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病院がアプリを処方する時代。iOS活用で進む未来の医療

「ちゃんと薬を飲む患者は半数以下」

Ittousai, @Ittousai_ej
2018年8月6日, 午前06:45 in Apple
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7月12日にビッグサイトで開催された医療関係者向けイベント「国内モダンホスピタルショウ2018」では、特別講演「iPhoneやiPad、Apple Watchを活用したヘルスケア変革の実現」なる、業界関係者ならずとも好奇心をくすぐられるレクチャーがありました。

内容は医療機関での導入事例から、モバイルやウェアラブルを使い退院後も患者のケアを継続する新しい医療の紹介、「どうやって病院の変革を進めるべきか、組織を説得するか」まで。

あくまで専門家向けの講演ですが、『入院患者に支給される「患者アプリ」 』『AIを使った患者の容体予測』、そして『未来の医療の姿』など、利用者にとって興味深い話題もあります。

ここでは専門家ではなく素人の「エンドユーザー」、すなわちヘルスケアサービスのお客さんであり、究極の当事者でもある患者とその予備軍の目線から、またウェアラブルや人工知能といった技術で未来はどう変わる?という好奇心から、興味を引いたトピックをざっくりまとめてお伝えします。

医療のディスラプティブ・イノベーションを目指すオシュナー

まずは概要から。演者ドクター Richard V. Milaniは、米国ルイジアナ州を拠点に80以上の医療・健康施設を運営する非営利のヘルスケアプロバイダー Ochsner Health System (以下オシュナー) 所属。役職は Chief Clinical Transformation Officer 、「最高病院変革責任者」とでもいうべき要職です。

オシュナーは電子カルテなど一般的な医療ITソリューションの導入に留まらず、ウェアラブルや人工知能など先端技術の活用、さらに医療イノベーションスタートアップの支援プログラムを実施するなど、いわゆるデジタルヘルスへ積極的に取り組んでいます。医療変革担当のチーフオフィサーを置くのも不思議ではありません。

クラウド総合医療管理システムEpicとモバイルアプリ

お題は「モバイル技術の重要性」とあって、まず紹介されたのは医者・看護者・患者間のコミュニケーションを改善する道具としてのスマートフォンやタブレット、スマートウォッチ向けアプリ。

いわく、医療従事者の仕事の1/4は広義のコミュニケーションだが、病院内を一日中歩き回る職業でもある。カルテの電子化・クラウド化だけでは不十分で、デスクに戻らなくてもスマートフォンやiPadからセキュアなかたちで常に最新のデータを参照できること、医療従事者のあいだでコミュニケーション効率を上げることが現場の負担を軽減し医療の質を向上させる云々。まずは分かりやすい話です。

オシュナーでは、スマートフォンや Apple Watch に対応する電子カルテアプリ Epic Haiku、 タブレット向けの Epic Canto、連携するバーコード投薬管理(BCMA)アプリ Rover を導入することで、医療従事者の負担軽減とミス防止、データのリアルタイム共有を実現しています。


前提知識であるためか講演内では説明されませんでしたが、Epicは米国シェア一位の電子カルテシステム(2017年時点、約13%)。狭義の電子カルテすなわち診察記録のほか、各種検査データ、投薬管理、医療従事者と患者のスケジュール管理、会計処理までをクラウドベースで扱う総合医療管理ソリューションです。

Epicはオシュナー以外の医療機関も導入しており、高い相互運用性や、医療者だけでなく患者向け機能の充実が大きな特徴。

システムが網羅的であるほど負担になりがちな入力についても、例えば医師が問診内容や所見を口述すれば音声テキスト変換とクラウドベースの人力チェックで整形入力されるなど、様々な試みがなされています。

AIが急変を予測、4時間前に対応

従来はPCや紙ベースであったり、部署や機器ごとに分断されていたあらゆる医療データが、クラウド電子カルテとモバイル機器の導入でどこでもリアルタイムに参照でき、正確に共有できるようになったことは、効率化の範疇ではあるものの確かにすばらしい進歩です。

しかしオシュナーはさらに、この膨大な医療データをもとに患者の容体変化予測モデルを作成し、AIでリアルタイムに急変を警告する取り組みで成果を挙げています。

Dr. Milaniいわく、従来は容体急変が発生してしまってから、発見・対応までの時間をどこまで短縮できるかが課題でした。しかしAIの導入後は急変の可能性が高い患者を事前に予測し、即応チームのモバイル機器に自動でアラートを送ることが可能になります。

90日間のパイロットプログラムの結果、急変が発生する兆候を4時間前に捉え、ICU搬送などの事前対応ができるようになり、ICU外での急変対応(Codes)発生を44%減らすことに成功したとのこと。

データを人間の医師にとってアクセスしやすくしただけでなく、人間ではとても把握しきれない膨大なデータをリアルタイムに監視し、関連付け、分析しつづけることで、人間の医師や看護者を補完する新たな価値を生み出した例です。

入院患者には「患者アプリ」を提供

一方この総合医療管理システムは、医療者側だけでなく患者にも直接の利便性があります。患者目線で特に興味深かったのが、入院患者に支給されるタブレット用アプリ「MyChart Bedside」。

だいたいどんなものかは、こちらのイントロ動画でよく分かります。

Bedsideアプリの機能は、自分の検査や診断結果と治療方針の確認、一般的な医学情報の参照、体重血圧血糖値等の履歴、診察や投薬のスケジュール確認と予約などなど。病院で一気に押し寄せる情報への一元アクセスができます。

口頭で説明されても把握しきれなかったり、その場で分かったような気になっても後から不安になりがちな点を患者それぞれのペースで、望めば家族と共有して、いつでも参照できることが利点です。

深刻ながらつい苦笑してしまったのは、ミラニ博士が患者とのコミュニケーション事例として紹介した「担当医や看護スタッフの名前を一人でも言える患者はわずか32%」という調査結果。

名札を見れば良い、とりあえず先生と呼べば良い、という考え方もあるかもしれませんが、医療者と患者のコミュニケーションや信頼関係が診察にも療養に重要であることは言うまでもありません。

Bedsideアプリでは担当医や看護スタッフの名前と役割を確認できるほか、担当者とテキストチャットで相談も可能。ほか、病院提供の各種サービスにこのアプリからアクセスできます。

1900年の医療と2020年の医療。慢性疾患にICTで立ち向かう

入院患者になったらぜひ使ってみたい、むしろこれが提供される病院を選びたくなるMyChart Bedsideアプリですが、自分の医療情報にアクセスできるのは院内限定ではなく、いつでも使えるスマホアプリ MyChart もあります。

MyChart の機能は検査結果の確認、治療・接種などの履歴、血圧体重運動睡眠等の記録、リマインダ付き服薬管理、診察や健診の予約管理など。

要するにお薬手帳や健康手帳、診療予約アプリと保険証が統合されて、かつ医療機関のシステムと同期しているようなものです。

この「自分のヘルスケア情報を自分で容易に把握・管理でき、医療機関と共有して活用できる」ことこそ、オシュナーが今回の講演で「モバイル技術の重要性」としてもっとも強く訴える点であり、現時点でiOSデバイスが特別な位置にある理由、さらには単なる利便性を超えた「医療モデルの変革」につながる点です。

Dr. Milaniの説く医療の変革、病院中心から患者中心への「ヘルスケアデリバリーモデルの再設計」を要約すると、

・現在の「不調や苦痛を感じたら病院に行く、通院や入院で治す」という病院のありかたは、死因の多くが急性疾患だった古い時代に作られたものであり、現代にはそぐわない。

・1900年代の平均寿命は40代。死因トップはインフルエンザ、肺炎、結核、胃腸感染症、心疾患、脳血管障害etc。59%は急性疾患。

・2010年の平均寿命は80歳前後。死因トップは心疾患、がん、非感染性の呼吸器疾患、脳血管障害、アルツハイマー、糖尿病など。97%は慢性疾患。

慢性疾患に影響を与える要素のうち、もっとも大きいのは生活習慣の40%。伝統的なヘルスケアは10%でしかない。

・慢性疾患を克服するには、病院内での診察や治療だけではなく、日常生活のなかで継続的なモニタリングや療養、生活習慣の改善が必要。

・医療従事者は通院・入院患者だけを診るのではなく、患者がセルフモニタリングで共有したデータを分析して、どのような助言や治療が必要なのか伝えること、投薬だけでなく生活習慣の改善や提案、社会的サポートも含めて提供することが仕事になる

といった内容です。

「予防が大事です」「生活習慣を改善しましょう」は何もチーフオフィサーの知恵を借りずとも唱えられてきた目標のはずですが、ことが個人の自発的かつ継続的な意思に依存してしまうと、なかなか有効な取り組みが難しかったのも事実です。



(The American Journal of Medicine誌に掲載された論文 Health Care 2020: Reengineering Health Care Delivery to Combat Chronic Disease より。https://doi.org/10.1016/j.amjmed.2014.10.047)

Dr. ミラニはこれに対して、いまや多くの人が肌身離さず持ち歩くスマートフォンやスマートウォッチといったモバイル機器こそ、

・ウェアラブルや連携するヘルスケアデバイスを用いたセルフモニタリング
・クラウドプラットフォームを通じたリアルタイムかつ自動化されたデータ共有と、AIや専門家による分析
・服薬リマインダや運動・食事アドバイスなどを通じた、患者の「アクティベーションレベル」(主体的関与の度合い)向上

など、病院内だけではない、患者中心で慢性疾患と戦う新しいヘルスケア提供モデルにとって重要だと説きます。

患者の「アクティベーションレベル」を高める必要の例として挙がったのは、服薬管理の重要性。WHOによると、慢性疾患を抱える患者のうち、ちゃんと処方を守って服用しているのは半数。結果として病態の悪化を招き、推定損失は年1000億ドルを超えるとされています。

いわく「服用法の遵守(アドヒアランス)を向上させることは、あらゆる治療法の進歩よりも大きなインパクトを持つ可能性がある」。

iOSである理由は?


生活習慣の改善と、慢性疾患の日常的な療養にモバイルやウェアラブルが有効活用できるという話は、日々Apple Watchに「そろそろ立ち上がって歩きましょう」などと指示されて座りっぱなしを改めたり、乗るだけでスマホとクラウドに蓄積されるスマート体重計を買って初めて測る習慣ができた身にはすっと納得できます。

しかしオシュナーが進める新しいデジタルヘルスケアへの取り組みに、特に Epic システムとモバイル機器、対応スマートヘルスケア機器を使ったセルフモニタリングデータの共有に、今のところはアップルのiOSが使われていること、iOSでなければ利用できない部分があることは、ゲームやアプリだけでなく病気になっても「残念、iPhoneじゃなきゃ駄目なんですよ」があるのかと、少々落ち着かない気分になるのも事実です。

講演後の記者向けラウンドテーブルの席でこの点について、ミラニ博士と、同席した米アップルのヘルスケアマーケティング担当者に尋ねてみました。

モバイル機器と、ウェアラブルやスマート血圧計等を使ったセルフモニタリングの重要性、クラウドベースの医療情報管理システムを軸にした、患者中心の新しい医療という考え方には感銘を受けましたが、iPhoneを持っていない人、例えばAndroidユーザーや、そもそもモバイル機器を持っていない人はどうなるのですか?という素朴な疑問です。

回答を要約すると、「iOS以外は門前払いというわけでは必ずしもなく、他のプラットフォームや、デジタル機器がなくても利用できる仕組みはある。

しかしモバイルの利便性とセキュリティ、プライバシーを両立した形で医療データを扱うことができ、多数のサードパーティー機器とシームレスに連携が可能で、多くのユーザーがいるプラットフォームは、現実的にはヘルスケア向けフレームワークを備えたiOSしか選択肢がない」。

(iOSのHealthKitは、プライバシーに関わる健康・医療データをOSレベルでセキュアに、つまり保存もネットワーク転送も暗号化したり、ユーザーが明示的な許可を与えたアプリからしか読み取れないように扱いつつ、サードパーティーアプリやデバイスも対応できる標準フレームワーク。

iPhone標準アプリのヘルスケアや、多数のサードパーティ健康管理アプリ、デバイスで利用されています。)


オシュナーの進める病院外の患者ケアプログラム、特にセルフモニタリングの統合は、iOS以外のスマートフォンやPCでも参加できるものの、

・iOSのHealthKitに当たる標準のフレームワークがないため、利用できるスマートヘルスケア機器(血圧計や体重計etc)の選択肢が非常に限られてしまう。

・Androidスマートフォンはハードウェアバリエーションが非常に多く、OSも多岐にわたることから、センシティブな医療データを扱う場合、ソフトウェアの動作検証がiOSに比べ非常に難しい。「iOS用」と「Android用」の二種類ではなく、iOS以外は膨大な組み合わせに対して開発・動作検証の必要がある。

・AndroidやPCの場合、機種の違いを吸収するため、セルフモニタリングした数値はウェブアプリ(をラップしたアプリ)経由で入力することになる。


とのこと。

iPhoneやiPadでしか使えないならば利用者の選択肢を狭めるのでは?と思えば、現実には「Androidの場合は、逆に対応機種や対応ヘルスケア機器の選択肢がずっと狭くなる」という回答です。

意外なようでもありますが、iPhone より機種のバリエーションもユーザーも多く、選択の自由があるはずのAndroidで、逆に対応機器やアクセサリの選択肢が狭くなってしまうのは、それこそカバー選びなどで実感があるとおりかもしれません。

オシュナーが取り組む新しい医療のあり方、ウェアラブルやコネクテッドデバイスを通じた健康管理がいずれ当たり前になる頃には、きっとどの会社のどの製品を選んでも、相互運用できる標準仕様が普及していると考えられます。

しかしまだ世の中がそこまで進んでいない以上、先進的な取り組みの受益者になるには、ヘルスケアやプライバシーについて先進的なプラットフォームを使う必要があるようです。

なお、iOSかどうか以前にモバイル機器が必須ならば、スマホ等を使わない高齢者などに門を閉ざしているのでは?については、スマートフォンもPCも持っていない患者でも、固定電話の自動音声に回答することでセルフモニタリングデータの共有ができるとのこと。習慣にできる自信がありません。


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