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Xperiaの失速とHUAWEIの躍進、カギを握るのは「内蔵カメラ」(本田雅一)

カメラはやっぱり質が重要ですよね

本田雅一, @rokuzouhonda
2018年8月7日, 午前08:00 in smartphone
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2018年7月末に今年前半の各社決算が発表され、スマートフォン事業を持つメーカーの業績が話題に上っています。
中でも主として挙げられるのは、日本市場で存在感を示していたソニーモバイルコミュニケーションズ、Xperiaシリーズの売上げ不振に関する話題。国内シェアにおいてシャープと順位が入れ替わったことと合わせ、さまざまな声が出ています。


シャープの売上が伸びた理由は様々なことが言われていますが、いちばん大きかったのは国内スマートフォン市場の形が変化している中で、iPhoneとは競合しにくい領域をきちんと見つけ、フォーカスしてきたからだと僕は見ています。

一方、ソニーは高付加価値領域にフォーカスしてモデル数を絞り込むという、他の事業領域でも行っている戦略を実行に移しました。これ、Xperia Zシリーズが1〜4ぐらいまでの頃にやっていれば、また違った結果をもたらしたのかもしれませんが、近年の市場環境では、自ら顧客を絞り込んで売上げを落とすという良くない方向に向かったようです。

Xperiaシリーズは、来期、さらなる売上減少を見込んでいるようです。引き続きの出荷数減少は在庫調整とともに販売体制見直しなど、今後の事業体制を抜本的に変えていく(とはいえ、すでにかなり縮小はしているのですが)ということなのかもしれません。

......と、このように書き始めましたが、今回はマーケット分析やソニーXperiaシリーズが主人公のコラムというわけではありません。

もう少し視点を高く持ち上げて、大きな潮流、トレンドを感じてみようという話です。

内蔵カメラが変えるAndroidスマートフォンの勢力地図

ソニーはグローバルでの端末シェアでは存在感のあるメーカーではありませんでしたが、それでも独自性を出せていたのは、カメラのスペックなどに優位性があったからに他ならないでしょう。

スマートフォンには、各メーカーの様々な付加価値が付与されていますが、スマートフォンの本質的な魅力を考えるに、ディスプレイやタッチパネルなどの操作感、指紋センサーなりの生体センサー(個人識別・認証)といった部分を除けば、"質"という部分でもっとも多くを求めるのは、やはり内蔵カメラでしょう。


▲世界初となるトリプルカメラを搭載した「Huawei P20 Pro」。

グローバルで事業を伸ばしているスマートフォンメーカーを見渡すと、独自OS、独自サービスで専用プラットフォームを構築しているiPhoneを除けば、やはり目立つのはHUAWEIですよね。そして彼らが事業を伸ばしている理由は、内蔵カメラに他なりません。


一方で(スマートフォンというジャンルに限ると)厳しい決算を迎えたサムスンは、Galaxy S9シリーズにおける内蔵カメラに新規性といいますか、心躍る要素がなかった(性能そのものは良いのですが)のも、不調要因のひとつでしょう。また、Androidスマートフォンの場合、iPhoneとの間を行き来するよりずっと簡単に乗り換えができる点も要因と言えるかもしれません。



これまでGalaxy Sシリーズを使ってきたとしても、容易に乗り換えられるという点で、長年、トップを争ってきたアップルとの立場の違いが、ここで顕在化してきているのかな? というのがひとつの見立てですが、HUAWEIをはじめとする中国メーカーの勃興がなければ、グローバル市場の立ち位置は、いまだ盤石だったかもしれません。


そのHUAWEI。内蔵カメラは「真を写す」よりも、AI的な判別と画像処理の組み合わせで「より望ましい」写真を作り出すという部分で、カメラメーカーとはまったく異なる価値を出していますが、デュアル、トリプルとレンズ数を増やしながら、カメラの新しいトレンドを生み出している(そして機能や質が好まれているだけでなく、基礎的なカメラとしての品位そのものが上がってきている)部分が、素晴らしいところですね。


ソニーも、エンスージャスト向けカメラメーカーとしては、すでにトップメーカーのひとつなのですから、もっと頑張れるんじゃないの? と思っている方も多いでしょう。しかし、そこにはなかなか難しい事情もあります。

画像処理を担当しているプロセッサは?

実際にAndroidスマートフォンの開発に携わっている方、かなり内部の構造に詳しい方なら知っていることなのですが、スマートフォン内蔵カメラの開発で鍵となるのは、ISP(イメージシグナルプロセッサ)の使いこなしです。

これが単体のデジタルカメラならば、カメラ専用のISPを使い、独自機能・アルゴリズムを組み込んだ特別版のISP(たとえばキヤノンならDiGIC)を発注するなどして、画質や機能、性能を磨き込むことができます。

ならばスマートフォンでも同じでは? と思うかもしれません。しかし、スマートフォンの機能はアプリケーションプロセッサにほぼほぼ統合されていて、ISPもその中に含まれています。たとえばクアルコムのSnapdragonシリーズを採用しているならば、クアルコムのISPが最初からシステムには含まれています(性能などはチップごとのグレードで異なります)。


▲現行のハイエンド機の多くで採用される「Snapdragon 845」。

実際には組み合わせるカメラモジュールとアプリケーションプロセッサが通信をしながら、ソフトウェアの調整などでカメラ機能全体を構築していくのですが、アプリケーションプロセッサのメーカーは、露出制御やオートフォーカス、ゲインアップ時のノイズ処理、ダイナミックレンジを圧縮する処理やその判別などなどをブラックボックスで提供し、ツールを使って調整しながら追い込みます。

一般にはカメラモジュールのメーカーが、代表的なアプリケーションプロセッサ向けの調整用プロファイルを用意しているので、それを使って開発を進めますが、実際に主要な機能を司るプログラムを記述しているソースコードを直接入手できるわけではありません。一定のAPIを通じてしか扱えないのです。

もちろん、販売数が多い超大手メーカーは事情が違うかもしれませんが、メーカー開発者がカメラの制御・画像処理のすべてを自由にできるかと言えば、おそらく答はノーでしょう。カメラの制御は、ある一要素が変わるとすべての制御にフィードバックがかかる繊細なものなので、機能面で追い込もうとすればするほど、制約は大きくなります。

ここまで書けばピンと来る読者も多いでしょう。

内蔵カメラのトレンドを牽引するために必要な独自ISP

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
▲2017年に発表された「Kirin 970」。

HUAWEIがここ数年、内蔵カメラの分野でさまざまな独自機能を提供できているのは、彼らがKirinという独自のアプリケーションプロセッサを持っているから、という部分が大きいわけですね。

スマートフォンの内蔵カメラに、新たな改良を加えたいといった場合、自社開発のアプリケーションプロセッサを使っていれば、そこに内蔵されているISPのレベルにまで遡って改良や機能追加が行えます。

カメラのトレンドを牽引している......とまでは言えないまでも、トレンドのキャッチアップが早いiPhoneの内蔵カメラも、アップルが独自にアプリケーションプロセッサを開発しているからだと言えます。

自社でアプリケーションプロセッサを持たない場合、外部ISPやCMOSに積層したISPを使うこともできなくはありませんが、技術的な制約も生まれてきますし、製品全体のサイズ、デザイン、消費電力などには影響が出ます。

パナソニックが1インチCMOSセンサーを用いたLUMIX CM10/CM1という製品を作っているじゃないか! と思う人もいるでしょう。その通り、彼らはものすごく複雑な開発を行い、スマートフォンの基幹部分をなすチップとは別にカメラ用のチップも搭載し、相互に通信するという極めて難しい仕事をこなして、あの製品を実現させていました。


▲Xperia XZ2 Premiumのカメラ部分。

最近ではXperia XZ2 Premiumも、「AUBE fusion」という独自ISPを搭載した高性能内蔵カメラを搭載していましたね。こちらはパナソニックの場合とは異なり、スマートフォンに搭載することを前提にしているため、そこまで事情は複雑ではないと思いますが、これを全モデルに搭載できるか? というと、現状は難しいのではないでしょうか。


言い換えれば、独自のISP、さらに言えばカメラ全体の制御までを含め、完全に掌握した上での自由な開発が行える枠組みをクアルコムのSnapdragonシリーズの上に作れれば、積層CMOSセンサーを同じソニーグループ内で発注して作り込めるようになり、Xperiaの競争力は高まるでしょう。

もちろん、アプリケーションプロセッサ内蔵のISPも改良が加えられていきますし、世の中のトレンドとして複眼カメラが増加しているならば、複眼カメラに必要な機能が開発キットやツールとともに提供されます。最新トレンドを自分たちで生み出していこう、というわけでないならば、そこまで突っ込む必要はありません。

アプリケーションプロセッサのメーカーは、新しい端末機能を生み出していく立場にはありませんから、イニシアチブは取れないでしょうが、不満のないレベルでカメラの質を追う(余分なコストはかけない)という選択肢もあります。カメラ機能や質で後追いになっても、適切な市場分析から適切な商品開発につなげればプラスに転じることができるのは、今年のシャープが示しています。

プレミアム製品以外でのカメラ機能はどう改善する?

話を整理すると、独自ISPを搭載して低レベルにまで降りてのカメラの作り込みをしたり、新基軸の機能や画像処理、AFアルゴリズムなどを組み込んだりしようと思うと、自社でアプリケーションプロセッサを開発していない限り、イニシアチブは取れない(取りにくい)。

アプリケーションプロセッサのメーカーと綿密に連絡を取りながら開発すれば、乗り越えられる面もありますが、翌年になるとその機能を他社も使えるようになってしまいます。外部ISP採用は技術的なハードル以外に、コストの面でも不利になりますね。

それでも内蔵カメラには、それだけの投資価値があるとは思いますが、SIMフリー機の増加でミドルクラスのAndroidスマートフォンが伸びている国内市場では、そこまでコストをかけられないのではないでしょうか。

となると、やはりKirinを擁するHUAWEIが......となるのですが、実はクアルコムのSnapdragonシリーズを使いながらも、ミドルクラスの端末としては良好なカメラへと仕立てる方法も、まったくないわけではありません。

少々複雑なやり方なのですが、SnapdragonのISPとAndroidに組み込むドライバーソフトウェアの間に入り、制御を乗っ取ることで支配下に置くというやり方です。実際、この方法でカメラを改善したメーカーもあるようですが(メーカー名は非公表)、実に興味深い内容でしたので、技術を提供している企業などに取材をした上で、いずれEngadgetでも紹介できたらと考えています。

関連キーワード: camera, cameras, galaxy, huawei, smartphone, smartphones, xperia
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