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クラウドネイティブな自動車メーカーByton(バイトン)とは?:CES 2019(本田雅一)

EV+クラウド

本田雅一, @rokuzouhonda
2019年1月8日, 午後08:00 in transportation
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例年通り、米国ラスベガスにて開催されているCES 2019ですが、昨年のCESで、もっとも人々を驚かせたメーカーは? と、一年後の今、ふり返ってみると、思いつくのはByton(バイトン)。2017年9月にミュンヘンでブランドがローンチされたばかりの、いわばハードウェアスタートアップです。

そんなバイトンを立ち上げたのは、BMW i部門を率いていたカーステン・ブライトフェルド氏と、インフィニティ(日産の高級車部門)中国事業のトップだったダニエル・キルヒャート氏の2人。そのほかにもBMW i、テスラ、ルノー・スポール、グーグルの自動運転車部門やアルパインといった自動車関連会社の幹部が集まっていることを考えると、こりゃただ者ではないと思うわけです。

Byton

2018年のCESでは極めて完成度が高いコンセプトカーを創業2年という短期間で発表し、さらに2019年に最初の自動車を発売すると公言しました。これだけでも驚きなわけですが、2018年秋にはコンセプトカーそのままのスタイルと機能、性能を備えた「M-Byte」を中国で発売したのです。

Byton

レベル3の自動運転(条件付き自動運転)を備えたM-Byteを創業から3年未満で発売したことそのものは、すでにあるさまざまな要素技術をかき集めることで可能でしょう。しかし、その行動のあまりの早さには目を見張るものがありますよね(ちなみに各国の法規制があるため、M-Byteは"レベル3レディ"ですが、中国ではレベル3で販売されているそうです)。

2019年のCESではM-Byteの量産化が明らかとなったほか、M-Byteが搭載する「Byton OS」についての発表が行われ、大幅なユーザーインターフェイスのアップデートや将来の拡張性などについて語られました。



M-Byteは、テスラのModel 3相当の安価な価格設定(4万5000ドル〜)とされていますが、車恪としてはModel S相当なうえ、デザインも欧州の一流デザイナーが合流して開発しているため、流麗で美しい姿をしています。細かなテイストに目を向けると、BMW i8に似た雰囲気を持っているのは、BMWのトップデザイナーもバイトンに参加しているからでしょうか。

Byton

「Byton OS」についても極めて"未来的"とも言えるのですが、そもそもバイトンには多くの自動車メーカー幹部が参加しており、これまで彼らが考えてきた理想をバイトン向けのソフトウェアとして実装し、またオープンスタンダードに則って多様なサービスと連動するように作っているだけ......とも言えます(もちろん、その"あたりまえ"の作りにするのが難しいのですが)。

ドイツ・中国・アメリカの"得意分野"

Byton

バイトンは、中国江蘇省の南京を拠点にする企業です。創業者は中国でも最大級の自動車ディーラー「中国和谐汽车控股(チャイナ・ハーモニー・オート・ホールディング)」の創業者でもある馮長革氏。馮氏がブライトフェルド氏とキルヒャート氏を口説いて始めたのがバイトンなのです。

しかもチャイナ・ハーモニー・オート・ホールディングは、中国で最もたくさんBMWとロールスロイスを販売し、高級車を売るノウハウに長けたディーラーですから、中国では成功する確立がかなり高そうですね。

ところで、我々が自動車を購入する際は自動車メーカーのブランドしか意識していないかもしれませんが、実際のコンポーネントは様々な部品メーカーや素材メーカーなどが持つ要素技術が組み合わさって商品化されています。

そこはバイトンの電気自動車も同様。さまざまな要素技術が集結し、作られています。たとえばセンサーや車体制御技術ならばBOSCH、自動運転技術ならばオーロラ(中国国内向けはバイドゥのアポロ)といった具合です。

ドイツ、中国、アメリカ、それぞれの国の得意なジャンルの要素技術を集め、素早くまとめ上げているわけで、完成度が高い車がいきなり生まれてくるというのは、まぁ納得というところですね。

Byton

もっとも、バイトンが注目されているのは、要素技術をかき集めて、カッコイイ車を素早く作り上げているからだけではありません。実は生産技術までを含め、あらかじめ中国の地方政府からの融資を受けながら、並行して年間30万台規模の量産工場を建設しているのです。

現在稼働しているのはパイロットラインで、そこで作られたものが上海で販売されています。しかし、2019年に完成するグローバル出荷向け量産ラインの生産キャパシティは、年間30万台にも達するとのこと。こうした規模の生産ラインが作れるのは、やはり自動車メーカーの幹部が集まっているからなのでしょう。

今後、電気自動車メーカーのロールモデルになっていく?

仮に、香港向けに右ハンドル仕様の車両が販売されるようになれば、日本市場での発売も見えてくるかもしれません。しかし、当面は日本市場とは無縁の存在になりそうです。ただ、まったく無関係とも言い切れないでしょう。

優れた部品メーカーとのパートナーシップ、そして限られた一部の優秀なエンジニアがいれば良い車ができるというのは、あたりまえと言えばあたりまえです。そこにドイツ自動車メーカーの設計者やデザイナー、それに生産技術までが加わるならなおさらです。

Byton

しかし、ここからさらに発想を発展させるならば、バイトンをひとつのロールモデルとして、自動車メーカーのエンジニアやデザイナー、経営幹部が出資者を見つけ、中国を拠点に新しい自動車メーカーを素早く立ち上げるというパターンがいくつか生まれてくるのではないでしょうか。

なぜなら、自動車の信頼性や性能を少なからず支えているのが部品メーカーであるにも関わらず、彼らは常に"裏方"であり続けているからです。このあたりの構造は、映画会社と映画制作会社の関係にも似ているかもしれませんが、優秀な部品メーカーが、従来の自動車メーカーに見切りを付けて、いっそのこと"まったく新しいEV&自動運転時代"の自動車メーカーを作り上げるというシナリオも、まったくないとは言えないはずです。

バイトンの背景について触れると、"なんだ中華系テスラかよ!"という感想を思うひともいるでしょうけれど、実は完成車が生まれる構造は、現在の自動車メーカーと大きく異なるわけではありません。バイトンが成功をおさめると、自動車産業の構造は、それこそガシャン、ガシャンと音を立てるように変化していくことでしょう。

"クラウドネイティブ"な自動車メーカーの強み

さて、そのM-Byteですが、少なくともデモ映像やデザイン、内装などを見ていると、テスラよりもはるかに魅力的に感じます。理由は細かなデザインテイストというよりも、考え方やコンセプトの明瞭さです。

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テスラはいわば"EVネイティブ"の自動車メーカーです。しかし、バイトンはEVであることがあたりまえとして、それがクラウドにつながったとき、自動車はどう変化するのか? を前提に自動車のプラットフォームを構築した"クラウドネイティブ"な自動車メーカーという印象を受けました。

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M-Byteでは超巨大なディスプレイでのインフォメーションシステムはもちろん、キー代わりの顔認識や、シートごとに全員の顔を認識。搭乗者全員が誰であるかを車自身が把握します(たとえば、"僕のプレイリストを開いて"というと、"僕"と言った人が誰かを認識し、その人の目の前のディスプレイに音楽プレイリストが表示されます)。

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このような仕組みに機械学習モデルなども組み合わせられているため、「お腹が減ったね」「私、そろそろどこかで何か食べたいな」なんて話の流れで近くのレストランを探すと、過去の嗜好特性からより良いお店を選んで連れて行ってくれる、なんてこともできます。

アドオンでアプリを開発するのではなく、最初から車載のシステムに、そうした個人個人の趣味嗜好が積み重ねられていき、買い替えても"個人に紐付いている"ので体験レベルが引き継がれるというわけです。

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もちろん、テスラもやろうと思えばできることですが、生まれながらのコネクテッドカーとしてクラウドを前提にあらゆる機能が提案されているのと、あとから積み重ね、改良を加えてきたものでは体験の質が違いそうですよね。

なかなか難しいかもしれませんが、日本の自動車部品メーカーさんにおきましては、これを機会にイノベーションの世界へと脚を踏み入れていただきたいです。


関連キーワード: automotive, Byton, car, ces2019, ev, suv, transportation
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