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最悪期のソニーを救ったXperia 今後はさらに日本ユーザー重視へ? (本田雅一)

いろいろ言われてるけど、大丈夫ではなかろうか

本田雅一, @rokuzouhonda
2018年5月25日, 午後12:00 in Gadgets
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Engadgetでははじめまして。本人は若手と思っているけれど、すっかりオッサンなテクノロジージャーナリストの本田です。自由にモノヲタク成分高めなコラムを書いていいよ! とACCN(編集長)に言われ、フラフラと舞い込んできました。

今回は大編集長のリクエストでXperiaについて。製品レビューではない「ソニーのスマートフォン事業」という文脈で俯瞰視点でのコラムを書いてという、極めて難しいお題を頂きました。

なぜそんな問を? と尋ねると「年間1000万台という出荷数レベルで、ソニーのような大企業がスマートフォン事業を継続できるのか、ちゃんと利益を確保できるのか」という疑問が根底にあるとのこと。メーカーの利益なんてどっちでもよさそうだけれど、日本のメーカーがつくるスマートフォンが毎年元気に出てきてくれると嬉しい......という気持ちもあるのだろうか。

しかし、結論から言えばソニーは現時点、少なくとも数年内という意味では、スマートフォン事業に大きな意義を見出していて、赤字転落のリスクを避けながらソニーらしさを発揮する製品を可能な範囲でつくろうと努力するだろう。

「つくろうと努力するだろう」というのは実に中途半端な言い回しだが、僕はソニーの幹部ではないので、このようにしか書けない。しかし先日はじめてマスコミの場で中期戦略を語った現社長の吉田憲一郎氏が考えているのは「Xperiaはソニーにとって必要な存在」ということではないかと思う。

前社長の平井一夫体制において、Xperiaは最重要の事業だった。当時はスマートフォン向けの投資で圧倒的に遅れていたためだ(製品そのものへの投資だけでなく、各地域ごとの有力な携帯電話キャリアとの関係なども含めて)。しかし、それでもこの領域で存在感を出さなければならないと考えていた。


▲Xperia Z1。日本でも大ヒットしたモデルだ

そこで打ち上げたのが、ソニー社内にあるエレクトロニクス製品の事業価値を、すべてXperiaに集中させるという「One Sony」戦略だ。そしてその成果となったのが、2013年に登場したXperia Z1だった。現在のXZシリーズにまでつながるハイエンドスマートフォンの系譜である。

Z1ですべてが実現できたわけではないが、ソニーが持っているデジタルエンターテイメント領域での付加価値 ──映像の美しさ・心地よい音質・高画質なカメラ── を実現させることで、スマートフォン事業を中心にした新しい製品ポートフォリオの展開を夢見たのである。


▲ガラスや透明樹脂を全面に使った背面デザインなど、Xpeira Zシリーズはデザインでも当時のトレンドを作った(写真はXperia Z Ultra)

今となっては、およそ5年前。当時を覚えている読者ならば、カメラであるCyber-shotの映像処理と光学技術、独自のセンサー技術を用いてカメラ性能を高め、テレビBRAVIAのノウハウと技術で映像を美しく表現し、さらに将来的には音質も......と、AV製品で培ったソニーの技術やノウハウ、イメージなどを最大限に活用しようとしていた記憶が残っているはずだ。

2007〜2013年ぐらいのソニーは、コンシューマエレクトロニクス製品のメーカーとしては、業績も社内の雰囲気も、そしてブランドの面でも最悪に近いころだ。テレビ向けディスプレイパネルの戦略が外れ、リーマンショックによる影響を受けて財務が痛んだ後、リストラや合理化などで士気も落ちていった。

さらにスマートフォンの普及に伴って、ライバルを含めてさまざまなエレクトロニクス製品の売上が落ち、それまで売れていた商品が売れなくなっていく。一方で次として見えてきたAndroidスマートフォンへの投資も、上述のように遅れていたという状況だった。

ソニーがエリクソンからソニー・エリクソンの株を買取り、ソニーブランドの携帯電話端末の企画・開発・販売を担う会社を100%子会社としたのは、2011年10月になってのことだ。

2011年と言えば震災の影響を受けた直後。タイの水害でも事業に大きなダメージを受けた一方で、エレクトロニクス製品以外の事業は好調であったため「エレキ事業売却論」が芽生え始め、2013年になると大株主からの提案書まで出される始末だった。

少々古い話に思えるかもしれないが、Xperiaというブランドは、こうしたソニー最悪期から始まった希望の光だったことは確認しておきたい。

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▲日本でのXperia Zシリーズは、コンパクトモデルでも存在感を発揮した(写真はXperia Z1 Compact)

メーカーとして辛い状況だったソニーだが、実際に現場で商品の企画や開発を行なっていたエンジニアも辛かったに違いない。それ故、Z1のひとつ前のモデルに当たるXperia Zが世の中の注目を集め、One Sony戦略の元にそれ以降のZシリーズに力が入れられるようになったことを喜んでいた現場社員は多かったように記憶している。

Xperiaはすでにスマートフォンの市場形成がある程度進んだあとに出てきたシリーズであるため、海外キャリアとの協力関係や地域ごとの販売戦略を推し進める予定を持っており、最終的には実行に移されなかったが、端末開発だけでなく周辺デバイスや関連サービスに関してもかなり積極的な企画・開発プランを持っていたようだ。

しかし、こうした中で、急ブレーキがかかる。

中国市場の変調で、想定していた「攻め」の販売計画を転換せざるを得なくなったからだ。急成長した中国のスマートフォン市場で、地元メーカーが躍進。当時のXperiaシリーズは、中国市場を見据えたコストコンシャスなモデルと、おもに日米欧市場を見据えたハイエンドモデルなどで構成されていたが、高収益の上位モデルと量産スケールを出すモデルのバランスが取れないとなると、大きな販売網の構築、積極的な開発プランは将来の大きなリスクになる。

このため2014年になるとソニー・エリクソン株の買取で計上していたのれん代を減損し、拡大路線を改め、確実に計算できる市場だけに絞り込んでいく方向に切り替えた。ちょうど米国でも最大手のベライゾン向けに端末を供給し始めるところだったことからも、かなり急な方向転換だったことがわかるだろう。


▲一方で2014年のXpeia Zシリーズは、名機との声も多いXperia Z3が登場した時期だった

それ以降、ソニーの社長会見やラウンドテーブルなどでは、スマートフォン事業をどうするのか、今後も続ける意味はあるのかといった質問が定番となった。SIMフリー機ももちろん市場としてはあるが、ご存知のように大きなボリュームを占めるのはキャリア扱いの端末だ。

リスクを減らすために「兵站」をコンパクトにしようとすれば、グローバルでの販売量は限られてくる。そのため、さまざまな費用削減を重ね、製品ラインの整理も進めて出血を止めてきたというのが現状だろう。

実際、最高益を更新した昨年度の決算においても、スマートフォン関連はソニーの主要事業において唯一の営業赤字となっていた。昨年の1350万台という実績に対し、今年は1000万台の販売予定というのだから、編集長が心配するのも無理はないかもしれない。

しかし、予想外に販売が落ち込むのと、最初から販売数量の落ち込みを想定して販売するのでは事情が違う。今年も赤字予定ではあるが、これは販売数量を確保するためにセールス・プロモーションにコストをかけたり、不採算の地域に投資をするのではなく、Xperiaが強い市場、ジャンルへと絞り込んで現実路線を行こう、ということだと思う。


▲Xperiaの隠れた個性、と呼べるのが高性能なコンパクトモデルの存在。最新世代でもXperia XZ2 Compactが用意される

この縮小均衡をどう取っていくのか? という局面で、再び疑問となってくるのは、やはり事業全体の行方だろう。経営陣に対する記者の質問としては「まだスマートフォンをやり続けるのか」というものとなるだろうし、エンドユーザーの質問としては「Xperia、大丈夫なの?」という漠然とした不安感なのかもしれない。

しかし、吉田社長になって大きな方針転換がない(と中期経営計画では語られている)ソニーの経営方針の中で、Xperia事業を継続しない目はないと筆者は観ている。

その理由は、平井前社長が一貫して記者に語ってきた。

「スマートフォンが儲からない、成長領域ではないという理由で事業を切り捨てるのは、エレクトロニクス製品の会社として適切な判断ではない」と、同じ答えをこの数年繰り返している。そして先日の決算において、かつて2014年末以降にスマートフォン事業のソフトランディングを指揮し、代表執行役 EVP CFOとなった十時裕樹氏は、その理由を明確に語っている。

「次世代通信技術の5Gはスマートフォン以外のさまざまな製品で用いられるだろう。この5Gを手掛けて行くにはソニー社内で技術を有しておく必要がある。そこで得た5G技術はグループ全体に展開していくことになるだろう。そのためにも、モバイルコミュニケーション分野は、年間1000万台のスマートフォン販売台数で事業を継続できるような体制構築を進める。この方針は経営陣の総意でもある」(十時氏)

「家電メーカー」と一括りで言われることが多いが、ソニーは白物家電の会社ではない。エレクトロニクスのエンターテイメントへの応用で伸びてきた会社・ブランドだ。そして現代において、エンターテインメント家電はすべて何らかの手段でネットワークへとつながる。

そうしたエレクトロニクス業界の地図全体を見渡すとき、スマートフォンという事業領域との縁を切るという選択肢は、次のエレクトロニクス業界のイノベーションに備え、次の時代にいち早く投資していく意志を捨てることに等しい。

加えてスマートフォンに限らず、ソニーはビジュアル製品、オーディオ製品においてもGoogleとの関係を深めている。次バージョンとなる「P」の世代から、グーグルはAndroidの新バージョンをPixelシリーズ以外の端末向けにも並行して開発・提供していく方針を打ち出しているが、その中にXperiaの名前がある点も興味深いところだ。

当然ながらXperiaシリーズのグローバル市場における出荷台数の推移は、グーグル側でも把握している。そうした状況でもXperiaがリストに入っているというのは、グーグルとソニーの関係が良好なことを示している。

また、Xperiaシリーズの主戦場は日本だ。縮小均衡を目指すのであれば、従来よりもさらに日本市場を見据えた端末の企画・開発を行なうのではないだろうか。もちろん、開発には一定期間が必要なため、実際に製品に変化が現れるのは少し先になるだろうが、日本のXperiaファンは、直近の決算ニュースなどに過敏になる必要はないと思う。


▲Xperia XZ2。本体デザインを大幅に変更した最新世代モデルだ

ところで、最新のXZ2、XZ2 Compactに関しては、すでに多くのレビューが掲載されているため、筆者が改めて語るまでもないだろう。が、Xperiaとは何なのか? という主張が弱めだ。とりわけ近年の端末において、差異化のポイントになっている「カメラがフツー」(念のため申し添えるとシングルレンズのカメラとして機能や画質はいいほうだが特別ではない、という意味)という点はやや寂しいところ。

だが、一方で何らかの仕込みをしているのでは? とも考えられる。今年はKDDIも上位モデルXZ2 Premiumを扱うようになり、力点はより日本市場へと向かっているように感じるのは筆者だけだろうか。

厳しい市場環境が続く中、デジタルカメラ市場でソニーは孤軍奮闘、実績をを大きく伸ばしてきた。そんなノウハウ、イメージ、技術をXperiaに活かさない手はない。バルセロナで発表された高感度撮影技術を活かしたXZ2 Premiumとそれ以降の製品が、縮退傾向の空気を一掃してくれることを期待したい。

本田 雅一(ほんだ・まさかず)
ジャーナリスト。IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、モバイル、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジとインターネットで結ばれたデジタルライフと、関連する技術、企業、市場動向について。知識欲の湧く分野全般をカバー。

Twitter: @rokuzouhonda

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