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「最悪の脳腫瘍」を遺伝子操作の食中毒菌で叩く方法が開発。実験では生存率が2倍に

食中毒を起こす菌でも役に立てることはある

Munenori Taniguchi, @mu_taniguchi
2017年1月13日, 午後08:00 in medicine
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米デューク大学の研究チームが遺伝子操作したネズミチフス菌を使い、根治困難な悪性脳腫瘍の膠芽腫(こうがしゅ)を治療する方法を開発したと発表しました。ネズミチフス菌とは名前のとおり、サルモネラ属のなかでも主にネズミを宿主とするチフス菌の一種。

脳腫瘍の中でも膠芽腫は「最悪の悪性腫瘍」とも呼ばれます。非常に進行が早いのが特徴で、数週間で病状が大きく悪化することもあります。

腫瘍といえばまず考えられるのが外科的に取り除く治療方法ですが、膠芽腫には浸潤性があり、正常な細胞との境目を見極めるのが困難。手術で完全に取り除くことはほぼ不可能とされます。研究チームの説明によれば治療後の5年生存率は10%未満しかなく、発見後の平均余命は15ヶ月とも言われます。

さらに、脳に送られる血液は血液脳関門とよばれる体内のフィルター機構によって異物や薬品を通さない仕組みになっており、これが脳腫瘍の抗がん剤や放射線治療を困難なものとしています。


治療法の研究にあたり、研究者らは膠芽腫を叩くためネズミチフス菌に遺伝子操作を施して無害化。さらにPurineと呼ばれる酵素が常に欠乏した状態にしました。Purineは膠芽腫に多く含まれるためこの操作によってネズミチフス菌は脳腫瘍へと誘導され、そこで増殖するようになります。

ネズミチフス菌にはさらに、細胞の自己破壊を促すAzurianタンパク質およびp53と呼ばれる化合物を産生するようにしました。これらは低酸素状況で多く作り出されるため、特に腫瘍内では効果的に作用します。これによって、大量にネズミチフス菌を抱えた腫瘍細胞が自滅していくように仕掛けたわけです。

研究チームのRavi Bellamkonda氏は「外科的に除去が困難な腫瘍に送り込み、目的の作用を果たす細菌の設計作業は、非常に刺激的でした」と延べ、「役割を終えれば細菌は機能を停止するので、免疫的にも悪影響を起こしません。実験では、細菌は効果的に"食料源"を食い尽くし、その後自然に作用は失われました」と説明しています。

ラットを使った実験では、治療に使用した個体の20%が100日(人間に換算すると10年)の間生存したとのこと。もちろん人間でまったく同様の効果が得られるかはこれからの検証が必要ですが、もしラットと同様の効果があるとすれば、生存率は2倍以上にまで高められることになります。

膠芽腫の治療は患者にとっても非常に辛いものとなります。この新しい治療法の実用化にはまだ長い道のりがあるものの、今後の進捗に期待したいところです。



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