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『物理キーボードの方が使いやすい』という常識を疑え。新YOGA BOOKレビュー(本田雅一)

レノボトップの"肝いり"だそう

本田雅一, @rokuzouhonda
2018年9月8日, 午前10:15 in laptop
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今年のベルリンでの世界最大級な家電ショー「IFA 2018」も終了してしまいましたが、現地の取材ではなかなか刺激的な議論もありました。たとえばLenovoの「YogaBook C930」です。すでにいくつかのレビューが掲載されているので、まぁ、細かいところは紹介は不要でしょう。

クラムシェル型と思わせておいて、まるでヨガ修行者のようにヒンジ部分の可動域が超絶的に広く、裏返してタブレットとしても使える"アレ"ですね。ソフトウェアキーボードとすることで、実にスリークなデザインを実現していました。

ソフトウェアキーボードに採用されていたのは、元日本IBM大和研究所、現在はLenovoとなっている、ThinkPadを生み出したチームが開発したミスタイプを学習してキータイプ制度を向上させる独自のもの。あの後継モデルというのですから、いったいどこまで進化したのだろう?と注目している人も多いのでは。

ヒンジの構造は同じで液晶パネルのサイズも同じながら、キーボード側にE-Inkディスプレイを採用。従来よりも少しばかり表示領域が広くなっており、その上に描かれるソフトウェアキーボードはタイピングに合わせてアニメーションし、同時に電子ブックビューア(といっても現時点ではPDFのみ表示可能)と筆圧検知可能な電子ペンを使った手書きメモ機能を持つ2画面Windowsマシンとしての登場です。







多くの記事で製品そのものはすでに紹介されているので、ここでは少し視点を変えて、話を進めていきたいと思います。テーマは"テクノロジは常識を超越できるのか?"という点です。

例えばあのとき、僕らは何を想っただろう......

いきなり別の話題に振って恐縮ですが、世界初の"ミラーレス"なレンズ交換式カメラDMC-G1が発売されたのは2008年9月のことでした。

ドイツのケルンで発表されたG1は、光学設計のメカニズムによって実現されていた、撮像レンズからの映像をファインダーで直接確認しながらサクサク撮影できる一眼レフのメカニズムを採用せず、電子的にファインダー像を表示するテクノロジ的には実に興味深い製品でした。

しかし、3原色のLEDを短時間で順に発光しながらカラー化する時分割式で解像度を上げたファインダーを搭載していたG1ですが、応答性の遅さや見え味の違いを散々指摘され、コンパクトな設計などマイクロフォーサーズフォーマットの良さに目が向けられるまでには少しの時間が必要でした。

筆者も発表されたとき、フォトキナの会場であるケルンメッセで取材をしていましたが「小さいシステムを作るにはいいかもね」程度の扱いだったと記憶しています。なかなかよくできたシステムではあるけれど、でも一眼レフには到底かなわない、別領域の製品というところです。

多くのカメラメーカー関係者にG1の感想を尋ねましたが「OVF(光学式ファインダー)が、機能的な面でEVF(電子ビューファインダー)に負ける時が来たとしても、トータルの評価でOVFを上回ることはない」という意見が多数でした。

しかし、言うまでもなくEVFにはEVFの利点があります。EVFなら"見えないはずのもの"も見えますし、"気づかない情報"も"気づかせる"ことができます。撮影後の映像を予測表示することもできますし、フィルタなどをかけた結果をシミュレーションすることもできます。

もっとも、当時は"こうした利点があるはずだ"と言われていた......というのが正しいでしょう。理屈では理解していても、実際に目にして、体感できるようになると、世の中は変わっていきます。新たなイマジネーション、技術開発への道筋が見えてくると一気に開発は加速していくものです。

そして現在、ソニーα9はEVFの像がブラックアウトすることなく、真っ暗な中でも被写体を視認しやすく、撮影結果を予測しやすいEVFを実現し、表示遅延もごく僅かになってきました。

『果たして本当にOVFが多くの人にとって"最適解"なのか』という問いに対して、以前は"当たり前だよ"と多くの人が即答していましたが、こうして新しい時代の新しい製品が現実になると、誰もそんな昔のことは忘れてしまったかのようです。

ご存じのように一眼レフカメラにおいて、世界の標準プラットフォームとなってきたニコンのレンズマウント(正式名称ではないようですが、ここではFマウントと呼びます)とキヤノンのEFマウント。
それぞれ一眼レフカメラの世界では今後もデファクトスタンダードとして尊重され続けるでしょうが、両社ともパナソニックのG1が開拓した"ミラーレス"のジャンルに対し、フルサイズ(=ここではライカ判サイズ)センサーを用いたシステムとして、ニコンはZマウント、キヤノンはEOS R(RFマウント)というシステムを発表しました。

いずれも高機能、高画質、高応答性、低遅延のファインダーを搭載し、フルサイズセンサーを搭載しつつ軽量コンパクトなソニーのαシリーズを意識したシステムになっていますが、とりわけニコンZ7/Z6のファインダーは、まるで光学ファインダーのような風合い。

そして今月の9月25日、フォトキナの会場ではミラーレス一眼誕生10周年を記念して(?かどうかはわかりませんが、そう予想しています)、パナソニックも他社と競合する新製品を発表を予定しています。

常識は覆されるもの

勢い余ってカメラの話を延々としてしまいましたが、もちろん、レンズ交換式カメラのトレンドについて、ここで延々と続けるつもりはありません。しかし10年後の今年、一眼レフ市場が後退を始め、一眼レフ市場で"プラットフォーマー"だった2社が、ミラーレス一眼にシステムを一新し、世に問うようになるとは誰が想像したでしょうか?

筆者がパナソニックのG1も、その後継機種もしばらく使っていましたが、最初の5年は"全く別のものだけど便利な面もある"という、"一長一短"という捉え方でした。しかし今年、一眼レフ市場の支配者たちがこぞって"こっち"に来ている理由は、常識が覆され、"こっち側"が常識になりつつあるから......だと思います。

EVFがOVFとまったく同じ見え味になることはないでしょうが、OVFにEVFと同じ情報を詰め込むことはできない。なによりレフレックスメカがある時点で、本体のサイズも大きくなり、トータルの商品性としての総合力で(用途によっては)逆転現象が起き始めているのが、このところの流れといったところでしょうか。

まさかこんな日がくるとは......。

現在のスマートフォンだって、ここまで高性能でなんでもできるデバイスが、こんな小さく軽く、手元で自在に操れるなんて誰が想像したでしょうか。今だからこそ"そうなると思っていた"と口にできる人がいたとしても、ずっと昔からそう言えた人は希だったでしょう。

そもそも常識とは覆されるものなのだと思います。

アーサー・C・クラーク氏が提唱した"クラークの三原則"をご存じでしょうか?

・高名で年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。

・可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。

・十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。

とても有名な言葉ですが、突き詰めると頭の中にある"常識"が、可能性に蓋をしてしまうということですね。なんていう話を、実はLenovoの関係者に延々と飲みながら話していました。

正直に言うと、YogaBook C930のキーボードは、"現時点では"完璧に優れたギミックとは思いません。確かにペンでのE-Inkへのメモは便利ですし、PDFを表示する機能も興味深いものですが、Windows 10搭載の2-in-1(E-Inkリーダー兼手書きメモ機能があるので5-in-1かもしれませんが)に求められるのは、やはり第一にはキーボードも含めた"生産性"の高さでしょう。

その本質的な部分においては、まだメカニカルキーボードとの間には大きな隔たりを感じます。



圧力によってキーの押下げを判別していないため、さらっと触れただけでミスタイプになりますし、触感で位置を補正しながら入力できないので、指の位置がズレ始めるとミスを連発。入力最初の位置決めが一番気を遣うかもしれません。

知人は初代YogaBookの際、シールを貼って手がかりを作っていましたが、E-Inkリーダー兼手書きメモの役割を持つ新型では、それも無粋というものでしょう。

Lenovoによると、新しいキーボードはミスタイプの学習アルゴリズムも新たになっているそうで、しばらく使い続けているとなれてくるのかもしれません。初代の時にも、数日使っていると、かなりミスが減っていましたからね。

今回はキー入力のフィードバックをバイブレータで指に伝えたり、E-Inkを用いたアニメーションで入力の様子が見えるといった機能も組み込まれています。とはいえ、短時間の試用では大きな入力効率の向上は感じられませんでした。

しかし、後ろ向きに"これは駄目"ということを書きたいわけじゃありません。

"現状"と"伸び代"

C930のソフトウェアキーボードは、前回からノウハウを引き継いでレノボジャパン横浜事業所大和研究所の人たちが「こうあるべき」という理想ソフトウェアキーボードを目指して開発しているものです。


初期のEVFがカメラ用ファインダーとしてはお粗末だったのが、現在では"用途次第ではEVFの方が有利"と認識されるようになったのと同じように、開発が進めば"用途次第ではソフトウェアキーボード"となる日が来るでしょう。

前述したように、タイプミスの修正を繰り返すたび、利用者の癖を認識して入力精度が高まっていく機能がもっと高精度になっていけば、人間側がキーボード側になれなければならないハードウェアキーボードよりもミスしにくくなるかもしれません。

当然ながら、キーレイアウトも自在に変更できますし、ログインIDと連動して学習結果やキーレイアウト、デザイン、あるいはそのほか細かな調整も含めて個人に紐付いて動作を変えることができます。
 ディスプレイもE-Inkがもっと進化するかもしれませんし、圧力を検知して誤入力を防ぐこともいずれはできるようになるでしょう。そもそもディスプレイも消費電力の動向次第では、もっとリッチな表現力を持つものになっていくかもしれないですね。

個人的にはキー入力の癖を、YogaBookのソフトウェアキーボードがどのように学習し、認識しようとしているのかを"見える化"するモードがあれば、この技術に対する理解が進むだろうに......と思いました。

表示モードを切り替えると、自分の癖......自分だけのレイアウトが視覚化される。すると大和研究所のひとたちが目指している世界が、そこに見えてくるでしょう。相互に共通の認識が持てるようになれば、現状に対する不満も言語化しやすくなり改善も進むでしょう。
 

C930のキーボード

さてそんなことに思いを馳せながら、YogaBook C930のソフトウェアキーボード。そのハードウェア構成を紹介しておきたいと思います。

E-Inkを用いたディスプレイ部は、感圧式のペン入力によるメモ機能とPDFリーダー機能を内包しています。キーボードは各国のレイアウトがすべてインストールされており、設定を切り替えることで二種類のキーボードデザインを選択できます。

これらのキーボード以外の機能とキーボード設定画面は、Windows 10のアプリケーションとして動作しています(ただしレノボはE-Ink部をディスプレイとして利用するAPIを公開しない方針とのことなので、他社製アプリがこの領域を活用することはできません)。

一方、ソフトウェアキーボードとしての機能は別システムで動作(おそらくARMベースの省電力なシステムでしょう)しており、C230上で動作するWindows 10からはHID(Human Interface Device)として認識される仕組みです。



USBを通じてWindowsシステムとコミュニケーションし、時にディスプレイ領域をWindows側に引き渡して前述のアプリケーションや機能設定を表示させる。キーボードとしては独立しているので、Windows側で重い処理が走っているからといってキーボードの動作が遅延することはないでしょうね。

日本での発売予定日は未定ですが、"発売すること"はほぼ決まっているようです。日本向けのキーレイアウトも発見できましたが、できればPDFリーダー機能にはePubなど一般的な電子書籍フォーマットの表示機能も欲しいところですね。

僕はYoga Bookユーザー(しかも今はなくなったAndroidをOSとして使っていた方)でしたから、学習してミスタイプが減っていく体験を実際にしています。その部分が進化しているのであれば、また再挑戦してみようか?と思ったりしていますが、何よりも継続することがブレークスルーへの近道です。

ソフトウェアキーボード搭載のYoga Bookはレノボトップの"肝いり"だそうで、何度も開発をやり直させて改良を促しつつ、こうして再度のソフトウェアキーボードモデル発売になったとか。

いつかハードウェアキーボードを超える生産性を引き出すべく、今後も開発を続けて欲しいものです。

関連キーワード: ifa2018, laptop, lenovo, yogabook, yogabook2
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