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ガジェット好きな人向け、Apple決算の読み方:iPhone編(本田雅一)

投資家ではなく、スマホ好きのための決算解説

本田雅一, @rokuzouhonda
2019年1月30日, 午後07:30 in Apple
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ダンボールだからと期待せずにNintendo SwitchのVRで遊んだ結果……(小彩楓)

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小彩 楓, 4月6日
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米Appleは1月29日(現地時間)に2019年第1四半期(2018年10~12月期)の決算を発表しました。つまり昨年末商戦の数字が出てきたということですね。

関連して「Appleもうダメじゃん?」とか「中国市場崩壊?」、「iPhoneってもう沈むだけ?」などの極端な感想が出てきたりすることもあるのですが、多くの消費者にとって、こうした短期的な業績はあまり関係ありません。

というのも決算発表は投資家に対して行われるものですから、短期的にAppleの株価がどう動くのか、あるいは長期的にみて、株を持っている投資家が今後どう資産を運用するのかを考えるうえでは重要ですが、一般消費者にとって(数字そのものは)大きな意味を成さないのです。

しかし、Appleの動向が、スマートフォン、タブレット、パソコン、あるいはウェアラブル製品やネットワークサービスなどに影響することは間違いありません。

そこで今回は、決算発表をかなり"意訳"しながら、僕なりの解釈で業界トレンドを追うコラムとして書き進めていきたいと思います。


短期業績の成績表より興味深いこと

「2019年第1四半期(2018年10~12月期)」なんて書くと仰々しいので、ここでは「昨年の年末商戦」と表現することにしましょう。デジタル製品にとってこの時期は、四半期ごとの数字でもっとも売上げが大きくなる季節でもありますが、年末商戦におけるiPhoneの売上げが、あまり芳しくないという噂がありました。

オリジナルのiPhoneファミリーに追加機種がなかったことに加え、iPhone Xファミリーの拡充もiPhone XRが余ってるのでは? といった観測や、iPad ProやMacBook Airの新モデルに関しても、良い製品だけれど予想を上回るものではなかったと判断されたのでしょう。

Appleの株価は昨年10月に233.47ドルの最高値を記録したものの、その後大きく下落。1月2日に業績の下方修正が発表されると、一晩で約18ドルも株価が下落し、関連する銘柄にも影響するなど大きな話題になりました。



その後、株価はやや持ち直して直近は150〜160ドルの間で推移していましたが、まぁ、このあたりはエンドユーザーには、あまり関係ないことです。

ものすごくザックリと説明すると
  • 中国でのiPhoneの売上げが27%も減った影響で、iPhoneの年末商戦は前年より5%減となった
  • その影響で純利益が前年の年末商戦期より−0.5%に
  • その代わり、iPhone以外の事業はトータルで19%伸びた
ということです。

Apple

中国でのiPhoneの売上げ不振は、あらかじめCEOのティム・クック氏が1月2日に投資家向けに出したレターに書かれていたものです。また、実際の不振以上に、iPhoneが出荷された時期の違いも、iPhoneの売上げに影響を与えています。

2017年はiPhone Xが年末商戦ギリギリに発売された影響で、本来なら9月に初期出荷分の売上げが立ち、2つの四半期に分散するはずだった上位モデルの売上げが、年末商戦に集中しました。しかし、2018年はいつも通り秋に出荷が始まっため、その分、四半期単位ではマイナス要因だったという説明でした。

株価(投資家の心理)は、数字の動きや予想値とのギャップに反応しますが、むしろ「冷静に評価するならば、事前の予想ほど悪くない」というのが、現時点での空気感と言えるでしょう。

もっとも、冒頭でも書いたように、みなさんが知りたいのは"Apple株は買いか、売りか"ではなく、スマホってこの先どうなるの? Apple製品の動向は? っていう部分でしょう。しかし、そうした部分も今回の決算によく現れています。

短期業績よりも興味深いことは、
  • iPhoneの平均単価上昇戦略は、そろそろ難しい状況と言えそう
  • サービス関連で新しい手を打ってくる準備をしていそう
  • iPad Pro向けの大きなアップデートを施すのでは?
といったシグナルが出ていることです。


中国市場での減速が示す、高付加価値路線の"行き過ぎ感"

昨年末の商戦期における売上高をざっくり見渡すと、実は中国の次に売上げが下がっているのが日本市場です。およそ4.5%ほど売上げが落ちました。

クック氏が指摘したように、発売時期の違いがもたらした部分もあるでしょうけれど、iPhoneの売価はその前の年よりもかなり上がっています。

AppleはiPhone 8シリーズの後継機種を用意せず、その代わりにiPhone Xに始まる新しい製品ラインを拡張し、大型OLEDディスプレイ搭載のiPhone XS Max、液晶ディスプレイ搭載でカラーバリエーションを増やしたiPhone XRを追加したからです。

iPhone Xの投入で平均単価を上げ、販売台数が伸びなくても売上げを伸ばしたAppleが、その路線をさらに一歩推し進めたのが昨年末の商戦期でした。

Apple

中国市場でiPhoneの売上げが落ちた理由は、上がり続ける端末価格に市場が追従しなくなったからと言われています。ご存知のように中国には低価格な端末がたくさんあり、その中にはファーウェイやシャオミといった、今やトップクラスの巨大メーカーもものもあります。日本では販売されていない中価格帯の製品も多く、いかにブランド力と性能、機能、質感に優れたiPhoneと言えども選択肢から外れたのかもしれません。

長年のデフレや平均収入の減少が続いている日本で売上げが減少している一方、所得が伸びている北米市場では小さいながらも売上げを伸ばしていることをみると、"高付加価値の製品とすることで販売単価を上げ、売上げを確保していく"という戦略に、上限が見え始めたと言えるのではないでしょうか。

中国市場の反応が高付加価値路線に起因するものだと仮定するなら、程度の違いがあるだけで、市場によって今世代までは平均単価上昇戦略が通用しても、今年秋に登場するだろう次世代機以降、同じ手は通用しないのでは? と予想します。

"機械学習"への投資による"自動化機能"がひとつの方向か

もはや爆発的にiPhoneの販売台数が増えることがないことは、Apple自身もわかっているはずです。

iPhone Xから続く平均単価上昇戦略も、プラットフォームをリセットして新しいことをやり始める手段ではあるのですが、次の戦略を見つけるための、あるいは、今実施している取り組みの成果が出るまでの、時間稼ぎとも言えます。

たとえば、Appleは過去数年に渡って自動運転技術への投資をしてきたことがわかっていますが、プロジェクトタイタンと呼ばれていたこのプロジェクトに直近で関わっていた人員を機械学習モデルの研究開発に割り当てる再配置を行いました。


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Appleは、デバイスの機能として機械学習を積極的に取り入れることで、より使いやすく、高品質な端末にしようとしています。A12 Bionicのニューラル処理プロセッサに、ガツーンとたくさんのトランジスタをぶち込んだことなどからも、そのあたりへの注力が透けて見えます。

前回のコラムで、GAFAについて書いた際、G(Google)とF(Facebook)は広告屋だけど、A(Apple)はコンシューマに価値を提供することで直接的な収益を得る企業だから、製品のディテールに拘るのだと書きました。その違いは、他社が追いついてきた現在でもあると思っていますが、一方で低価格な中国製スマートフォンに手を焼き始めていることも否定はできません。

そんな中で、"やっぱりウチは違うんだよ"と差異化戦略の視点として訴求し始めているのが、AIによる自動化機能を"端末内だけで完結して実装"していることです。

Appleは1月のCESに出展していませんでしたが、カジノ街からラスベガスの会場へ向かうモノレールから見えるビルボードに「What happens on your iPhone, stays on your iPhone(iPhoneで起きたことは、iPhoneにとどまる)」という広告を打っていました。

つまり端末をどう使ったとしても、そのユーザーが望まない形で、あるいは知らないうちに利用履歴を取り、それが広告などの事業活動に使われることはないよ、というアピールです。

Apple

同様のポリシーは、すべてのApple製品で貫かれています。クラウドを軸として"データを使った"事業を中心に据えて評価すると、Appleの立場はやや窮屈なものになるでしょう。あくまでも"Apple製品"が中心であって、クラウドは自由にユーザーが選んで使うものですから、データが中心となればAppleは主役ではなくなってしまいます。

Appleが機械学習に力を入れ、AI技術の応用で端末のさまざまな機能を自動化(あるいは半自動化)していく方向に向かっているのは、クラウドにデータを差し出さなくとも、Apple製品なら"端末内だけで先進的な機能、使いやすさを得られますよ"という立ち位置を明確にし、ブランド価値の一部として確立したいからなのだと思います。





CAREERS TechCrunch Japan
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