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「艦長ではない。船長と呼べ!」PSVRのスタートレックが男の夢すぎる:情熱のミーム 清水亮

かの「コバヤシマル・シナリオ」を体験できる演出がニクい

清水亮, @shi3z
2018年5月3日, 午後06:00 in columns
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航海日誌 USSイージスはベータ星系にて緊急信号を受信。
発信者は民間宇宙船「コバヤシマル」
敵対関係にあるクリンゴン星域との緩衝地帯で遭難しているらしい。

艦隊司令の判断のもと、最も近くに居たUSSイージスがコバヤシマルの救援に向かうことに。

「進路計算完了」

「インパルスエンジン全開。コバヤシマル救出に向かう!」




「到着しました」

「付近をショートレンジスキャナーでスキャン」

思ったよりも悪い状況だ。
コバヤシマルは重力機雷が敷設された緩衝地帯を飛び出し、クリンゴン帝国側の宙域にいる。制御不能の状態のようだ。

コバヤシマルまでの間にはいくつもの重力機雷がある。



「艦長、どうしますか?」

「馬鹿者。このUSS イージスは戦艦ではない。船長と呼べ」

「すみません船長」

「光子魚雷装填」

「光子魚雷装填アイ」

「コバヤシマルとの間の緩衝地帯にある重力機雷を破壊する」

「そんなことをすれば、戦闘になります」

「向こうも鬼ではない。わかってくれるさ」

「そうですね。前頭葉が飛び出している巨人たちではありますが」

火器管制を担当するホイル中尉は振り向きもせず嫌味を言った。
連中の血の気の多さはわかっているさ、しかし同胞を見殺しにするわけにはいかない。

「光子魚雷発射準備完了」

「発射!」

二本の光子魚雷がまっすぐに重力機雷に向かって吸い込まれていく。

ほどなくして重力機雷が爆発するのが確認できた。

もうひとつの重力機雷を同じように処理すると、コバヤシマルまでの距離はわずか23kmほどになっていた。

「コバヤシマルに生存反応あり・・・300人以上です」

多すぎる・・・全員を収容するにはあまりにも時間がかかる計算だった。

「生存者を直ちに転送せよ」

「アイ・・・うわあああ」

衝撃。


「レッドアラート!!」


サイレンが鳴り、船内が戦闘態勢になる。
USSイージスはあくまでも平和と人類の好奇心を満たすために建造された宇宙船だが、最低限の自衛措置をとるための強力な光子魚雷発射管とフェーザー砲を装備しているのだ。


「クリンゴン帝国のステルス宇宙戦艦、バード・オブ・プレイから攻撃を受けています」

「鬼ではなかったようですが、クリンゴンでしたね」

「減らず口を叩くな!シールドを上げろ」

「ですが!! ......コバヤシマルにはまだ乗員が!!」

「急げ!!」


鳥のような形をした宇宙戦艦、バード・オブ・プレイはステルス機能を備えた戦闘艦だ。コバヤシマルを救援に来る我々を待ち伏せしたつもりらしい。


「三隻います。とても勝ち目はありません」


「反転し、インパルスエンジン全開。離脱する」


再び衝撃


「インパルスエンジン損壊」

「・・・・なんてこった!!」

「こちらもフェーザー砲で応戦します」

「一対三では勝ち目はない」


爆発炎上する自艦を見て、そういえば総員退避命令がないことに気づく。

俺はヘッドセットを脱いで、ふう、とため息をついた。

     

プレイステーション VR(PSVR)で夢中になるゲームがなかなか見つからなくて難儀していた。
その割には酔っぱらってその場のノリで買ってしまったスタートレックのVRゲーム『Star Trek: Bridge Crew』が、あまりにも作りこんであって驚く。


セリフはすべて英語だが、脳内で補完しながら独り言をぶつぶつ言いながら遊ぶのは、子供のころのごっこ遊びのようでなかなか楽しい。


ところでスタートレックゲームは、コンピュータゲームの起源のひとつといってもいいくらい定番だった。現在では知ってる人はとても少ないが。


昔は、ちょっとしたゲームプログラミングの入門書の最後は「スタートレックゲームを作ろう」で締めくくられていたものだ。BASICだろうがCだろうが。


今思えば権利関係を丸ごと無視したとんでもない話ではあるのだが、宇宙戦艦の運用をわかりやすくイメージしようとするとどうしてもスタートレック(当時の邦題は「宇宙大作戦」)に頼らざるを得なくなる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF_(%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0)
出典: Wikipedia: スタートレック (マイコンゲーム)

長距離センサーと近距離センサーで周囲の状況を把握して、クリンゴン(Kで表現される)とUSSエンタープライズ号(Eで表現される)の位置関係を把握し、必要に応じて光子魚雷やフェーザー砲で応戦する。

僕が子供のころは、こういうゲームをこしらえてはスタートレックごっこに熱中していたものだが、このゲームが最大限大げさになると今日のPlayStation VRのゲームになるというのは非常に興味深い。


ちなみに、気づいた人がいるかどうかわからないが、VRになっても、ゲーム的には三次元的な機動は一切しない。

レーダーも二次元、移動も点と点、攻撃指示に至っては目標を選択するのみなのでほとんど一次元である。


というのも、実際に三次元的な宇宙船の機動を実現しようとするともはや普通の人間にはついていけないくらいに考えるべきことが複雑になってしまうからだ。


こんな玩具で遊べるとは今の子供は幸せだ。
最近、VRによる立体視で視覚に悪影響があるのは13才以下ではなくて6才以下だという話もでてきた。


もっと昔の子供は、宇宙船の玩具を手でもっていろいろ想像していたわけだから、VRがそうした想像力を補完してくれるぶん、今の子供たちは実はもっと豊かなイマジネーションを持てる可能性がある。


この手のニューメディアが出てくると必ずある批判が「想像力を使わない子供に育ってしまうのではないか」ということだ。


大昔は、小説が子供たちの教育にとって有害であるといわれたそうだ。「絵空事で想像力を奪う」からだそうである。

その後、小説が娯楽として定着したのちに、漫画が有害とされた。曰く、「絵で想像力を奪う」からだ。
いまどきそんなバカなことを言う親はどこにもいないが、かつてはファミコンをはじめとするテレビゲームだって「想像力を奪う」と言われた。

でもニューテクノロジーとニューメディアによって実際には何が起きるか。
それは想像力の飛躍である。


VRを体験した人ならわかると思うが、VRのゲームを遊ぶのと、二次元のゲームを遊ぶのとでは、体験としてまったく異なる。

二次元のゲームしか知らない人には想像もできない世界がVRにはある。

同じように、二次元のゲームを知らない人には想像できない世界があり、漫画を知らない人には想像できない世界もある。


結局のところ、人間というのは、自分が体験したことをもとにしてしか新しい想像力へ至らないわけで、そういう意味では体験というのはやはり非常に重要なものだと思うのだ。


僕がPSVRのスタートレックをやって感動したのは、たぶんほかの多くのスタートレック好きの人たちと同じように、伝説として語り継がれてきた「コバヤシマル・テスト」を実体験できたからだ。これは映画をみるのとも、二次元の画面のゲームをやるのとも明らかに違う体験だった。


このゲームの企画書を書いたとき、企画をした人はほくそ笑んだことだろう。そして伝わってくるのは、このゲームの開発者たちが本当にスタートレックを好きなんだろうなということ。ここでコバヤシマルテストを体験できるようにするというのはいかにもニクい演出だと思う。


新しいメディアを体験した子供たちがどんな想像力を獲得するのか。
いまから楽しみだ。

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