女性の体の問題こそテクノロジーで解決してほしいと常に思っていました。そんな未来はCESで見えるでしょうか?
▲1月上旬に米国のラスベガスにて開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」
まだ専用ゾーンはできていないものの、女性のライフスタイルを変えてくれそうな製品はでてきています。中でも今回ご紹介する2製品は、女性の生活を向上させる可能性を秘めています。
ちなみに、女性向けというと定番なのがスマートミラーや肌センサーを搭載したデバイスなどのスキンケア関連。お肌のコンディションをチェックして、それにあわせた製品を紹介しましょうというもの。特定メーカーのものを紹介するという要素が強く、女性のライフスタイルのイノベーションとはちょっと違うかな、と考えているため今回は省いております。
女性の健康管理の基本は自分の生理周期の把握から
女性の心と体はホルモンの変動に支配されているといっても過言ではありません。明るくなったと思えばイライラしたり、落ち込んでネガティブなことばかり考えたり、やたら眠くなって起きていられなかったり。食欲が増大することもありますし、人によってはその変化が肉体的な痛み、苦痛として襲いかかることもあります。それが毎月起きてしまう。機能的には正常なのに、だからこそ避けられない苦痛。ほんとうにどうしようもありません。せめて何がいつ起こるのかがわかればある程度対処できる・・・・・・つまり自分の「生理周期」を把握することが自分の体調を知る基本なんですね。
少し前に、スマートフォンの画面に生理周期を管理できるアプリがあることが中継に映ったということで、誹謗中傷された女性の話を聞いたことがありましたが、とんでもない話です。体の不調で婦人科に行くと、必ず聞かれるのは「前回の生理はいつでしたか?」ですから。女性としては、自分の生理がいつ来たかわからない方が問題なのです。アプリで管理しているというのは、自分の体とちゃんと向き合ってるということ。むしろ褒められていいくらいだと覚えておいてください。
そんな自分の体の変化を知る代表的な方法が「基礎体温」の記録です。
基礎体温とは安静時の体温のこと。通常は朝目覚めた直後、まだ体を動かしていない状態で体温を測ります。その結果をグラフ化してみると、自分の排卵日、生理(月経)予定日、生理不順(月経不順)、排卵や妊娠の有無などがわかるようになってきます。
それにあわせたメンタルバランスの変動も予測できるようになっていくわけですが、グラフの変化に一定の周期性がない場合、ホルモンの分泌が上手くいっているか疑う必要が。結果、不妊の疑いも・・・・・・。将来子どもが欲しいと考えている女性が自分の生理を知っていれば、早めの生活習慣の改善や不妊治療も可能でしょう。それくらい基礎体温は大切です。
なお、グラフは最低3か月分は必要といわれています。変動周期のパターンを見る必要があるからですね。また体温の変化といっても0.3~0.5℃の間の話なので、風邪をひいたときに使う体温計では変化をとらえることはできません。専用の婦人体温計を使います。
基礎体温を自動的に測定・記録したい
前置きが長くなりました・・・・・・。でもこれを説明しないと、男性のみなさんに製品を見せても「はあ?」で終わってしまいそうで(苦笑)。ここで何がいいたいかといいますと「毎朝、基礎体温測るのって超面倒!」ということなんです。タイミングは目が覚めた瞬間に限定されています。目が開いたら横になったまま専用の体温計を口(舌下)にくわえます。この時点でもう二度寝している未来が見えますね。その前に、ほとんどの場合眠くて測るの忘れるので、なかなか習慣化できないのです。
さらに測定した体温をどうするかという問題があります。グラフ化しないと意味がありません。昔はメモ帳に転記しなくてはいけなくて心が折れがちでした。今はスマートフォンと連携できる婦人体温計が登場しているので、データはスマートフォンに転送し、グラフ化も自動。便利です。
ですが! 既存の婦人体温計を画像検索していただければわかるのですが、体温計の形は変わっていません。つまり、"目が覚めたら婦人体温計を口に入れて測定が終わるまで待つ"という行動は避けられないのです。これが習慣化のネックになっているといってもいいでしょう。
リストバンドタイプの活動量計は24時間絶え間なく活動量や心拍数を図ってくれます。シートタイプの睡眠トラッキングデバイスは、寝るだけで勝手に睡眠サイクルや心拍数、いびきの有無まで測定してくれます。
・基礎体温の測定も自動化できないの?
・非接触センシングとかで寝てる間に基礎体温測れないの?
この2点がイノベーションのポイントかなって思っていたところ、エウレカパークで見つけたのが「Tempdrop」という製品でした。「Tempdrop」は腕の下に巻いて寝るだけで、安静時の体温を自動的に測定して記録してくれるデバイスです。データはBluetoothでアプリに保存できます。データは他のアプリとも統合可能。
▲腕の内側に装着するようです
ブースでどこから来たのかと聞かれたので、日本だと答えると、日本ではすでに製品が販売されていると教えてもらいました。なんと!
最新の製品ではありませんでしたが、そういうものが存在していたことがわかっただけでもラッキーです。舌下ではないので、婦人体温計との誤差がどの程度なのかが気になりますが、学習型AIと独自技術のATNCフィルタリングアルゴリズムによって、精度を高めているとのこと。妊活される方をメインターゲットにした製品のようですが、測定結果はそのまま自分の健康管理に活かせることは間違いないでしょう。
ゆくゆくはベッドに横になっているだけでわかるようになるといいですね。本人がまったく気づかなくても、アプリのほうから変化を知らせてくれたら便利です。特に生理前は。
経血量を測定し、替え時を通知する「スマート月経カップ」が登場!
その生理中に使える製品がCES Unveiledで見つけた「LOON CUP」です(ブースはLVCCのSouth Plaza内にありました)。
「月経カップの中にセンサーが入ってる!?」
サンプルを見た瞬間、そのセンサーが何をしようとしているのか理解できました。いつ交換すればいいかを教えてくれるのです。
月経カップとは生理用品の1種で、膣内に入れておくことで経血を受け止めるシリコン製の容器。きちんと装着すればまったく違和感はありません。使っていることを忘れるくらい無感覚です。タンポンは使い捨てですが、月経カップは貯まった経血を捨てて洗浄すれば、繰り返し使うことができるというメリットがあります。
▲シリコン製なのでしなやか。通常の月経カップと使い方はかわりません
月経カップそのものは決して安くはありませんが、1つで10年は使えるともいいます。使い捨て生理用品にかかる年間コストを考えると、一般的な月経カップ1つのコストは、1年くらいで回収できるのではないでしょうか。
ただ問題だったのは、交換タイミングがわからないということでした。いわゆる血ですから、漏れて出てしまってからでは衣類などを汚してしまうこともあり、対応が難しくなります。
「LOON CUP」は内蔵センサーが経血量を測定。50%と70%の2回に分けてアラートを出すので、交換タイミングを逃しません。経血量のほかに色や体温、生理サイクルも記録できます。アプリを見ると、前月の経血量と比較することもできるようです。
自分の生理と40年近く付き合ってますが、自分の経血量の変化を具体的な量で把握したことは1度もありません。なんとなく最近多い? 少ない? そんな程度。この月経カップはそれができる。データ化して、毎月の生理の状態をより詳しく記録できる。これがイノベーティブっていうやつじゃないかと思いました。実際、CES 2019ではInnovation Awardを受賞しています。
▲月経期間と経血量の変化がグラフ化されています
▲アプリの画面をみると、かなり細かいデータが見られるようです
注意点は2つ。精密機器を内蔵するため、一般的な月経カップのように煮沸消毒はできないこと。そしてバッテリー持ちは約1年で、交換や充電はできないので、バッテリー切れとともに買い換える必要があるということ。
市販品は120ドルで、アメリカから発売されるそうです。日本での発売も期待したいところですが、日本国内にツテがないため、法律の壁を越えて販売するのは難しそうだと語っていました。
月経カップそのものがマイナーともいえる日本ですが、ぜひ発売していただきたいですね!