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「HoloLens 2」がモバイル製品の展示会で発表された深いワケ(西田宗千佳) #MWC19

Microsoftは「5G時代」の到来を意識している

西田宗千佳
2019年3月6日, 午前06:00 in #mwc19
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▲MWC開催の前日夜である2月24日、マイクロソフトはHoloLens 2をお披露目した

2月末にスペイン・バルセロナにて開催されたモバイル製品の展示会「MWC19 Barcelona」。今回のMWCのトピックといえば「5G」。それはもちろんそうなのだが、PC業界的にいえば、久々にマイクロソフトがMWCに出展し、しかもその主軸を「HoloLens 2のお披露目」に割いた、ということが大きかった。

だが、冷静に考えてほしい。マイクロソフトはなぜこのタイミングでHoloLens 2をお披露目したのだろうか? 今年から少々方向性が変わったとはいえ(その辺は後述する)、MWCは携帯電話業界を主軸にしたイベントであることに変わりはない。そこに、LTEも5Gも搭載予定がないHoloLens 2をメインに据えたブースを作り、久々に出展した裏には、どのような意図があるのだろうか?

そこには、5Gの理想と現実、そしてVR/ARの将来との関係が見えてくる。

■HoloLens 2は「素晴らしい正常進化」だ


まず、HoloLens 2についてファーストインプレッションをお伝えしておきたい。詳しくはすでにレポートが本誌にも出ているので、そちらをご覧いただきたいが、一言でいえば「素晴らしい正常進化」だ。

MWC HoloLens 2
▲HoloLens 2。かぶりやすくなり、見やすくなり、使いやすくなった。あいかわらず高いが、正常進化したハードだ

初代HoloLensの登場は2016年。あれから3年が経過し、技術自体は相応に進化した。ライバルにあたる「Magic Leap One」も登場しており、「シースルーディスプレイを使い、ポジショントラッキングがなされたCGを重ねる」というコンピュータのあり方は、そこまで珍しいものではなくなっている。

だが、HoloLens 2の完成度は、やはり素晴らしい。3年の技術進歩と開発のための努力が反映されていて、非常に使いやすいものになっている。特に、「かぶりやすいこと」「両手の指をつかって自然なインタラクションができること」「CGが重なる視界が、特に縦方向に伸びた」ことの三点が大きい。

とはいえ、まだ高コストな機器であり、PCやスマホの持つ「一般的な用途」だけに向けて提示するのは難しい。だからマイクロソフトも、あくまで業務用の機器と位置づけてアピールしている。

その点は、まだ世代を重ね、技術の進化を待つ必要がある。

■5GとAR・VRの蜜月関係


MWCは、昨年まで「Mobile World Congress」の略だった。しかし今年からは、イベント名称が正式に「MWC」になった。これはCESとまったく同じパターンといっていい。 CESも2018年以降、「Consumer Electronics Show」から「CES」になった。要は「家電だけのイベントではなく、より広いイベントになったんですよ」ということ。MWCもまったく同じである。

というわけで、MWCにも、別に携帯電話ネットワークに関係ない企業の出展は多数ある。だから、LTEや5GのないHoloLens 2が発表されても、そこまで大きな問題はない。

......とはいえ、だ。MWCの主軸が、やっぱり「携帯電話業界」にあるのは間違いない。さらにいえば、出展者の大半はコンシューマ向けの企業ではない。記事化されるスマホの新製品の話は、MWCの花形ではあるが、出展企業の中では少数派だ。

MWC HoloLens 2
▲サムスンブースでの5Gのデモ。多くの端末メーカーブースで、5G搭載端末を使ったデモが行われていた

MWCのもうひとつの花形は携帯電話事業者、すなわちモバイルオペレーター。特に今年は、5Gに向けた取り組みをアピールする企業が目立った。日本では周波数帯の割り当てもまだで、2019年後半にようやくプレサービスを開始、という状況だが、他国ではすでに一部サービスを開始しており、先進国での本格始動はまさに今年からだ。だから、MWCでのアピールも熱を帯びていた。その辺が、なんだかんだで「家電中心」であるCESとの大きな違いと言える。

面白いのは、5Gをアピールする携帯電話事業者のほとんどが「VR」をデモにつかっていた、ということだ。理由は、5Gの特徴が「広帯域」「低遅延」という点にあるからだ。VRでは(特に映像の場合)多くのデータ転送を伴うため、今よりも安定的な広帯域ネットワークがあることが望ましいし、遅延が大きいと「酔い」につながる。だからVRの求める要件にはぴったりだし、なにより人目につきやすい。デモとしてはピッタリなのだ。

MWC HoloLens 2
▲携帯電話事業者だけでなく、クアルコムも「AR・VR」をアピール。5Gが同社発表の主軸だが、同時に、AR・VR向けに同社半導体が多数使われていることもアピールした

HoloLensも、そうした文脈でいえば「5G時代を予見させる」ハードウエアであり、MWCでアピールされるのは、ある意味で自然、ともいえる。

■5Gでも遅延はすぐ小さくならない? カギを握る「基地局構成」と「エッジ」


だが、5GとVRを巡る状況には、不都合な事実もある。

それは、「5Gで遅延が小さくなる」ということについては、まだまだ多数の条件が必要である、ということだ。

5Gで小さくなる遅延は、あくまで「端末と基地局の間」に限られる。その先は携帯電話事業者内でのネットワーク構成や、インターネット側の構成により、「ユーザーが実際にサービスを利用した時の遅延」は大きく変わる。

例えば、5Gの基地局実装には、「NSA」と「SA」の2つがある。前者は「ノン・スタンドアローン」の略で、4Gと併存させる方式。制御信号には4Gを使い、5Gの新しい周波数帯でデータを転送する。後者は「スタンドアローン」の略で、5Gの新しい周波数帯のみを使う方式を指す。

多くの携帯電話事業者では、5Gでのエリア確保を目的にNSAを採用する。そのため、5Gの広帯域は活かせるものの、遅延や1セル内での同時通信可能端末数などについては、一定の改善に留まる。すなわち、2019年・2020年の段階で実現できる環境は限られるのだ。インフラを新たに広げる中国や楽天のような事業者、スタジアムへの設置などの新しい環境ではSAの基地局が採用され、遅延がぐっと小さくなるものの、2019年・2020年の段階については、多くのエリアで、VRやARが求める「数ミリ秒単位での低遅延」の世界を常に実現できるわけではない。

MWC 楽天
▲楽天の三木谷浩史社長。SAを中心とした「5G主体のネットワーク構成」であることを会場でアピールした

また、サービスを「ネット上のどこに配置するか」「どのようなサービスとするのか」もポイントだ。5Gの網内での遅延が短くなっても、インターネット上での遅延が大きくては意味がない。ここはそうそう短くならない。

解決策のひとつは、「処理系をエッジに持ってくる」ことだ。

HTCはMWCで、5GとVRをアピールしていた。中でも面白かったのは、一体型HMDである「VIVE Focus Plus」を使い、PC用のVRゲームを「リモートで動かす」デモだった。クラウド上のサーバーでゲームを動かし、その映像を端末に送って操作するのが「クラウドゲーミング」だが、それをVRでやった、という建て付けになっている。

MWC HTC
MWC HTC
▲HTCは5GとVRをアピール。もはや同社にとっての強みは「VR」の知見だ

現在もクラウドゲーミングは存在するが、問題は遅延。クラウド上にサーバーがあると遅延が避けられず、アクション性の強いゲームでは違和感が残りやすい。VRのように、遅延の長さ=酔いに通じやすいものは、現在のクラウドゲーミングには向かない。

だがHTCのデモでは、かなり違和感なくプレイができた。理由は、5Gに加え、「エッジ側」にサーバーを置いていたからだ。会場では模擬的に実現していたのだが、5Gの基地局もしくは携帯電話ネットワークの網内にクラウドゲーミング用サーバーを置くことで、インターネット側の遅延を防ぎ、5Gの低遅延を最大限活かす構成になっている。こうした構成には、5GのSA環境が望ましい。

こうしたことは、VRだけでなく、あらゆるサービスで有用である。動画配信のようなコンシューマ向けビジネスはもちろん、データ解析のような企業向けサービスや配車サービス、自動運転でも、いかにサーバーをエッジに置くか、がポイントになる。携帯電話事業者の「5Gでのエッジ環境」は、駅の一等地と同じように、大きな価値をもってくるのは間違いない。

■クラウド側も用意、「本格5G時代に向けた準備」であるからこそMWCで発表


ここで話をHoloLens 2に戻そう。

実は筆者は、HoloLens 2のハードウエアにはそこまで驚かなかった。素晴らしいものだが、あくまで予想の範疇だったからだ。

マイクロソフトの発表の中で驚きだったのは、HoloLens 2の存在を前提にした2つのクラウドサービス、「Spatial Anchors」と「Azure Remote Rendering」だ。

前者はHoloLensが得た「空間マップ」の情報をあらゆる端末で共有するためのクラウドサービスで、後者はハイエンドPCでしか扱えないようなモデルをそのままHoloLensなどで扱うためのサービスだ。

写真は、HoloLens 2が取得した空間の映像である。こうやって、どこが床でどこに出っ張りがあるか、という認識をしているので、CGを重ねて表示することができる。この空間マップを共有することで、我々は「他人と空間を共有する」ことが可能になる。いままでも可能ではあったが、Spatial Anchorsを使うと、HoloLensをつけている人とiPhone・iPadやAndroidを使っている人が「同じ空間を見ながら」仕事ができるようになる。高価なHoloLensを全員に支給できない現状、非常に重要な技術だ。

MWC HoloLens 2
▲HoloLensで取得した空間マップ。これをSpatial Anchorsを介し、iOSやAndroidデバイスと共有し、「見ている空間自体に一緒に参加」できるアプリを増やす

そしてAzure Remote Renderingでは、商品のデザインなどに使われたハイエンド3Dデータを、クラウドで処理することで、HoloLens 2などでも視聴可能にする技術だ。これまでは低スペックな機器向けにデータを変換する必要があったものの、Azure Remote Renderingを使うと、特定の用途ではそうした作業が不要になる。コンテンツ製作の現場とAR・VR環境を別物として考えなくて良くなるのだ。

MWC HoloLens 2
▲Azure Remote Rendering。右半分が実際のデータで、左側はデータを小さくしたもの。クラウドを介することで「右側の品質のまま」扱えるようになる

こうしたサービスがマイクロソフトのクラウドであるArure上にあり、広く使えるようになることは、HoloLens 2というデバイスを超える価値を持つ。既存のスマホ・タブレットを含め、あらゆるデバイスで「AR・VRを使ったビジネス」を広げることができるからだ。

5Gになり、クラウドプラットフォーマーがエッジに近いところにサーバーを置くようになっていけば、遅延はさらに短くなり、こうしたサービスを組み込んだAR・VRビジネスの展開は容易になる。そのことをマイクロソフトが意識していないはずはない。

HoloLensが一般のものになるまでには、まだ時間がかかる。だがその時はいつかくる。おそらくそのタイミングが、5GのSA基地局もあたりまえになっている2021年以降だろう。一方、その時でも、全員がHoloLensを持つわけではないし、HoloLens自体も今のハイエンドPCほどのパワーは持ち得ない。

将来必要となるクラウドサービスまで揃え、「今から本気でビジネスをする人に向けた環境」を整えにきたのが、HoloLens 2の発表の本質である。

と言う風に考えると、LTEも5Gも搭載していなくても、HoloLens 2の発表は「今年のMWCで行うのが必然」だった......という結論に至るのである。




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