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クリエーターへの適切な対価還元を考慮せず私的複製補償金を徴収する愚策:旅人目線のデジタルレポ 中山智

JASRACへの分配は17年間で10億円が1/100に そりゃ必死になりますよね

中山智 (Satoru Nakayama), @yenma
2018年10月24日, 午前11:50 in AV
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旅人ITライターの中山です。10月23日、文化庁で「文化審議会著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第4回)」が開催されたので、傍聴・取材に出席してきました。というのも議題として「クリエーターへの適切な対価還元について」があげられていたからです。

記事の前に自分の立場を説明しておきますと、ミュージシャンのファンキー末吉さんの活動に協力しており、現在の著作権使用料の徴収や分配方法に疑問を持っているひとりです。


上記の理由から今回の小委員会に出席したわけですが、これがまったくの肩すかしというか期待はずれの内容。全体の内容としては下記の石川氏の記事にもありますが、2時間半あった会議のうちスマートフォンやパソコン、HDDやUSBメモリーから補償金を取るかどうかの話に終始して、「クリエーターへの適切な対価還元について」は5分ほど話題になっただけ。ほとんど語られませんでした。


ちなみに「私的録音・録画補償金制度」ですが、現在は機能不全で虫の息といった状態です。録画に関しては2012年の裁判結果からデジタルチューナーのみの録画機やCPRM対応のBDやDVDは対象外となったため、メーカーから補償金が徴収できず、指定管理団体だったSARVH(私的録画補償金管理協会)は2015年に解散。制度はあれど運用はされていない状態です。

また録音に関しても、補償金の徴収は激減しています。たとえばJASRACへの分配金だけでも、平成12年度は約10億円(参考:平成12年度使用料等徴収額/JASRAC)もありましたが、平成29年度は約1/100の約1000万円(参考:2017年度 JASRAC事業の概要/JASRAC)となっています。

私的録音の補償金対象となる機器や記録媒体は、DAT、DCC、MD、オーディオ用CD-R/RWです。考えてみれば自分自身もMDなど20年くらい前から使っていませんし、CD-Rも最後に買ったのがいつだったか記憶にありません。JASRACへの分配金が1/100になっているのも納得です。

録画は徴収できておらず、録音も1/100になり青息吐息。そこで目を付けられたのがスマートフォンなど。参加していた委員の大半からはとにかく補償金の徴収を増やしたいという思いだけが伝わってきました。

というのもある委員からは発言後に言い過ぎで語弊があったと弁解はあったものの、機器にコピー制限などがあれば「無罪放免で良いのか」という意見も飛び出しました。自分はこの発言が補償金を徴収したい側の本心に近いと思っていて、「簡単に無劣化でデジタルコピーができる機器は罪である。そこからお金を徴収するのは正義だ」というわけです。
music

さらに問題なのは、もしスマートフォンなどが対象となって補償金を徴収するようになっても、決して「クリエーターへの"適切"な対価還元」にはならないことです。現状、私的録音補償金は指定管理団体のsarah(私的録音補償金管理協会)がメーカーから徴収し、38%がJASRAC、32%が芸団協、32%がRIAJへと分配されます。そこからJASRACは著作権者に分配することになっていますが、日本の場合一般的にクリエーターは音楽出版社に権利を預けて活動しているため、JASRACは複雑でめんどうな計算(参考:私的録音補償金分配規程/JASRAC)を元に音楽出版社へと支払います。そこからさらにクリエーターへと対価が支払われるわけです。

つまり、徴収する段階、分配する段階、音楽出版社に支払われた段階、どの時点でもクリエーターの作品がどれくらい私的に複製されたかは特定できず考慮もされていません。このシステムでは一部のトップクリエーターの収入に割り当てられるなど、個々のクリエーターへの"適切"な対価還元にはなりません。このあたりはライブハウスの著作権料徴収が実質包括契約のみで「クリエーターへの"適切"な対価還元」になっていないというファンキー末吉さんの主張と同じです。

会議ではある委員から「たとえばレンタルCDの料金に補償金をつけてはどうか」という意見もでました。確かに機器や記録媒体で補償金を徴収するのではなく、CDの販売時やレンタル時に補償金を徴収すれば、その補償金はどのクリエーターに支払えば良いか確実にわかります。最近主流のストリーミングも、どの作品がどれくらい配信されたかデータでわかりますから、支払うべきクリエーターを把握して私的複製のための補償金を上乗せできます。利用者としても聴いた曲、観た作品を製作したクリエーターに補償金が渡るのならば、気分良く支払えるというものです。

ところがこの意見が出た途端、「それでは補償ではなく許諾になる」といった強い反対の意見が出て、そこには触れてくれるなという印象。どのクリエーターの作品が私的に複製されたかは関係なく、とにかく機器や記録媒体からザクッと徴収したいという目的それのみの達成を考えているように感じました。

Agency for Cultural Affairs

補償金とは誰のために徴収するのか。ITが発達した現在なら、受益者負担の原則に基づいた「クリエーターへの"適切"な対価還元」ができると思います。また利益を受けるのはクリエーターです。補償金は徴収しているのに、自分の作品が私的複製されてもその対価は適切に支払われないシステムでも良いのか。個々のクリエーターがもっと声に出して主張するべきなのではと思います。

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