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セガ、バンナムらがVRゲーセンの不満と課題解決に集結。事業者と運営ノウハウを共有

施設運営の苦労話、ロケーションベースVRの場合

関根慎一 (Shinichi Sekine), @sekine_s
2018年4月20日, 午前10:30 in vr
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一般社団法人ロケーションベースVR協会は4月12日、施設型VRアトラクションの実運用上の課題を共有する趣旨のセミナー「施設型VRオペレーションセミナー」を実施しました。

ロケーションベースVRは、ショッピングモールやゲームセンターなどの商業施設で来場者向けに設置する施設型VRの総称。本セミナーは「VR ZONE SHINJUKU」や「ZERO LATENCY VR」など、主に都内各地で稼働している施設の担当者が集まり、施設型VRの実運用におけるオペレーションの負担軽減をメインテーマに、運用の流れと課題について話しました。

会場ではロケーションベースVR協会が用意している「オペレーション負担軽減ワーキンググループ」の「運用項目別検討資料」が配布され、21項目におよぶそれぞれについての運用方法と課題が話し合われました。

事業者向けのセミナーでしたが、「施設型VRの中の人」の裏話、苦労話を聞ける側面もありましたので、ごく一部ではありますが、セミナーの模様をお伝えします。

Gallery: 施設型VRオペレーションセミナー | 16 Photos

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登壇者は下記の通り。

  • 株式会社バンダイナムコアミューズメント 田宮幸春さん(「VR ZONE SHINJUKU」「VR ZONE Portal」)
  • 株式会社電通 足立光さん(「進撃の巨人展」など)
  • CAセガジョイポリス株式会社 速水和彦さん(「ZERO LATENCY VR」)
  • 株式会社ハシラス 安藤晃弘さん(「Hashilus」「Urban Coaster」など)
  • 株式会社ソニー・ミュージック・コミュニケーションズ 松平恒幸さん(モデレーター)

セミナーを始めるにあたって、バンダイナムコアミューズメントの田宮さんは、今回のアウトプットによってセミナー参加者が得られることは「施設向けVRを運営する中で出てくる課題の整理」だと話します。

田宮さん(以下敬称略):今回のセミナーでは、施設型VRをやる中で必ず直面する課題と、それに対処するためのノウハウをできる限りお伝えします。課題を共有し、そのうえで、課題に対応するための新たなアイディアもいただけたらいいなと思っています。




1. 待合方法

VR特有の問題はなく、今のところはどの施設でも問題なく対応している。

2. 事前オリエンテーション

現在はオペレーターを配置して、口頭で説明するのが主流だが、無人化は映像を流すことで解決が可能。来場者の体験の質を優先するならば、有人の方が向いている。

田宮:複数の施設で稼働させるコンテンツであれば、共通で説明できる部分があるはずです。どこまでを無人でできるかの線引きを事前に整理できれば、オペレーションとしても良い回し方ができるのではないでしょうか。

3. 待ち時間表示

施設ごとに問題なく対応できている。

4. 免責事項の同意

来場者にVRを安全に体験してもらうには、どうしても来場者へ免責事項の同意を求めるタイミングが生じる。施設側のリスクヘッジという側面もある。

事前予約が必要な施設であれば、予約時に同意を求められるが、コンテンツ固有の注意事項は、コンテンツの中に含んでしまう手もある、一概に一般化できないのが悩ましいところ。

速水:すべての免責事項を事前にWebなどで説明するのは難しく、その場、その時になってから説明しなければならないことが多いですね。特にライド型の設備は、VRでなくとも確認をお願いすることになります。

5. 外国語対応

コンテンツの作り方次第だが、基本的には普通のゲームと変わらない。ノンバーバルUIであれば特に問題は生じない。

足立:待ち時間の多いコンテンツであれば、サイネージの動画で細かいことを説明することはできます。場合によっては、リーフレットなどを渡して読んでもらう必要があるかもしれません。

速水:フリーローム型のコンテンツだと、言語が通じていないことで、来場者が意図した楽しみ方をできないことが考えられます。これはVRだけの問題ではないですが、今後解決しなければならない問題です。

6. 荷物あずかり

VRは視界が塞がるので、来場者の荷物が盗難に遭う可能性があるが、これは個別にロッカーを使ってもらえば解決する。セキュリティを考えれば、これが一番確実だが、人気のあるコンテンツだと、回転が遅くなる可能性がある。監視カメラの設置も有効。

足立:コンテンツにもよりますが、箱状の椅子の中に荷物を容れて、その上で遊んでもらうという策も考えられますね。

7. バックパックPC

フリーローム型のVRコンテンツを遊んでもらう際、来場者自身にPCを背負ってもらう形態。充電池の着脱回数が多くなるため、バッテリー室の破損も課題。

速水:バックパック型のPCは電池の消費が激しく、一回使い終わったらすぐに充電しないと追いつかないので、常に予備バッテリーを準備しています。自動的に充電してくれるなにかしらの装置がなければ無人化は無理でしょうね。

8. ニンジャマスク

不特定多数が使用するHMDの装着感や衛生面を維持する上でニンジャマスクの使用は必須だが、着け方によってはズレてきてしまうなどの問題も起きる。施設として、どのように扱えばコストを低減できるかが課題となっている。

安藤:HMDを装着すること自体は誰でもできるのですが、ニンジャマスクを装着している場合は、装着中にズレてしまってHMDの装着難度が上がってしまう現象が起きます。装着時、HMDの接眼レンズ側に顔を押し付けてから、後ろで締める動作をしなければならない原因がこれです。

施設のオペレーションを削減する観点では、ニンジャマスクを使わない実例が出てきています。HMDのクッション部分を抗菌素材に取り替えて、気になるひとだけが拭き取れるようにウェットティッシュを置いておく形ですね。

田宮:ニンジャマスクの配布の仕方も課題の一つです。専門施設であれば、入り口で1枚渡しておけば、コンテンツごとに消費されないので効率的ですね。でも本当は「着けなくていい」のが理想です。ハードウェアメーカーさんには、肌に直接触れるクッション部分のオプションとして、防水仕様のものを是非ご用意いただきたい。HMDに限らず、装着物の装着感は体験の質に直接関わるので、ちょっとでも水分を吸うものは絶対にNGです。

9. HMD

VR HMDの着脱の仕方は難しくないが、初めてVRに触れる人はまだまだ多い。時間の経過に伴うVRデバイスの普及と、デバイス形状の改善で解決する可能性も高いが、現時点ではスタッフを割り当てたオペレーションが最も確実。

速水:本当にVR HMDが初めての人は「きちんと見えている」ことの判断基準がないので、見えているものの焦点が合っているかどうかさえも判断するのが難しいのです。なので現状では、何が見えているか、きれいに見えているか、声をかけて確認するスタッフがどうしても必要です。

複数人で遊ぶコンテンツの場合は、お客さんへ先に映像を見せておいて、HMDを装着してもらい、スタッフがそれぞれどう見えているかを確認して、ご自身での調整が難しそうな場合はスタッフの手で調整を行うというフローが可能です。でも、スタッフを配置せずに済むのは難しいでしょう。

安藤:HMDを前から装着する人なんて、ダイビングをやってる人くらいですよね(シュノーケルを着けるため)。施設側のケアにも限界があるので、HMDの着け方は、広く周知していきたいところ。HMDが自分で着けられるお客さんには施設の入り口で「HMD着けられますマーク」みたいのを渡して、その分プレイ料金がちょっと安くなる、みたいのをやったら周知が進むかもしれません(笑)。

田宮:VRの体験自体が初めてのお客さんはまだまだ多いです。では二度目は自分で着けられるようになるかというと、必ずしもそうでもなくて、初回の時にスタッフが丁寧にサポートすると、なかなか憶えてもらえないこともある。なので体験の中に「自分で着ける」タイミングを作るのも有効なのではないかと思います。でも結局は、時間が解決する問題なのかもしれないですね。

10. ヘッドホン

ヘッドホン一体型でないHMDの場合は、煩雑なオペレーションが発生しやすい。

速水:HMDが視界を塞ぐ関係で、ヘッドホンを着けてもらうタイミングが難しいですね。時間も人も必要ですし、配線も大変です。HMD、ヘッドホン、コントローラーの三工程で着けてもらうのが今のところ一番いいのかな。オペレーション軽減の観点からいえば、HMDに付属しているものを使ってもらうのが順当でしょう。

田宮:使わずに済むなら、ヘッドホンはない方がいいです。別途ヘッドホンが必要になると、お客さんが自分で着けられなくなってしまうし。基本的にはHMD一体型を使うか、施設で音を鳴らす形の方がオペレーションは圧倒的に楽です。

安藤:僕のところではプレイヤー同士の会話を大事にしたかったので、マルチプレイヤーのタイトルでは早い段階からヘッドホンを使わずに済むようにしていました。

11. コントローラー

コントローラーは電源の管理と盗難対策が課題。コントローラーの充電用クレードルは純正の製品が存在しないが、現状ではサードパーティ製のクレードルも増えてきている。

安藤:Viveコントローラーは充電効率が良いので、今のところ充電で大きな問題は起きていません。盗難を抑制する方策の一つとしては「コントローラーをクレードルに納めるとコンテンツ終了」というコンテンツ側からのアプローチも考えられます。

安藤晃弘さん

12. チュートリアル

コンテンツごとのチュートリアルは、事前オリエンテーションと同じく、施設内のサイネージで案内するか、コンテンツ内で説明するかの二通りの方法が有効。ただし説明が多すぎると、プレイヤーが操作方法を憶えきれないことも考えられる。

田宮:まず、操作説明が必要なコンテンツをなるべく作らないというところに立ち返る必要があると思います。VRの体験はコンテンツの世界に入り込んで何をするかなので、例えば明らかに「これはトリガーを引くほかないだろう」という見た目、状況を設定して、極力、説明の余地をなくす。価値ある体験をするために、どうしても説明の必要な部分だけは説明するという形が望ましいのではないでしょうか。

田宮幸春さん

13. キャリブレーション

VR空間とプレイヤーの位置を特定するキャリブレーションは、ロケーションベースVRでは重要なテーマ。位置ズレのチェックと是正のための工程をいかにして自動化するかが課題となっている。

安藤:VR HMDは最初にきちんとキャリブレーションしても、徐々に位置のズレが生じます。例えばコンテンツ内部で正面を見ているはずなのに、HMDをかぶってみると少しだけ左を向いてしまっているとか。たった一日でも結構ズレます。

自動化に向けた一つの方法としては、コンテンツの最初にキャリブレーションのための動作指示を組み込み、そのタイミングでスタッフがキャリブレーションの操作をするというオペレーションが有効です。また、HTC Viveの場合ですが、ベースステーションのトラッキング範囲にトラッカーを配置して三角形を形成し、現実の空間とVR空間のズレを検知・補正するアプローチもあります。このほかにもいろんなパターンがありますが、ともかく時間が経過することでキャリブレーションがズレていく問題は、コンテンツが始まるタイミングで調整する工程を入れることで最小化が可能です。

14. プレイスタート方法

コンテンツを開始するタイミングは、現状ではプレイヤー側の準備が整ってからスタッフが開始の操作をするパターンが多い。このオペレーションを軽減するための方法としては、プレイヤーが自分で開始の操作を行う方法や、カウントダウンの間にデバイス調整や注意事項の周知を行う方法が考えられる。

15. プレイ中

現実での視界を遮断するというVR HMDの性質上、現実側にスタッフのアテンド(付き添い)は必要だが、そのアテンドの数をいかに減らすかが課題。安全性を確保する観点から、完全になしにはできない。

足立:アテンドの数はコンテンツによって異なります。ライド型は比較的少なくできますが、マルチプレイヤーのフリーローム型は、プレイヤー同士の衝突を避けるために、どうしてもプレイヤー1人につきアテンドを1人つけるくらいは必要です。

速水:人数を減らしながら、安全性を高めることを追求する方向性を進んだ方がいいと思います。VR空間を現実よりも狭くつくると、プレイヤーの動く範囲もそれに応じて狭くなる傾向がありますので、コンテンツをうまく設計することで、トラブルを減らすことはできるでしょう。

安藤:プレイヤーの動きに起因するトラブルを防ぐ工夫としては、ゲームのルールにあらかじめトラブルを抑制する仕組みを入れて、そこから逸脱する行動を取るとペナルティを与えることで、ゲームを楽しめなくする例があります。意図的に壁にめりこんだら即死するとか。あるいは範囲外に近づくにつれ視界を暗くする、アバターを太らせてパーソナルスペースを大きめに取らせる、など、コンテンツ面から事故を防ぐための試みは世界中で行われているところです。

速水和彦さん

足立光さん

16. エラー対応/トラブルシュート/災害・消防法対応

・エラー対応
VRは個人体験であり、体験者にしか見えていない視界や音があるので、VR体験中に異常が起きても、外部から気付きにくい問題がある。また、視界がふさがれているので「非常ボタン」のたぐいにもアクセスしにくく、誤動作によるトラブルの発生はVR体験を大きく損なうため、仕組みづくりは慎重に検討する必要がある。

・防災
非常時には電源が落ちて警報が鳴るので、基本的には問題ないが、視覚と聴覚を専有するVRの特性上、ハードウェアの仕様によって、来場者が非常時であることに気づける必要がある。

・トラブルシュート
オンラインでの監視・対処が有効だが、スタンドアロンで運用している設備については、人の手が必要。

17. 盗難防止(機器)

オペレーションを無人化した場合、機材や備品が盗難に遭う可能性がある。対策としてはワイヤーでつないでおく、監視カメラを設置する、警報を鳴らすなどが考えられるが、特に監視カメラは有効。

速水:最近の監視カメラは解像度も高いので、来場者の行動はほとんどすべて映像から確認できます。それこそ「釣り銭がいくら出ていないか」とかそういうレベルでわかってしまうので、ほとんどのトラブルは監視カメラの設置で回避可能です。

18. 終了

コンテンツ終了時、HMDを外すときに、着用者の眼鏡が外れて落下してしまうことがある。これはアラートを出すなどで気をつけてもらうしかない。

19. バッテリー充電

バックパックPCは電源交換のオペレーションが必須。コントローラーもクレードルに置いてもらうための方策を先述の通り議論済み。

20. 点検

機材運用を行う上での定期的な点検が必要なほか、故障した(と思われる)機材の扱いが課題。

田宮:VR ZONEでは機材トラブルが起きた際に、機材を全部交換してしまうのですが、これが続くと、本当に壊れているのかどうかわからない機材がバックヤードに溜まっていくんですね。なので交換に回った機材は一度点検して、問題ないようなら戻す、同じ機材がまた壊れたら、今度は故障とみなすというフローを作っているんですが、これがスタッフの練度によって、精度がまちまちなんです。

慣れているスタッフならきちんと確認してくれるのですが、慣れていないスタッフだと、実は問題ないものをとにかく交換してしまうことがあって、バックヤードで備品を管理するコストがかなり高い状況です。

速水:ZERO LATENCYも似たような状態ですね。現在のVRデバイスのシステムは必ずしも安定しているとはいえないうえに、専門知識を持っている人も少ない。これを解決するのはまだ先の話ですから、高いコストを払って機材を管理する状況はしばらく続くでしょう。これは業界をあげて取り組む問題と感じています。

21. その他

女性の来場者がVR HMDを利用した際、クッション(スポンジ)部分に(メイクの)ファンデーションが付着することがあり、これは色と香りが何をしても落ちないので、ニンジャマスクの着用をお願いするようにする。アトラクションの近くに鏡を置くなどのケアも考えられる。

※本記事は "施設型VR運営の知見を共有する「施設型VRオペレーションセミナー」が開催" から改題しました。

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