点ライブ」体験だ。

「メンバー紹介」は、ざっくり言うと、並んでいるメンバー達が立って自己紹介しているところを、歩き回っていくつかの角度から観られるという内容。「自由視点ライブ」は、同じく小さなステージで歌っているメンバーを、同様に歩き回っていくつかの角度から観られるという内容だ。


▲メンバー紹介。CGと実写の合成で構成されている(が、クオリティは...)


▲利用者が部屋の中を歩き回り、ステージをさまざまな角度から観られる。左から覗けば、左からアイドル達を写した映像に切り替わる。


▲同じくシダックスのサイトから、VRライブ用の撮影現場と思われる写真。技術的には、これを少ないカメラで撮影し、どの角度、どの距離からでも観られるようにするのは大変だったのかもしれないが。

その実現方法だがKDDIのプレスリリースなどによるとアイドルライブの動画データを、撮影角度の違う複数のカメラで撮影してから、人物部分のみを切り抜き、CGの背景に合成しているということのようだ。そのため、アイドル画像は、基本的に平面の切り絵状でかつ動いている動画ということになる。

没入感は期待外れ

CGキャラによるVRと異なり、このVRカラオケは実在の人物を撮影した映像ということあり、映像データには立体感はない。キャラクターが平板に見え、言ってみれば、描き割りのキャラクターが3次元CGの中にいる感じだ(背景は3D処理しているので、HMDを被った利用者からは立体にちゃんと見える)。

▲残念ながらアイドルを写したカメラは並列に複数台で、上下に視点を変えても映像は変わらない(関係ないけど、女性もアイドルのスカートの中、気になるんですねw)

ちょっと、リアリティという点では微妙な感じというべきかも知れず、この辺りは、KDDI総合研究所開発の自由視点VRの技術の問題だと思うが、立体映像用にデュアルカメラで撮影するなどの改善がほしいと感じる。また、(先のリリース記事のコメントで「合成が微妙」というコメントがついていたが)、実は、このVRカラオケのコンテンツ、実写キャラクターの境界処理が少々粗く、はっきりキャラクターが合成でわかってしまう。

このVRカラオケの自由視点VRでは、HMDの視点だけでなくViveのトラッキング機能を使って、コンサート中のアイドルにある程度近づいてみたりといったことが可能。アイドルの映像が拡大表示されるせいか、粗い境界がさらに目立ってしまい、かなり雑な合成に見えてしまう。

境界処理などを丁寧にやるとコンテンツ作成に手間がかかるのはわかるし、視点の数だけカメラを用意する実写VRの場合、その処理にかかる工数も加速級数的に増えるのはわかるのだが、現状ではCGモノのVRほどの完成度を期待するのは難しいのかもしれない。KDDI総合研究所を初めとする技術の改良に期待したい。

VRというと、最近流行のものであれば、たとえば初音ミクの「Mikulus」、あるいはアイドル物ではPS VRの「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」があるが、正直に言えば、この実写のVRカラオケでは、残念ながら、ここまでのライブ感、没入感を期待するのはちょっとやめておいたほうが現状ではよさそうだ。

世間では、VR、つまり「仮想現実」といった場合、大きくふたつの意味があると思う。それは仮想的にもうひとつの「現実」を再現すること、それと実際にはありえない「仮想」を現実らしく人間に体験させるということだ。

わかりやすい例に挙げると、前者の例としては、よくスマートフォン用のVRデモなどにあるローラーコースター。HMD上の映像でジェットコースター体験をさせるものだ。

後者の例としては、たとえばOculus用の「Mikulus」が代表するような、3G CGキャラを鑑賞する系だろう。天使のミクさんのような、コスプレでも着ぐるみでも表現し得ない存在を、実際にはありえない視点で観察することができる。

もちろん、このふたつは、同じVRアプリケーション(これは単にコンピュータのソフトという意味ではなくて、応用用途という意味で)実現しているものもあって、人気のあるVRコンテンツにはこれを両立しているものも多い。今回のVRカラオケは、狙いとしてはその両方を目指しているように思う。

VRってもっとすごいモノなハズ

しかし、残念ながら今回の事業は、かけている手間もお金も技術も足りないように思う。アイドルが平板に見えるのはまだ自由視点VRの技術が未熟であることを考えれば仕方ないとしても、たとえば、CGでの握手会場の天井も床も一面真っ白なだけだったり、アイドル画像の境界処理が雑だったりと、コンテンツ作成に使った手数が明らかに足りない感じだ。

例えば、今回体験した利用者からは「バーチャルコンサートやアイドルを感じさせるにしてもHMDでアイドルを写すことしかしていない」「もっとライブの楽しさなら楽しさを、アイドルを身近に感じさせたいなら近くで見られるようにしてほしかった」という声があった。

また、このVRカラオケでは歩き回れるといいつつ、ある程度歩くと視界に格子が表示され、それ以上アイドルに近づけなかったりする。できれば(画像が粗くなっても)、アイドルのほっぺたにぷにぷにできるくらい近づきたかった。

(ちなみに、前述のMikulusなどでは、ミクさんの目の前に迫ることができ、その際にはミクさんが視点をユーザーに少し合わせたり、また、少しそらしてみたりといったこともしていて非常にかわいらしいのだ。実写VRでは難しいだろうが...)

筆者はアイドルのファンではないが、もし、魅力的なコンテンツが出てきたらお金を惜しまないというファンの気持ちはわかるつもりだ。KDDIや、シダックス、ポニーキャニオンだって、そういうファン心理と懐を理解しているからこそ、このような事業をするのだろう。だが、できれば実施に関わった各社にはそれに甘えてほしくない。VRってもっとすごいモノなハズだ。どうせやるならもっと「おおっ!」と思わせるようなものを、これからのVR関連での事業に期待したい。

(訂正 2016/11/1) 記事掲出時、VRカラオケをKDDIとシダックスによる「実証実験」と記載していましたが、すでに実施しているサービスであり、本来は「実証事業」とすべきところの誤りでした。訂正しお詫び申し上げます。



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関連キーワード: idle, Karaoke, VirtualReality, vr, yamato
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