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ソニー、「クレイジーな製品」をIFAで続々発表(本田雅一)

ちょっと頭のネジが外れ過ぎてない?と思う商品も

本田雅一, @rokuzouhonda
2018年9月2日, 午前09:30 in sony
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Kiyoshi Tane, 18 時間前
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Engadgetの読者層を考えれば、現在、ベルリンで開催されているIFA 2018にソニーが投入しているヘッドフォンオーディオ製品「Signatureシリーズ」は、ちょっと頭のネジが外れ過ぎてない?と思う商品でしょう。

据え置き型デジタル音楽プレーヤーのDMP-Z1は、なんと現地価格で8500ユーロ。日本での発表はまだですが、いくら欧州価格が為替レートそのままの換算では割高になるとはいえ、日本でも80万〜90万円は覚悟しなければならない製品です。



その中身は、ものすごくローキーに表現するなら「音質に超こだわった持ち運びできないウォークマン」です。これは誇張した表現ではなく、そのベースとなっているのは、紛れもないウォークマンなのです。あの、世界でもっとも重いとも言われたポータブルオーディオプレーヤー、NW-WM1Zの開発者たちが作ったものです。

これだけではありません。欧州価格で2200ユーロ(約30万円)のインイヤーヘッドフォン「IER-Z1R」は、言ってみれば"ステレオイヤホン"に他ならないのですが、その価格はそのあたりの高級ヘッドフォンよりも遙かに高価です。





IFAの取材現場でも「どこにそんなにお金がかかっているのか?」という質問を耳にしました。

しかしオーディオやビジュアルの製品は、そもそもの成り立ちを考えるなら、コスト=価格ではありません。どこにどうコストをかけようが、"どのぐらい欲しいと思ってもらえるか"が勝負の製品なのです。欲しいと思ってもらえないのであれば、コストダウンなど意味がありません。

まずは商品としての価値を高めること。価格が消費者の感じるバリューに合うならば、どこにどんな材料を使っていようが正当化でき、また結果的にバリューを感じてもらえなければ失敗作に終わるだけなのです。

そうした意味では、使っているLSIや液晶/OLEDのスペックなどに価値を依存するコンピュータ系(スマホを含む)の製品とは、価値基準そのものが違うと言えるでしょう。

"ブレーキをかけずに走りきる"、とっても愉快な人たち

少しばかり昔話になります。

2000年代も前半、AV製品はデジタル商品に食われ始めていた頃、それでもハイエンド製品にとてつもない労力を投じて製品開発をするソニーのオーディオ開発者にインタビューした時のこと。どんどんソニーの中心戦略からは外れゆくオーディオ製品に、なぜこれほど投資できるのか?という質問をしたことがありました。

そこで戻ってきたのは「ソニーは開発担当者だけでなく、中間管理職から予算管理・執行するマネジャークラス、そして事業部長に至るまで、全員が"良い音、良い絵"の価値基準を明確に持っているから」という答えでした。

傍目には「馬鹿じゃないの?」と思えるような極端な仕様や選択も、音を優先するなら、画質を優先するなら、それはアリだよねとトップマネジメントに至るまで一気通貫の共通認識があったことが、"あっ!?これ欲しい!"という製品を連発していたソニーの強みなのだ、と話です。

とはいえ、それも大昔のこと。

某暗黒卿時代時代はコストダウンとリストラ(人という意味だけでなく技術開発や商品ラインナップの面でも)され、ソニー製品に特別なものがなくなっていき、それとともに彼らは市場で苦戦を強いられるようになっていきました。(実際にはそのずっと前から、エンジニアパラダイス時代は終わっていたわけですけどね)

当時の取材について書き始めると、とっても長い話な上、必ずしも一面的な見方では表現できない部分もあるので詳細は言及しません。しかし、他社とは異なるユニークさを生み出すには、ある程度、"頭のネジが緩んでない?"と思えるぐらいの振り切ったこだわりが必要です。

 IFA会場で取材したソニービデオ&サウンドプロダクツ社長の高木一郎氏に、Signatureシリーズについて、その存在意義について尋ねると、次のように答えました。



「開発者には"商売にしなきゃだめだよ"とは言っているけれど、コストをケチるな、品質を上げることに集中しろ"と常日頃から話しています。ブランドを高めるには、その道のマニアに"我が意を得たり"と思わせる振り切ったフラッグシップが必要なんです。そのための開発投資は将来、よりカジュアルな製品にも活かせるでしょう。また良い製品であるならば、必ず利益にも貢献するものです」

エンジニアに"自由にやらせる"という美辞麗句を語るメーカーは多いのですが、実践できるかというと、あまり実践できていないメーカーが多いのも事実でしょう。製品寿命の短い製品をグローバルで流通させる際には、コスト高がダイレクトに収益リスクとなるからです。1年に1度以上、必ず陳腐化するような商品ジャンルでは、高付加価値製品への積極投資は大きなリスクです。

しかし、商品サイクルが長いと見込める製品であれば話は別です。

むしろ、他社ならば絶対やらないような、たとえ思いついたとしても実行には移さないようなアイディアを商品に載せてしまうことで、たとえ利益を大きく出せなくとも、ブランドとしての価値を高めることができれば、メーカーとしての存在感を高められます。

大昔、ソニーはこれを"シャワー効果"と呼んで率先してやっていました。最近になってやっと、現代のシャワー効果戦略を(オーディオとビジュアルジャンルに関して言えば)形として実践できるようになってきたというところでしょうか。

"能力を引き出す"ということ

ところで、ソニーと言えば以前、こんな話もありました。

今は表舞台から去っているので名前は挙げませんが、ソニーの音質チューニングマイスターだったレジェンドに、こんな話を聴いて納得したことがあります。

「オーディオ全盛期、オーディオ好きなエンジニアは、みんなオーディオメーカーに就職して自分の音を作りたいと思った。でも"いい音を作れるセンスを持ったエンジニア"の割合なんて、あくまで確率でしかない。音の良さは賢さではなくセンスでしか追い込めない。全員がセンスあるわけじゃない。するとソニーのような音響機器メーカーでセンスのあるエンジニアは、上位モデルや売れ筋モデルを担当する。でも低価格なラジカセは"それ以外"が担当する。でね、そういうオーディオの上位製品を持たないサンヨーが、すごくいいラジカセを作っていたわけ。サンヨーにとってオーディオの中核モデルはラジカセだから、そこにセンスあるエンジニアが集まって、のびのび作らせてもらったんだろうね。良い製品を作れるかどうかは、与えられた環境が一番大きいんですよ」

ここでは、センスあるエンジニアは一定割合しかいない、という彼の論で話が組み立てられていますが、大切なのは能力を発揮できる環境が与えられているかどうかではないでしょうか。

センス以前に、自分のことを理解されず、やりたいことをできないようでは、品質を高めるためだけに没頭することなどできるはずもないでしょう。

実は何年前だったのか思い出せませんが、今回と同じIFAに取材に来たとき、オーディオ事業のトップになったばかりの高木氏と食事をしたことがありました。高木氏は「覚えていない」というのですが、「せっかくいいエンジニアも、やる気ある若手もいるんだから、安いのばかりじゃなくて"これぞソニーの音"っていう製品も作ってよ」と話したことがありました。

「今は金がない(ソニーの金庫にないということではなく、オーディオ技術をマネタイズできていないという意味だと思います)。まずは元手を作らないとね。やりたいことはあるけど、まだ今は無理」

と、素っ気なかったものですが、実はその頃から"いつかはハイエンド"と様子をうかがっていたようです。そこに来たのが、デジタルオーディオのハイレゾブームとヘッドフォンブームでした。

「ソニーはオーディオ技術が、要素技術があるのに、それをお金にすることができていなかった」

いくら価値ある技術でも、それをお金にできなければ意味がありません。ではお金にするというのはどういうことなのか。それはメーカーにとっての価値ではなく、顧客にとっての価値を創出するということです。

オーディオにおける"ハイレゾ"というムーブメントは、実は最新、最先端でもなんでもありません。だってCDより高解像度のデジタルオーディオなんて、SACDやDVD-Audio時代からあったんですから。つまり、"デジタルファイル(データ)"としてのハイレゾは、以前からありました。

ソニーがハイレゾに力を入れ始めたのは2013年ですが、もともとあったハイレゾデータに加え、記憶装置の単価がどんどん安くなってハイレゾだろうがなんだろうが、オーディオデータぐらいなら、ハンドリングが容易になっていた時代です。

IFAで高木氏を囲んだ際、みんなでこの変態的に音質にこだわる、かつてのソニーを思わせる新製品の大量発生について尋ねると「あのハイレゾオーディオのムーブメントに合わせ、ソニーのオーディオ製品の再ブランディングすることに取り組み始めた」とのことでした。

従来の枠組みの中でもがくのではなく、パラダイムが動くときに合わせ、上位製品から普及製品まで"ハイレゾの音をしゃぶりつくそう"と一貫したコンセプトで商品開発を行い、その魂とはなんたるかを感じてもらうためにSignatureシリーズを作ったということですね。

「上から下までフルラインナップで商品開発をする中で"SONY"のブランドを高めるには、フラッグシップを持たなきゃいけません。しかも、一発大きな花火を打ち上げるだけではなく、1年に1製品でもいいから"SONY"を象徴する製品として、Signatureシリーズだとうたえる製品を出していかねばなりません。今回、インイヤーヘッドフォンのSignatureを出しましたが、欧米でのニーズは少ないのですが、中国・アジアでは"これこそが欲しかった"と熱狂的な声をもらっている。ハイエンド製品、フラッグシップ製品はブランドを作る上で重要。そこにかける予算はよりよい製品を作るための研究開発でもあり、また宣伝広告費のようなものですよ。そういう考えで、将来に向けた投資をしているんです」

この高木氏。実際の会話は"べらんめい調"で、時にちょっと口が過ぎることもあるのですが、そういう部分も含めて親分肌。何をすべきか目標を立てると、その目標に向けて社員たちを乗せていくタイプのようです。

今後はヘッドフォンオーディオ以外にもスコープを広げていく

ところで、こうしたソニー・オーディオ製品の復活劇は、主にポータブルオーディオとヘッドフォンによって進んできました。Signatureシリーズと言われている製品は、どれもかつてのソニー黄金期にあった、家庭向けオーディオコンポーネントではありません。

というよりも、ホームオーディオ製品の匠として活躍していたエンジニアのノウハウを時代と市場のトレンドに合わせ、伸びていたポータブル、ヘッドフォンに集中投下した結果が、ここ数年で出ていたという方が正しいかもしれません。

しかしグローバルでのオーディオ市場を見ると、アナログディスクの復権、まさかのSACDリリースタイトル増、ハイレゾ音源ストリーミングサービスなどのトレンドから、ホームオーディオにも再びの光が差し込みつつあります。

高木氏は「たとえばスピーカーのSS-AR1など高く評価されている製品はあったのですが、それを作ってきたノウハウや評判を活かせる体制にこれまではありませんでした。しかし、これぞ"Signature"というものを今、仕込んでますよ。(スピーカーだけ?という質問に)いや、スピーカーだけじゃないですよ。どんなジャンルでも、これぞSignatureだという基準の商品をつくれるなら挑戦します」と話す。

そうした体制になってきているのは、実際に事業としても上向いているからだ。

取材したIFAはドイツの展示会。欧州市場にはゼンハイザーやAKGなどヘッドフォンの世界的ブランドがあります。そんな欧州市場で、3年前から積極的にオーディオ製品を売り込み始め、売り上げ金額はその間に5倍になったとのこと。

商品が良くなったからこそ、なのですが、売り上げが伸びた理由について訪ねると「単純なんです。ソニー製品を顧客が選ぶ、購入後も評判がいい。だから売り場の人たちがソニー製品を売り場に置こうとなる。これまでは売り場での存在感がなかったのが、今ではローカルの高級ブランドと同じぐらいのスペースを割いて売ってくれる。その結果、よりカジュアルな製品も含めてトータルの売り上げが伸びてるんですよ」と高木氏。

このまま"クレイジー"であり続け、オーディオファンを魅了するメーカーとしての規模、ジャンルを広げて欲しいものですが、ひとつ興味深い話をもしていました。

それは目の前に迫っている「5G時代」におけるソニーの役割についてです。

"5Gはソニーの時代"になる

IFAにおけるソニーの発表会では、吉田憲一郎新社長が"新しいソニー"について「人に近い」「人とクリエイターの間をつなぐ」といったキーワードで講演を行いました。デジタル時代となり、またインターネットの時代となって、デバイスの形、コンテンツ流通の形は大きく変わりましたが、クリエイターが生み出すコンテンツと、それを愉しむ消費者の間に入り、より優れた体験を生み出すということに関して、ソニーの役割は以前から変わっていないのだ、という、ある意味、達観した話だったと僕は捉えています。



そうしたことが言えるのは、前社長の平井一夫氏がプレイステーション部門のソニーインタラクティブエンタテインメント(SIE)、ソニーミュージックエンタテインメント(SME)、ソニーピクチャーエンタテインメント(SPE)といったコンテンツ部門各社を含めたグループ内の風通しを良くしたからだったのです。

コンテンツサイドの意見が流れ込むことで、ソニー製品が担う役割、求められている商品像が明確になり、商品に対する投資の目利きに自信が持てるようになってきたのではないでしょうか。

高木氏はこんなことも話していました。

「5G時代が目前で、世の中が大きく変わると言われている。しかし世の中が大きく変わるときというのは、予想したところで結果を当てられる人なんていません。しかし確実に言えるのは、コンテンツと消費者の接点が変化することは間違いないでしょう。ソニーの持っている価値を、5G時代にどう適応させていくのか。現在、かつての苦しい時期を経て、10年前は考えられなかったような社内のグループシナジー、結束の強さ、コミュニケーション力が備わってきています。今後の5Gの時代、新しい吉田体制で新しいことに取り組めることにわくわくしていますよ。普通にSIE、SME、SPEの人たち、時に文句も言いながら一体となって取り組めていますからね」

ソニーの復活を担った前社長は去った。しかし、さらなる前進をするエネルギーは、まだまだ尽きることがないようだ。

「吉田社長が"ソニーはもっとユーザーに近い存在になっていく"と発表会で講演しました。でも自分から近づこうとしても、相手に逃げられたのでは近づけません。消費者の方から、ソニーの製品を使いたいと近付いてもらえる。そんな製品を作っていきますよ」(高木氏)
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