Adobe、レイヤーなど(ほぼ)フル機能を備えたPhotoshop CC for iPadを来年投入へ~ビットマップとベクターを同時に扱えるProject Geminiも開発中、Project RushはPremiere Rush CCとして正式発表、急速にマルチデバイス対応へと舵を切る
ソフトウェアメーカーのAdobe Systems(以下Adobe)は、10月15日(現地時間)から同社のCreative Cloud製品をテーマにしたプライベートカンファレンス「Adobe MAX」をアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼル市で開催している。初日の基調講演は同日の午前9時から開催されるが、それに先だってAdobeはいくつかの発表を行なった。
この中でAdobeは、同社が開発してきた「Photoshop CC for iPad」という名称の新しいiPad用のPhotoshopを発表した。Photoshop for iPadは、従来Adobeがモバイル(iOS/Android)用として提供してきたPhotoshop Mix、Photoshop Sketch、Photoshop Fixなど機能により分割されたモバイルアプリケーションとは異なり、PC用のPhotoshopの機能をモバイル環境で実現する(ほぼ)フル機能版のPhotoshopになる。
同時にAdobeはビットマップとベクターデータを同時に扱うことができる新しいアプリケーション「Project Gemini」(プロジェクトジェムナイ、開発コードネーム)の開発意向表明を行なったほか、6月に行なわれたVidconでプレビュー公開されていた新しい動画編集ソフトウェア「Project Rush」(プロジェクトラッシュ、開発コードネーム)の正式版として「Premiere Rush CC」を発表し、Creative Cloudユーザーに提供開始したことを明らかにした。
プロにとって残念な機能限定版じゃないんです
PSDもレイヤーも使える(ほぼ)フル機能なPhotoshop CC for iPad
Adobeが発表したPhotoshop CC for iPadはその名前からもわかるように、Photoshop CCのiPad版になる。本格的にiPad Proなどでイラストを描きたいと思っているプロフェッショナルユーザーであれば「あーどうせこれまでみたいに、限定された機能しか用意されていないんでしょ」と斜に構えたくなると思うが、ちょっと我慢して読み進めてほしい。確かに、これまでAdobeがモバイル向けに提供してきた「Photoshop」と名前のつくアプリケーションが、プロにとっては微妙な存在だったことは否定しない。AdobeはPhotohopのブランドでPhotoshop Mix、Photoshop Sketch、Photoshop Fixといったモバイルアプリケーションを、iOSやAndroid向けに提供してきた。しかし、アプリによってはPhotoshopのブラシを持って行って使えたりで来たのだが、PhotohopのPSDファイルが読み込めなかったりと、確かに中途半端と言われても仕方がない面はあった。というのも、これまでAdobeはモバイルアプリを、スマートフォンユーザーをCreative Cloud(同社のサブスクリプション型クリエイティブツール)に取り込むための入り口と位置づけており、ある程度使ってもらったらPC版のCreative Cloudにアップデートしてもらうというのがコンセプトだったからだ。
しかし、今回発表されたPhotoshop CC for iPadはそうではない。「Photoshop CC」という名前がついていることからもわかるように、Creative Cloudを契約しているユーザーが対象となる製品で、かつPhotoshop CC for iPad自体がフル機能を持つソフトウェアになる。つまり簡単にいってしまえば、今Windows/macOSのPhotoshop CCで出来ていることは、Photoshop CC for iPadでも出来るようになる。Adobeによれば、Photoshop CC for iPadはレイヤーを扱うことが可能で、Windows/macOS版のPhotoshop CCで作成したPSDファイルをそのまま編集することができる。かつ、他のCreative Cloudのアプリケーションと同じように、AdobeのクラウドサービスであるCloud Syncの機能を利用して、自動でPCとiPad間でデータファイルの同期を行なわせることができる。
▲Adobe MAXのタイミングリリースされたPhotoshop CC 2019(macOS版)のレイヤー機能
▲Photoshop CC for iPadで同じ画像ファイルを開き、レイヤーを見ているところ