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Apple・Amazonに通じる成功法則で「大成功」に導かれた市井の鮨屋(本田雅一)

鮨屋とテクノロジ企業の意外な共通点

本田雅一, @rokuzouhonda
2019年1月25日, 午後06:00 in Amazon
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昨年は「GAFA」なんて言葉が一般のニュースでも使われるようになりました。Google、Apple、Facebook、Amazon(これにNetflixを加えて"GAFA+N"という場合もある)はデジタルプラットフォーマーと呼ばれ、ネット、スマートフォンの時代に無視できない存在になっています。

もっとも、GAFAと一括りにいわれていますが、それぞれの企業の収益構造は全然違います。収益構造、つまり"何を商売にしてるの?"という部分が異なると、同じテーマに取り組んでいてもアプローチがまったく異なるのです。

Europe Google

たとえばGAFAの中でも、GoogleとFacebookは"インターネット広告の会社"です。より価値の高い広告を売るために、それぞれの事業を最適化してきました。

検索連動の広告やAdSenseなどにおけるターゲティング広告(掲示する広告を閲覧者ごとに最適化する広告)の精度を高めるために、Googleは個人情報と紐付けない形でサービス利用者の行動履歴を活用しています。

Facebook Political Ads Q A

Facebookは実名登録が前提ですし、そもそもSNSの活動そのものがプライバシーですから、もっと個人的な情報と関連付けてその人の行動データを取り、広告事業を展開できます。さらに、どんなものに興味を持っているのかも丸裸。Facebookが割引きクーポンの発行事業をすれば、きっと成功するでしょうね? と思うかもしれませんが、実際彼らはそういうサービスを提供しています。

これが"悪い"という話ではなく、そうしたことを許容することを前提に、世の中は両社を許容し、無料で彼らのサービスを使ってきたということです。

これに対して、ハードウェアの販売で収益を作ってきたAppleが、近年、"iPhone内のプライバシーはiPhone内に留まる"という姿勢で一貫して、クラウドには個人の行動履歴を含めたプラバシー情報をアップロードしない、としているのは彼らが直接ハードウェアを販売する会社なのだから当然と言えましょう。

......っと、あれ、話がまったく鮨屋に繋がらない......と思うかもしれませんが、実はそんなことはないんです。

AppleとAmazonの共通性

GAFAの残りのAとA。

Appleはハードウェア屋さんで、Amazonは消費者向けネット販売の会社ですから、この2つはぜんぜん違う......と思うでしょうけれど、僕はよく似た会社だと思っています。

確かに"商売ダネ"は違います。でも、両者の向いている方向が、お金を出す消費者の満足度を高める方向に向いているという点で似ていると思うのです。

Financial Markets

ご存知の方が多いように、Appleは90年代後半にどん底の時代があり、マイクロソフトなどから支援を仰いで、なんとか持ちこたえたなんてこともありました。まさか2015年以降、年間2億台を超える端末をコンスタントに、しかもかなり高価な平均売価で売るメーカーになるなんて、思いもしませんでした。

では、なぜAppleが成功したかといえば(もちろん多様な理由はありますが)、やはり経営者自身(かつてならスティーブ・ジョブズ、現在ならティム・クック)が、"製品そのものの体験"を最重要視して、細かなディテールを磨き込んだからだと思います。

現在その差は縮まっているように感じていますが、少し前までPCとMacの間には、ちょっとした動作の振る舞いにさえ"差"がありました。機能的な差ではありません。あれがこうなれば、こっちがこうなる。そんなユーザーがあたりまえに感じる操作の流れ、画面の遷移、あらゆる要素でMacの方が感覚的なのです。

よく話をするのは、文字フォントの見え味だったり、文章レイアウトの美しさだったりするのですが、いずれもスペックの違いはありません。"見た感じ"の違いなのです。もちろん、好みもあるでしょうし、完成度が高まってくれば"さらなる改良"は難しくなります。あるいは改悪になったと感じ事もあるかもしれません。

しかし、市場全体を見渡した時、Appleが消費者体験を最大限に引き出して、高い満足度を得ようとしていることは明らかだと思います。価格はその分高価ですが、"顧客価値"を重視する人にとっては、価格は二次的な要素でしかありません(もちろん、購入できないほど高価であれば問題ですが)。

ではAmazonはどうなの? という話ですが、Amazonもまた"顧客満足"、言い換えるとAmazonで買い物をする人たちにとっての心地よさを高めることこそが、Amazonの価値を高めていると考えている点でAppleと共通しています。

潰れかけのネット本屋だったAmazonが市場を席巻した理由

hatsune

Amazonという会社がどういう会社であるかは、そのキャッシュフローにあると言われています。たとえば純利益に関して言えば、彼らはずっと長い間、僅かな利益、あるいは少しばかりの損失を"出し続けてきた"会社だからです。

近年はその状況も少し変化して純利益も少しだけ出ているのですが、おおむね"純利益を出さない"方針の会社であることは間違いありません。一方で営業キャッシュフローは爆発的に増え続けています。

Amazonの元を辿ると、90年代、Amazonはネットで書籍を販売するネット販売業者の草分けでした。"スペックだけで取引できる、品種の多い商品ジャンル"に絞り込んだうえで、実店舗では実現できない幅広い取り扱い品目を実現できる、ネット販売の長所を全面に押し出した小売業者だったのです。

そのもっとも典型的なジャンルが"本"であり、本に続いて扱いを始めたのがDVDやCDだったわけです。どちらもリアルな書店で扱ってきた伝統的な商材で、多種多様、商品数が極めて多く、店舗にすべてを在庫するのが難しいものばかりですよね。

そこで、店頭に在庫を置かなくともラインナップを幅広く揃えられる商品に絞り込み、ネットで通信販売を行うというビジネスモデルから始まったのがAmazonという会社でした。しかし、実際に扱う製品はネット上のバーチャル製品ではありませんから、流通を効率化しなければ全米をカバーできず、なかなか収益は上がりません。

hatsune

......と、Amazonの歴史を振り返ると、それだけで一本のコラムになってしまうので結論に行きますが、現在のAmazonの本質は、ネットでの消費構造を分析することで、より効率よく、そして気持ち良く買い物ができる場をネットの中に創出することと言えるでしょう。

Amazonが利益を出さない会社だと書きましたが、実際のところ自分たち自身が大きな利益をここで出す必要があるとは思っていません。より心地よく買い物をする消費者を惹きつけることが、Amazonの価値なのです。

Amazon自身が自分たちで仕入れ、販売するという部分では収益が"トントン"であっても、人が集まるところには市場価値が生まれます。そして、物を買ってもらうためには、どんな値付け戦略、関連製品の表示を行うと心地よく買い物をしてもらえるのか、そういった分析や画面上での見せ方のデータを活用し、マーケットプレイスと呼ばれる他社の販売機会を与え、その手数料で収益を得ています。

行き付けのお店って、みんなありますよね?

行き付けの心地よい店は、あなたがどうすれ喜んでくれるか、心地よくいてくれるかをよく知っているお店と言えます。そんな行き付けのお店のノウハウを用いて、マーケットプレイスに参加するパートナーの商売を手伝い、そこから手数料を得る。そうした環境を整えるために、Amazonプライム会員などの手厚いサービスが展開されているわけです。

潰れかけの市井の鮨屋が、羨望を浴びる世界的一流店になった理由

hatsuneさて、やっと鮨屋の話になりました(笑)

本日、2019年1月25日にKADOKAWAから「蒲田 初音鮨物語」という本を発売しました。



なんでテクノロジ界隈の記事ばかり書いてる本田雅一が鮨屋の本? なんて思った人もいるかもしれません。表紙だって鮨ですし、そこにテクノロジの匂いなんてひとつもありません。タイトルも、まるで料理のレシピ本のようですし、あるいは外食産業のビジネス書に見えるかもしれません。(実際、昨日ある書店を覗いてみたら、料理レシピと一緒に並べられていて絶句しました)

hatsune

僕が実際に蒲田──東京都でも山手線管内から外れた西の端にある、以前は中小の工場、最近はマンション街となっていて、高級鮨店からは縁遠い街──の駅から5〜7分ほど歩いた住宅街の入り口にある初音鮨に行ったとき、あまりに豪華なネタばかりで、しかも見たこともないような独創的な作り方の握り鮨ばかりが出てきて驚いたものです。当時、1万5000円であのコースが食べられたというのは、高品位な鮨ネタの価格高騰が進んだ現在、思い返せば夢のようなことでした。

実はその後、このお鮨屋さんは一昨年に2万3000円、昨年3万2000円、そして今年からは4万5000円とおまかせコースの価格を上げてきているのですが、それでもまったく客足が衰えていません。

それはなぜか。価格の上昇以上に、顧客が受ける価値が高まっているからです。

もともとは閑古鳥が鳴いていた市井の鮨屋が、2015年にSNSでの料理の発表を解禁すると、あっという間に評判が拡がり、今では1年先の予約までいっぱい。現在だと2020年の2月いっぱいまで席(年間約3000席)が埋まり、次回の予約開始は2020年1月というのですから、その人気ぶりがわかるでしょう。ずっと先まで食べられませんが、その分、"鮨貯金"できる期間は長くなりました(笑)

と、冗談はさておき、僕自身が"通える"ようなお店ではないものの、なぜこのようなお店が銀座や六本木など、お金を持ってそうな人たちが集まる街ではなく、蒲田にあるのか?

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僕はそう疑問を持ち、この店を紹介してくれたワタナベエンターテインメント会長の吉田正樹さんに相談してみたところ、それならと初音鮨を経営するお二人──ミシュランガイドに二つ星で11年掲載され続けているお店ですが、昨年末までは"たった二人"で営業し、従業員を雇わない夫婦──を紹介してもらったのが、今回の書籍を書くことになった経緯でした(吉田さんには本のプロデュースもしてもらっています)。

初音鮨を経営する中治さんの話は、聞けば聞くほど信じがたい話ばかりでした。

「今夜は最高だった」「美味しい以外の言葉がない」。そうお客たちが大満足の笑顔で帰っていく"場を作る"ために、常識外れの原価率(そもそも原価率が何割かなど考えてもいなかったようですが)で、ただひたすらに"美味しい"を追求していたのです。

「カードローンを複数枚作って借金しては鮪代を払う月ばかりでしたよ」とご主人は笑うのですが、近海物の生に拘って鮪を仕入れるために(しかも冷凍保存は一切しない)借金をしてまで客に振る舞うなんてむちゃくちゃなことは、とても経営とは言えないかもしれません。

そもそも、いかに顧客満足を高め、たった二人だけでミシュランガイドで二つ星の掲載を獲得したとしても、蒲田まで高級鮨を食べに来るひとは限られていました。彼らが大ブレイクするまでには、土地柄に偏見のない外国人の鮨好きに認められ、そしてそのうちグルメ系口コミサイトやSNSで知られるようになり、そこから一気に人気に火が付いていくのですが、それまでに8年近い時間を要しました。

そのあたりの経緯は、是非とも「蒲田 初音鮨物語」をご覧になって欲しいのですが、結論としてご夫妻の話から感じられたのが、"顧客価値を最大限に高め、磨き込む"ことこそが、商品やサービスをヒットさせる要因なのだなということです。

hatsune

製品やサービスの"風合い"は稼ぎ方で変わる

もちろん、広告を生業とするGやFも、提供するサービスの質を高めていかなければ、そのうち顧客は離れていくのですから、顧客価値の最大化という意味では同じミッションをもって動いていると言えるかもしれません。

でも、僕らが"感じたい"のは、機能ではなくフィーリングです。和的な言葉でいえば"風合い"というのが、もっとも近い感覚でしょうか。

ディテールにこそ魂が宿る。そんな部分の違いは、実は"稼ぎ方"、言い換えると"モチベーションの原点"がもたらすのかもしれません。ただひたすらに良い製品を、ただひたすらに心地よくお得に、ただひたすらに美味しさを。それらの追求に、人は価値を見いだすのでしょう。
撮影:飯塚昌太



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