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Jコミの電子書籍版YouTube構想が新局面へ。海賊漫画サイト対抗の実証実験を実業之日本社と開始

「許可が出れば素材提供者が収益を得られる」システムも継承されます

橋本 新義 (Shingi Hashimoto)
2018年8月1日, 午後08:55 in manga
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漫画無料配信サイト『マンガ図書館Z』を手がけるJコミックテラス(Jコミ)と、老舗出版社の実業之日本社が共同で、海賊版サイト対抗システムの実証実験を開始しました。実業之日本社で過去に発行した漫画や文芸書の中で現在販売されていない作品を蒐集し、マンガ図書館Zで配信、収益化するという取り組み。

「海賊版サイトに対抗する」とアピールするのは、読者が無料で読めるのみならず、海賊版サイトに対抗できる作品点数が網羅できる仕組みを導入した点から。これは電子化された素材データの提供に関して第三者からの提供を受け付け、また第三者がそこから報酬を得られるようにしている点に由来します(詳細は後述)。
既に実験用投稿サイトはサービスが開始されており、データのアップロードが可能です。

Gallery: マンガ図書館Z 海賊版対抗の実証実験開始 | 21 Photos

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こうしたシステムは、Jコミックテラスの取締役会長であり漫画家でもある赤松健氏がここ数年来進めてきたもの。氏の動向を追っている方にわかりやすく解説すると、ここ数年同氏が取り組んできた"電子書籍版YouTube構想"が、実業之日本社の協力により新たな段階に進んだ、という状態です。なお、4月に同氏がTwitterで発表したシステム(上記ツイートで引用されたもの)は、今回の発表とのこと。

筆者が記者説明会で赤松氏に、これまで何回か実験をしてきたシステムの変更があるのかを尋ねたところ「システム的には従来より取り組んできたものの最新版。取り組みとしては地続きです」とのコメントが得られました。


▲システムの紹介は赤松氏自らが登壇して行なわれました




今回の提携となったのは「実業之日本社の社長より、『現在刊行していない作品を電子化したいのだが、しかし予算が確保できないので......』と、Jコミ側に相談があった」、とのこと(赤松氏)。

対象となるのは、実業之日本社の漫画および文芸書となる全8871点(作家数は4358名)。現在マンガ図書館Zでは(サイト名通り)漫画を中心としていますが、今回の実験では文芸書も多数含まれているのがポイントです。実験の開催期間は1年間ですが、延長の可能性もあり、としています。



また発表会で紹介されたこの実験の目的は、以下の3点です。
  • 過去の作品を権利者本人と第三者から素材を提供してもらうことにより、権利者の利益に貢献する
  • 作家にとってメリットのない、海賊版での作品流通を防止することに貢献する
  • 市場で流通しておらず接するのが難しくなった過去の作品を電子化することで、読者の利益に貢献する
ただしこれらの目的――とくに2点目と3点目は、マンガ図書館Zが従来より継続してきた点でもあるため、目新しいポイントではありません。とくに2点目の海賊版対抗に関しては、Jコミ、および赤松氏が繰り返し提唱してきたところです。




▲こちらは実験サイト上での表示。ここでも、素材提供者(データ提供者)がインセンティブを受け取れる点が強調されます


今回システム的な特徴となるのは、冒頭でも紹介したように、電子化されたデータを第三者がアップロード可能で、それを読者が読んだ場合には第三者(データ提供者)も収益が得られる点。この場合の配分は、現状では作者が80%、実業之日本社が10%、データ提供者が10%に設定されています。

なお、第三者によるデータ投稿は、内容確認や作者への許諾確認を実業之日本社が行い、両者の許諾がOKとなった作品だけが公開されるシステム。当然ながら、出版社側や作者側が意図しないデータ公開はシステム的に防がれるのがポイントです。



さて、こうした第三者によるデータ投稿、および収益化を許すのは、従来の電子書籍サイトが海賊版サイトに対して劣っている要因の一つだった「作品点数が海賊版に負けている」点を解消するため。

実は今回の実証実験では、アップロードされるデータの出所は問いません。つまりデータ投稿者は「海賊版サイトにあるデータをそのまま実験サイトにアップするだけでも、公開されれば収益が得られる」ことになるわけです(ただしもちろん、アップロードに関しての本人確認は行なわれます)。

こうした手続きだけで収益が得られるのであれば、海賊版サイトにあったデータからの"転載"が多く見込め、結果として作品点数が海賊版に負けるという事態は起こりにくくなる、というワケです。
なお赤松氏は従来よりこのシステムを"電子書籍版YouTube"と呼んでいますが、これは第三者がデータをアップロード可能な点からの命名です。



今後の展望としては、まずは投稿者数や作品数、読者数などの、運用に関するデータ蓄積を図り、将来的には海賊版サイトに対抗可能な新たな取り組みへと発展させていくとのこと。



なお、発表会では合わせて、マンガ図書館Zの運営実績も公開。2015年4月から2018年6月までの月間利用者数では、大手海賊版サイト『フリーブックス』と『漫画村』の閉鎖によるものと思われる伸びがある、というデータなども紹介しています。



さらに漫画村に関する報道や、そこで明らかになった分のサイト利用者データなどから判明した注目ポイントなども紹介。
『漫画の読み方がわからない小学生が増えている』説は杞憂らしい」「漫画は他の娯楽作品と比べてもまだまだかなりの需要がある」「日本の漫画作品はほぼ国内で消費されている(が、今後は外資企業が狙ってくるだろう)」とまとめています。


▲マンガ図書館Zの夢として掲げられた「あらゆる作家に利益をもたらし、海賊版を全滅させる」というビジョン。設立当初より一貫したものです


このように今回の実証実験は、Jコミが、また赤松氏が進めてきた海賊版サイトに対抗する取り組みにおける、現時点での集大成とも呼べるもの。赤松氏の動向を追ってきた人にとっては、「あの電子書籍版YouTube構想に、いよいよ出版社の協力が付いた」と呼べる事件(と言って良いでしょう)です。

赤松氏は他の出版社との協力に関しても「企業名は明かせないものの、数社が興味を持っている状態」とコメント。ほかの出版社へ波及する可能性を上げられるという点でも、また読者として知られざる傑作が再発見される可能性があるという点でも、今回の実験はぜひ成功してほしいところ。個人的にも大きく注目でき、また期待したい取り組みです。

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